春風が吹く、日も室内の窓から浴びているとポカポカしてくる。 「もう、冬は終わるのね」 風見 幽香は、自室の部屋から椅子に腰掛け、窓から外を見ていた。 長くて深い冬は、雪を降らせた後暫し留まり何処かへと去って行った。 もう直ぐ春が来るのだろう、福寿草やタンポポ、藤、色々な木花が咲くのだろう。 「今年は良い菜の花が取れると、彼女と一緒に食べれるんだけど…」 それにしても最近、彼女の事ばかりを考えてしまう。 彼女は如何しているのか?彼女は何をしているのか?彼女は… 「まるで私がお姫様みたいじゃない」 そう言うと、椅子から降りて部屋をうろつき始めた。 こういう時、彼女が居たらどう言ったのだろうか?「何所に行くの?」それとも「一緒に行こうか」か。 「来るなら早く来れば良いのに…」 そして、幽香の家のドアが叩かれた。 彼女が来たのかしら?少しの興奮と、違ったら馬鹿みたいね、と自嘲を含んだ哂いを漏らし。 玄関の前に向かって、早足で歩き出した。 「はい、どちら様でしょうか?」 「今日は御姫様、エスコートに参りました」 「随分と遅いご到着ね、事故でもあったのかしら?」 「綺麗な君に似合いそうな御花を見つけたのでね」 「あら、その花の名はなんと言うのかしら?」 「蒲公英と云われる物です」 「いらっしゃいな、私の王子様」 「今日は、私の御姫様」 そして、彼女と肩で抱き合い、キスをする。 同性?別種族?関係ないわ、私は私、唯自分の道を行くだけよ。 「随分探したみたいね、リグル」 「ゴメンよ幽香、君に何か合う花はあるかなと思って探してて、少し遅れちゃったんだ」 「良いのよ、けどそういう事は事前に伝えて欲しいわ、心配しちゃったじゃない」 「えへへ、ゴメン」 「それにしても、良くそんな事覚えてたわね」 「うん、君から教えてもらった事は、為るべく覚えて置く事にしてるんだ」 「ふぅん…」 蒲公英か…神のお告げ・田舎の託宣・明朗な歌声・別離・無分別・軽率・軽薄… 「一見馬鹿にしてる様にしか見えないのよね、コレの花言葉」 「言えてる」 そして、二人でクスクス笑いあう。 悪くない、昔は1人身で生きて行くのが気楽で居れたのに。 彼女に会ってから、その生活も変わってしまった。 (君は此処で何をしているんだい?) (何だと思う?) (うーん…花見?) (馬鹿ね、一般妖怪風情がこんな所で暢気に花見なんて無いでしょ?) (其れもそうだね、降参だよ何をしてたんだい?) (花見物よ) (プッ…アハハハ、なんだい?そりゃあ) (冗談よ…貴方気に入ったわ、今度からは好きに来ていいわよ) (幽香、此処に何時も君は居るのかい?) (あら、悪い?) (冬は如何してるんだい?) (夢と希望を沢山食べて、ゆっくり冬眠するのよ) (へぇ、そうなんだ…) (あら、軽い冗談だったんだけど…今度私の家でお茶でも如何?) (うん、是非行かせて貰うよ) 彼女と居ると私も幸せになる、きっと彼女は私の… 「じゃあ、私も今日は泊まらせて貰おうかしら」 「え、今何て?」 「いや、君が今日は泊まっても良いって今言ったんだけど」 「あ、あら、そうだったかしら?」 最近リグルと話していると、ポーッとして話を聞きそびれたりする時がある。 一体如何したのかしら… 「大丈夫かい?幽香、駄目なら私が面倒見るけど」 「まあ、大丈夫だけど…そうね、お言葉に甘えようかしら」 そう言ってリグルを自分のベットルームへと連れて行く、どういう格好をしてもらおうかしら。 「おいで、幽香」 振り向くとリグルが胡坐をかいてベットに座っていた、股の間で眠れって事かしら。 「え…うん…」 けれども、リグルの優しい言葉遣いに気が付いたら、リグルの胡坐を枕にして横になっていた。 最近リグルにイニシアチブを取られてる気がする、けど悪くない。 「物語の御姫様は、こんな気持ちなのかしら」 「けど、君は事実上お姫様じゃないか、私のね」 「そうね、おやすみなさいリグル」 「おやすみなさい幽香」 そう言って、目を瞑った振りをしてリグルの体の匂いと、触り心地を楽しむ。 そして、気が付いたら私は眠っているのだろう、実に悪くない話よね。 あら…今聞こえる歌…なんだった…かしら… 「…」 「…おやすみなさい幽香」 そう言って、完全に眠りに落ちた幽香を撫でて、リグルは子守唄を再び口ずさむのだった。 著者・苦いもの10割 お題提供・【花鳥風月】風見 幽香と向日葵畑 十四輪目【嘯風弄月】スレ>>471氏と皆様方 この作品を見て頂いた事、この作品を投稿する場所を頂いた事に、深く感謝させて頂きます。