8月17日…そう、コミックマーケットの日のことであった。 その日神主は東方最新作『東方風神録』を見事完売させ、気分よさげにホテルへと帰ってきた。 祝杯だー!と理由をつけて差し入れられた各地の地ビールを楽しんでいると、インターフォンの甲高い音が部屋の中に鳴り響いた。 すこし酔っ払っていい気分になっている神主は、深夜の訪問客にもかかわらず何の不審感も抱かずに玄関の扉を開けた。 そこに立っていたのは稲咲しらう。幻想卿の女性を犯すことがゆるされるただ一人の男性である。 彼は尖ったノド仏を震わせて、ほろ酔い加減の神主にこう言った。 「やらないか」と。 主語も目的語も修飾語もつけずにただ「やらないか」とだけいったのである。 しかし、神主はその一言だけで全てを理解した。 酔いも一瞬で醒めた。 「ヤバイ。ヤツは。“ヤる”目をしている・・・!!!」 そう思うや否や扉をバタンと閉め、鍵も閉めた。 振り返ってみると扉が閉まっていない。というか隙間があいている。 視線をドアの縁にそって上げる。 手だ。 手が挟まっている。 その厚みからして握力は相当なものだろう。 いや“だろう”ではない。語尾は“だ”とするのが正しかった。 ドアが曲がっている。分厚い鋼鉄のドアが、である。 すくみ上がる。腰も抜ける。 しかし神主は耐えた。 ここで腰を抜かして倒れこんでしまえば即ち「お終い」である。 何をされるかわからない。 想像するのもおぞましい。 逃げるしかない!逃げるしかない! その一つのことだけが神主の頭を駆け巡った。 どうする?唯一つの入り口は怪力の変態男に塞がれている。 それどころか破られるのも時間の問題だ。 逃げ道は? 排気口?NO。そんな都合のよいものスパイ映画ではあるまいし存在しない。 窓?NO。ここは地上15階。とても飛び降りる事はできない ベランダ?NO。シーツをロープ代わりにしようにも結びつける場所が無い。体力ももたないだろう。 他には?NO。万事休す。あきらめろ。 「お邪魔しま〜す。」 なんと野太い声だろう。 私はこれからこの声の主に・・・ 神主は思った・・・こんなとき・・・紫の能力があれば・・・ ああ・・・にとりの光学迷彩でもいい・・・ そうだ・・・空を飛べる程度の能力があれば窓から逃げられるのに・・・ やがて、 神主は、 考えるのをやめた・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「よし!できた!夏コミの締め切りに間に合ったわ!」 パチュリーである。 それにしてもジョジョっぽい絵柄だ。 具体的に言うとジョジョ4部ぐらいの感じだ。 「あなたはまたそんな気色の悪いものを描いているのね・・・全く『紳士的』だこと。」 本棚の影から突然レミリアが現れた。だがパチュリーは大して驚きもせずに 「あらあら。これはこれはお嬢様・・・ふふ。あなたが言えたこと? 毎夜毎夜私の図書館に忍び込んでは薔薇族のバックナンバーをかっさらっていくじゃないの。」 と反撃を加えた。 「な!それは・・・ぐ・・・」 どうやらこうかはばつぐんだったようだ 「『それは』?『それは』・・・なに?」 「う・・・ぐぐぐ・・・わ、私は!別に男と男の絡みが好きなわけじゃない!」 「うふふ。ムリしなくていいのよレミィ?ついでに質問の答えになってないわ。」 先制攻撃を加えたはずのレミリアは、二言三言言葉を交わすうちに完全にパチュリーのペースにのまれていた。 毎晩本を読んで暮らしていたものと毎晩遊び暮らしていたものとの差であろうか。 パチュリーは勝ち誇った表情をしている。一方のレミリアは悔しそうにうつむいている。しかも涙目である。 そのまましばらく沈黙が図書館を支配した。 どこかで小悪魔が本の山を崩したらしい。どさどさと言う音が図書館内に響いた。 その瞬間、レミリアが飛び上がった。 「女と女の絡みだって大丈夫だ!」 どうやら男と男が駄目なら女と女ならいいんだろう!?と言う理論らしい。 「ちょ、あなた何言って・・・キャッ!」 ただでさえ体の弱い魔法使いの中でも特に体が弱いパチュリーである。 妖怪の中でも最強クラスである吸血鬼のレミリアに襲い掛かられたとあっては防ぐ手立てなど無い。 こんな至近距離では魔法詠唱も間に合わない。 パチュリーは一瞬にして押し倒された。 あとは自分で想像してNE☆