「ふぅ…」 私はため息をついて、縁側に腰を下ろした。 後ろを振り返ると、多くの幻想郷の住人達が酔いつぶれていた。 あの酒に強い萃香や文、神奈子までダウンしかけている。 思えば、こんなに大規模な宴は久しぶり…いや、初めてかもしれない。 博麗神社の巫女としてこの場では気丈にふるまわなければならないのだろうが、 気づけばみんなと同じように飲み騒いでしまった。 「私としたことが…不覚ね。」 しかしそんな事を考えている間にも段々と意識は薄れていく。 流石に今日は飲みすぎた。これは少し休んだ方が良いのかもしれない。 そう思った私はその場で横になることにした。 「―――霊夢。」 どれ位経ったのだろうか。不意に声がしたので、思わず私は飛び起きてしまった。 「霊夢らしくないねぇ。いつの間にそんなに腑抜けになっちまったのかい?」 「…魅魔?」 私は魅魔のところへ歩いて行った。 本来なら今すぐにでも倒すべき相手なのに何故戦おうとしない…? いや、むしろ何故今魅魔が此処に…? 「おっと、挨拶を忘れてたわ。お久しぶり。」 「…あなたも、少しは律義になったのね。」 「あんたに言われたくはないね。」 「確かにその通りね。」 どうして宿敵のはずの魅魔とこんなに他愛のない会話をしているのだろう。 これは夢なのだろうか、それとも… 「で、いったい何の用があって来たのよ?私は疲れてるんだから…」 「ふふ、それはもうすぐ判ることさ。」 「…え?」 何を言っているのか理解できなかった。 その時、魅魔の手から突然光が放たれた。 目を開けると、そこには三日月の杖。 「それはあなたがよく使ってた…」 「そう。あたしの本気が出せる日がまた来る、ってことさ。」 「本気…」 「…ふふ。あはは!何が本気よ。 前に私と戦った時なんて何度も本気を出すとか言いながら結局やられてたじゃない。」 思わず私は笑い出してしまった。 「あんたも意外と子供だねぇ。あれで本気だと思ってたなんて。」 そう言うと、魅魔は杖を構えた。 その次の瞬間…魅魔は私の目の前から居なくなっていた。 「今ならこれ位序の口さ。」 後ろから声が聞こえてきたので振り返ると、博麗神社が綺麗になくなっていた。 「…!」 「ふふ、こんなんで驚くなんてまだまだね。」 「そんな、皆は…?」 「あんたはこの幻影にも気づいてないのかい?上よ、上。」 上を見上げると、そこにはさっきまでの宴後の神社がそのままあった。 少し見辛いが、確かに皆いる。 「あんたは私の作った幻影に騙されていただけ、判る?」 「じゃあ此処は一体…?」 「敢えて言うなら、幻想郷から少し外れたところ、と言うべきかねぇ。」 「…」 もはや私は何も言えなくなっていた。 そして魅魔が杖を振りかざすと、今度はまるで空気が裂けたように隙間ができた。 「今度あんたと私が逢うのはこのの向こう。 あんたが来るまで私は待ってるよ。」 「ちょっと待ってよ、どういうことか説明しなさいよ!」 「ふふ、じゃあね」 魅魔が行ってしまった後、私はずっと考えていた。 いつの間に上にあった博麗神社は元通りになっている。 いや、動いたのは神社ではなく、私…? 何はともあれ、この謎を解き明かしてまた魅魔を封印しなければならない。 「その為にはまずここの封印を解かなきゃ… あ、その前に魔理沙呼んで来ようかしら。」 そう思った私は、皆のいる部屋へ入って行った。 「魔理沙!あなたの師匠がお待ちかねよ。行きましょう。」 END ※後書き 地霊殿の始まりっぽく。 しかし書いてみてから神主の言ってたと事と大分ずれてた事に気づいたOTL 宴会絡みの事も最初しかないけど…反省はあまりしていない。