Coolier - 新生・東方創想話

八椛鏡ノ改

2015/05/07 02:06:05
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無用途商品店/裏

「対局、ですって?」

いつもの香霖堂。椛は例の将棋盤の一件以来、ちょくちょく顔を出していた。
いつまでも品を置いておくわけにはいかない、といったのは店主の方であるが、ならばとその買い手が対局を申し込んできたというのだ。

「うん、そうなんだ。この将棋盤をかけてね。
 ただ僕自身、将棋の腕に自信はないし、なにより今回の将棋盤については、僕だけの問題ではないからね。
 君になら任せられそうだと思ったのだけど、どうかな」
「え……それはつまり、負けたらこれがその方に持っていかれるということですよね?」
「そこは負けなければ良いさ」
「それは、そうなんですが。……勝ったら私が買うんですか?これ」

値段がつけようがないといったのは誰でしたか、と言外に含みを持たせて返す言葉も、なお弾かれることとなる。

「うん、それに関わることなんだけどね。わかったんだ、出元。聞いたら驚くよ」

そう言う霖之助は少しにやにやしている。先を続けたくて仕方ないという感じだ。

「わかったんですか」
「うん、霧雨の家で調べ物をさせてもらってね……おかげで、誰にならいくらで売ってもいいか見当もついた」

誰になら。
それはつまり、人によってはふっかけるということなのだろうか?
ともあれ、椛としては続きを聞きたかった。

「それで、どこだったんですか」
「それがね、なんと」
「失礼します」

表の方から男性の声がした。なんというタイミングだ。

「……すまない、お客は放っておけない」
「私もお客ですよ、一応」
「わかっているさ、失礼……」

ばたばたと表の方に走り去る店主。
やがて聞こえてきた声は椛に聞かせるかのようなトーンであった。

「ああ!これはちょうど良かった……待ち人がご訪問中ですよ」
「そうなんですか?」
「ちょうどついさっき来たところでね」
「それは運が良かった……のかな?」
「さ、それは勝負の結果次第かと」

二人の声が近づいてくる。

そうして、彼らは三度出会う。
夢でも見そうな白昼に。

「ええと、はじめまして……あれ?」
「はい。お初にお目にかかり……え?」

夢でも幻でもなく、まぎれもない現実として。

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