東方中島夢 〜Where is Isono〜 夏の昼下がり、博麗神社。 霊夢は境内に打ち水をして、少しばかりの涼を楽しんでいた。 「ふ〜、あっついわねぇ、こんなときに異変なんて起こったらたまったもんじゃないわ」 「ご機嫌如何かしら」 ふと声がしたので鳥居の方へ目をやると、誰もいない。 キョロキョロと辺りを見回しても、誰もいない。 「空耳かしら…?でも今の声は…」 「ここよ、ここ。」 「うわっ!?う…上!?」 紫だ。 「そういうサプライズな登場はやめてくれない?心臓に悪いわ…」 「あら、いつものことじゃない。」 「で、何の用?」 「冷たいわね、世間話でもしない?」 「あんたそういうキャラじゃないでしょ…」 「ふふ…実は結構重大事件なのよ。」 「だろうと思った。紫が世間話するためにここに来るわけないもの。暑いから勘弁してほしいわ…」 「単刀直入に言うわ。実は博麗大結界の力が少し弱まってるみたいなのよ。」 「え…?ってことは…」 「そう、外の世界の人や物が入りやすくなっている。」 「うーん、面白いものが入ってくればいいんだけどね・・・」 「そう悠長なことも言ってられないのよ、実は…」 「実は?」 「もう既に外の世界から幻想郷に入り込んでしまった少年がいる。」 「え?」 「あなたはその少年を探して保護して頂戴。私は結界を直すために調べ物をするわ。」 「ちょ・・・ちょっと紫、探すったって…」 「私の計算によれば落ちた場所は永遠亭の方よ、あそこで迷われたらちょっと厄介だわ。急いで。」 「え…ちょ…」 「じゃあ頼んだわよ。」 「…行っちゃった…スキマって便利よねぇ・・・」 「それにしても…外の世界から迷子…か…面倒なことになったわね…仕方ない…永遠亭ね…」 念のため札を取りに神社内に戻り、一通り準備を済ませた霊夢は暑さに茹だりながら永遠亭へと飛び立った。 一方、永遠亭近く、竹林。 「おーい!磯野ー!一体どこに行ったんだー?」 「おーい!花沢さーん!カオリちゃーん!」 「ダメだ…そもそもここはどこなんだろう…」 …ガサッ 「…!?誰かいるの?」 …ガサガサッ 「おーい!磯野ー!花沢さーん!どこ行ったんだよ!助けてよ!」 「ばぁっ!」 「うわあああああ!」 「へへっ、びっくりした?」 「う…うさぎ!?…じゃない…耳は兎だけど・・・」 「きみ、誰?」 「僕は中島…」 「中島…?ふーん」 「ここはどこなの?」 「どこって…竹林よ?」 「見ればわかるよ!」 「あなたはなんでここにいるの?」 「わからないんだ、友達とハイキングしてたら、足を滑らせて、気がついたらここにいて…」 「そうなんだ、なんかフクザツね」 「早く帰りたいよ…」 「とりあえずえーりんのところに行きましょうか。」 「え…えーりん?」 「なんでも知ってるすごーい人。」 「ううん…ここに居てもしょうがないか…連れて行ってよ。」 「私疲れたからおぶってよ、道案内はするわ。」 「ええ…おぶるって…」 「嫌ならいいよー、一人で帰るもん」 「わかったよ…しぶしぶ…」 「快適ー」 ―永遠亭 「あらてゐ、お帰りなさい。」 「えーりんあのねー、竹林にこんなのが落ちてたのー」 「こんなのって…何よ?」 「ほら、中島。」 「中島?…って男の子じゃない。里から迷い込んじゃったのかしら?」 「さ…里…?」 「あら、里の子じゃないのね、じゃあどこから来たの?」 「え…えーっと…東京…」 「東京…?もしかして外の世界かしら…ふむ…外の世界のことなら霖之助さんが詳しいわね。ウドンゲ。」 「はい、師匠。」 「香霖堂へ行って霖之助さんを呼んできて頂戴。あと霊夢か紫を見つけたらついでに呼んできて。」 「わかりました。」 「とりあえず…中島君だったかしら?」 「はい。」 「中に入りなさい、お茶でも出しましょう。とりあえず今の時点で帰る方法は思いつかないわ。」 「そうですか…わかりました…」 (…人が結界を抜けてくるなんて珍しいわね…もうあの2人なら動いてるかも…。) 「じゃあ師匠、行ってきますね。」 「お願いね。」 鈴仙が香霖堂へ向かっている途中、向こうから飛んでくる赤い影が見えた。 「霊夢?」 「うどんげじゃない、どこ行くのよ?」 「香霖堂よ、あ、そうだ。後で永遠亭に来てくれない?」 「今から永遠亭に行くのよ、暑いから乗り気じゃないんだけどねー」 「じゃあもう話は伝わってるってこと?」 「きっとその話ね。少年は永遠亭に居るの?」 「ええ、さっきてゐが拾ってきたわ」 「了解。紫もさっさと自分で保護してスキマから送り返せばいいのに…」 「じゃ、後でね」 「へーい」