@ @ @ @ @ @ 本屋 @ @ @ @ @ @ @ いつもと同じ静かな朝、そこに彼女はやってくる。 「メイド小隊A,B、ゆけー!」 ワー、キャー、ドスン、ドガン 「駄目です!抑えきれません!」 遠くでそんな声が聞こえる。にしても毎日ご苦労なこった。 「くそっ!黒い悪魔はゴキブリか!?」 いや、聞かれましてもね、人によっては違うと思いますけど。なんて思いながら俺はゆったりと仕事をやっていた。 ここは紅魔館の中の大図書館。大図書館なんていうけどその広さはどこぞの神社よりも広いかもしれない。外見は神社以下だが。 そこで俺は本の整理をしている。元々本が好きなのであまり苦にはならなかったけど。 思えば、外からやってきた右も左も解らない俺を助けてくれて、今ここに住まわせてもらっているレミリア様と咲夜さんには感謝している。 助けてくれなければ妖怪にでも食べられていただろうか・・・。 それはともかく、朝から聞こえた騒々しい音が止まった。 次に来るのは決まっている、その先を考えてため息が出た。 扉が勢いよく開かれた。こんな空け方をする人妖は紅魔館にはいない。・・・・・・例外はあると思うけど。 扉の方を見てみると、金色の長い髪に色白の肌、それと黒と白だけの服と帽子。 一見するとフランス人形の様に見えなくも無いが、黒と白の服でそのようにはあまり見えなくなっている。 「また来たの?」 この図書館の主、パチュリー様のいつもと同様の言葉、返って来る言葉はいつも同じ。 「また来たぜ」 そういいながら本棚から本を物色する。俺はため息をついて 「見るのは別にいいけど、毎回毎回散らかさないでくれ。片付けるのが大変なんだ」 毎回毎回散らかして、その上何かを持っていくんだから手におえないったらありゃしない。 そりゃあ蚊取り線香で毎回やられるリグルも切れるって。関係ないか。 「努力するぜ」 絶対しないな、こいつ。家の片付けもろくにしない人間ができるものではない。 「これと、これと・・・あとこれだな」 三冊を選んで図書館に一つしかない机に持っていく。それ以外にもあるがそこは図書館ではない。個室である。 「ほら、何してんだ?さっさと仕事しないと終わらないぜ?」 魔理沙を見ながら考え事をしていた俺に魔理沙はそっけなく言った。俺は我に返って適当に「ああ」と、答えた。 っていうか仕事が終わらないのは、あんたのせいなんだがな。 「あ、そうだ。○○、紅茶くれ」 「・・・はいはい、わかったよ」 「私のもお願い」 この本の虫型魔法使いは・・・。まぁどうせ命令だろうし、逆らったら焼かれるな。そう思いつつ紅茶を取りに行った。 「ふああ・・・、おはようございますー」 眠たそうな挨拶とともに、小悪魔がやってきた。前の時に「あんまり寝ていない」と話していたので手伝ったら、それ以来仕事のほとんどが俺に回ってきた。 「ん、おはよう。今日はA-300の本の整理だっけ?」 ここの図書館は広すぎるのでA-Zと1-500までの組み合わせで位置訳をしている。しかもまだまだ増える予定らしい。鬼か。 「・・・たぶん。それじゃあいってきま〜す」 あれは絶対寝ぼけてる、足フラフラだし。水でもかけてやろうか。 「お〜〜〜〜〜い!まだか〜〜〜〜!?」 おっと、そうだった。まずこっちが先だな。俺は急いで魔理沙たちがいるところへ向かった。 「遅い、遅すぎて死ぬかと思ったぜ」 「そんなことがあるのかしら?」 「あるぜ、たまにだけどな」 「あら、ぜひ聞いてみたいわね」 発言に突っ込みを入れたりトゲを入れたりしながらパチュリー様と魔理沙は紅茶を飲んでいる。 さて、俺はそこら辺で休むとするか・・・。極稀に来る暇な時間はすべて休憩に当てるのが俺流だ。意味無いけど。 「あ、そうだ。どうせならここで一緒に紅茶を飲みながら休むか?」 「いえ、お断りさせていただきます」 魔理沙の近くで紅茶を飲んだらどんな薬品を盛られるかわからん。前の時は犬耳が生えたな。あの時は咲夜さんに殺されかけたな。 なぜか俺が、だが。それはもう鬼神のようで・・・トラウマトラウマ。 「そういえば、なんで俺に紅茶を淹れさせたんだ?咲夜さんの方が、美味しいじゃないか」 ただ淹れるだけなら誰にもできるが、不味いよりは美味い方が良いだろう。 「あー?なんとなくだ」 「なんとなくで、淹れさせる人がいるかしら?」 「ここに居るぜ?」 また下手すれば弾幕ごっこスレスレの話が葉z待ったので意識を別のところに移す。そこで 「○○さ〜ん!ちょっと来てくださ〜い!」 遠くから普通の人では全く聞こえない音量の小悪魔の声が聞こえた。ここ幻想郷に来てから、凄く耳が良くなった。犬耳が原因だったりして。 とりあえず、ほんの少しの休み時間を惜しみながら暗闇の中へと進む。 「えっと、これをD-480までお願いしますね」 「ん、わかった」 と言われて渡された十冊の本。これじゃあ前が見えないです、鳥目以下。BGM 〜もう本しか見えない〜 つってもこれは仕事なのでやらなければいけないんだよな。 それで、運んでいってちょうどB-480に差し掛かったところで 「○○〜。『メルランのめるぽと力の関係』を持ってきてくれる〜?」 「そんな声じゃ、聞こえないと思うぜ」 残念ながら聞こえています。小悪魔と話しているときも聞こえていたんだけど。 あの本は確かSの・・・200だっけか?遠いなぁ・・・。 まずはこの本から持っていかないと、本気で。出ないと消し炭にされて浄化されてしまう。 「お、本当に持ってきたんだな。ってことは、聞こえていたのか」 「だからいったでしょ、たとえでは無しに地獄耳はいるって」 失礼な、俺の聞こえる範囲ではここから地獄まで聞こえるほどよくはない。 「たとえよ、たとえ」 俺の心を呼んだか読まないか、そんな事を言った。ちなみに魔理沙は俺が持ってきた本を読んでいる。 「ふむふむ、ワーハクタクも稀に暴走する・・・か」 なんか題名と全く違うんですけど。 「さて、そろそろ帰るかな。パチュリー、これ借りていくぜ」 「持っていく、の間違いじゃない?」 「じゃあ持っていくぜ」 「持ってかないで〜」 どっちですか。何て思いながらも仕事に戻る。あの本は返ってくるのか解らんな、なんて考えながら。 夜だろうと昼だろうと図書館には関係無い。窓なんて無いから。パチュリー様曰く、紫外線は本の天敵らしい。 そういえば、ここ最近外に出てないな、何て思いながら咲夜さんが作ってくれたご飯を食べる。うん、不味いもう一杯って言おうとしたら ナイフが頬を掠った。あっちの方が地獄耳だわ。それはともかく最近食べる時間がなくなって租借が早くなったのは内緒だ、なんとなく。 「毎日毎日ご苦労様ね」 後ろから声をかけられたので振り向く。そこには幼いながらも威厳というかオーラらしきものが漂う、レミリア様であった。歩く音は前から聞こえていたけど。 ついでにレミリア様を見て、今が夜だという事に気付いた。 「いえ、コレが仕事ですから」 「そういえば、寝てる?あなた最近寝てないでしょ」 「でも、なれちゃいましたよ」 それでもたまに眠気が来ることがあるが、その時は根性で。 「慣れって言うのが一番怖いのよ。時にそれが命取りになるかもしれないから気を付けることね」 そのあと「それじゃ」といって出て行った。とりあえずは俺を気遣ってくれた、そう解釈していいのか? そうだな、今は仕事もないし。たまには寝ておこう。 眠気はなかったがベッドに入ったらすぐに意識が切れた。 @ @ @ @ @ @ 本蟲 @ @ @ @ @ @ 今俺は魔理沙に頼まれて一番遠いところ。つまり、Z-400まできている。まったく、読みたいって気持ちもわからんでもないが もう少し近いところにしてほしい、っていうかなんで知ってんだ。 えっと、『幽々子の胃袋は宇宙』は・・・あったあった。 「んで、パチュリー。少し頼みがあるんだ」 「何?アナタからの頼みごとなんて珍しいわね」 遠くからなのではっきりとは聞こえないが声が聞こえた。面白そうだったので少し聞いてみる事にしてみる。 「少し貸してほしいものがあるんだ」 「借りていいものと悪いものがあるわよ」 「実は、・・・だ」 ん?よく聞こえなかったな。 「あなた、それは論外よ。人に聞くもんじゃないわ」 「それでも許可が必要、だろ?」 きょ、許可!?あの本なんて有無を言わさずに持っていく魔理沙が許可だと!?幽々子が小食になるくらいおかしいよ! 「そうね、駄目かしら?」 「そうか・・・」 少し残念そうに言った。・・・ように聞こえた。 「でも、・・・・・・・だし」 いまいちよく聞こえない。元々小声だし」 「そうか!?じゃあそうさせてもらうぜ」 「犯行予告はあんまり言わないほうがいいと思うわ」 「犯行じゃないから関係ないぜ。それよりも・・・、おーい!まだなのかー!?」 あ、終わったか。これは探るのはやめた方が良いな、そう思いながらパチュリー様のところに向かう。 「遅すぎるぜ。もう少し早くならないのか?」 「そうだな、魔理沙がもう少し近いところを選んでくれれば早くなるな」 なんて言いながらも本を渡す。すると魔理沙は申し訳無くなさそうに。 「あ〜、すまん。用事を思い出したから私は帰るぜ」 そう言って愛用の箒を持ってそそくさと外に出た。・・・俺の苦労は? 「丁度良いわ、○○。あなたには重要な仕事があるのよ」 「な、なんですか?」 重要な仕事って・・・魔道書の封印解いてその中の魔物を倒すとか?そういうのは小悪魔にやらせましょう。 「簡単よ。それは」 そう言って言われた仕事が、神風特攻隊よりも酷い仕事だった。 「あの本一万冊を、書いてあるところにしまって頂戴」 ぜぇ、ぜぇ。こ、コレで何往復目だろう・・・。結局一万冊といわれた量に唖然として、流石に一人では無理だという事で小悪魔と一緒に やら何やら反論して一緒に仕事をする事になったのだが、小悪魔も丑二つ時には寝てしまい、残り百冊を一人という、まだできる仕事になったわけである。 次第に数が減っていき残り十冊前後!ってところで来客が来た。 ガチャ「よう」 いや、「よう」じゃ無いって。何で魔理沙がここに居るの?良く見ると少し変だ。 「ちょっと来てほしいんだが・・・いいか?」 「来て欲しい?なんで?」 「なんでもいいだろ。YESかNOか、半分かだ」 たぶん半分は無いだろう。まぁ残り十冊だし、いいか。 「ん、まぁ別に良いよ」 「そうか!よし、それじゃあ善は急げだ!」 「うわっ!」 急に俺の腕を掴み箒に乗ってそれはもうブレイジングスターをぶっ放す勢いで紅魔館の廊下を進んでいく。 「ちょ、ま、りさ。い、くっ、てど、こ、へ?」 「決まってるだろ?外さ」 いやいや魔理沙。決まっては居ないと思うぞ? @ @ @ @ @ @ 恋色 @ @ @ @ @ @ 「はー、こうやって久しぶりに見ると星が綺麗だなー」 今俺は魔理沙につれられて紅魔館の屋上の上の箒、つまりは空中にいる。 「お前、最近外出てなかったのか?」 「見てれば解ると思うが?」 「え、あ、そそ、そうだな」 なんや今夜の魔理沙は変だ。 「それで、なんで俺をここに連れ出したんだ?」 「ん?ああ、それはだな・・・」 そこでいったん区切って、口を開けたり閉じたりしながら「あ、ええと、そのだな・・・」なんて言ったりする。早くしてくれ。 「ああ、もう面倒だ!いいか、よく聞けよ?単刀直入に言わせてもらうぜ」 なんかもったいぶった言い方に思わず息を呑む。 「私は・・・・お前の事が好きだ」 正直驚いて何がなんだかわからない。なんだって魔理沙が俺のことを好きだって?ハハハ、冗談はよしたまえそんな事がありえるわけ。 「ほ、本当だ!はじめてあった時から・・・・好きだったんだ」 「な、何で?」 頭の中がショートしている状況でようやく食いえた言葉がこれ。理由がわからなければ人に聞くべし。 「ななな何でって・・・。解らないんだよ!けど、なんか見るたびに胸がこう変な感じにだな・・・え、ええとそれと  なんだ、なにかと・・・恋をしている感じ・・・なのか?」 いやいや、聞かれてもね?してないから実際わからないんだよ?なんて俺が返答困っていると。 「で?答えは?」 こっちに顔を真っ赤にしながら近づいて聞いてきた。お、落ちるって。 「こ、答えって言われても・・・」 「今言え。今言わなければ落とした上にマスタースパーク打ち込んでなかったことにしてやるぜ?」 それだけは絶対嫌だ。けどもう心の中では決まっていたのかもしれない、あとは言語化するだけど。 「そうだな、俺の答えは・・・・・・ノーだ」 「えっ・・・」 そう言って、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした魔理沙に、軽く口付けしてこう言った。 「なんて言うわけ無いだろう?・・・俺も、もしかしたら魔理沙のことが好きだったのかもしれない」 「・・・・・・よ」 「よ?」 「・・・よっしゃーーーー!!」 「うわっ!お、落ちるって」 無邪気に大声を出してはしゃぐ魔理沙。落ちる、死ぬ。 「決まりだな!決まりなんだな!」 「男は一度言った事を曲げないさ」 「っしゃー!」 横で騒ぐ魔理沙を軽くスルーしながら辺りを見る。そこで良いものを見つけた。 「魔理沙、あれ」 「ん?おー」 目の前に写るのは眩しい日の出。 「こういうのもいいかもな」 「どういうことだよ」 「さあね」 そんな何気ない会話をしている遠くで 「若いって良いわね・・・」「急に老けないでください。それに日が出てきましたから、館に入りますよ」 そう聞こえた気がした。 hoppy end 「・・・・・・・・・・あ」 「どうした?」 「・・・・仕事、忘れてた・・・・」 hoppy end ? @ @ @ @ @ @ 蛇足 @ @ @ @ @ @ 「それじゃあ○○は私が持っていくぜ!」 「持ってかないで〜」 「なんだよ、良いって言ったじゃないか」 「私は言ってないわ」 「こういうの早い者勝ちだぜ?」 「意外とそうでもないわ」 「なんだ、やるか?」 「今日は喘息の調子が良いわ・・・」 「ハハハ、まいったな。・・・・逃げるか」 ガシッ! 『逃がさない』「ぜ!」「わよ!」 「この鬼ーーーーー!!!」 「へくしょんっ!!」