Coolier - 新生・東方創想話

兎は如何様な夢を見る

2020/05/16 15:59:49
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 そうしてきっと、ここは夢の中。
 空に大きな月があり、広い土地を照らしている、そんな夜。
 やいのやいのと、声がする。

 私は清蘭と一緒に餅つきの最中だ。
 そして、ここに居るのは清蘭だけじゃない。
 誰だろう。おぼろげで、まだ少し遠くのところだ。私にはまだ分からない誰かがたくさん、賑やかに居る。
 どこかで見た顔もある。久侘歌も、射命丸もいる。それから、紅白の巫女に、白黒の魔法使い。緑色をした風祝。
 みんなよりも私たちと近いところに鈴仙の姿があって、こっちに手を振っていた。
 きっと、この餅つきが終わったのなら、私と清蘭も鈴仙と連れ立って、あちらへ行くんだろう。そんな予感をなぜか確信していた。

 そうして、私は食べていた。私の好きな月白色の団子。気付けば鈴仙も一緒に食べていた。まだ私には分からない、鈴仙の好きな団子だ。大切そうに両手で持ちながら、ゆっくりと食べている。それから清蘭も食べている。それは清蘭の好きな小さな団子だ。その味が何かは、私にはまだ分からない。それでも清蘭は一口食べると言うのだ。
「これ、美味しいねえ」
 そうやって清蘭は笑うのだ。私も鈴仙も、つられて笑い返す。

 そうやって色々な物事が巡っていく。歌のように巡っていく。

 それから私たち三人は、たくさんのお団子を作って、あちらへいるみんなへと渡していく。
 誰かから誰かへ伝わって。受け取った誰かが、また誰かに伝えていって。
 そうしてみんなも、お返しにと、たくさんのものを私たちに渡してくれた。それが何かは、私にはまだ分からない。
 けれどもそれは歌のように。
 みんなが声を合わせて一つになるもので。みんなが自分の想いを胸に抱いて、他と異なるもので。
 そうやって一つの大きなものになっていく。それぞれの想いを大切にしたまま、集まっていく。

 そうやって、やいのやいのと歌声が。
 巡り巡って、空高くまで満ちていく。
 夜空の高く、一際大きくぽつんと光る月に向かって、響いていく。
 たくさんの色、たくさんの想いを、結んで繋げて一つにのせて。
 ばらばらの物が一つになって。けれどもそれぞれが、その想いをしっかり抱えて。
 土の上の歌声は、空の上の高くまで届いていく。
 きっと、いきのできない月まで届いて響くはずだ。

 みんなと一緒に私と清蘭も声をそろえて歌っていく。
 月を見上げて、歌っていく。

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