SSの実力向上を目指すスレ用 このシーンは丁度東方キャラの出てこない部分なのですが、よろしくお願いします。 キャラが出てくる部分はまだここよりも描写がぬるく、それ以前に書いてしまうと話の核心に触れてしまうため…… キャラ云々ではなくあくまでこの描写方法が投稿しても大丈夫かという観点で。 ついでにもっと上手に書く指南も頂ければ幸いです。 <このシーン周辺のあらすじ> 女の子(あの子)と父親と身篭った母親(私)がいました。とても幸せな家庭でした。 女の子の七つの誕生日に父親は女の子と慣習に従って山の御社にお参りに行きます。 だけど御社までの道には恐ろしい牛頭が住んでいるといわれていました。(元ネタはとおりゃんせですね) 母親は妊娠中なので、家で二人を心配しながら待っていました。 御社に向かったその日、二人は帰ってきませんでした。  以下本文 抜粋  次の朝、家の前の大きな木の下、影がひとつ落ちていた。  黒髪、赤い服。ああ、あの子、あの子の姿。  帰って来たのね。良かった、良かった。  やっとこれであの子に言える。待ちに待った『お誕生日おめでとう』。  それはまた幸せな生活を始めるための宣言で、私は昨夜から待っていた。一睡もせずに待っていた。  裸足のままで駆け出して、いつしかあの子を呼んでいた。  大きな笑みで駆け寄って、小さなあの子を見下ろした。  そこには何よりも大切なあの子が――  私の吐息がひょうと鳴る。べとりと貼りつく無表情。  あの子は確かにそこにいて、だけど、だけど、そこにいない。  私は熱に浮かされたように、何処か遠くから声を出した。 「あら、あらあら、そんなところに座っていると服が汚れてしまうじゃないの」  あの子の目玉はとろんと白い。赤い和服は滑らかに光る。 「仕方の、ない、子ね……ふふ、こんなに散らかして……」  しゃがみ込み、欠片をかき集め、かき集め。  足りない、足りない、全然足りない。  あの子の真っ白なお腹が、細い両足が、幼い右手が。  何処、何処、何処……?  あの子が無言で泣き出した。  そうそう、あの子は自分のものがなくなるとすぐ泣いてしまうのよ……。  泣かないで、お願い、泣かないで。  貴方の泣き顔は、辛い。  貴方の緋色の涙はもう見たくないの。  だから、泣かないで。泣かないでと言ったら泣かないで。  私の声が聞こえないの? まあ、お耳が無いのね、可哀想に。  時間も忘れて、血眼で、異臭の地面を這い回った。  一片のあの子も忘れぬようにと。幸福の欠片を見捨てぬようにと。  そして全てがそろえば何か奇跡が起こる気がして。私の幸せが帰ってくる気がして。  しかし太陽は何時しか西方の斜陽を為し、手元は陰りを帯びてきた。  今日はもうあの子を拾うことは諦めた。 「もう……お家に帰りましょ。ごめんね、母様、すぐに集めてきてあげるから」  柔らかくぬめるアレを私は花束のように抱き上げた。    崩れては拾い、崩れては拾い。頭はぐらぐら揺れてきた。  花束にしがみつく蝶(ルビでハエ)は一つ一つ潰して捨てた。 「ああああ……こんなに軽くなってしまって。昨日は帰って来れなくてお腹が減ったのね? 今日は……ご馳走よ」  グスリと啜る洟。クスリと自嘲。  扉を開き私は紅い花束に告ぐ。揺れる鼻声、しかし毅然と。  いつも交わしてきた挨拶で。いつもの生活に戻る期待を込めて。 「お帰りなさい」  残滓がぽたり、ぼたり。  無言。 「おかえりなさい」 血泡の乾いた唇をこじ開けた。  無言。 「オカエリナサイ」 顎を掴みゆっくりと動かす。 『   タ       ダ    イ     マ    』   キロンと黒目が転がって、私は満足げに微笑んだ。歪んだ目じりに雫が澪を一筋、二筋。  幻聴の余韻が消えぬうちに、ぐちゅりと鉄臭い接吻を。真っ赤な、真っ赤な花束へ。  毎晩この子が眠る前にするように。群がる蝶(ハエ)に目もくれず。  私とこの子の間には、既に零にして那由多の距離が。あの月よりも遥かに遠く。 「ああ、おかえりなさい……」  もう泣いてくれないこの子に。もう笑ってくれないこの子に。幸福だった日常に。   「そして……おやすみ…な…さい……ね……?」   びとん  力の抜けた腕が真紅の花束を零し、やっと私は裂帛の慟哭をあげた。          『七つのお誕生日おめでとう!』  それは永久にして無言。 <この後の話> 母親は大切な二人を失い、絶望のあまり発狂して子供を孕んだまま自殺してしまいましたとさ。 ずっと、とおりゃんせを口ずさみながら。 さらにその後は妖怪に詳しい方はわかるかもしれませんね。あるいは映画に詳しい方。 無論この部分の前後には東方キャラが出てきています。 恐らくこれは話の中〜終盤のシーンになると思われ。 さて、このシーンでは娘の死を母が拒絶しながらも認めざるを得なくなるという筋書きなのですがいかがでしょうか。 展開上、いい意味で生理的な嫌悪も表せればいいなと思っている場面です。 だけどあまり込み入りすぎると表向きでなくなってしまいますので迷っています。 色々作品も見たのですがここまで露骨なのも余りありませんでしたから。 一応私なりに丁寧にオブラートで包んだつもりではあるのですが、あくまで私見ゆえ。 あ、それと女の子はお人形じゃないですよ。念のため。 駄文、失礼いたしました。 仮題『この子の七つのお祝いに』 written by kito