もう結婚しちゃえばいいと思うよ 式の当日、控え室 1、 ――準備できた? 美鈴「いやあ、あはは。なんか流石にここまで来ると緊張を通り越して気が抜けてきちゃいますね」 ――緊張なんてしたことあるの? 美鈴「失礼な! それに何と言うかまさか自分が結婚するなんて思いもよらなかったですよ。    ほら、私って仕事優先のバリバリのキャリアウーマンじゃないですか。だから結婚なんて    夢のまた夢だと思ってましたし」 ――またまた冗談を 美鈴「これまた失礼な! まぁいいですけどね。ねぇ○○さん、私キレイですか?」 ――うん。すごいキレイだよ 美鈴「ふふふ…やっぱり照れますねぇ。さ、そろそろ行きましょう!みなさん待ってるでしょうし!」 式は終始笑顔に溢れ、和やかに進んで行った。まさに美鈴の人柄をあらわすかのようだった。 一つ腑に落ちないのはいつの間にか高砂は紅魔館組に占領され、俺は床で酒を飲んでいたことだ。 どうにも今後の夫婦生活が危惧される。 2、 アリス「……はぁ」 ――どうしたの溜息なんてついて? アリス「やっぱり料理は自分で作るべきだったかしら。それに引き出物だってハンカチみたいな簡単     なものじゃなくて、もっと手がかかった物にすればよかったかなあ」 ――いやいやアリス。料理の内容もレシピも準備したのはアリスだし、ハンカチだって手縫いじゃないか。   十分だよ アリス「もう…あなたはそんなんだからダメなのよ。お客様には少しでも良いものを提供するのがホスト     の務めじゃない。そういえば、あなたにお願いしてた余興の件、どうなったの?」 ――あ、ああ! えっと…お燐とおくうがドツキ漫才をしてくれるみたいだよ アリス「ちょっと!正気!?あの二人にまかせたら結婚式が大弾幕大会になっちゃうでしょ! 誰かがケガ     でもしたらどうする気!」 ――い、いや、真面目にやってくれるって言ってたけど… アリス「まったくあなたはどんくさくて、思慮が浅くて、計画性がなくて……悪い人じゃないんだけどね。     優しいし、そういうところは好き…って違う! もっとしっかりしt」 うるさかったのでキスして黙らせてみた。ぶん殴られた。 式はというと予想通り弾幕大会に流れ込んで行った。当のアリスは、余程緊張していたのか、早々と 出来上がり、次々に披露されるスペカを見て喜々としていた。なんだかんだ言って楽しんでいるようだ。 あ、俺はメガフレアで3回ピチュりました。 3、 ――あ、あの慧音さん? 慧音「うぐっぐすっ ううーん?ああ、○○かぁ。うおおおーん!」 ――どうして号泣していらっしゃるのでしょうか…? 慧音「うううっそれはなぁ、これから自分が結婚するのかと思うと…嬉しさやら感動やら不安やらで    気持ちがえらいことになってしまってなぁ、なぜか涙がとまらない…おろろろーーん!」 ――ほら大丈夫ですよ、俺がついていますから。俺もこんなんだけど内心はドキドキですから一緒です。   だから先生一人じゃないです。安心してください。 慧音「ん? そうか、ありがとうな…少し、落ち着いてきた」 ――よかった 今日は里の人たちも来てくれるみたいですし、きっと寺子屋の生徒さんも来ますよ   みんなの憧れのお嫁さんになれるようにしましょう 慧音「うむ。今の我々があるのも皆に色々と良くしてくれたおかげだ。よし最高の式にしような!」 結局先生は最初から最後まで、子どもたちの贈り物やら里の人たちのスピーチやらで泣きっぱなしだった。 皆、まるで自分の家族のように喜んでくれている。妹紅さんに「慧音を悲しませたら焼くからな!」と 言われた。たぶん本気だ。俺は皆のためにも慧音のためにも幸せな家庭を築くと強く誓った。 さっき知ったのだが今夜は満月らしい。 褌 締 め て か か ら ん と な ! 4、 にとり「やっぱりさ、私はドレスなんて柄じゃないわけよ」 ――うん にとり「私にはこんな華やかな場所じゃなくて、油と汗の入り混じった空気が万延する工房が似合ってる」 ――そうだね にとり「ふっ…私みたいな機械オタクは結婚みたいなだいそれたこと、しちゃいけないのさ…」 ――でも、そんな幸せ満ち溢れた二ヤケ顔で言っても全然説得力ないよね にとり「あれー!! やっぱわかっちゃうか〜えへへ。 わるかるよね、私の旦那様だもんね! うひ、     旦那様だってさ! ぎゃー! やばい死ぬかも」 ――もう時間だから行くよ にとり「えーもっと幸せを満喫しようよ。そだ、ちゅーしようよ。ちゅー。ああー仕込みもしておかないと」 ――仕込み? あーほら、ちゅーはあとでするから にとり「もーおまえケチだな! ……にへへ、写真たくさん撮ってもらおうね」 ドレスからはマジックハンドやらミサイルが飛び出し、俺のタキシードはウエディングケーキと変形合体し た後自爆し果てた。なんだあれ。式はさながら『にとりの新発明披露宴』と化していたが出席者も新婦も楽 しそうだった。改めてトンでもない相手を嫁にしたと実感したが、そういうとこが好きなんですよ。幸せに してくださいね。それと服を早く返してください。 5、 ――……儀…ん 勇儀「…………」 ――勇…さん 勇儀「…………」 ――勇儀さんてば!! 勇儀「うお! なんだ○○か。すまんぼーっとしてたよ」 ――そろそろ時間だけど、大丈夫? 具合悪い? 勇儀「元気元気!! いやな、まだ自分が結婚するなんて信じられないところがあってな。    これは夢なんじゃないかと時々思ってしまうんだよ」 ――心配しなくても現実だから 勇儀「どれどれ  それ、むにーっと」 ――痛い! ほっぺたつねるんなら自分のにして! 勇儀「ははは! どうやら夢じゃなさそうだ! ほれほれ泣くな泣くなー。 しかしねぇ自分で言うのも    アレだがこの天下の星熊勇儀が人妻たあねぇ…まったくたいしたもんだよアンタはさ!」 ――……そんなにすごいことじゃないよ、たぶん。勇儀さんも女の子なんだし、お嫁さんになるのは普通のこ   とだと思うよ。あともう『星熊』じゃないから。その…僕の女(モノ)なんだから 勇儀「っっっっ!! な、なんだ!いつから人間はそんな臭いことが言えるようになったんだい!?    あーあーなんか熱い! 飲みすぎたみたいだ!」 ――鬼が嘘ついていいの? 勇儀「本当にに酔ってるからいいの!! ほ、ほら時間なんだろ! さっさと行くよ!    披露宴だろうが宴には変わりはしないんだ! 飲むよ!!」 その宴はいつもと変わらない。飲んで騒いでそれだけ。堅苦しい挨拶も、儀礼もない。 ただひたすらに楽しい。変わらないいつもの幻想郷の宴会。 だけど一つだけ違うのは、勇儀さんが宴会の間、僕の手を握って離さなかった。 それだけだった。