俺(盲目)×幽香 「なにをしているのかしら?」 綺麗で凛とした声が頭の中に響いた 歩いてきた距離から考えると ここは妖怪の住む花畑なのだろう だとするとこの声の主も妖怪かもしれない 「少し・・・散歩をしていて疲れたもので・・・」 「そう、でもここは人間が来るところじゃないわ  私の機嫌がいいうちに早く帰りなさい」 帰りなさい その一言が自分の胸に突き刺さった 帰る場所なんてないのに 「そうですね、僕も帰るところがあれば帰りたいです」 「どういうことかしら?人間には家があるのでしょう  家族というものがいる家が」 あった 家族はいた けれど帰る場所はもうない 「それにさっきからどこを見ているのかしら」 「何も見ていませんよ」 「貴方もしかして   目 が 見 え な い の ?                      」 一瞬見えない視界がぐるりと回った気がした 家族から邪魔だと疎まれ 両親が別れ どちらにも引き取られず 身内すらもいない そんな自分の姿がぐるりと回った 「そうですね・・・見えないんです、見たいけれど見えないんです」 妖怪の住む場所まで来たのも 無意識に死ねる場所まで体が動いたのかもしれない 「そう・・・じゃあこの花達も見えないのね」 「すみません・・・」 「でも感じるでしょう?  香りを、生命の息吹を」 全身に燻っていた靄が 少しずつ晴れていくのを感じた 同時にゆっくりと感じていた おそらくあたり一面を咲き乱れているだろう花達を 「僕にも見えた気がします。  花が、命が  ありがとうございます妖怪さん」 「見えたのね、そう、それはよかったわ  後妖怪さんは失礼ね。私の名前は        風見幽香  風を見、幽暗に香る花の妖怪よ」 「幽香さん・・・ですか、ありがとうございました」 「それでいいのよ」 最初の凛とした声とは違う 柔らかな声だった 微笑んでいる姿が見えた気がした 「あら?どこへ行くのかしら?」 「どこへですか?どこかに・・・ですかね」 「要するに行くあてが無いと言う訳ね  そう、なら暇つぶしに私と付き合ってくれないかしら  貴方という花が咲き乱れ朽ちるのを見ていたいわ」 ほぅら黒歴史のできあがりだ!