ルナサ・プリズムリバー。
彼女と初めて会ったのは…そう、博麗神社の近くの小さな森だった。
神社の巫女さんに届け物を渡して、その帰りに綺麗な音が聞こえてきた。辺りを見渡すけど誰もいない。
注意深く耳を傾けると、森の方から聞こえてくるのが何となく解った。
僕はよしと頷いてその音を確かめてみることにした。
音だけを頼りに、僕は発生元に向かって歩く。
まだ昼だったから妖怪はでないと考えていたからか、恐る恐るというふうには歩いていなかった。
ずんずんと森の奥に進み、そして少し開けた場所に座って演奏していたルナサに会った。
ルナサは僕には気付いた。
手にしていたバイオリン(後でルナサに教えてもらった)がルナサの手から消え、僕のところに歩いてきた。
その顔は無表情で…
「す、すみません!」
僕は慌てて頭を下げた。が、それがいけなかった。
勢いよく下げた頭で近づいてきたルナサに思いっきり頭突きをする形になった。慧音先生もびっくりな頭突きだったと思う。
ごっつんという音がするくらいぶつけ、ルナサは頭を抱えてその場にしゃがんだ。
「うーん…痛い…」
「あ、っとすみません!!」
僕はまた頭を下げた。
「ん…大丈夫、そんなに謝らなくても良いよ。」
ちょっとだけ涙目のルナサ。
「あー…うー…」
謝らなくても良いと言われても…
言葉に詰まった僕は口を動かして何とか音を出す。
ルナサは帽子を整え、改めて僕を見た。
表情はさっきよりかは柔らかくなっていた。
「君、どうしてこんなところに?」
「あの、綺麗な音が聞こえたから気になって…
 あ、演奏の邪魔をしてごめんなさい。」
「ううん、気にしないで。あまり君向けの音じゃないし…」
この時、僕は最後の方は上手く聞き取れなかった。



「ふうん、君の家は花屋をしているの。」
「そう、ルナサも是非来てよ。僕が店番の時は少しおまけしてあげる。」
僕らは互いに自己紹介をして、夕暮れまで話込んだ。
ルナサはちょっと印象は暗いけど、悪い人じゃない。
「駄目だよ、商売なんだから。」
「んー…」
ルナサだったら本当に良いと思うんだけどなあ。
「姉さーん。」
頭上から声が聞こえた。
何だ何だと顔を上げると人が2人、空から降りてきた。
「帰りが遅いから随分心配―あ、人間。」
「どうも。」
軽く2人に頭を下げる、姉さんと言っていたから姉妹なのかな?
「ごめん、ちょっと話が合っちゃって。
 君、今日は楽しかったよ。」
ルナサは立ち上がってスカートの汚れを払う。
「また会えたら、良いね。」
言葉の意味を考える前に、僕はそういった。
ルナサは僕の言葉を聞いて少し驚き、初めて笑って言った。
そうだね、また会えるよ



「ただい―」
「こんの馬鹿息子おおおお!!!!」
「ぐはああ!!!」
家に戻った瞬間に父さんの殴り。
吹っ飛ばされて、痛みを堪え立ち上がり父さんを殴ろうと僕は走る。
が。
あれ?床が起き上がってくる?
「…いやいや、俺が倒れてるんだ。」
とりあえず素直に倒れる。
「あー、父上様。何故僕を殴ったのですか?」
父さんの殺人拳を色々尊敬しながら理由を聞いた。
「なんでこんなに帰りが遅いんだ!」
「あー、ちょっと道で人と会話していまして。」
「この田吾作がああああ!!!!」
また殴られました。なんで今日の父さんはこんなに晴れ晴れな気分の吸血鬼みたいなのでしょう。困った困った。
とりあえず心配してたんだぞってのは解った。
「ふむ。」
身体を起こし、夕飯を待つ。
「ねえお兄ちゃんお兄ちゃん。」
「どうした?そんなににこにこして。」
妹が腕に異様に大きい向日葵を抱えてやってきた。今は春だから向日葵は無い筈なのに。
「いつもの緑のお姉さんからもらったの。いいでしょ!」
「緑の…あ、あの人か。」
妹は随分あの人に懐いているようで、あの人から可愛がってもらっている。
引っ込み思案の妹に話し相手が出来たというのは僕も素直に嬉しいと言える。
「良かったな、大事にするんだぞ?」
「うん!」
妹の頭を撫でてやる。
…ところで今日の夕飯はなんだろうか。
母さんが台所にいるので台所に入った。
そしたら母さんの形相がえらいことになってまた殴られた。
今日は殴られることが多いなと思った。



「ルナサ。」
「君…また会えたんだね。」
巫女さんに届けものを渡して、また聞こえた音。
それを辿っていくとまたルナサに会えた。
だけどルナサは僕に気付くとすぐに演奏を止めた。
どうしてなんだろう、恥ずかしいのかな?
「ルナサ、どうしてすぐに演奏止めるの?」
「―そう、だね。まだまだ人に聴かせられるような腕じゃないから。」
「うーん、綺麗で上手だと思うんだけどなあ。」
「あ、ありがとう…」
あ、ルナサが顔を赤くした。
そうして、ルナサと10と何回会ったとき、僕は花束を用意して自分の想いを伝えた。
「駄目だよ…」
ルナサの首は、左右に動いた。
「…理由が、聞きたい…」
僕の声は、震えた声だった。
「私は…人間じゃないから。私は騒霊なの…」
人間じゃない。
「だから…?」
震えながらだけど、僕の声は冷たかった。
「だから、何…?
 人は人しか愛せないの?人以外は愛してはいけないの?」
「え…?」
僕は声だけじゃなく、身体も震わせた。
身体が熱かった、僕は怒ったように言った。
「ルナサが霊だとか人間じゃないとか関係ないんだよ!
 僕はルナサが好きだ、大好きだ!
 君が僕のことを嫌いだったら嫌いでも良い、二度と会わなくて良い!
 だけど、人間と霊だからって…そんな理由で…!」
乾いた音が、した。
僕は声が出なかった、涙目のルナサが僕の顔をはたいた。
「君が考えている以上に、差は大きいのよ…!冷静になって考えなさい…!」
ルナサが怒った。
僕はルナサに背を向け走った、逃げた。
涙を、頬の上に走らせて。



「私は…」
よろよろといつも座っている石の所に戻り座る。
彼は泣いていた。
私も泣いていた。
どちらも、どちらも。
気付くともう夜中だ、何かが出てもおかしくない時間だった。
家に帰る気力も失せて、その場から動くこともなくひたすら爪を噛んだ。
かち、かち、かち、かち。
どこかで大きな音がした。
かちかちかちかち。
鳥が一斉に飛んだ。
がり、がり、がり、がり。
10本、全ての指の爪が深爪になった。
私はゆらりと立って、森に入った。
彼が行った方へと歩いて…
あった。
潰れたよく解らない誰かの身体。そして転がっている、音のしない花束。
その場で鎖に繋がれた霊。
私はそこで死神とあった。
ひん曲がった鎌を持った死神だった。
「おー、こいつかい。イレギュラーで死んだのは。
 名前は…と、ふむふむばっちり合ってる。」
死神は私が目の前にいても知らん顔で鎌を振り上げ霊の鎖を断った。
「んじゃあこいつを連れて帰って本日の作業は終わり―」
「待って!」
「あん?」
死神は霊をむんずと掴んだところで、私はその腕を止めた。
「待って…連れてかないで…」
「あんた、自分がしてることが解ってるのかい?」
死神は笑っていない。口調はこちらを威圧する。
「…彼は…」
「…ははあ、恋仲みたいなもんかい。
 けど、そう簡単にこいつは渡せないんだ。」
あたいも仕事だからねと付け足す。
けど、私は死神の腕を放さない。
死神と私は睨み合い続ける。
「…まったく、恋した女って強いもんだね。
 解った、あたいの負けだ。こいつはあんたの好きにしな。」
死神は霊から手を引いた。
やれやれと死神はどこかへ飛んでいった」。
私は霊を…彼をそっと抱きしめる。
「私だって、君が好きだよ…」
遅すぎた返事。
…私は彼の魂を、私の中に入れた。
彼の鼓動がする。
その鼓動を私の能力に乗せた。
今の私には相応しくない、喜びに満ちた音だった。



End…



あ、どうも。恋歌録でおなじみCait.Cです。
今回これを書いたわけは…まあリトルシナリオがさっぱし進まないので、HPの更新がまったくなくて、もしかして死んだんじゃねーの?とか思われてるじゃないかと考えたからであって以下略。
恋歌録で書こうかと思ってたルナサシナリオですが、時間の都合上で書けそうにないかなーと思いまして。番外というこういう形に。
だからいつもの怜獅君じゃありません。それじゃ恋歌録じゃないだろって突っ込まれると痛いです。
とりあえず恋歌録本編では絶対に幽香とアリスは書こうと。
来年は受験なんてものがありますから恋歌録本編みたいなのは書けない!!悲しいな。
書けて2008年の4月くらいまでかも…
リトルシナリオはヤンデレものになってます、血が出る表現はなるべく避けてますが。
それでは、また。

Thank You For Reading!!

追伸・いつもイチャスレで報告して下さっている名無しさん、本当にありがとうございます。

追伸2・音楽が作れる方、絵が描ける方募集中です。本当にお願いします…


Written By Cait.C