夜雀の歌が聞こえる。 「―――」  それは実に騒がしい歌だった。  聞いてて癒されることなど絶対にありえない、ハードなリズムと歌詞の歌。  だから俺は目を覚ました。 「……」  今は夜。夜というより真夜中。人間は寝る時間だ。 「安眠を妨害する奴はシメてもいいよな。死ぬほど」  呟いて俺は外に飛び出す。  そして歌の発生源を弾幕で追い払い、寝た。……あまり眠れなかった。  夜雀の歌が聞こえる。 「―――」  それは実に騒がしい歌だった。  聞いてて癒されることなどまずありえない、ハードなリズムと歌詞の歌。  だから俺は目を覚ました。 「またか……ッ!」  俺は外に飛び出していき、歌の発生源を弾幕で追い払い、寝た。しかし――― 「―――」  今日の夜雀はしつこかった。またこの近辺に舞い戻り、歌を歌い始めたのだ。 「……上等だよ」  俺は外に飛び出していき、歌の発生源を弾幕で追い払い、寝た。  だが、夜雀はまた舞い戻ってきて歌い始めた。俺は飛び出していき―――  それの繰り返しは朝まで続いた。ほとんど眠れなかった。  その日から、俺の夜は変わった。  夜雀の歌を合図として目覚め、弾幕で追い払い、寝る。次に夜雀が歌い始めるまで。  朝が来るまでそれの繰り返し。  そんな生活が、一月以上続いた。  ……体の一つや二つは壊して当然だったが、しかしまったくもって体調は良かった。 「何でだろうな……」  体が壊れない事、夜雀がしつこい事、―――そして、自分が一思いにやってしまわない事。  疑問だらけだった。  夜雀の歌が聞こえる。 「―――」  それは実に騒がしい歌だった。  聞いてて癒されることなどありえない、ハードなリズムと歌詞の歌。  いい加減聞きなれた、綺麗な声の歌だ。  だから俺は目を覚ました。 「……外は雨だぞ? 土砂降りだぞ?」  雨音の間を縫って、夜雀の歌は聞こえてくる。 「……」  気づくと俺は外に飛び出していた。 「おいっ! 今日はやりあう気は無い! だから話を聞け!」  俺の姿を認め攻撃態勢へ入った夜雀に、俺は声を張り上げる。 「……」  夜雀は攻撃態勢を解かないものの、しかし攻撃を仕掛けてくる様子は無かった。  さて何を言おうかなと俺は考え―――すると自然に口が動いた。 「お前、名前はなんていう?」 「ミスティア。ミスティア・ローレライ」 「そうか。―――ミスティア。歌うなら俺の家の中で歌え」  それだけを言って俺は夜雀に背を向け、家のほうへと歩きだした。  夜雀―――ミスティアはその後を飛んで着いてきた。 (何で、だろうな……)  横になりながら、俺は考えた。 「―――」  ミスティアの騒々しい歌を枕元で聞きながら、思った。 (……いい歌じゃないか)  そして俺は眠りについた。  翌朝、俺はひとつの質問をした。 「ミスティア。なぜお前は歌う?」  なぜあそこまでしつこく、雨にも負けず、弾幕にもめげずに歌えるのか。 「好きだから」 「……そんなに歌が好きか?」 「あなたが好きだから」  なるほどな、と思い、俺はようやく自分の気持ちを理解した。 「俺もどうやらお前のことが好きらしいぜ?」  ―――今日もミスティアの歌が聞こえる。  いつの間にか俺は、この歌が聞こえないと眠れなくなっていた。              おわり ……うむ。どうやら俺には甘いの書く才能が欠如してるようだぜ。