紫 「こんにちは、皆様。この度は、ずいぶんと私達のことで勝手にお祭り騒ぎをしてくださいまして…おかげで宴会の口実が増えましたわ。まことにありがとうございました。つきましては、ささやかなお礼をしようと思いますの」 幽香 「私達に捧げられたあなた達の想い、魂魄のかけらをそれぞれふさわしい花に集め、美しく咲かせて彼岸へと流しましょう。そうすれば供養は済み、やがて新たな魂が還って来るわ。…さああなた達、姿を現しなさい」 一月、それは始まりの季節。一月の花に宿るは、生まれたばかりの瑞々しき魂。 霊夢 「私の足元に咲いたのは水仙。ここに集まったのは神秘を求める心。求めても求めても確かな姿なんかないけど、しょせん神秘だし」 魔理沙 「気がついたら植木鉢に花サフランが咲いてるぜ。調べるに、悔いなき青春をペンにかけた奴のだ。あん、ぱそこん?知らないぜ、そんなの」 チルノ 「あ、きれいなスノードロップみっけ。なんでも、これってきぼーの花なんだって。いつでもさいきょー、だれにも止められないあたいにぴったりの花ね!」 二月、それは目覚めの季節。二月の花に宿るは、これより伸びんとする野心的な魂。 美鈴 「花畑にかみつれが咲いてました。逆境に負けない強さを秘めて、腕を磨き続ける人の強い気が感じられます。ところで、何でこの花って妙に生暖かく私を見てるんでしょうね?」 藍 「ほう、岩れんげ。家事に勤勉な魂に好かれた、か…ううっ、こんなのばっかりだ…いつか見ていろ…」 橙 「わあ、きれいなさくら草。そういえばこれって、花言葉は何だったかなあ…うん、わからなかったら人に聞く!藍さまー、さくら草の花言葉って何でしたっけー?」(答え:若い時代と苦悩) 三月、それは区切りの季節。三月の花に宿るは、咲く前に一休みする安息の魂。 大妖精 「わあ、きくにがなのお花。誰からかしら。この質素な感じがいいんですよね。チルノちゃんは派手なお花のほうが好きみたいだけど…」 小悪魔 「あ、これは珍しい。ごぼうの花ですね。実物を見ると、思ったより綺麗。でも、いじめないで、って意味があるのに、ずいぶん茎は立派に伸びてますね。実は打たれづよいのかも…ふふ」 サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア 「私たちのところには、豆の花が咲いたわね」「必ず来る幸福、か。間違ってないわね、私たちにかける想いとしてはさ」「そりゃ、いつでも幸せだものね。でも、それを分けてあげるとは限らないけどー」 四月、それは騒動の季節。四月の花に宿るは、他人の目を引く華やかな魂。 幽々子 「桜の示すものは心の美。だからこそ散るのが早いわけね。さて、この花たちはいつまで散らずにいられるのかしら…?」 レミリア 「貝母…威厳、か。そうね、それを持つ花でなければ私の領地に咲くにはふさわしくないわ。いいでしょう、もうしばらくここにいさせてあげる。せいぜいお休みなさい」 輝夜 「福寿草…永久の幸福、ね。そうね、書かれた作品は消そうと消えない永久のもの。その作品が素晴らしいものなら、あなた達も永遠の住人と言えるわね。幸福なことだわ」 五月、それは風の季節。五月の花に宿るは、春風のように吹き過ぎて行く心地よい魂。 メディスン 「スーさんスーさん、今日はずいぶん元気なのね。え、元気じゃなくて繊細なんだって?繊細だから言葉にせずにいられない?ふーん。別に、繊細で元気でもおかしくないと思うんだけどなあ…この間永琳が言ってたんだけど」 リリーホワイト 「ひなぎくの花が咲きましたー。ふふ、この子たちったら本当に無邪気ですね。ずっと風にさわいでます。せっかくですからこの賑やかさ、誰かに伝えに行きましょう」 妖夢 「いちごの花、ですか。冥界ならザクロの花のほうがらしいんじゃないかって気もしますけど…でも、敬愛と愛情ですか。嬉しいですね」 六月、それは安定の季節。六月の花に宿るは、地に根を降ろした堅忍不抜なる魂。 アリス 「私のところには薔薇の花。我が心、君のみが知る…そう、私があなたに向ける気持ちは、あなたがそうだと思うようにしかしょせん見えないもの。現実は、常に見る角度で七色に変化する。この花がどう見えるかも、やはりあなた次第…」 慧音 「るりはこべ…追想、か。そうだ、過去を礎にしなければ未来に飛ぶのは難しい。しっかりと根を張って、大切なことをきちんと新たな種に託すんだぞ」 鈴仙 「…どうしてスイートピーなのかしらね。優しい想い出なんて、ずいぶん皮肉だわ。…でも、ありがとう。あなた達は、私にはもったいないほど、優しい想い出をいっぱい作ってくれた」 七月、それは上昇の季節。七月の花に宿るは、止まることなく駆ける強き魂。 てゐ 「えー、嘘にだまされなくなる丸葉の?(ほろし)はいらんかねー。今なら安くしとくよー?…こら、しゃべっちゃダメだってば」 ミスティア 「けしの花がずいぶん咲いたなー。確かこれ、物忘れの花だったっけ…?まあ、忘れるとまた新しく覚えられるし、悪い花じゃないよね。ちょっと摘んでおこうかな。…あれ、私どうして花摘んでたんだっけ?…まあいいや」 ルナサ、メルラン、リリカ 「みやこ草…また会う日まで、か。別に、いつでも傍にいるのに」「ズバッと参上〜♪音楽があるところならどこにでも〜♪」「…でも、レイラにお供えするにはきれいでいいんじゃない?」 八月、それは完成の季節。八月の花に宿るは、己が力を全て出し切った幸福なる魂。 妹紅 「夾竹桃…親友を大切に、か。竹と西王母の桃。私のところに来るには、まったくよく出来てるもんだよ。せいぜい不滅を楽しむがいいさ」 パチュリー 「花たばこ…君あれば寂しからず、か。ずいぶん熱烈な告白ね。でも、書物を自分のものにするのはとても難しいわよ」 咲夜 「赤いゼラニウムの意味は、君ありて幸せ。気の合う魂達が来ましたわね。君主あってこその仕える者の幸せですわ」 九月、それは転換の季節。九月の花に宿るは、未知なる険しき道を見る果敢の魂。 霖之助 「おや、りんごの花が咲いているね。こいつはいい売り物になるかな。出来れば、花より実の方が嬉しかったけどね…名声は良きにせよ悪しきにせよさして欲しくもないし、お腹はちょうどぺこぺこだし」 妖忌 「薊の花、か。…厳格なる魂達よ、心せよ。厳格さは、その鋭さ故に諸刃の剣ともなり得ると。そは、若さの次に足元に待つ罠ぞ」 阿求 「つるコベア…ちょうどいいですね。押し花にして、書きかけの記録のしおりにしておきましょうか。え、還さないとだめ?それは残念です。噂の人は、しばらく隠して期待を持たせておくのがいいと思うんですが」 十月、それは実りの季節。十月の花に宿るは、内にまだ見ぬ可能性を秘めた種子なる魂。 妖夢 「梅花か…ありがとう、高潔な方々。私の目指しているものを、こうして私のところに持って来てくれて。私もいつか梅のように美しく咲ければ、きっと桜にだって見劣りしなくなる。隣りで咲いて恥ずかしくなくなる」 リグル 「私からは、詩を詠う野ばらに虫の歌をそえてお返しするね。虫たちの宴を賑やかにしてくれたお礼だよ」 ルーミア 「あ、メロンの花だ。もう少ししたら、たくさんメロンが食べられるね。飽きるまで食べるぞー。」 十一月、それは凍結の季節。十一月の花に宿るは、時を超えてなお変わらぬ不変の魂。 レティ 「漆の花は傑作だったわね。賢明と褒めてくれてるのか、冬に近づくと危ない、と揶揄されてるのか、さてどちらかしら。感心したから、花の意味もそのまま添えてお返しするわ」 永琳 「ルピナスは母性愛。でも、悲しみの意味もあるわね。母親は、常に悲しみと切り離すことは出来ない…というところかしら。それでも、悲しみを乗り越えて何かを育てて行きなさいね。そこにはきっと喜びがあるから」 小町 「おっと…来たね、枯れ葉に枯れ草。さ、この河を渡って行きな。そうすりゃ、新春まではそう遠くないよ」 十二月、それは終焉の季節。十二月の花に宿るは、いかなる虚偽をも許さぬ真実の魂。 メリー、蓮子 「ねえ蓮子、ラベンダーの花の意味は知ってる?」「期待でしょ。だからいつの時代にも通じていたんだわ」「そうね。それじゃひとつ、ラベンダーの香りと共に」「うん、新しい季節に向けて時間旅行としゃれこみましょうか」 四季映姫 「ほう、沈丁花に宿った魂とは喜ばしい。不滅の魂達よ、あなた達はこれからも不滅であって下さい。それがあなた達にできる善行です。私はずっと見守っていますよ、私もまた不滅なのですから」 フランドール 「これで最後…クリスマス・ローズをあげる。季節は終焉の最中に振り返り、再び一月という未来の過去を追想する。そして、また時間が流れ出すの。誰一人としていなくはならない」 そして、終焉と始まりの境界で。 萃香 「全部の花が開いたところで、私がまとめて萃めて束にする。長いも短いも、派手も地味も入り混じった、ひとつの花束にして還してあげる。さあ、あんた達の目にこの花束がどう映るか、私は楽しみにしてるよ」 …この祭りに関わった全ての人々に、幻想より流れついたこの花束を私は届けよう。誰一人として、この花々にかけらを宿していない者はいない。創る者も見る者も、助ける者も、全ての魂が合わさってこの花束は出来ている。願わくは、全ての人々の目にこの花束が美しく見えますように。