ジリツ ニンギョフ うふふ、ついに完成だわ… そういって不敵な笑みを含むのは魔法の森に─紹介省略 不敵な笑みでも十分可愛い─アリスである 彼女の視線の先には、今まで作ったどの人形とも違う雰囲気を纏う人形が壁に背を預けて座り込んでいる。 「いえ、完成ではないわ。完成した人間なんていない。常に成長していくものだから。だからあなたはこれからも成長するべき……」 彼女は目の前の人形を、"彼女"のために作った専用ベッドに寝かす。 それは人形が0歳を迎えたときであった。 「おきなさい。私の可愛いシャラや・・・」 私は"無"であった漆黒から、急に"無"でない闇の中に引っ張り出された。 「おはよう。もう朝よ。今日はとても大切な日。私の人形が初めて自分で行動する日なのよ。この日のために 貴女が自分で行動できるように道具をそろえたの。」 ……声 この声…… 私の………ご主人様………"ご主人様"ってなんだ? 闇の世界が急に色付きの世界へとすり替わっていく これが眼を開けるという事?これが起きるということ? 「ここからまっすぐ歩くとキッチンです。まず手をちゃんと洗うのよ。さぁ行ってらっしゃい」 歩く?"足を動かして進む事"なのだ。どれが足?どこに足がある?えっと…動かせるもの… 「………うーん、しまったわ……。いいかしらシャラ」 ご主人様はそういうと私の身体に触れた。急に色付きの世界が動き出す。 後でわかったことだが、寝ている私の身体を抱き起こした。ということらしい。 "ご主人様"の意味も理解できた。この人が私を創造してくれたのだ。 シャラ。というのは私の名前だ。何を思ってその名をつけたのか聞いたら、恥ずかしい、という感情の 一種が身体の中心あたりに溜まったが、時が経つに薄まっていった。 私を抱き起こした後、ご主人様は私の身体を説明してくれた。色付きの世界を取り込むのが眼。 意志を音として伝えるのが口。この2つは手、その下に足。いろいろな部位の説明をしてくれた。 「う〜んやっぱり私の人形ね。優秀だわ。きっかけを与えるだけで理解していくのね」 きっかけを与えられた私は、次々とご主人様の教えを吸収していった。それどころか簡単なものは自分で 考えて行動を取ることができるようになっていった。 今の私ならわかる。ご主人様が笑顔になる事。それは私もとても嬉しくなる。という事が。 ご主人様が喜ぶ、それは私をとても愉快に… 「あ、私の事はアリスでいいわ。あなたは自律人形なんだから」 はい、わかりました。アリス 私は"笑顔"で返す。アリスも笑顔になる。それはとても心地いいことだ。 睡眠というものがやっかいだった。夢をみるもの。なのだけど夢が見れない。 「いずれ貴女もみれる様になるわ。それまでは手を貸してあげる。おやすみ、私の可愛いシャラや…」 私は眼を閉じ、闇を見つめる。やっぱり闇だ。夢なんてどこにも……── 「おはよう、シャラ。さ、軽く顔を洗ってきなさい」 朝というものが来ていた。夜から朝というものは一瞬で変わるものなのだろうか。 今日が始まる。今日もアリスはいろいろ教えてくれた。それから数日間私はどんどん覚えていった 「今日はクッキーを作るわ。まずはその生地を…って言わなくてもわかるわね。頼んだわ、シャラ」 はい、がんばります。アリス 笑顔を交わす。この瞬間が気持ちいいという感情が生まれる。 私が料理をしている間、アリスは日課を行うのだ。 大量の人形に挨拶を丁寧に交わしていく。彼女らは自律していないらしい。2体だけ半自律したものがいるけど。 その中でも、半自律もしていない人形を一体だけ特別愛でていることがわかる。 他の人形達とはどこか嗜好が違う人形。何か特別な想いがあるのだろうか。 「うん、中々上出来ね。後は少し塩の加減が…」 この前アリスが作ったクッキーのほうが、美味しいということはわかった。 美味しく作る。それが料理することなのだ。 「それと、見かけもね」 見た目も、重要らしい。 大量の本も読んだ。世界の事、魔法の事、ありとあらゆる事を吸収できた。 ご主人様アリス。私はこの人の隣にいることがとても嬉しい。アリスが喜ぶことは私もとても嬉しい。 ある日、アリスは私に戦うことを教えてくれた。戦うことについては知っている。 以前大剣という武器を振り回す金髪の話を本で読んだからだ でも、誰と戦うの? スペルカードルール、弾幕ごっこ、スペル、弾幕、2WAY3WAY5WAY、H、喰らいボム。 様々な要素を私は吸収していった。アリスの人形と模擬戦闘なるものもやった。 負ける、それは悔しいことであり、勝つ、それは嬉しいことがわかる。 選べるなら勝つを選びたい。勝つならどうするか、どう動くか相手のパターン、 癖というものを読んで回避、攻撃をする。 「うん、上出来だわ。さすが自律ね。中々強くなってきたじゃないの」 これまでは一体ずつだったのを、人形の数を増やして戦闘していく。 これが弾幕だ。うまく弾道を誘導しないと追い詰められる──しまった…。だが! 「喰らいボムのタイミングも中々のものね、よし、今日はもういいわ、お茶にしましょ」 料理、戦闘、読書、いろいろなものを試し、吸収していく。私は家のことなら ほとんど自分で出来るようになった。アリスの行動もなんとなくわかってきた。 とある特別な人形を抱きしめるアリスの事も。……なるほど…… 風呂では服を脱ぐ、私はアリスが服を脱ぐ様子から、視線を動かせなかった。 「ちょっと、何ジロジロみてるのよ、恥ずかしいじゃない」 あ、ごめんなさい。アリス そう言われたらなんだか、アリスの服を脱いだ姿に視線を合わせづらくなった。 この感情は何なのだろう。確か…恋とかいうものだと読んだ。私はアリスに恋をしているのか? 人形の癖に…… 恋は無理でも別の事ならできる。アリスを笑わせる。アリスの手伝いをする。アリスを守る。 今の私ならアリスを守れる。十分な実力だ。 今日アリスが私の為に新しい服を縫ってくれた。サイズもピッタリだし、センスもとても良い。 小さなフリルが特に気に入った。流石私のご主人様。 何に対してもセンスが溢れるご主人様。料理も家具も、小物も。仕草や下着だって抜群だ。 実際、アリスの下着を装備してみた時にはテンションあがってきた。 でもひとつだけ不満があった。服の事ではない。名前だ。 『シャラ』 とても個人的かもしれないが、センスが無いと思う。 アリスの事が好きでもこれだけは変えて欲しい だって上海+蓬莱 "シャ"ンハイ ホー"ラ"イ でシャラなのだ。 なぜこんな名前なのか、もっと遠まわしで名前に意味を持たせるだとか思わなかったのか。 私はアリスにこの事を質問したら、パンケーキを頬張りながら 「本気を出さないで決めた。今はむしゃむしゃしている」 あぁ……そうだね…… 「じゃぁ砂漠ry熱風で『サンタナ』なんてどう?」 あぁ…それ弱点と言われてた赤い石が、役に立たないどころか無敵の超(鳥)人にしてしまった人のだろ? いいよ…それはいらない。 「何か希望がある?私も気に入る名ならそれでもいいわ」 私の希望か…えっと 「†聖猫天使姫† とか 最強暗黒聖騎士 とか KURAUDO とかがいいんですけど。特に最後のがいい… …あれ?どうしたんですかアリス。大丈夫ですか?………えっと、倒れたときには…人工呼吸? それと心臓マッサージry」 結局私の名前はシャラのままだった。 今日、本で手紙という存在を今更ながらに知った。 この手段を用いれば普段言えない事も伝えることができる。 大好きなアリスに想いを伝えることが出来る。 早速私は一筆したため、アリスの作業机の中に入れておいた 「あら、何かしら………手紙?? 『いつもあなたを遠くから見守っています by貴女を守る騎士』 …………………何これ……」 返事は来なかった。遠まわしすぎたのだろうか。 今日もアリスの観察をする。 黒い下着だ。今まで白か縞とかだったのだけれど……毎日覗いて見ているが、黒を見たのは初めてだった。 その日はいつもより早く朝食を取り、片づけをした後すぐに、戦闘関係の事ばかり復習させられた。 私にとってそれは朝飯前である。えっと、朝飯前なのだ。ん、朝飯…後? 「もう完璧ね、シャラ。今日はいよいよ実践よ。相手はこの幻想郷でもいろんな意味で名が知れた魔法使い。 もの凄く可愛いからって油断しちゃだめよ?とても強いんだから」 はい、当然です、アリス。私は貴女を守りたい。 今までの戦闘技術、惜し気もなく出してやる。アリスのためならこの身体、壊れても構わない。 苦しい事も、悲しいことも、全てを耐えてきた。アリスの為に。 〜魔法の森上空〜 とても強い敵。最強と名高い魔女。外見は可愛いカッコイイ凛々しいらしい。一体どんな相手── ──ってこの人……魔理沙さんじゃないですか。知ってますよ。 近所に可愛い魔女がいるって聞いたから何度も視察しにいってるし。それがあのアリスさんがよく抱きしめている 人形と同じ人だとも。 「ほぉ、それがアリスの自信作であり最高傑作という人形か。確かに、普通の人形とは違う雰囲気を纏っているな。 だがな、アリス。戦力をもてあます。 この私をそんなチャチなものでは触れることすらできないぜ」 「あら、どうかしら。私はこのシャナをみっちりと鍛えてきたの。物覚えがいいからすぐにその辺の妖怪を 追い抜いたわ。触れることが出来ないのはあなたかもしれないわね」 「ほほぉ、大した自信だ。じゃぁその自信が崩れていく様を、たっぷりと見学させてもらうぜ!!」 私はアリスに視線を向ける。対するアリスもこちらに視線を。眼だけで以心伝心の会話をかわす アリス(全力でいきなさい。手加減は無用よ) シャナ(とても可愛いですね魔理沙さん) ア(今の貴女なら大丈夫。自信を持つのよ) シ(ちなみに魔理沙さんはいつもと違う赤い下着でしたよ) ア(私が最初に指示をだすわ、あなたはその指示に基づいて自分で考えて弾幕を展開すればいいの) シ(胸はアリスさんのほうが勝ちですね) コクン 二人同時に頷き、魔理沙を睨むかのように視線を集める。 ア(いくわよ) シ(私はアリスの為なら何でも!!!さぁご命令を!!!) 魔符『アーティフルサクリファイs 「ちょっと、それ投げられるだけって 自律の意味ないじゃないですか。」 「え……じゃ、じゃぁ 意味府『ノンアーティフルサクリファイッ 「それただの体当たり」 うーん、じゃぁ 亀縛『羽交い絞め』 「了解!!!!!!!!!」 やっぱり魔女は強かった。太くておっきくてまっすぐしたのに見事突き上げられた。 負けた。でも落ち込んではいられない。学習すればいい。相手の事を。次は勝てるように… …確かいつもならこの後魔理沙さんはお風呂だったわね、早速視察だわ