Coolier - 新生・東方創想話

博麗神器異変 剣の章

2011/02/06 19:37:44
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霧雨魔理沙の一日は、博麗神社に向かうところから始まる。
早朝から律儀に起きだしては、気だるげに境内の掃除をしている霊夢に会うのが彼女の日課であった。

「さって、霊夢のやつはどこかなっと……」

上空から箒に乗ったまま、霊夢の姿を探す。
いつもならすぐに見つかって、向こうから弾幕をぶつけてきたりもするのだが、今日はどこにもその姿を発見することができなかった。
おかしいな、と思いつつ魔理沙は境内へと降り立つことにした。あの霊夢が寝坊するというのも考え辛い話ではあるのだが、まぁたまにはそういう人間味があったほうが可愛らしいだろ、と魔理沙も特に深くは考えていなかった。

「おーい!霊夢ー!」

縁側から名前を読んでみるが一切反応がない。それどころか、どうも神社全体が静まり返っているような気がする。
魔理沙はその異様な空気に寒気を感じた。長年博麗神社に通いつめている彼女であったが、こんな雰囲気は初めてだった。
臆していても仕方が無いので、魔理沙は神社の中へと踏み込んでいく。
まず台所に行ってみたが、霊夢の姿は無い。
次に霊夢の部屋に入ってみたのだが、やはりその姿はなかった。

「う~む、霊夢のやつ、どこに消えたんだ?」

さっきから人の気配が全く感じられない。
魔理沙はそれを不気味に思いつつも、とにかく手当たり次第に探してみようかと、霊夢の部屋を離れようとして――

(ん?なんだこれ?)

ふと、変わったものが置かれていることに気がついた。大きな木の箱のようなものが三つ。形は不揃いだが、蓋が開けられていて、中に何か入っていたことを思わせる。
魔理沙は、自分の中に根付く蒐集家としての本能が疼くのを感じて、その箱に近寄って観察をはじめてしまった。
箱は本当に何の変哲も無い木で構成されているようだった。小、中、大、三つの大きさがあり、小さい箱は立方体、中くらいの箱も立方体に見えるがわずかに長さが違うかもしれない。大きい箱に至ってはずいぶん細長い直方体のような形をしていた。
さらに良く見れば、箱の周りにいくつも紙が貼ってあったような跡が残っている。なんとなしに箱を持ち上げてみると、底面の方にも破れかけの紙が残っていて、それを剥がして手に取ってみる。魔理沙はこの紙と同じものを良く知っているような気がした。

(ああ、霊夢の御札だ)

霊夢が弾幕勝負等で使う御札に酷似している。とは言っても破れているので、完全に同じものかどうかはわからないのだが、おそらく博麗神社で扱っている御札であることには間違いないだろう。
魔理沙は中に何が入っていたのかをしばらく考えた。もしかしたら、博麗神社に隠されていたとんでもないお宝だったりするのだろうか。しかし、霊夢からそんな話は聞いたことがなかったし、考えても想像もつかないので、すぐさまそれを打ち切ると、剥がした御札を服の内側にしまって部屋を後にすることにした。



その後、魔理沙は一応博麗神社全体を回ってみたのだが、やはり霊夢を見つけることはできなかった。
もしかしたら町にでも出かけているのかもしれない。お昼に来ればさすがに戻ってきているだろう。
魔理沙はそう考えて一度出直すことにした。心の片隅に言い知れぬ不安を抱えながら……














お昼の博麗神社、太陽は暑いというより熱いくらいに地面を照らしていた。
そんな眩しい日差しの空から降り立つ白黒の少女、もちろん魔理沙である。
朝と同じく、まずは上空から霊夢の姿を確認しようとしたのだが、見つけることはできなかった。神社の中に上がり込んでみても相変わらず人の気配が全くしない。それどころか、朝ここに来た時と何も変わっていなかったのだ。おかしな箱もそのまま霊夢の部屋に置かれていた。
霊夢が朝から神社にいない、こんなことは久しぶりだ。
しかし博麗の巫女が長時間、神社から姿を消すことがたまにあるということを魔理沙は良く知っていた。

「何か異変でも起きてるのか?」

今はここにいない巫女に向かって問う。
魔理沙はなんだか自分が置いてきぼりにされたような気がして、寂しくもあり、悔しくもあった。
霊夢が異変解決に出かけると、魔理沙はその匂いを嗅ぎ付けては競うように異変に立ち向かっていた。それは異変に対する単純な興味もあるし、博麗霊夢という存在を密かにライバル視しているからでもあった。
それに、どこか人を寄せ付けず、しかし誰にでも平等に接する彼女の持つ独特の雰囲気に惹かれている部分もあるだろうと自分では理解していた。
だからこそ、毎日のように神社にも来るのだ。
けれど、霊夢は自分のことをどのように認識しているのだろうか。友人として扱ってもらえているのだろうか。もしも、そう思っているならば、出かける前に一声かけて言ってほしい。一緒に異変解決にいかないか、と言ってもらいたい。
友人として、ライバルとして、認めてもらいたい。
それが自分のわがままであることはわかっている。けれど……

「ふぅ……私としたことがついネガティブになってしまったぜ」

気合を入れなおすために、帽子をきちんと被りなおして、頬を叩いた。
何に対する気合なのかはよくわからなかったが、少なくとも後ろ向きからは解放された。
魔理沙は「よしっ」と呟いて、来た時と同じように縁側から神社を後にしようとした。

(ん……?なんだありゃ?)

縁側から地面に降りた、魔理沙の視界に妙なものが飛び込んでくる。
境内の向こう、鳥居の方に陽炎のようにもやもやとした何かが浮かんでいた。
目をこらして、その何かを見てみると人の形をしていることがわかる。
赤と白で織り成された特徴的な服、リボンで結んだ黒い髪、あれは……

「霊夢、なのか?」

ぼんやりとしているが服装や髪型から考えて、それは霊夢のように見えた。
「おーい!」と声をあげて手を振ってみるものの、向こうからは反応がない。
こちらから近づこう、そう思った時、霊夢の口がかすかに動いたのを魔理沙は見た。
そして次の瞬間、まるでそこに何も無かったかのように霊夢の姿は消えてしまった。

(…………)

今のは幻だったのか、夏の日差しが見せたただの陽炎が、自分がついさっきまで考えていた霊夢の姿に見えてしまっただけなのだろうか。
しかし、魔理沙は心の中で膨れあがった不安を抑えることができずに、箒にまたがって空へと飛び上がった。




霊夢が最後に呟いた言葉、魔理沙には『たすけて……』と聞こえたような気がしていた。










勢い良く飛び出していった魔理沙だったが、どこへ向かえばいいのかもわからなかった。そこで、こういう時に頼りになりそうな人物に会うことにした。霊夢のことをよく知っていて、幻想郷の様々出来事に詳しい人物なんて一人しか考えられない。マヨヒガに住む賢者、八雲紫。その屋敷を目指して、魔理沙は全速力で箒を飛ばした。
何故か霊夢の言葉が頭から離れようとしないのだ。神社で感じた異様な雰囲気も合わせて、魔理沙は
湧き上がる恐怖を振り切るように飛んでいた。


マヨヒガは幻想郷でも謎が多い地域で、この辺りに慣れている者でも、何故か迷ってしまったりする
のだが、魔理沙は難なく紫の屋敷にたどりつくことができた。
屋敷の庭に降り立つと、暢気に洗濯物を干している紫の式達の姿を見つけた。

「藍、橙、今すぐ紫に会わせてくれ!」

自分でも驚くくらい大声が出てしまった。
たぶん霊夢が消えたという異常事態に、自分で思っているよりも遥かに焦っているのだろう。
その声でこちらの姿に気がついた藍が、橙を置いて走ってくる。

「騒々しいな、そんなに慌ててどうかしたのか?」
「霊夢が消えちまったんだよ!早くしないと取り返しのつかないことになるかもしれない!」

魔理沙は自分の中に渦巻いている不安を吐き出した。
そんな確証があるというわけでもないのだが、自分の中の何かがそう告げているのだった。
しかし、慌てる魔理沙を余所に、藍は「ああ、そのことか」と顔色ひとつ変えずに呟いた。

「それならば紫様に会われると良い。おそらく部屋にいると思うぞ」
「えっ……お、おい!」

それだけ告げると彼女は橙の許へと戻ってしまい、魔理沙は一人残される形になった。
魔理沙は、あまりにも落ち着いた藍のその態度に、しばし茫然としてしまった。
彼女はまるで霊夢がいないことを知っているかのようでもあった。そのことか、という呟きはそれを指し示していると言える。
そこで魔理沙は、はっと我に返った。
頭をぶんぶん振って、とにかくまずは紫に会うことが先決だと考えて、急いで紫の部屋と向かうことにした。
バタバタと屋敷の中を駆けて、紫の部屋へと続く襖を開く。
果たして八雲紫はそこにいた。
幻想郷の賢者は、まるで魔理沙が来ることがわかっていたかのように、扇で口許を覆いながら、開けられた襖の方をじっと見ていたのだった。
魔理沙は一瞬その姿にたじろいだものの、すぐに部屋の中へと踏み込み、そのままの姿勢で叫ぶ。

「紫!霊夢が、霊夢がいなくなっちまった!」
「慌てないの魔理沙、そのことなら私もわかっているわ」

そして魔理沙が来るのを待っていたのだ、と紫は告げた。
相変わらず底知れない雰囲気を持つ大妖怪のそんな言葉に魔理沙は混乱したが、紫が座るよう促すと素直にそれに従った。
それを見届けた後、紫は静かにその口を開いた。

「それで、何を聞きにきたの?」
「えっと……け、今朝から霊夢の姿が見当たらないんだよ。それで、お前なら何か知ってるんじゃないかと思って」

ふむ、と紫は一度頷いた。

「よく聞きなさい魔理沙。霊夢は消えていない。ちゃんと幻想郷にいるわよ」
「そ、そうなのか?」
「ええ、神社にいないだけで、彼女は今も幻想郷にいるし、おおよその位置も把握できている」

魔理沙はそれを聞いてはぁ~っと深い息を吐いた。
全て自分の早とちりだったのか、と胸を撫で下ろす。
霊夢が久しぶりに神社からいなくなったものだから、少々慌てすぎだったかもしれない。
自分があの時見た霊夢らしき姿もきっとただの幻、暑さと妙な不安でおかしくなっていたからあんなものを見ただけなのだ。
不安から解放されて、一気にそんな考えが溢れてきた。なんだか恥ずかしくなってしまって、紫に郷のことは霊夢に秘密にしておいてもらおうか、などと考えて――

「ただし、今の霊夢があなたの知っている霊夢であるかは保証できないのだけれどね」

紫の口から放たれたその言葉に、魔理沙の思考は一気に現実へと引き戻された。

「博麗霊夢は確かに存在する。けれど、今の霊夢は貴方や私の知る霊夢とは違うのかもしれない」
「……ちょっと待て、意味がわからないんだが?」

いきなり理解できないことを語る紫に魔理沙の思考はついていけなかった。

「今の霊夢が何をしているかわかれば、貴方にも私の言葉の意味が理解できるはずよ」

その時、紫の目の色が変わった。
彼女の表情は扇で隠されていてわからないが、その瞳はこの先を本当に聞くつもりがあるのかどうかを試しているようにも思えた。
ごくり、と唾を飲み込む魔理沙。
一体何を言うつもりなのだろうか、紫がこれから語ろうとしているのはそれほどまでに恐ろしいことなのか。
それからしばらく、紫の部屋に沈黙が流れていた。
魔理沙は一度目を閉じ、その数秒の後、再び開いて紫の目を見つめて

「……霊夢は何をしているんだ?」

意を決して、それを聞いた。
紫はその言葉を受けて、魔理沙と同じように一度目を閉じ、そして再び開ける。
その目は先ほどよりも、さらに怪しげな雰囲気を漂わせていて――

「霊夢がしているのはね、『妖怪狩り』、無差別に妖怪を斬りつけて、殺そうとして、幻想郷中を渡り歩いている」

そして、その怪しげな瞳のまま、恐ろしい言葉を口にしたのだった。
覚悟を決めて聞いたはずの答え。
しかし、そのあまりに残酷な答えに魔理沙は声を失った。

「幻想郷に住むあらゆる妖怪に向けて剣を振るい、楽しげに笑って、相手が力尽きるまでそれをやめようとしない。まだ死んでしまった妖怪はいないようだけど、それも時間の問題でしょうね」

あまりに、あまりに淡々と、紫は残酷な言葉を並べる。
魔理沙はその答えに絶句し、ただただ茫然とするばかりで、しばらく何も考えることができなかった。
紫が何を言っているのか全くわからない。いや、わかっていても頭がそれを受け入れようとしていない。
妖怪狩り?笑いながら妖怪を斬りつけている?それは一体誰の話をしているんだ?
霧雨魔理沙という人間の知る博麗霊夢という少女は、そんなことをするような人間ではなかった。ありえないと断言しても、誰も否定しないくらいに、彼女は妖怪を斬りつけて楽しむような人間ではないはずだった。
だから紫の言葉をそう簡単に受け入れることができないのだ。

「……そ……それは本当なのか……何かの間違いじゃ」
「いいえ、私がはっきりとこの目で確認したわ」

やっとの思いでしぼりだした言葉も無残に打ち砕かれる。
震える声が紫の言葉によってかき消されてしまう。
その時、混乱しきった魔理沙の中で、何かが爆発した。

「っ!!なんでだよっ!一体何がどうなってるんだよ!どうして霊夢がそんなことしてるんだよ!?お前も藍もどうしてそんなに落ち着いてるんだよ!?どうして何もしようとしないんだよ!?」

叫んだ。
頭に浮かぶ言葉をただ叫んだ。
自分の理解を超えたこの事態に、叫ばなければもうどうにかなってしまいそうだった。
霊夢がおかしくなっていることへの不安。
妖怪を斬りつけて楽しげに笑うという霊夢の姿を想像しただけで浮かび上がってくる恐怖。
異様なまでに落ち着いた紫や藍の態度。
必死に状況を理解しようとしているのに、思考が追いついていかないもどかしさ。
様々な想いが魔理沙の中でぐちゃぐちゃに絡み合っていたのだ。
それを言葉にして吐き出すことで、どうにか自分を保とうと必死だった。
魔理沙がひとしきり叫び、肩で大きく息をするのを見ながら、それでも紫は眉一つ動かすことはなかった。
魔理沙はそんな紫をまるで鬼のような顔で睨みつける。

「紫……霊夢の居場所を教えろ」
「ダメよ」
「っ!この野郎!!」

紫の態度に自分が抑えきれなくなり、いきなり殴りかかろうとする魔理沙の拳を、しかし紫は片手で後ろに受け流した。その勢いを利用されて、魔理沙は紫の足に転ばされしまう。
倒れた魔理沙はすぐに体を起こすと、再び紫の方を向く。

「少しは落ち着きなさい」
「くっ、紫てめぇ!」

再び殴りかかろうとする魔理沙、しかしその拳が届く直前

「落ち着けと言っているのがわからないのかっ!!霧雨魔理沙!!」

怒声、聞いたこともないような紫の怒声が屋敷中に響き渡る。
そのあまりの迫力に、魔理沙は思わず尻餅を付いてしまった。
その頭上に紫のあやつるスキマが出現し、勢い良く水が飛び出してきて、魔理沙の頭をずぶ濡れにしてしまう。

「気持ちはわからないでもない。けれど少し頭を冷やしなさい。今の貴方が向かったところで霊夢に何ができるとも思えない」
「…………」

一刻も早く霊夢の許へ、という気持ちが溢れそうになっている。
本当なら今すぐにでもここを飛び出したい。
彼女のところに会いに行って、いつも通り気だるげな顔をしている霊夢を見つけて、全てが嘘だったと安心したい。
しかし、それはただの現実逃避にすぎないのだ。
そのことを、魔理沙は理解しかけていた。
紫の言っていることは正論だった。きっと混乱している今の自分では霊夢とまともに話すことすらできないだろう。今の霊夢を認めることができなくて、もしかしたら斬られておしまいかもしれない。

(ふぅ……思いっきり叫んで、倒されて、ついでに水をかけられて、おかげでようやく冷静な思考ができるようになってきたぜ……)

魔理沙は濡れてしまった帽子を取って、自慢の金髪を思いっきりかき上げた後、両手で勢い良く自分の顔を引っ叩いた。
今朝も神社で行った、気持ちが後ろ向きになった時のおまじない。
霊夢が何を考えているのかはわからない。
だから、まずは事実を受け入れる。
紫だって万能ではない。わからないことは全て直接霊夢に聞けばいい。話さなければ、力づくでも聞いてやろう。それが私らしいやり方なんじゃないだろうか。
魔理沙はようやく自分の目が覚めてきたのを感じた。

「……ちょっとおかしくなってたみたいだな。よし、もう大丈夫だ」
「落ち着いたかしら?」
「ああ。紫、話してくれ。お前の知っていることを全て」

魔理沙の瞳に確かな輝きが戻ったのを見て、紫はようやく微かに笑顔を見せたのだった。










少々荒事をしたため、気持ちを切り替えるために場所を移そうという紫の提案を受けて、ちゃぶ台がひとつだけ置いてあるという不思議な部屋で、魔理沙は紫と対面に位置する場所に座っていた。

「霊夢は今、各地に現れては妖怪を次々に斬りつけている、ということは理解したわね」
「ああ」
「では、魔理沙は今まで、霊夢が剣を握っているところを見たことがあるかしら?」

そう言われて、しばらく考えてみる。
霊夢が弾幕勝負で使うのは、主に御札、針、後は陰陽玉なんかも使っているか。
しかし、剣というのは霊夢にあまり似つかわしくない武器ではないだろうか。実際彼女が剣を握っているところも、そんなものを持っているという話も魔理沙は聞いたことがなかった。

「そう、あの子が剣を使っているところなんて誰も見たことがない。でもこの幻想郷のどこを確認しても、他に霊夢は存在していない。つまりあれは紛れもなく本物の霊夢だと考えられる」
「う~む……なるほどな。まぁ今さら甘い考えを持つのはやめておくぜ」

霊夢が本物である確証も、偽者である確証も決して存在しているわけではない。
しかし、この紫があれは本物の霊夢だと言うのだから、本物だと考えておいたほうがいいだろう。

「妖怪しか斬りつけていないところから、私はあれを『妖怪狩り』と名付けた。霊夢は本気よ、何故未だに殺された妖怪がいないのか不思議なくらいにね」

妖怪を斬る霊夢という姿が、どうにも想像できないでいたのだが、とにかくまだ妖怪を殺していないということだけが救いに思えた。

「よし、それはわかった。で、お前はどうするつもりなんだ?このままじゃ幻想郷の危機だろ」

魔理沙はずっと疑問に思っていたことを聞いた。
紫はなぜ何もしていないのか。
何故屋敷で自分のことを待っていて、今もこうして暢気に話しているのか。
おそらく藍も紫から現状を聞かされていたのだろう。だからあんな反応だったのだ。しかし藍は今も橙と遊んでいるだけで、何もしようとはしていない。
そして、紫は思いがけない言葉を口にした。

「私は今回の件について、何もするつもりはないわ」
「……なんだって?」
「霊夢の行動を私自ら止めたり、藍を使ったりするつもりもないと言っているの」

魔理沙はまた混乱しそうになったが、さきほどのことがあったので、今度は慌てず、自分の疑問を落ち着いて口にする。

「どうして何もしないんだ?幻想郷の管理をしているお前なら、すぐにでも対処すべきなんじゃないのか?」
「確かにその通り。しかし霊夢の、博麗の巫女が行うことに関してだけは、その限りではないの」

紫の理屈はこうだった。
博麗の巫女には、博麗の血を引くものだけが持つ特殊な力がある。魔理沙も霊夢の持つ異様なまでの勘の良さなどから、そのことはよく知っていた。そして、博麗の巫女はその力のひとつとして時折、神託を授かることがあるらしいのだ。幻想郷の神に仕えると言われる博麗の巫女、神託とはつまりその神からの命令を受けるということ。長い間、博麗の巫女を見守ってきた紫は、神託を授かる巫女が何度かいたのを覚えており、そういう巫女は今までの性格からは想像もつかないような人間に変わることもあったのだという。さらに、神託によって巫女が行うことは、幻想郷にとって利益になることばかりだった。だから今回の霊夢の行動も神託によるものではないのかと紫は考えているのだ。

「幻想郷の神が霊夢にそれを望むなら、私はそれに手を出すわけにはいかない。霊夢を止めることは
神が望んでいない、それこそ、幻想郷が崩壊してしまうのかもしれないのだから」

それが幻想郷の管理者、八雲紫の出した答えだった。

「……まぁ言いたいことはわかったが、お前個人としてはどうなんだ?」

魔理沙は思い切ってそんな疑問をぶつけた。

「幻想郷の管理者としてじゃなくて、八雲紫個人はどう思っているんだよ?」
「……どうと言うと?」

なかなか本心を見せようとしない紫の態度に、タオルで拭いたばかりの髪がぐしゃぐしゃになるのも無視して、がしがしと頭を掻いた。

「だから、お前はあんな霊夢を認めていいのか?神託だかなんだか知らないけど、あんなことになっている霊夢を止めたいと思わないのかよ?」
「思うも思わないも、霊夢がどうなるかは私が決められることではないわ」
「あぁもうまどろっこしい!」

声を荒げないよう気をつけていた魔理沙だったが、さすがに我慢ができなくなってきていた。

「本当は霊夢を止めたいんだろ?だから私を待っていたし、こうやって事情を説明しているんじゃないのか?自分では手を出さないけど、私が勝手に何かする分には構わない、とかそんなことを思っているんじゃないのかよ?」
「…………」

図星だった。紫は確かにそう考えていたのだ。管理者としては今回のことに手出しするわけにはいかない。しかし、紫個人は、霊夢の友人である彼女は、霊夢の凶行をどうにかして止めたいと考えていたのだ。だから機会を待っていた。霊夢の一番の友人である魔理沙が、異変に気がついて訪ねてくるのを。自分は魔理沙に聞かれたことを話すだけで、決して巫女の行動に手を出してはいないと。
紫の沈黙は、魔理沙の言葉を肯定しているに等しかった。

「面倒くさいやつだな、お前も」
「ほっときなさい……」

魔理沙は苦笑した。
大妖怪だの賢者だの、幻想郷の管理者だのと言われているが、結局こいつも自分と何も変わらない、
霊夢を心配する友人の一人ではないかと思った。

「よし、なら私が霊夢を止めてきてやる。事情を聞くのは、その後でもできるしな」
「貴方に霊夢が倒せるの?」
「おいおい、私が何回あいつと戦ったと思っているんだ?私じゃなきゃあいつは倒せないさ」

今度は紫が苦笑した。
魔理沙の勝率はあまり良くないはずだが、まぁ強がる余裕があるのはいいことだ。

「スキマを開くわ。行くなら急いだ方がいいわね。今は白玉桜の階段を駆け上がっているから、妖夢とぶつかるのも時間の問題よ」
「わかったから、さっさとスキマを開きやがれ」

部屋の中央に、突然スキマが浮かび上がってくる。
相変わらず気持ちの悪い能力だな、と魔理沙は密かに思った。

「妖夢と幽々子をお願いね」
「あと、霊夢も、だろ」

自分では手を出さないくせに全くわがままばかりだな、と少しだけあきれた。
そして一度大きく深呼吸をすると、勢い良くスキマへと飛び込んでいった。










魔理沙が転送されたのは、白玉桜の階段を登り終えた場所だった。目の前に聳えるものは白玉桜、冥界唯一の建造物である。
魔理沙は白玉桜を目指そうとして、しかし紫の言葉を思い出して、階段の方を目指すことにした。
本来冥界を訪ねるときに登る必要のある、冥界の門から白玉桜まで続く階段。何段あるのか魔理沙は知らなかったが、その長さは果てしなく、少なくとも階段の上から見下ろしたとしても、その終わりが見えることはなかった。
階段を下った遥か先に、二つの動く人影のようなものを見つけることができた。
おそらく、霊夢と妖夢に違いないと考え、魔理沙は階段に沿うように飛行を開始した。

「妖夢ー!!」

だいぶ近づいたところで、魔理沙は自分より上を飛んでいるその姿に声をかけた。
妖夢はちらりと魔理沙の方を一瞥し、すぐさま視線を戻して剣を構えた。
魂魄妖夢。二本の剣を両手に構え、冥界を守る、白玉桜のお庭番。
その妖夢の視線の先、剣を構える相手、そこに魔理沙が探していた存在がいた。

「っ、霊夢!霊夢だよなっ!?」

魔理沙は考えるよりも先に叫んでいた。
今朝からずっと魔理沙の心を支配していた存在が目の前にいるのだから、それも仕方がないだろう。
巫女服を身にまとい、後ろで結んだ黒い髪、見間違えるはずもない。
あれは間違いなく魔理沙の知っている博麗霊夢である。
しかし、その霊夢には違和感があった。
まず、片手に持っている剣のようなものが気になった。あれが紫の言っていたものだろう。
多くの妖怪を斬りつけ、殺そうとしてきた剣。血のようなものが滴っていることからもそれは容易に想像することができた。
そして、やはり紫の言っていることは真実だったのか、と魔理沙に強烈な現実を突きつける物でもあった。
そしてもうひとつの違和感、それは霊夢の表情にあった。
何かを睨みつけるような瞳、それはおそらく妖夢に向けられているものだろう。
その瞳の奥に溢れんばかりの憎悪が湛えられている。
魔理沙は背筋に寒気が走るのを感じた。
自分の知る霊夢はあんな目をしていない。どんなに怒ったときでも、その瞳は憎悪なんてものとは全く無縁の、純粋さが宿っているはずなのだ。
その霊夢が今、あんな瞳をしている。誰かに向けてしまっている。それはあまりに衝撃的で、もしも魔理沙が紫に恫喝されぬまま、勢いだけでここに来ていたら、きっと一瞬で冷静さを失っていただろう。

「魔理沙さん、下がっていてください。剣の勝負で、負けるわけにはいきません!!」

妖夢は魔理沙にそれだけ告げると、霊夢に向かって突っ込んでいった。

「待て妖夢!そいつは……」

魔理沙が声をかけようとしたときにはもう、彼女達は斬り合いをはじめていた。
妖夢の振るう剣が、連続して次々と霊夢に襲い掛かり、霊夢の剣がそれを受け止めて、甲高い金属音がいくつも上がる。
魔理沙は霊夢が剣を振るう姿を見たことがなかったが、素人目から見ても霊夢の剣は明らかに妖夢のそれに劣っていた。
妖夢の二つの剣に対処するので精一杯という感じが見て取れる。

「はぁっ!!」

そしてその予想は当たっているようで、妖夢の剣は何度も霊夢の服を切り裂いた。
そのどれもが、わずかに肌には届いていないようだが、妖夢がそれに動揺した様子もなく、金属音の連鎖は、妖夢の優勢を伝えていた。
これは案外楽に倒してしまうかもしれない、と魔理沙がわずかに安堵した時だった。

「ぐおおおおおおおおおおおおお!!!」
「っ!?」

突然、霊夢がまるで猛獣のような雄叫びを上げた。
それは気合を入れているようにも、妖夢を怯ませているようにも見えたが、一方で魔理沙にはそれが何かの悲鳴のようにも聞こえていた。

「があああああああああ!!!」

そこからの霊夢は、まるで狂ったかのように剣を振るい始めていた。
片手で握っていた剣を両手で握り直し、妖夢に向かって鬼人の如き勢いで、何度も何度も斬りかかっていく。
最初は押していたはずの妖夢であったが、霊夢のあまりの勢いに押し返され始めていた。
妖夢は密かに怯えていたのだった。
ここにくるまでに、霊夢がおかしくなっているという話を聞いていて、心の準備をする時間もあった魔理沙とは違う。
妖夢にとっては、あまりに唐突な出来事。
それに魔理沙ほどではないといえ、妖夢だって霊夢との付き合いはかなり長いのだ。
突如として現れた、普段からは想像もつかないほどの恐ろしい空気を纏った霊夢に恐怖しないわけがなかった。

「こんな……激しすぎるっ!」

それでも妖夢は剣術の使い手である。剣士として、心を乱して闘うことがどれだけ危険かは分かっているつもりだった。だからこそ、目の前の敵に集中し、霊夢の繰り出す剣を、片方の剣で受けつつ、どうにかもう一方の剣で斬りつけようとしていた。
しかし、霊夢の剣の勢いがあまりに強く、とても片手の剣だけで裁くことができないのだ。
最初に斬りあった時とは明らかに違う、まるで防御を度外視しているかのような剣戟、だからこそ妖夢は手を出し切れずにいた。まともな剣術勝負なら自分に分があるはず、しかしこうも型を無視した攻撃を繰り出されては、それも敵わない。
あたりに響き渡る剣と剣がぶつかり合うその音も、徐々に大きくなっていく。

「くっ、ならばっ!」

一向に勢いの衰えない霊夢の攻撃に、妖夢は一度距離を取ることを選んだ。
両の剣で霊夢の剣を勢い良く弾くと、そのまま後ろ向きに飛翔する。
妖夢は当然霊夢も追いかけてくると踏んでいたが、意外にも剣を振るのをやめて、その場から動こうとしなかった。
その奇妙な行動に違和感を覚えつつも、妖夢は躊躇わずに自らの剣技を繰り出すことにした。
かなりの距離を取り、そこから剣を構える。
本来そんなところから、斬撃が届くわけがない。
しかし、そこは確かに魂魄妖夢の間合いであった。

「はああああああああああああ!!!現・世・斬!!」

次の瞬間、目にも留まらぬ速さで霊夢に切りかかっていく妖夢。
その時、戦況を眺めていた魔理沙の目には、霊夢がわずかに驚いたかのように顔を歪めたのが見えた。もしかしたらいけるか、とも思った。
しかし、さらに次の瞬間、魔理沙はかつてないほど恐ろしいものを見てしまう。
霊夢の口角がにわかに吊り上がった。
見るものを震え上がらせるようなその笑み。
そう、笑ったのだ。
瞳には憎悪を湛えたまま、霊夢は笑っているのだ。
魔理沙は直感した、妖夢が危ない、と。

「ダメだ妖夢!そいつに近寄るな!!」
「うおおおおおおおおおおお!!!」

魔理沙のその叫びは、妖夢を止めるにはわずかに遅すぎた。雄叫びを上げて斬りかかる妖夢は既に霊夢のことしか見えていない。
そして、それは起こった。
突如、霊夢の持つ剣が輝き始めた。
銀色の剣の刀身が、まるで太陽のような輝きを見せる。
その輝きは一瞬で大きくなり、魔理沙や妖夢を包みこむように、辺り一面に白い輝きが放たれていった。あまりの光量に、視界は完全に奪われ、魔理沙はたまらず目を閉じてしまった。

「……くっ、一体何が……」

魔理沙は輝きが徐々におさまっていくのを感じて、ようやく目を開けることができた。
そしてすぐに霊夢の方を確認した。
しかし、そこにはまるで何事もなかったかのように佇む霊夢の姿だけがあった。剣も別に変わったところはない。
そこで、魔理沙は妖夢の姿を探した。斬りかかっていったはずの彼女の姿がどこにも見当たらなかったからだ。しかし、それはすぐに発見できた。
階段にうつ伏せで倒れる、傷だらけのその姿を。

「妖夢!しっかりしろ、妖夢!」
「……うぅ……あぁ……」

魔理沙はすぐに妖夢の側に駆け寄って、彼女を抱き起こした。
その体に斬られたような傷は見つからない。しかし、まるで陽に焼けたかのように全身が赤くなっていて、肌の見えている部分には無数の小さな傷が浮かび上がっていた。そして、苦しそうな呼吸と時折聞こえる呻き声が、妖夢の受けたダメージの大きさを物語っていた。
魔理沙はその腕に妖夢を抱きながら、上空の霊夢の姿を見た。
その顔に、さきほど魔理沙が見たときと同じ、憎悪に満ちた瞳と、そしてあの恐ろしい笑みを浮かべていたのだ。

「……待ってろよ妖夢、すぐにあいつを倒してお前を永琳のところに連れて行ってやる」

妖夢の体をそっと下ろすと、魔理沙は立ち上がり、キッと霊夢をにらみつけた。
もう迷っている場合じゃない。霊夢を倒して、こんなことをやめさせる。そしてなんとしてでも正気に戻してみせる。
その時、魔理沙の目に炎が宿った。
飛行を開始して、一気に加速し上空へと飛び上がりなら、霊夢に向かって星の弾幕を放っていく。
霊夢の方もそれに気がついたらしく、弾幕に向けて剣を振るうが、圧倒的な数を見てか、すぐさまその場を離れて、飛行を開始した。
その姿に魔理沙は違和感を覚えた。

(あいつ、なんで弾幕を使わないんだ?)

弾幕は弾幕で打ち落とす。落としきれなかった弾幕を避けたり、道具を使って弾いたりする。それが弾幕に対する対応の基本で、弾幕勝負であろうとなかろうと、そうするのが当たり前だ。
しかし、今の霊夢は剣を振るうこと以外を忘れてしまっているかのようだ。
魔理沙はそれを疑問に思いつつ、霊夢に向かって弾幕を放ち続けた。
霊夢が階段を登る方向に飛び続けるため、魔理沙もそちらに飛んでいるのだが、このままだと白玉桜にいる幽々子が危険になるかもしれない。
魔理沙は舌打ちすると、逡巡の後、弾幕戦用の魔法を使うことにした。

「イベントホライズン!!」

少し先を飛んでいた霊夢の周囲に、大量の星の弾幕が展開される。
対象者を中心とした大規模な弾幕の展開。
単純に物量で押すということ以外にも、相手の動きを封じ込めるという効果もある。
それでも、相手は霊夢だ。弾幕の隙間をうまく抜けてしまうだろうから、時間稼ぎにしかならない。
魔理沙はそう思っていた。
その予想に反するかのように、霊夢は弾幕の対処に戸惑っているようだった。それどころか、何度も被弾してその度に悲鳴のようなものを上げる。

(おいおい、こいつはどうなってるんだ?)

意外な展開に、魔理沙は飛行をやめて状況を見守っていた。
霊夢は何度も剣を振るって弾幕を弾こうとするのだが、その程度で避けきれる量ではないのだ。おまけに動きもどこか鈍い。妖夢と闘っていた時も、いつもの霊夢より鈍かったが、それは剣を持っているからだろうと考えていた。
しかし今の霊夢は、それだけでは説明がつかないくらい動きが悪かった。
魔理沙はこのまま弾幕を展開しているだけで、勝負がつくかもしれないと思った。
けれど、妖夢の例もあるので、気を緩めたりはしない。

「ぐぅぅぅぅ……があああああああああああ!!!」

霊夢は低く呻いたかと思うと、再びあの獣のような雄叫びを上げた。
そして魔理沙に対して、黒く濁った瞳を向け、何度も被弾するのを無視しながらこちらに向かって剣を突き出しながら突っ込んでくる。
それはまさに獣の突進のようにも思えた。
猛獣が、その怒りを剥き出しにしたかのように飛翔し、こちらを狙ってくる。きっと、誰もがその姿に怯えただろう。体から滲み出るような憎悪を感じて、戦意を喪失してしまうかもしれない。
魔理沙も一歩間違えればそんなことになっていたかもしれない。
けれど、今の魔理沙に怯えの色は一切なく、むしろどこか冷めた目で、自分に迫る霊夢の姿を見つめていた。

「……お前は、霊夢じゃないんだな……」

魔理沙は八卦炉をポケットから取り出すと、それを霊夢に向けた。
ここに至って、魔理沙はようやく確信することが出来た。
今まで見てきた自分の知る霊夢とは全く違う霊夢の姿、そのどれもこれもが疑念を抱くものばかりだったが、判断することはできなかった。
でも、これだけは分かる。
自分の知っている霊夢なら、いや、自分を知っている霊夢なら、こちらに向かって直線的に突っ込んでくることなどありえないはずなのだ。
だって、それは自分が最も得意とする魔法の射程に入ってしまうのだから。
別に、本物の霊夢だろうと手加減するつもりは全くなかった。
でも、偽者だとわかったならその憂いがなくなった分だけ、もっと力を出すことができる。

「ぶっ飛びやがれ!!この偽者野郎がっ!!」

八卦炉に自分の魔力を集め、そして叫び声と共にそれを解き放った。

「いっけえええええ!!マスタァーーースパァァーーーク!!!」

八卦炉から放たれた巨大な光の奔流が、勢い良く直線上に伸びていき、魔理沙の視界を埋め尽くしていく。
剣を突き出しながら魔理沙に迫っていた霊夢は、一瞬でその光の奔流に飲み込まれていく。
魔理沙は、その光の中を突き進んでくる霊夢の姿を見た。
服もぼろぼろになり、体中に傷を負いながら、それでも進んでくる。
霊夢の体を傷つけているような罪悪感を振り払い、八卦炉の出力を限界まで上げて、体中の魔力を噴出させる。
それでも、霊夢は止まらなかった。
いや、もうそこに霊夢の姿はないのだ。
あるのはただ、光を切り裂いて進んでくる剣だけ。
魔理沙は歯を食いしばりながら、とうとう自分の体に迫り、今にも自分の心臓を貫かんとする剣を眺めていた。
そして剣が魔理沙の体に触れたその瞬間。
魔理沙の服の中で、かぁっと何かが熱く光ったかと思うと、剣は胸を貫くことなく急激にその勢いを失って、やがてゆっくりと地上に落下していった。

(……終わった……のか?)

魔理沙は魔力を放つのを止め、八卦炉から出る光も徐々に消えていった。
何が起こったのかわからなかったため、一瞬茫然自失としかけていたが、すぐに落下していった剣を追いかけようとして――
しかし一度に膨大な魔力を放った彼女の体は不意に力を失ってしまい、魔理沙の意識もそこで途切れてしまった。
色々考えて分割させていただきました。
勾玉の章に続きます。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ビーン
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