※1  この文章は、SS批評スレ内で、拙作「レプリカの時間」に対して頂いた批評感想に向けての返信となります。  議論色が濃くなった雰囲気があったので、補足として著者の意図した箇所にまで一応触れ、またやや量が多いため、スレッドへ書き込みして良いか迷った部分をこちらに載せることとしました。 ※2  小説文において『意図したもの』と『伝わったもの』は別物と思います。  また『読み手の方』と『批評者の方』も同一とは言えない気がします。  以下の文では批評者の方を対象とし、読者の方にとっては意味がないであろう箇所まで説明してあります。  参照は任意にお願いいたします。  空白をあけておきます。  まずは、あれほど長く、かつ判りづらいと思われる言い回しの文章を熟読してくださったことに謝辞を述べさせてください。  そのことだけでも本当に、書いた甲斐があったと思います。  では一応、意図したこと含め書いていきます。  とはいえ、批評者の方であっても、本文の読後感が真実だと思うのはさっきも言った通りで。  判読の材料程度にとどめていただければ幸いです。  正直、読後感を損う内容ばかりな気がします。  二度目ですが、議論的、という認識のもとに書いています。  執筆時間は30日程度、僕自身は3〜4年程度文章を書いていることをどうでもいい感じに明記しておきます。 ●咲夜とレミリアの能力について  僕は数学や哲学が専攻という訳ではありません。  以下のことは全て斜め読みが基準となります。  ともあれ、時間操作能力をあの命題に例えたのは、  解釈の一つにパースペクティブ(遠近法)を用いたものを目にしたのが理由でした。 ( ご存知の通りアキレスと亀のパラドクスは、“AがBとの距離ハンデを埋める間に、Bは進捗が遅くとも先へ進んでいる”。  無限回それを繰り返す必要があるためにAはBに永遠に追いつけない、という話です。  しかし、現実問題、Aである僕らがBである誰かに追いつこうとすると追いつけます。  僕らはいつも、“ ”内のことを無限回繰り返しているんですが、現実的に追いつけるんですね。  パラドクスというのは矛盾(この場合は『理論上追いつけない』という矛盾)を言いますが、現実に当てはめると矛盾はしていない。  理論の上では完全に矛盾するんですが、それも数学的物理的見地から言ったことです。  なので、本文中で、『完全に矛盾しているとは決めない命題だ』と述べたのはそういう意味です。本来的なことに関しては僕は何も判りません )  AがBに追いつこうとすると、無限回の手順を踏む必要がある。  しかし、無限を試行する必要があった所で、AがBに追いつける現実に咲夜は住んでいます。  無限、という回数は、現実では余り重要でないことと『決め付けます』。  つまり、何度も言うようで申し訳ないのですが、あれはイメージとして伝え易くするために用いた手法でしかありません。はったりと言って差し支えないです。  あの命題をある程度理解している人ならば、『別にアキレスと亀持ってくる必要なくね』っていう感想を抱くと思います。  追いつけるか、追いつけないか、を現実的理論的に議論されるパラドクスの筈なのに、亀が空間を操れる超人なので、それ以前の問題です。  前提が明後日の方へ行ってます。  ともあれ咲夜は、その場から一歩も動かないBである、ということです。  これは『能力により追いつかれないための時間稼ぎをした場合』なので、空間を引き伸ばし、時間の進み方を遅くした場合と同じ、だと思います。  例えば、紅魔館内の柱の間隔が『前より広がったな』と認識する場合のことです。  柱同士の間の行き来が、普段より時間がかかようになると思います。  柱そのものも何方向かに向かって太っているかもしれません。  空間というものが柱の内側にも存在するのか、外側にしか存在しないのか、という議論は一先ず意味のないことなので放置します。  そこで予め、その時 時間が遅くなる、速くなる、あるいは止まることを知っている奴が居たらどうなるのだろう、という話。レミリアです。  判っていたところで、操られることを避けられないのでしょうか。  この文章においては、それは違う、と定義付けました。  時間を操られるかどうかは、認識一つに依存するとしました。  今空間を広げられて、咲夜になかなか追いつけない霊夢。  霊夢はいつから空間を広げられたか判らないので、なんでこんなに時間がかかるんだ……と苛々しています。  それを、一枚の絵のようなものとして、ああ今空間が操られたなと自分の時間の中で見下ろしているレミリア。  咲夜の能力がいつ始まったかを認識してる人を、少なくとも公式で見たことがない。  止めた場合は難しそうですが、時間を遅くしたり速くしたりする場合なら、誰かが認識出来ていてもおかしくない雰囲気はあるんですが。やっぱりない。  そこからの、まあ、連想でした。  ここは確かに、感覚理解を得る意図だとしても無理矢理だと自分でも思います。  紅魔館の内部を広げるだけ、と能力の及ぼす範囲を限定出来るような描写もあるので、  それが条件となるならば全て覆りますね。あの小説は成り立ちません。 ●麟の存在は重要でなかったのか  まず……あの小説は、最初の最初は、運命に手を加えられた(後述します)怒りもはっきりと残すものの、  平和呆けしきっていると思われる幻想郷の妖怪に、レミリアと紫の本気の戦いを見せる→士気を保たせる、  という目的で書き始めたんですね。とりあえずカリスマがやりたかったので。  直後くらいに緋想天が出て色々驚愕しましたが。  でも書き進めるに連れ、やはり大きな違和感が沸きまして。  これでは最後まで書ききれないと危惧して、思い至ったのが未来視から来る葛藤というネタでした。  多分僕自身が、カリスマカリスマやろうとすることに途中で疲れたんだと思います。  というかレミリアって、故意に畏敬を集めている訳ではないんだよなあと。  で、途中……、そうですね。  秋葉原の事件とか、詩的私的ジャックを読了したりして、『殺人行為』について改めて考えたので、そのことも含めてやや路線を変えました。  最初と違っても、今正しいと感じることを書こうと思って。カリスマの名称の元にレミリアを反乱分子に仕立て上げるのはおかしいんじゃないのか、と。  まあ、感情の問題です、そこは。 >干渉され書き換えられた箇所も含めて運命の筈だけれど……私の追跡しているレミリア・スカーレットは、相当に我侭で直情傾向にあったようね。  この一文では足りませんな、やはり;  つまり紫によって運命に手を加えられたというのは、半分いいがかりだ、みたいなニュアンスを目指したつもりでした。  僕はやはり、運命を視ることで視えるレミリアと、今のレミリアを分けて考えたかったので。  実際、レミリアが最後に紅魔館を訪れ、自分に殺人の動機はない、すなわち運命を視る上での葛藤がある、と咲夜に語るのは、合理的におかしいことです。  紅魔館で待機している二人なぞ無視して、一人で飛んでいって紫と戦っても不都合な点はない。  二人の信頼を裏切ることにはなりますが。 >つまり……貴女達の為にここまでお喋りに来たことが、この私の、宣言なのでしょう  宣言することそれ自体。  そこからもう実は、決定的にではないが、運命を変えているんじゃないか? という認識です。紫に頼らずとも。  運命を上書きされた以前と以後では、視えるものも違って来るんではないでしょうか、という一つの考えた方とかで。微妙ですね; >昨日まで――昨日までのことは、後追いだった >でもどうやら、もうほんとうに、そのことが許せないわ。 >例えそれが、沢山の笑顔に囲まれた最期であっても。不可能だわ。  またこれも、判読材料の一つとしたつもりでした。  運命に飽きる理由は、決まりきっていて変わらないからではないでしょうか。  そして物事というのは、始まりに少し手を加えるだけで、結果が全く別物になる可能性が高いです。バタフライ効果。  文中のレミリアに見えていたのは、自分の幸福な最期である、という説。それを変えたくないがために今の運命を保とうと保身していたという説。  没にしましたが、この部分について詳しく書いた文章も一応あります。  ただそれをとうとうと語ることは泣き言や言い訳に見え、レミリアのキャラクタに合っていないと思ったので、ここまで素っ気無く削りました。  で、麟ですね……。  レミリアにとっては、彼女は矮小な存在でしかない、という考えでした。  彼女が居る運命に飽いていたか、居ない運命に飽いていたか、という以前の問題で。  主に紫に干渉されていたことそれ自体に感じる怒りを基点とし、運命観測→何も考えず行動実行のルーチンから抜け出すことで、  十三人を殺してしまった理由はどこにあるのかを知るためだったりと、どこまでも自分のためです。  或いは同情の余地もないくらい非人間で、傍若無人です。一つの葛藤なんかでは到底拭いきれない酷さ。  うん……人間じゃないですし。全て人間に理解出来る行動指針だったらば、逆にリアリティをそこなう気がするのは僕だけでしょうか。  そしてしかし、最後の咲夜の台詞は、殺人の動機を取り戻すために行動したレミリアと照らし合わせたものにしたつもりです。  エピローグとなる部分では、確かに紅魔郷の麟EDを『空想したもの』にしました。  レミリアが自分の運命を操った、という漠然とした結果を表したものにしました。  しかし咲夜と麟が友達関係のようになった、という結果は、レミリアが打算したものではないという認識でいます。  さっぱりと切り離して考えています。そうした理由は色々とありますが、敢えて語ることはしません。  それこそまさしく著者の価値観の押し付けに他ならないと感じるので。  まあ……そんなところです。  ここまで書くのが正直疲れました(笑  僕も一体誰のために書いてるのか判らなくなってきたんだぜ。  以上です。批評感想、大変ありがとうございました。  語りたいところはどうにか確り判り易く説明を遂げる必要があるなあと、やはり。  ZUNテキストにあてられたぜ、というのはきっと言い訳です(笑