蛍の妖怪は山の一点を見つめて呆けていた。 ただ呆けている訳ではなく、 たまたま見かけてそのまま興味を持ってしまった。 それはとてつもなく大きく、周囲を取り込んでいるのか、 発見した時よりも更に大きくなっている気がする。 どこまで大きくなるのか見てみたい気もするが、 それがなんなのかも気になり始めていた。 それが見えるのは妖怪の山、以前に比べると大分入りやすくなったが、 それでもまだ縄張り意識の高い天狗や河童が多数存在する土地。 「でもちょっと位なら大丈夫だよね」 彼女はとても平和で楽観的な答えを導き出した。 そしてその大きいのが何なのかを調べるため、 唐突にわき上がった好奇心を胸に秘め蛍の妖怪は妖怪の山を目指す。