*この話はオジリナル設定です。 華商の詳しい設定については別のss参照してくらはい 華商と少女〜プライスレス〜 「よぉ、お嬢ちゃん、どこへ行くんだい?」 小汚い風貌の男が、人気の無い道を一人で歩いていた女性に話しかける。 「人里に向かうつもりですけど?」 そう返した女性、中華風の衣装を纏う彼女の名前は麗華商。 商人のトレードマークである大きな鞄も持っておらず、 身なりや風貌からは全く伺えないが幻想郷を渡り歩く商人なのである。 「ふぅん……お嬢ちゃん商人かい?そうは見えないけどそんな匂いがするぜ?」 「あぁ、商人だ。これから里へ依頼された品を取りに行くところよ」 「そうかそうか、だが商人なら通行料払ってもらうぜ?」 通行料?そんな話聞いた事がない。ここは誰の道でもないはず。 ふと見るとこの男と同じような風貌の男達が私を中心に取り囲んでいる (賊……か……) スペルカードルールが提唱された今でもこういう輩は稀にいる。 盗みを生業としてる彼らにはルールを守ろうとする奴はいない だが、彼らはルールを破るからって強い訳じゃない。弱いからこそルールを破るのだ。 男は光を鈍く反射するものを私に突きつけながら 「痛い目見たくなきゃ── 「貴方達が欲しいのはこれか?」 私は男の言葉を遮ってスカートの内側、空間を弄って拡大してあるポケットから札束を取り出し、 目の前の男に見せ付ける。 「ほほぅ、お嬢ちゃんものわかりがいいじゃないか、さぁ渡し── と目を輝かせている男の目の前でその札束をまた内側のポケットに戻し、 「貴様らに渡す金などない。そして貴様らに使われて喜ぶお金なんてものも存在しない。失せろ」 「あぁん?どうやらその綺麗な肌に傷をつけて欲しいらしいなぁ。野郎共、存分に可愛がってやれ!!」 ………点綴的な賊の台詞だ。ざっと輩の数は11人ぐらい。全員が刃物をチラつかせている。 話しかけてきた男、一番体格がいい事を察するに親分だろうか。 商人をやってればこんな臭いシチュエーションなど頻繁に遭遇する。刃物に頼る男共、情けないわね。 ザッっと左背後で地を蹴る音が響く。 地を蹴った男は両手で短刀を腰に構え、まっすぐとこちらに突っ込んでくるのを私は横目で捉える。 あの程度の刃物なら動かなくても平気だ。なぜって、 ペキンッ 私の無防備な左横腹に刺し込まれたはずの短刀、いや、刺し込むどころか傷すらも付けれずに 鈍く光を放つ刃先が折れ、宙を舞う。 なぜって、私は気を操る事で身体を硬化させることが出来る。この程度の軟弱な刃物では痒みすら感じない。 幻想郷では商人はとても狙われやすい。弱い上に金を大量に持ち歩いているからだ。 人里に守られている商人ならともかく、渡り歩く商人は特に狙われやすく、危険なのだ。 だから私は自己防衛の為に気を操る事を身に着けた。ただ、それにはまりすぎて風貌も気迫も変わってしまったけど 突っ込んできた男─目の前の現実が異常すぎて怯んでいる男、私はその男の首を片手で掴み持ち上げる。 男の脚が宙に浮く。どんなに悲鳴を上げようが関係ない。 相手を殺そうとしたのなら自分も殺されてもいい覚悟があるって事だからな。 私はその男の鳩尾に掌を軽く添えると一言呟く ─『寸剄』─ ボウンと空気が破裂するような音とともに、その男は6bも後ろに吹き飛ばされた。 吹き飛ばされ地面を転がった男は、うつ伏せで尻を天に突き上げたままピクピクと痙攣している。 …………なんと点綴的な(略 目を丸くしその異常を見届ける親分らしき男。だが流石親分と言うべきか、真っ先に気を持ち直し号令を叫ぶ 「てめぇら!遠慮はいらねぇ!!!やっちまえ!!!!」 ……これまた点綴的(ry 四方八方から同時に襲い掛かってくる野郎共。そんな時はこれ 私は足元の地面に軽く片手の掌を添えると、地に気を送り込む。 ─砕符『律崩掌』─ 瞬間、私を中心に周囲の地面が弾け飛ぶ。千切れ飛んだ土片が周囲の輩共を一気になぎ倒していく。 物凄い圧力で飛ばされたそれらは当たれば確実に致命傷を負うのだ。 親分は咄嗟に考える。この土片をどう避けるか。 「飛んで避けるか!地に伏せて避けるか!どちらも駄目だ。なら当たる面積を最小限にし── ピチューン ………無理があるだろ 呻き声を上げ蹲る輩共に私は言い放つ 「おとといきやがれってんだ!!!」 (う〜ん私ってばかっこいい) 私の能力は物を売る程度の能力。 品を持ち、相手を見つめるだけでその人にとってその品の価値が脳裏に浮かぶ。 高ければ高いほど、品を大事にしてくれるが、低ければ低いほど…… さっき私はそこの賊の親分に能力を試してみた。札束をチラつかせたにもかかわらず、親分にとっての札束の価値は 0に近かった。つまりそれは、お金の価値をなんとも思ってなく、無碍に扱っているか または私腹を肥やすためだけにお金を遣っている。そんな意味合いだ。だからふるぼっこしてやった。 さて、そろそろ日が落ち始めてきたようだし、早めに里に行きますか……… 終 **** …って勝手に終わらせないで、まだ続くの! さて、用事も済んだことだし、帰りましょうか。 私は用事を手早く済ませ、人里を離れ帰路へ向かう道中、丁度別の方角の道が合流している岐路に差し掛かった所で 妙な音がするのに気がつく。 「……グスッ…………ヒッグ…………………」 誰かいるのだろうか、耳を澄ますと聞こえる。泣き声だ。すすり泣くような声。私は辺りを見回した ……──いた。私が帰る道とは別の方角に伸びている道の片隅に、小さな少女が蹲って泣いているのが目に映る。 彼女は黒髪でその上にボロボロの帽子を乗っけている。ピンク色のワンピースを纏ってはいるが、素足だ…… 私はその少女に歩み寄り、尋ねてみる 「君、どうしたんだいこんな所で?どこか痛いのかい?」 「グスッ………ヒッグ……フグッ……………エッグ………」 「う〜ん泣いてちゃわかんないよ、お姉さんに何があったのか教えてごらん?」 少女は顔を俯けたまま鼻をすすり、それに答えた 「ウグッ………ママが……………ママが病気で…………死にそうなの……… 薬があれば治るんだけど………ヒッグ……お薬高いし……私貧乏だから………エッグ……」 なるほど…………薬が必要なのか……生憎私は薬の類を一切持ち歩いていない。 気を操作することにより自分自身の風邪やら病気やらは簡単に治せるし、毒気等の神経を侵す類のものも 同様に効かないのだ。傷程度なら他人のも治せるが……病気は無理だ。 ………困ったなぁ……… …………………………まぁ仕方ないか 私は札束を内側のポケットから取り出し 「君、これでママにお薬を買ってあげなさい。これだけあれば十分足りるでしょう」 と、そっと差し出す。 暫く泣いていた少女は次第に泣き止み、ゆっくりと涙で紅くなった目をこちらに向けて呟く 「………いいの……?」 「あぁ、私は商人だからね。そのお金で命が救われるなら安いもんさ」 その少女はとても幸せそうな笑みを零し、お金を恐る恐る受け取ると 「ありがとう、ありがとう、ありがとうお姉ちゃん!」 そう言って嬉しそうにピョンピョン跳ねて竹林の中に消えてった。 ……竹林? 「あ、待って、そっちは人里と逆方向ですよ!!!!」 咄嗟に叫んだが僅かに遅く、声が届いたかどうかも怪しい。今の時間は夜の妖怪が動き始める時間だ。 あの小さな体躯じゃ襲われたら一溜りも無いじゃないか。私はあの娘の後を追いかけることにした。 「やったウサッ、やったウサッ。お金だ〜ウサッ」 語尾が変なのは気にしない。 「ウサウサッ!お金がこれだけあれば── 「ちょっとてゐ!!!仕事をサボってどこ行ってたの!!!」 ──げ。 私の事をてゐと呼んだ女性。履いてない疑惑の──紹介省略──うどんげだ。 「てゐ、貴女は本当に……って何よそのお金……まさかまた誰かを騙して盗んだのでしょう!」 「ギクゥッ」 「てゐ!!早くその盗んだお金返してきなさい!!!」 「いいえ、ケフィ…それは私があげたものですよ」 竹林の影から聞こえてきた第三者の声 ──げげっ。さっきの中華おばちゃんだ……追ってきたのね…やばあいっウサ! うどんげは突如現れた中華風の女性に困惑するが、きっとてゐが彼女から盗んだのだと状況から判断する 「あ、今返しますから、てゐ、さ、早く返してあげなさい」 「だから、それは私があげたんだと言ったのです」 「…へ、いや、こんな大金を簡単に渡せるわけないでしょう?」 「え……でもその子の母上が重い病気だと………」 うどんげは肩を落としため息を零すと、家庭事情について説明を始めた。 どうやら重病人とやらはいないらしく、そもそも優秀な薬師が一緒に住んでいるそうな。 ………じゃあ何故私の脳裏浮かぶ、この子のお金に対する価値が高かったんだ? そうなのだ。私はそんな気軽に金を渡さない。ただ、札束を持ちこの子を見たときに脳裏に浮かんだ額は この札束の額よりも遥かに高かったのだ。私腹を肥やすためなら0に近いはず…… だから私は彼女の言葉を本気だと受け止めて渡したのだ。 ………腑に落ちない。………理由を聞いてみるのが一番だろう。 「ねぇ、君、そのお金は何か別の、大切な使い道があったんじゃないのかい?」 う……と小さな少女は私から顔を逸らし俯く。どうやら図星らしい…… 「てゐ、そうなの?!何に使うつもりだったのか正直に白状しなさい!!くだらないものだったらどうなるか── 「………………………」 小さな子は俯いたまま、首を横に振っているだけだ。 「てゐ!!そんなんじゃわからないでしょ?ちゃんと声に出して喋りなさい!!!!」 「………んの……………」 小さな子は何かを呟いた。だがあまりに小さな声で上手く聞き取れない。 その事に少し苛立ちを覚えたうどんげは、さらに怒気を含めて問いただす 「てゐ、聞こえないわよ!!!さぁ大きな声でしっかりと白状しなさい!!!!」 その空気に耐えれなくなったのか、小さな子は喉を鳴らした。……どうやら軽く涙目のようだ…… 「てゐ!なんとかいいなさ── 「ウッグ……だって……今日……ヒッグ」 どうやら本当に泣き出してしまったようだ…… 「今日がどうしたの!!!!」 「……今日……れーせんが…ヒック……えいえんていに来た日……誕生日…………だから………ヒッグ…… 何かを……プレゼンット…ウッグ…ヒッグ…したく……ごめっ…フグッごめんなさ……うわあああああああああん」 ついに大声をだして泣き叫んでしまった。 「……………………そうだったの……」 うどんはそう呟いて膝を曲げ、視線をその子の高さに合わせると優しく語り掛ける 「てゐ、確かに騙して盗むのは悪いことよ?それは反省して頂戴? でもねてゐ、私はその気持ちだけで十分嬉しいの。……てゐ、怒鳴ったりしちゃってごめんね?」 てゐは泣き喚きながらも、うどんの服にしがみつく。 うどんげはそれを受け入れるかのように、ゆっくりとてゐを抱きしめる。 しんみりとした空気が流れる。 (………さて、私はここらで引き上げるとしますか) 私はなるべく音を立てないよう気配を殺し、引き返── 「あ、待ってください」 引き返そうとした所をれーせんとよばれた女性に呼び止められる 「あの、お金、結構ですので、これ返しますね」 「いえ、お金はあげますよ。そのかわりに……ちょっといいですか?」 私はその女性の元にもう一度歩み寄ると、差し出されたお金ではなくその腕を掴んだ。 と同時に、泣き喚く小さな子の頭に手を置いて、両者を交互に見やる。 へ?へ?何ですか? という女性の質問に対し軽く答えてやる。 「私はね、私が見つめているものが私が触れているものに対し、どのような価値を持っているのか見ることが できるのです」 つまり今は二人の女性を触れ、見ている為、お互いがお互いにどういう価値を持っているのか見えているのだ。 当然答えは… 「価値では到底計れない尊いもの。ですね。いいもの見せて貰いました。そのお金はその分の代金として 受け取って置いてください、では」 私はくるりと踵を返すと、薄暗くなってきた竹林の中に颯爽と脚を運び── 「待ってください、貴女のお名前を……」 「私は華商、麗華商。普通の商人だ」 と、今度こそ竹林の中に格好良く脚を─ 「おばちゃ…お姉さんありがとう」 「あぁ、じゃあな」 とやっと颯爽と格好良く去ることが出来た。 * …なんか………今日の私、凄く格好いいんですけど……… でも… 「うおぉおおおおおお騙されたああああああああぁああ」 商人にとって騙されることはとてつもない赤恥。みっともない。信用がた落ちだ…… 私は一人、その竹林から離れた森の中でがむしゃらに暴れまくった。 細い木を見つけては手当たり次第蹴り折った。太い木は気をぶつけて凹ましておいた。 「なんて〜〜〜こったぁあああ〜〜〜〜うおぉおー─ ─『木叫術』─ ぬはっ!! グワン!と大きな音共に私は吹き飛ばされ、大木の根に脚を引っ掛け、無残にもモロに頭から転倒してしまった。 「……あの…無闇に森を疵付けるのは…………って華商さんじゃ…ないですか……」 木の脇からスペルを放った少女、全身深緑色の衣装を纏う彼女はこの森の管理者、緑々こと緑(みどり)だ。 声質は相変わらず木が囁く様な、地味な声をしている。 「あの……こんな所で……何をしているのですか?…」 私はモロに打った頭を摩りながら起き上がる。 「うぅ…酷いわ…私が音に弱いと知ってて……」 「あ……ごめんなさい…」 「う〜ん、まぁ私が悪いんだけどね……暴れてた理由?さっきこんな事があってさ…」 少女説明中 「そうですか……それは恥ではありませんよ……とてもいい事です。そのために騙されたのなら、 逆に誇れることだと…思いますよ……………でも…木々を疵付けるのは止めてください……」 「う…すまない、大人気なかったようだ」 緑はスカートの内側から漆で塗られた箱を取り出すと、 「あの…これ、葉を紅茶にしたものです……香りがとても心を落ち着かせてくれる…紅茶です。 よかったら、ご自宅で……あげますので…どうぞ」 「いやいや、タダでもらうわけにはいかないよ、商人だからね、買い取るよ」 「ううん…お互い様…という事で、いつも助けてもらっているし……そのお礼ですので…気にせず…」 「む…そうか、有難く貰っておく事にするよ」 「それでは私は仕事に戻るので…」 「あぁ、今日は有難う、頑張っておくれ、じゃな」 「ええ…、さようなら」 緑はにっこりと微笑むと木々の間に姿を隠した。存在を消す魔法を使い、一度隠れられてしまっては 再び見つけることは困難だ。 徐々に周囲の木が修復されていく。……私が折った奴だけど… 私は心の中で「仕事を増やしてすまない」と、緑に謝罪してから帰路に着いた。 〜途中までは格好良かった華商〜終わり