※注意  小悪魔×霊夢です。純粋ではないかもしれません。  小悪魔はもう、オリジナルキャラに近いかもしれません。嫌な方は回避推奨。  どこまでしていいのか悩んでるところがあります。  口付けまでです。  綺麗な心と心の愛にこだわる人は今すぐ回避してください  大丈夫な方はこの先へどうぞ。  小悪魔。パチュリー・ノーレッジとの契約で図書館の司書をしている悪魔である。  実際にこのように長い期間その姿を現し存在し続けるのはなかなか稀なケースだ。  とはいえ、この契約に不満があるなどということではない。  なにせ司書をしているだけで膨大な魔力を供給されるのである。しかも、かなりの純度の物を、だ。  だから本来悪魔のするような仕事でもない司書だって尻尾振ってなんのその。  その上三食寝床付きともなれば悪魔の羽をしおらしく折りたたんで額をこすりつけてしまうだろう。雇ってくださいと。    滅多にないレアケースに出会えた小悪魔はお陰で魔界の魔力吸収量では常に上位だ。  若輩者――悪魔の中で見れば――が大きな顔を出来るのも全ては契約者様々ということなのだ。    さらに、さらにである。彼女の勤務先である図書館は紅魔館と呼ばれる大きな館の一部なのだ。  そこの主様はレミリア・スカーレット。由緒正しき吸血鬼である。  幻想郷の中でもトップクラスの力を持つ存在。  この方が必要とされる人間。それは自殺志願者などの人間であり、妖怪が契約により差し入れてくる。  その魂を少しだけ借りれば魂のノルマも達成できる。まさに至れり尽くせりである。    こんな恵まれた環境で、けれどそれ故に決定的に不足している物があった。    ――飽きるのだ。              小悪魔×霊夢SS「契約された愛」            待っているだけで満足に動けぬ雛鳥のように餌がやってくる。それは確かに楽であろう。  しかし、小悪魔自身の満足とはかけ離れた位置にそれは存在していた。    実際、襲うのは認められている。  要はあまり派手にやり過ぎなければいいのだ。そう小悪魔は理解していた。  里を離れた一人きりの人間を襲う。しかも、悪魔は殺さない。溺れさせ契約を結ぶだけなのだ。悪魔に有利なそれを。    暇を探して里へと向かい、適当に零れ落ちた人間を襲う。  人の快楽を貪り、恐怖を糧として。溺れた人間は欲望を満たすため悪魔に奉げるのだ。己を。    そんな時間を過ごし、図書の整理と人間漁りを続ける毎日。        だが、心の渇きは潤うどころか一層の飢えを持って精神を締め上げる。        このような時だ。レミリアが霧を生み出したのは。  その時の小悪魔にとっては些細な悪戯、面白いから賛成という立場だった。  強い妖怪がもし文句をつけるなら隠れてしまおう、そう決めながら。    実際、小悪魔がどういう意見を持とうがレミリアは一顧だにしない。  だから、観客として楽しもうと決めていた。レミリアがその力を見せ付けるのか、それとも強い妖怪が勝利するのかを。        果たして、その思いはまったく予想外の形で裏切られることとなる。            やって来たのは一人の人間。実際にはまだ門で戦闘音が響く以上二人だったのだろう。    だとすれば、門の仲間を見捨ててきたことになる。  もしくは、絶対的に信頼を寄せているのか。  どちらにしろ、小悪魔はその知らせを聞いた時に興味を覚えたのだ。    その侵入者は迷子になったのか、目的であるはずのレミリアに真っ直ぐにはむかわず図書館へと迷い込んできた。  迎撃装置であるマジック・ブックに図書館妖精達。  並の人間には到底突破不可能なそれを配置につかせながら、小悪魔は待った。  図書館の本を傷めないための薄暗い中、暗闇にまぎれるようにして。      このときの小悪魔はまさか自分が人間に負けるとは考えてもいなかったのだ。      やがて、現れるその姿。  赤と白の衣装、黒髪をたなびかせ、何ともめんどくさそうな様子でやってきたのだ。  連なって襲い掛かる妖精の小弾の隙間、腕を広げ何でもないように潜り込み指に挟んだ符が飛翔し妖怪を墜落させる。無造作にばら撒かれたそれは空中で軌道を変え、狙い打つ。  トラップの本、そこから後からあるレーザー。まるで寄り添うように飛ぶ。  脚を伸ばし、背中を伸ばし。深い瞳が正面を見据え。  襲い掛かる弾丸を上へ下へ。隙間を潜り込むように、ここがまるで無人の舞踏会のように。   (これは、いけませんね)  そう考え、小悪魔は舞台へと降り立った。  目の前には先ほどまでまったくの一人舞台を演じていた相手。  紅白の目出度い巫女服を着込んで、現れた演舞の相手を実に無感動な瞳で見つめている。   「申し訳ありませんが、図書館ではお静かに願います」 「あら? ここは図書館なのね? 薄暗くて気づかなかったわ」  嘘をつけ。  小悪魔はしれっとそう答える目の前の相手、おそらくは巫女に自然と口の端が持ち上がるのを感じていた。    ――なんて大胆なっ! 単身で進入し、敵の前でその平静さとは。   「では、お教えします。ここは図書館ですよ。お静かに願います」  そっと胸に本を抱き、言葉を続ける。小悪魔の長く紅い髪がふわりと翻る。  気をつけねばならなかった。自然と笑みがこぼれてくる。目元が緩む。   「嘘ね。巫女さんに悪魔の甘言は聞かないわ」  笑いながら言い放つ。こちらを悪魔と、そう見抜いておいて、この態度。  ますます小悪魔は興味を募らせていった。   「悪魔は嘘はつかないのです。惑わしはしますが」 「図星ね。でも、ここは貴女が終わりじゃないわ」  見抜かれていた。そこまでも。まったく初めて出会った存在に。   「代わりといってはなんですが、私がお相手しましょう。テクニックには自身があります」 「単調な攻撃で飽きさせないでよね」  その言葉を合図に広がる大弾。  渦を巻きながらおし広がるその攻撃。その上に手からはクナイ弾。    必勝のそれはしかし、まったく意味を成さなかった。  クナイ弾が針に、符に押し返される。  大きく広がる大弾はその隙間を縫うように立ち尽くされて無力となる。  瞬間、理解した。勝てないと。        己の弾を弾き飛ばし、絶対の力を持って広がる攻撃。  身体が跳ねる。直撃を受け、上へと。  小悪魔はその一撃だけで満足に飛翔することも出来なくなっていた。   (あー……これは、不味いですね)  羽を持つ物であるにもかかわらず、力なく落ちてゆく身体。  図書館の床に叩きつけられる光景が簡単に描き出されていく。  あまりにもあっけなかった。  しかし、不思議と悔しくもない。  なぜならば、きっと相手は神聖な物、手出しの出来ない者だったのだろうから。    目を瞑り、衝撃に耐えようと歯を食いしばって、けれどその覚悟は無駄に終わる。           「まったく、いらない時間をとったわね」  相手の巫女だった。視界に広がる幼い顔。  まだまだ成長しきっていないことを匂わせる姿。  しかし、その少女に今小悪魔は抱えられているのだ。    刹那、何かが弾けた。  心に溜め込んでいた何かが。    心が叫ぶ。            これは、私を潤してくれる、と。            結局そのまま巫女は怪我をした自分に簡単な手当てをして、床に横たえてから飛んでいった。  その間、小悪魔は何も出来なかった。  後から聞いた話になるが、その相手の名前は博麗霊夢。幻想郷で巫女をしているらしい。  結局のところ、最後にはレミリアお嬢様も撃墜され霧は止められた。  十六夜咲夜も、パチュリー・ノーレッジも。つまりは墜とされたのだ。    ただ一人の巫女に。    その後、傷を治した小悪魔はまた博麗霊夢を見かけることとなる。  今度は喘息の調子がいいパチュリー。フランドール・スカーレットをまた倒してみせた。  さすがに小悪魔よりも強い人たちに無傷とは行かないようで、巫女服のすそは破け掠った所からは薄らと血が浮かんでいる。  にもかかわらず、霊夢は笑顔で。悠然とそこに存在していたのだ。            そのあまりに神秘的な光景を目の当たりにすることで、小悪魔はようやく気がつくことが出来たのだ。           ―――博麗霊夢を欲しているのだと。  思えば、圧倒的な実力差で小悪魔を屈服させた時。それに何も感慨を抱いていない霊夢。    思えば、力なく堕ちてゆく自分を抱きとめてくれた時。微笑みながらもどこか小悪魔を見ていない霊夢。    思えば、圧倒的な吸血鬼を前に屹立しその威圧を受け流しているのを見た時。手の届かない所で小悪魔のときとまったく変わらない態度の霊夢。    思えば、傷を負い、疲労に倒れそうな時も変わらぬ姿を見た時。何者にも屈せぬ力強さで笑う霊夢。            そのどれもが美しく、気高く、輝かしい。    誰にも触れられたことのない未開の地のように清潔で。    穢れを知らぬ乙女のように。    微笑みは大輪の花が咲き誇るかのよう。    ただ己の才のみを頼りに生き抜く誇り。        そのどれもを霊夢は気づいていない。気づきはしない。    何故ならば、それは必要ないからだ。恋も知らない霊夢。その美しさは天地を引っくり返してみても零れ落ちてくることはないだろう、そんな確信を小悪魔ははっきりと抱いていた。    だから、そんな霊夢をこの悪魔は心から欲す。                     ――――――――――――――☆――――――――――――――――――  レミリアに呼ばれてやってきた紅魔館。  前に訪れた時とまったく変わらぬ様子で咲夜に案内されて話し込むものの、時刻は昼。  眠気に負けたレミリアが就寝するとお茶会がお開きになったのはつい先ほどだった。  さて、暇を持て余した霊夢は何かに導かれるように図書館のことを思い出す。  何か手ごろな書物でも借りてみようと持ち前の勘で紅魔館の中を歩き出す。    程なくしてその入り口は見つかった。  大きく豪華な扉、その取っ手を手にとってゆっくりと回す。    その扉は予想よりも抵抗なく、すっと開いていった。   「あら? 無用心ね。戸締りはきちんとしておくべきだわ」 「そうですね。しかし、それは進入を拒む場合ですね」  その霊夢の訪問を予期していたかのように声がかけられる。  赤い髪を長く伸ばし、頭に悪魔の羽を生やし。黒の簡素な衣服。背中を見れば蝙蝠の羽、悪魔の尻尾。  魅惑的な、艶やかな姿。並みの男性であればその姿は見かけるだけで虜になる魔性の美しさ。   「ふうん? ということは歓迎されてはいるのね?」  しかし、霊夢は歯牙にもかけない。  外見の美に溺れないその結果にますます小悪魔は心が燃え盛るのを感じていた。   「予想外です。すぐに飛び込んできてくれるものと思いました」  もちろん、嘘だ。   「私は冷静なの。強姦魔でもないわ」 「強姦なんか……成立しません。もし、そうなれば私は喜び喜んで身体を開くからです」  もちろん、本気だ。   「悪魔は尻軽ね。信用ならないわ。ここの主は?」 「パチュリー様でしたら、今は喘息が悪化しまして。自室でお休み中です」 「嘘……ではないわね?」 「以心伝心、ですね。嬉しさのあまりハシタナイ言葉を口走ってしまいそうです」  歓喜。それだけが心を満たす。あの巫女が、小悪魔の心を理解している。それはつまり―――自分を見てもらえているということ。   「やめなさい。そんなことになれば夢想封印ね」 「いいですよ。悪魔は心が広いのです。その痛みも、貴女の愛。ならば喜んで受け入れましょう。歓喜の歌を歌い」  そっと胸に手を触れる。バランスの取れた丸みが弾力を持って指を押し返す。  指も膨らみも、熱く熱く蕩けてしまいそうだと感じた。   「……変態?」 「そうかもしれませんね? 貴女の蔑む言葉も私の喜び、心が張り裂けそうなほどに感じるんですから」 「……なんなのよ、もう!?」 「知りたい、ですか? 答えをお聞きになりたいですか? では、お答えいたします。私はただ」  とっさに霊夢は身構えた。何かとてつもなく嫌な予感がしたからだ。           「ただただ、貴女をお慕いしているだけ」  ぞわり、と言い知れぬ恐怖を覚え、半歩霊夢は後ろに後退した。   「ふ、ふふふっ! 信じられませんか? そうでしょうね。私達は知り合って一度か二度。しかし、それでもですね。愛しているのです、どうしようもなく。この身体、この身命をとして!」    どさっ、本が落ちる音が響く。その音を聞いてようやく、霊夢は自分が本棚にもたれかかっていたことを認識した。  これ以上、聞いていてはいけない。   「脅えているのですが? 恐怖しているのですか? 意味のないことです。これは、真実の愛なのですよ」  さあっ、と霊夢は自分の血液が引いていく音を聞いた。  甘く、甘く、深く刺さる棘。絡みつく、心に、身体に。   「理由? 簡単です。気高く、穢れなく。その美しさに見惚れぬ者など、存在しないんですよ。そしてそれは魔の物であるほどに強い」  しかし、顔が紅潮する。意味の解らぬ火照りが指先に生まれ、身体を駆け上がってくる。  血の気を失った身体はその熱に侵食され、自由を失っていく。小さく震える悪魔の紅い紅い唇から瞳が離せない。   「私はそれを手に入れたい、そう考えました。だから、告白しています。思いの丈を、悪魔は隠し切れないのです」  小さく、小さく首を振る。熱は胸を、首を這い上がってくる。もう全身に力が入らない。   「信じられませんか? しかし、証明は出来るんですよ。簡単です。悪魔は欲望に忠実なのです。ご存知でしょう? そして、私は悪魔なのです。力は弱くとも」  耳を打つ言葉。中に入り込み、鼓膜を震わせ脳を溶かす。それは真実なのだろう、かすかに働く理性で霊夢はそう判断した。   「これでQEDですね。愛しています。この小悪魔、博麗霊夢を愛しているんです。その指先、髪の一本一本に至るまで、自分の物としたい」  かつん、と足音。  霊夢が気づいたときには小悪魔はすぐ目の前にいた。  身長は霊夢のほうが高く、抱きつかれてしまえば抱え込むようになる。    触れる箇所から、熱毒が身体を犯す。燃え盛るような髪、大きな可愛らしい瞳。子供のような、しかし娼婦のような存在。    抱きしめるところから、伝わる熱。全てを吸い込む黒髪、少女らしさを残した気高き瞳。戦士のような、しかし可憐で穢れなき乙女。            このままでは、捕らえられる。            このままいけば、手中に落ちる。           「優しくします。だから、感じてください。私の指を、吐息を、肌のぬくもりを。受け止めてください、私の愛を、狂気を」  ささやく、赤い唇。  何もつぶやけずに震える唇に、それはそっと重ねられて。  二人の舌が絡み合う。唾液の混ざる音。  小悪魔は小さく歓喜の吐息を漏らし、指先を霊夢の肩に這わせた。小さく震える肩。気高く力強い肩。    霊夢は瞳を大きく見開いて、苦しさに息が漏れる。撫でられる肩。ほっそりとした小さな、しかし毒を含んだ指。        たっぷりと時間をかけ、二人の唇は名残惜しそうに離れる。    その時小悪魔は勝利を確信し、しかし恐怖に息を飲んだ。   「ッ……」  首に突きつけられた神聖なる針。正確に中央に突きつけられたそれはすこしでも力を込めれば小悪魔の喉を穿つだろう。   「……これは、何の真似でしょうか? 霊夢さん?」 「……っ、はあっ……ここ、までよ。それ以上は、させない。絶対に」 「しかし、気持ちよかったでしょう? 私の持てる手管の全てを使ったのですから」 「関係、ないわね」  先ほどまでの熱とは違う、ひどく冷静な声。  霊夢の腕が伸び、小悪魔の身体を詰めたい床に叩きつける。   「っぁ!?」  言葉にならない声が漏れ、強かに打ちつけた背中を伸ばす。  そんな小悪魔の上に霊夢がのしかかってきた。相変わらず、針は首を狙っている。   「形勢逆転、かしらね……はあっ」  紅潮した肌、おそらくは完璧に悪魔の手に落ちたはずの存在。  しかし、現実に箱悪魔は組み伏せられ、命を手玉にとられた状況なのだ。  思わず、唾を飲み込む。   「あんな真似は、駄目。巫女は、悪魔には屈しないわ」 「……殺すのですか?」  不思議と恐怖はない。この巫女に討たれたならばきっと、悪魔としての小悪魔は終わる。  絶対的な力で消滅させられるだろう。だから、喜びに笑った。   「……怖く、ないの?」 「あはっ、怖いですよ? けれど、喜びが勝るのです。貴女の手で、愛しい霊夢の手で全てを終える。甘美な響きです。  後悔するのはパチュリー様との契約を果たせないことでしょうか。悪魔生の中で唯一の汚点となってしまいますから」 「……」 「本気なんです。もし、霊夢が望むのならば愛されましょう。犯されましょう。穢されましょう。  望むのならば幼くなって、大人になって。巨乳が好きならそうなりましょう、微乳が好きならばそうしましょう。  生娘が好きならば私の全てを捨てて、生娘となりましょう。愛されるよりも、愛したいというのならば霊夢。  貴女の心の赴くままに私を蹂躙してほしいんです」 「本気、なのね。わかったわ」  霊夢は理解する。これが悪魔が愛するということなのだと。悪魔が求めるということなのだと。  そして、その霊夢の理解に押さえつけられたまま喜びを爆発させる小悪魔も、また真実なのだと。歪んでいる、しかし確かな真実。   「ええ、殺しますか? 愉しみますか? 望んでください。叶えますから」 「それは契約だわ」 「そうです、契約なのです。愛を交わす契約」 「……姿を変えられるのなら、別人になれと私が言っても?」 「至上の喜びです。望まれるのですから」 「……そう」 「契約をしても、魂はいただきません。あなたの魂を魔界になんて、おぞ気が走ります」 「……」 「お願いします。私に溺れてください。溺れさせてください」 「貴女の姿は、変わるの?」  喜びに打ち震える小悪魔。  嘘で答える霊夢。   「ええ、如何様にも」 「貴女の今の姿が良いわ」 「今の、姿ですか?」 「ええ、その姿、それが私にとっての真実の貴女の姿だから」 「ああっ、霊夢さん、そんなに私のことを。実は、この姿こそが真実なのです」 「嘘吐き」 「いいえ、嘘は申しません。今からこの小悪魔、この姿でのみ在ると誓います! 必要ならば契約とともに」    契約は絶対。悪魔の鎖。   「それで、貴女は何を望むの?」 「貴女の心の一角がほしいんです。ずっと、貴女の心に存在したい。それだけなのです。究極的には」 「駄目」 「では、貰います。私の全てを持って。貴女に至上の喜びを。代価に心のホンの一部を」 「でも、貴女を見てはあげる」 「ええ、愛します。溺れさせます。傍にはいられませんが、会いに行きます、神社に」 「神様の場所なのに?」 「ええ、私たちの敵である神ではありません。なにより、そこには穢れなき巫女がいますから」 「溺れさせるんじゃないの?」 「溺れてくれないでしょう? ですから、一生かけて、誠心誠意愛し続けるのです」 「悪魔の癖に」 「はい、悪魔ですから」  ようやく霊夢は針を収めた。  取り戻せた体の感覚、確かめるように立ち上がり、小悪魔を起こす。     「霊夢さん、愛しています」 「私は、貴女のことが嫌いだわ」 「ええ、知っています」  これは契約。    愛する悪魔と愛される穢れなき巫女の。    これは恋ではない。    純粋でもない。    貪欲な、ただ求める愛の契約。            この悪魔と巫女の駆け引きはまだ―――始まったばかり。                ――――――――――――――――――終わり?――――――――――――――――――