▽九百と一年目  過去の話。現在まで連綿と続く二人の因縁の、始まりの話。 ▽イーター  現在の話。何気ない(?)日常の話。風神録絶賛発売中ですよ、というまぎれもない今現在の話。 ▽閃光花火の落ちる時  未来の話。いつか来る魔理沙の落日、幻想郷の一時代の終わりの話。 というように、この三つの章の並び順は、時間軸に沿っていると思います。 同じ台詞を鍵として、違う時代、違う人物、違う状況を繋ぎ合わせています。 三つの章はどれもが、実に「東方らしい」話。 三つ並べて発表せずとも、単品でそれぞれの幻想郷的世界観を示すことに成功していると思います。 では何でこれを並べて発表しているのかなーと考えてみると、それはやはり、繰り返し書かれた同じ台詞に、 多面的な幻想郷的世界観を象徴する意味合いを込めるため、だと思うのです。 シリアスだのギャグだのバトルだのと、様々な形で表現される幻想郷的世界観を、 『「大したこと(略)」「あれ……?」「もっと、満足……(以下略)』という短いやり取りで表現する。 裏を返せば、『「大したこと(略)」「あれ……?」「もっと、満足……(以下略)』というやり取りに、幻想郷的世界観の全てを込める 意味合いを持たせてみました、というのが作者の意図するところであったのではないかと思います。 すなわち、この短いやり取りを、幻想郷の象徴、としたのではないでしょうか。 すると、ここで浮いてくるのが四番目の章、▽うさみさんのある日 です。 この話、仮に単品で発表された場合を考えてみると、 『……確かに仲良さげな二人の様子は、なごむけれども。この話、東方でやる意味あんの?』等という感想が付く可能性は正直否めません。 しかし一つのSSの中で書かれた、一つの章として読むならば。 このSS唯一のルールである、かの短いやり取り(幻想郷を象徴するやり取り)を交わす二人は、まぎれもない東方世界の住人として表現されているのです。 ともすると、その摩訶不思議能力を全開にしなければ東方キャラとして認めてもらえない、不遇の秘封キャラ。 あくまで東方らしく、を念頭に置いた場合、もっとも「ジャンル:ほのぼの」の難易度が跳ね上がる、不遇の秘封キャラ。 そんな二人の何気なくも心温まる日常を、「東方世界の一員でございます」と胸を張って読者の前に差し出す。 この短編連作は、そのような試みに挑み、そして成功させることができたのではないか、と思います。 !Warning! ここから私の語調はいきなり変わる。 以下は、感想ではなく妄言。 読者どころか作者をも不快にさせる恐れがある、っていうか不快にさせる(マジごめん)邪推と論理の飛躍が延々と書き連ね続けられる。 キーワードは『キバヤシ』『ニコニコ動画』。 これらの言葉に悪い予感を抱いた賢明な御仁は、以下の文章には目を通されないよう、強くお勧めする。 このSSを読んで、「つまらない」と思った読者は幸いである。 彼の者の手には、幻想郷行きの蜘蛛の糸が握られている。 ■作者からのメッセージ を読むべし。 自称ルナシューターの悲劇が書かれているが、これもまた、このSSのルールに従った内容(すなわち、かのやり取りがなされている)となっている。 一見、セルフパロの作者近況(失礼)であるかのように思えるが、冒頭の一文が問題である。 ……『紫さんが行間を弄ったようです』とあるのだ。 この一文の意味を正確に汲み取るのは難しいが、私はこれをこのように解釈した。 『この作者からのメッセージは、本来第5章として、SS本文に組み込まれるはずであった』と。 するとどうだ。 ひょっとするとノーマルクリアすら怪しいこの悲劇的ルナシューター氏は、かのやり取りを通行手形として、東方SSに紛れ込むことに成功するではないか。 そう、これはまさしく悪名高き「東方俺が幻想入り」である。 これは恐ろしい。色んな意味で恐ろしい。 思えば第4章が伏線であった。 ありふれた女子大生然とした秘封倶楽部の二人を、かのやり取りだけでもってして、自然に東方世界に溶け込ませる。 二人によって緩められた幻想入りの扉は、喜劇的ルナシューター氏をもすら、通行手形を掲げるだけで、幻想入りを許してしまうようになったのだ。 なんと羨まし……もとい、妬まし……ではなく、畏れ多いことか。 だが案ずるなかれ。 秘封倶楽部の二人によって垂らされ、ルナシューター氏の手により延長された、幻想郷からのかそけき蜘蛛の糸は、我々の眼前まで降りてきている。 そう、我々も掲げれば良いのだ。 幻想郷入りの通行手形を。 このSSを読んだ君よ。 たとえこのSSがどんなに君の心を震わそうとも、断腸の思いでもって呟くがよい。 「大したことなかったわね(たいして面白くなかったなぁ的な意味で)」と。 作者は答えてくれるだろう。 「あれ……?(あれ? あまり受けなかった? 的な意味で)」と。 後は流れに身を任せるがよい。 「もっと、満足させてくれるかと思ったのに(uleaさんならもっと満足させてくれると思ったのに! くやしい! ビクビクッ的な意味で)」 「もう、行くわ(ブラウザバックして、違うSSでも読ーもうっと、的な意味で)」 「ははは……(どうしても感性が合わない人っているよね、アハハ……ハァ……と力ない笑い、的な意味で)」 そして、このやり取りを、エキストラチャプターとしてこのSSの末尾に(脳内で)添えるとよい。 見よ!「東方読者が幻想入り」の完成である。 我々が心の奥底で願ってやまなかった、禁断の扉が開かれてしまったのだ。 自分と感性が合わない読者を、幻想郷に導くなんて、uleaさんは仏様じゃぁ! 現人神様じゃぁ! などと思ってはいけない。 おそらく彼奴めは八雲紫の忠実な僕。 続々と幻想入りしてくる生きの良い若人の列を前に、冬は終わったばかりですけど、これで来年の備蓄も万全ですね紫さま、 などとほくそ笑んでいるに違いないのだ。 最後に。 いやホントまじすんません。悪気はないんですホント信じて。ビリーブミー。アイラブユー。