※注意  紫、霊夢に独自解釈の解釈が含まれている可能性があります。  八雲紫→博麗霊夢です。  作者は初SSなので、ツッコミどころは満開です。卵、又は石を投げないで下さい。  以上の点に耐性がある方は先にお進みください。         『青い月には、ご用心』紫→霊夢 あらゆる存在に平等な者、博麗大結界の管理者、13代目の博麗の巫女。 そして、大罪人、私を壊した者…博麗霊夢。 涼しげな風が吹き抜ける。 五色に彩られた樹木を揺らし、西に沈み行く残光で赤く染め上げられた空に夜の到来を告げる月が山の合間から顔を覗かせ、虫達は揺れる薄の下で羽を震わせ鈴のような音を鳴らす。 色鮮やかなマヨヒガの夕暮れ。昨日と変わらない赤い夕暮れ、しかし顔を覗かせた月の色…。 その月の色は青。残光が染め上げる赤い空は青い光に飲み込まれ、徐々に夜へと姿を変える。 赤と青、黒と白の彩る空…自然の優美さを感じるその光景を私はマヨヒガの縁側で眺める。その目で見つめるは青い月。 青い月は見たものを幸せにするという言い伝えがある…そう、あの月は私にも幸せを運んでくれるのだろうか。 私の幸せ…博麗霊夢。 私が霊夢を想い始めたのは何時の時からだったか、春雪異変の時か、百鬼夜行の夜の時からだったか、今の私にはそれを知ることは出来ない。 ただ言えることは、私は彼女を愛していること…彼女の茶を差し出す姿が、境内を掃く姿が、弾幕ごっこをする姿が、一挙一動が愛おしく感じてしまう。 私は幻想郷の最強の妖怪、誰もが恐れ敬う。幽々子ですら私に対して一片の恐れを抱いている節がある。 それは当然だ、自分達を虫けらの如く殺すことが出来る存在が目の前に居て、恐怖を感じないわけがない。 幾万、八百万の人妖と接してきたが私に恐怖の念を抱かなかった存在は居なかった…幻想郷は私を最強、最悪の妖怪[八雲紫]と見続けた。 そう、私は気づかないうちにその様に見られるのが寂しく感じていたのかも知れない。 そんな色あせた日々に出会ったのが博麗霊夢。 彼女は私を最強、最悪の妖怪[八雲紫]と認識せず恐れを抱くわけでもなく、敬うわけでもなく一介の妖怪[八雲紫]と見てくれた。 彼女は私を特別扱いせず私と接してくれた…正直に言おう…嬉しかった…。 霊夢の出会いの後、私は彼女と進んで交流を持ち始めた。 神社での宴会に参加し、永夜異変の時は誘いかけた。彼女と交流を結べば結ぶ程、想う気持ちは強くなり、私は彼女の存在に溺れていった。 あぁ・・・しかし、この時ほど自分が妖怪である事が憎らしく感じた事はない。 彼女への想いが積もれば積もるほど、彼女を永遠に独占したい、彼女の身も心も全てを我が物にしたい。彼女を求める黒い欲望が膨らんでしまう。 そう所詮、私を傲慢で欲深い妖怪の一人だった。博麗の巫女に手を出す行為は禁忌の行為、それは理解している。 しかし彼女は遠慮無く私の心を踏みにじり、蹂躙する。二つの葛藤で苦悩し、苦しむ私の気持ちを理解することもなく…彼女の存在自体が私の心を苦しませる。      私を狂わせ惑わせる存在よ…。     私が貴方を想っている事を、黒い感情を抱いて事を貴方は知りもしないでしょう…。      私の心を壊した者よ…。     貴方の身も心も独占したい私の気持ちを、貴方という存在を永久の檻に閉じ込めてしまいたい私の心は理解しがたいものでしょう…。      私を狂わせ、壊した大罪人よ…。     貴方の髪の先から、爪の先まで全てを喰らい尽くしたいこの欲求を、その純白な魂すら陵辱したい欲望を貴方は自ら受け止めることは無いでしょう…。               霊夢…。        霊夢、貴方の髪をこの指で梳かしたい。         霊夢、貴方の体をこの手で抱きしめたい。          霊夢、貴方の唇をこの唇で欲望のままに奪いたい。             霊夢、貴方の血をこの喉を鳴らせて飲み干したい。              霊夢、貴方の身体を食欲のままに喰い荒らしたい。               霊夢、貴方の魂に私という存在を永久に刻み込みたい。          霊夢、貴方はどんな声音で泣き叫ぶのかしら…?           霊夢、貴方はどんな表情で私を見るのかしら…?             霊夢、貴方は末期の瞬間に何を考え、何を想うのかしら…? 黒い魔法使いに貴方の心を奪わせはしない、赤い吸血鬼に貴方の運命を渡させはしない、彼岸の閻魔に貴方の人生を裁かせはしない、亡霊の姫に貴方の魂を委ねはさせない。 博麗霊夢・・・私の霊夢。貴方の全ては私のもの、貴方を喰らい尽くすのは…私だ。 「ゆか…紫様…紫様…!!」 藍…? 「紫様、夕食の支度が整いましたので、居間にお戻り下さい」 月があんなに高く…あぁ、柄にも無く物思いに更けていたわね。 私は物思いに更けていた縁側から立ち上がる。 日入り時は申し訳なさそうに山の合間から顔を覗かせていた青い月は既に夜空に高く舞い上がり、我が物顔に蒼い光を放ち幻想郷を青く染め上げている。 そう、貴方を喰らう時はこんな青い月の夜に頂きましょうか…。 紫色は私の色、赤と青が混ざり合って紫色を成す。 青い月の下で貴方が零した真っ赤な血は月の光と混ざり合い、鮮やかな紫色に染め上げられることでしょう。 霊夢、今は貴方が博麗の巫女だから、私は辛うじてこの欲望を抑えていられる。 だけど、貴方の後を継ぐ者が、14代目の巫女がこの幻想郷に現れたその時は……。 幻想郷。 その頭上で輝くは、青い月。 月が耳にしたのは狂気の言葉。 月が目にしたのは狂喜の表情。 月が運んだのは幸せか?…月の狂気か? 月は何時か目にすることになるのだろうか…紫色に染まった真っ赤な少女の姿を…。                                 ―終わり― 《あとがき》 SSって難しいですね…orz なお、ここまで読んで下さった皆さんと、私にSSを書く切っ掛けを下さった某スレの方々に深く感謝します。有り難う御座いました。