東方学園3ボス部 ここは小学校から大学院まで備えた総合学園である東方学園。 その中のサークル棟にある元歴史研究会の部室。 そここそが、この物語の中心となる現『世界を大いに盛り上げるための3ボスの団』の活動拠点である。 放課後、そのさして広くない室内で、4人の少女が思い思いの時間を過ごしている。 人形の手入れをしているアリス。 部費の使い方の計算に忙しい慧音。 酒を飲む勇儀とそれに付き合ってお茶を飲んでいる美鈴。 「そういえば、にとり遅いな。中等部は何かイベントでもあるのか?」 慧音が心配そうにつぶやくが、誰も答えないし答えられない。 「あ、私見てきましょうか?」 「そこまでする必要はないだろうよ。あの河童もそのうちくるだろ」 噂をすればなんとやら、にとりが部室へと駆け込んできた。 騒々しさだけならこの部でナンバーワンである。 「いやー、遅れちった遅れちった。 ちょっと授業中に寝てたからって小一時間も説教されるなんてひどい話だよ。 って、ああああああああああ!!!!!」  一人で勝手に盛り上がって、一人で急に叫ぶにとり。 勝手に盛り上がるのはいつものこととしても、その叫びには何事かと他のメンバーの視線が集まる。 「私の、私の作ってたセミスクラッチの傑作品、新世紀キモケーネリオンが、こんなにボロボロに……!!」  そういってにとりは中央の机にその残骸を持ってくる。 確かに、高いところから落としたような無惨な姿だ。  だが、そんなにとりに対して、他の面々の態度は冷ややかだった。 「まあ、慧音が嫌がってるのにこんなの作ってたから罰が当たったのよ」 「そうですよ、この前も私をモチーフにした大中国みりんとか作られて、結構傷付いていたんですからね」 「でも、いくら腹立ったからって壊すのは大人げないよな」 「いや、まて、確かにかなり不愉快だったのは事実だが、私は壊してなんかいないぞ。濡れ衣だ」 「じゃあ誰が壊したんだよー。苦労したのに……」  しょげ込むにとりと苛立つ慧音。そして反応に困る他の3人。 「確かに、今日私がここに最初に来たけれど、慧音は特に怪しい行動はしてなかったわね。 というか、私も慧音も壊れていることにも気が付かなかったし……」  冷静に、アリスが状況を整理していく。 「じゃあ、昨日のうちに誰かが壊したということか?」 「ふむ、その線が怪しいわね。昨日最後に帰ったのは誰?」 「あー、私らだな。昨日は結構遅くまでここで呑んでたから」 「私が頼んだんですよ。私の尊敬する人が紅茶にブランデーを入れて飲むのを好きだったから、 真似してみようと思って、勇儀さんに頼んでたんです」 「それで私が甘粕の爺さんのところから仕入れてきたってわけ」 「その時、このフィギュアは確認したりした?」 「したんだよそれが。美鈴のヤツが酔っぱらってふらふらしてたから、棚には結構注意してたんだ。 その時は、このキモ人形もお前さんの人形と一緒に普通に置いてあったぞ」 「じゃあ昨日は無事で今日になったら壊れてたって事?まったく、謎は深まるばかりね」  一同沈黙する。疑心暗鬼と被害者への同情、そしてちょっとした苛立ちが入り交じった重い空気。 「いいよもう、私が変な物作ったから壊れちったんだよ。ゴメンよ」  沈黙を破ったのは当事者であるにとり。  だがその言葉もアリスの耳にはまったく届いていない。もう彼女には事件解決しか見えていないのだ。 「いいえ、到底納得できないわ。なぜこんな事になったのか、真相を知らないと。 ずっと疑心暗鬼を抱えたままなんて嫌よ」  強い口調でそう断言するアリスだったが、解決の術があるわけではない。 事件は袋小路に入り込んでしまったようである。  その時、勢いよくノックでドアが叩かれ、そして開かれた。 そのノックやドアの開かれたの勢いと衝撃に、飾ってあったアリスの人形がいくつか棚から落ちる。 「今日こそは、今日こそは私も『世界を大いに盛り上げるための3ボスの団』に入部させて貰うわ!」  開かれた入り口に立っているのは一人の少女。 白い帽子に赤と白のドレス、そしてなにより大きな鎌の目につく金色の巻髪の少女だ。 少女の名はエリー。このSO3団に入会希望という変わり者の少女である。 もっとも、彼女は旧作学園の生徒なので、どうあっても入部は出来ないのだが、 そんなことを気にせずに、放課後になるとほぼ毎日わざわざこの部室へとやってくるのであった。 「昨日は夜に明かりがついていたからせっかく来たのに、部屋につくともう真っ暗なんんだもの。 ずっとノックしてたら中で何かが落ちる音がするし……」  その言葉に、他の面々の表情が固まった。 「「「「「犯人は、お前か!!!」」」」」  一斉に叫ぶ五人と、事態を飲み込めずきょとんとしているエリー。 「お前が激しくノックしすぎるから、キモケーネリオンが落ちちゃったんだよ!」 「しかたないじゃない(泣)しかたないじゃない(泣)」  にとりにぼこぼこ叩かれながら、エリーは今日も入部できないまま走って逃げていく。 「でも、どうして下に落ちたはずの人形が、朝には棚に戻っていたんだ?」 「それは簡単な話ね。留守中に何があってもいいように、ここの人形には自動回収の魔力を込めてあるの。 普通は私が魔力を込めた人形にしか反応しないはずなんだけど、 きっとキモ人形に込められたにとりの思い入れが魔力になって、彼女たちに仲間と思わせてたのね。 だから一緒に回収されたんだわ」  うんうんと一人満足してうなずくアリス。 (でもそれって、呪いの人形って事なんじゃあ……)  慧音、美鈴、勇儀の3人はそう思ったものの、深くは考えないことにした。 『世界を大いに盛り上げるための3ボスの団』は、今日も平和である。 基本設定 慧音  大学三回生 勇儀  大学二回生(留年のため。年齢は慧音と一緒) 美鈴  大学一回生 アリス 高校二年生 にとり 中学三年生 エリー 高校一年生 『世界を大いに盛り上げるための3ボスの団』について 略してSO3団ももしくはSOS(ry 名称については深く考えてはいけない(苦笑) にとりが外の世界の書物からパクって来たらしい。 活動内容は典型的ダメ文化部らしくダラダラすること。 表向きは一応歴史研究会のままである。 このバラバラな五人が集まった理由はほぼ偶然のような物。 ただ、個々の人間関係はアリスを中心にそれなりにあったらしい。 慧音⇔美鈴(フランつながり。フランの家庭教師と世話係のバイト) アリス⇔慧音(知人) アリス⇔にとり(魔理沙つながりの知人) アリス⇔勇儀(知人) にとり⇔勇儀(子供の頃の近所付き合い。にとりは頭が上がらない) エリーは幽香に誘われてきた東方学園文化祭でこの部の存在を知り、それ以来入部を希望している。