「こんな所に向日葵畑なんてあったんだな」 周りは一面花、花、花。こんな所もあったんだなぁなんて感心してしまう。 俺は人里では強い分類で弾幕も撃ててその辺の妖怪なら簡単に倒せる。その上空を飛べたりもする。 そのせいで周りからは避けられてしまい人里から離れたところに住むことにしたわけだ。 たまに慧音様も来てくれて色々聞いてくる、最近は妖怪が来ないとか色々と。あんたが強いからじゃん。 暇だったので色々と彷徨っているうちに遠くに黄色の絨毯が見えたからこうやって来たわけだ。 「あら、珍しいわねここに人が来るなんて」 いきなり声をかけられて後ろを向いてみると、緑髪の傘を差した女が立っていた。大体身長は同じくらいか? こんな辺鄙な所に人間が来るわけ無いな、そう思い俺は身構えた。 「あらあら、いきなり身構えちゃって。そんなに苛められたいのかしら?」 余裕の笑みを崩さないその少女はそんな事を言ってきた。ついでだが俺はマゾではない。 多少の殺気を感じて思わず後ずさりをしてしまった。 「あなたに逃げ道はない、勿論上もね」 周りを見てみると向日葵が全部こっちの方向を向いている。なるほど、種で蜂の巣にするつもりか。正直ゴメンだ。 「さ、蜂の巣になるか苛められるか、どっち?」 勿論分が悪い蜂の巣を取るわけが無い、そう思って俺は上に飛んだ。蜂の巣を選んだ人は撤収。 「苛められるほうね、私もそっちのほうがいいわ」 同時に少女もこちらにあわせて飛んできた。 「少しは楽しませてちょうだいね?」 そういって彼女と弾幕ごっこを開始した。 目の前に写るのは弾、弾、弾、花。コレは・・・無理。 「あんまり張り合いが無いわね・・・もう少し粘れなかったの?」 「む、無理だって・・・」 案の定俺は負けた、避ける事しかできずに弾の一発も撃てなかった。 あんな攻撃の中でもこの女は余裕の笑みを全く変えずにいた。やっぱり強いな、こいつ。 さて、帰らないといけないが・・・思うように体が動かない、ダメージを受けすぎたな。 「帰りたい?」 「う、まぁ」 「そう、じゃあちょっと待ってね」 そう言って少女はブツブツ呟き始めた。その後俺の体が光に包まれると同時に体の傷が全部消えた。 「どうもありが・・・あれ?」 いない、どうしたのだろうか?まぁいいか、とりあえず帰ろう。 「あの向日葵畑に行って風見幽香に出会って生き延びただと?」 家に帰ったら慧音様が居たのでさっき起こった出来事を話してみると慧音様はありえないと言った様な声を出した。 どうやらあの緑髪の女は風見幽香と言う妖怪らしく、出会って生き延びた者は居ないらしい。運がよかったのか? それにしても何かとあの少女、風見幽香のことが頭から離れない。奴は何者だ?・・・妖怪だ。 「ふむ、運が良かったか・・・本当にそうかな?・・・少し用事を思い出したのですまんが失礼する」 その後もなんかブツブツ言いながら帰っていった。とりあえず眠かったので飯を食べて寝た。 翌日も風見幽香のことが頭から離れずにいて、思い切ってもう一度行くことにしてみた。 やはり一面黄色、いつみても凄いなコレは。 「あら、また来たの?あんたも懲りないわね」 「なんか気になってな」 嘘ではない、実際思いっきり気になっている。 「そう?じゃあ前の時と同じように」 「『蜂の巣と苛められるのどっちがいい?』」 「それは私のセリフよ」 「先が読めればいいんじゃないのか?」 「読めれば心にとどめておく、外に出したら駄目よ」 なんてことを喋りながら上に飛ぶ、今度はもう少し粘ってみようか。 「じゃあノルマは昨日の二倍よ?」 「一,五倍にならないか?」 「三倍にする?」 「二倍でよろしくお願いします」 「また負けた・・・」 「当たり前よ、それに私はまだ本気じゃないわ」 あれでまだ本気じゃないって・・・こいつは底なしか。 「そういえばノルマはどうなっていたんだ?」 「覚えてないわ」 じゃあ二倍とか言わなくて良かったじゃないか・・・。 「さて、帰らないと・・・」 「その体で帰るつもり?」 「う・・・」 また動けない、前回より酷いみたいだ。 前回同様に風見幽香はブツブツ言い、体が元に戻ったと思うと消えてしまうのだ。 やっぱり首をかしげながら家に帰り、そのまま寝た。 翌日もその翌日もそのまた翌日も俺は向日葵畑に向かっていた。 日に日に避け続ける時間は延びていったがそれでも勝てた例は無い。 そんな日が続いて俺と幽香が出会って一週間が過ぎた日、いつもの通り弾幕ごっこを終わらせて幽香はいきなりこんな事を聞いてきた。 「ねぇ、こんなのやってて楽しい?」 楽しいわけが無い、こっちは必死でやっているんだ、下手したら死ぬし。しかし、なぜか俺は楽しいと感じていた。 「ああ、よく解らないけどなんか楽しい」 「こんな事が一生続いたらいいと思う?」 何でこんな事を聞いているんだ?そんな事を思いつつも正直に答える。 「そうだなぁ・・・続いたらいいと思うな」 どっかの蓬莱人みたいにはなりたくないけど。 「そう。でもそれは無理。なぜなら私は妖怪、あなたは人間だもの」 「だけど何もやってないのに無理と決め付けないほうがいいぞ?」 「そう、そうやって人間は幾度と無く無理をしてきた。得るものもあったけど失ったものもあったわ」 「それでも、それは後のためになる。無理と決め付ける前にやってみるのも人間のいいところだ」 「そうかもしれないわね。さて、今日はやる事があるからさっさと帰りなさい。でないと花にするわよ?」 「はいはい、解りましたよ・・・。・・・・・・あ」 「どうしたの?」 「・・・体が動かない」 「ふふ、しょうがないわね」 そういえばこんなに話したことはなかったな。回復されながら俺はそう考えていた。 たしか、ここら辺だったわね・・・。まったく、ここには花が無いのかしら? あ、あった。相変わらず中は散らかってるでしょうに。そう思いながらもドアを叩く。 「あー?って幽香か珍しいな。それで、何か用か?」 毎度毎度この接客はなってないと思うと思うけど表情には出さない。 「・・・魔理沙、ちょっと頼みたい事があるのよ」 他人に頼むのは癪だけど今の状況じゃあそんな事は関係ない、あの人が言っていたようにやるだけのことはやってみようと思う。 「・・・・わかった、中に入れ」 散らかってるんでしょうね、そう思いながら私は中に入った。 「へぇ、幽香も変なこと言うわね・・・元々変な奴だけど」 なんてことを博麗神社の巫女、博麗霊夢と話していた。霊夢とはお茶のみ仲間、なにかとお世話になることが多い。 「なんだろう、何か意味しているとは思うけど・・・変だな」 「私にしてはあんたと幽香が出会ってること自体が変よ」 毎回容赦がない。まぁそれがいいんだけど。 「でも、そろそろその答えが出てくるかもしれないわ」 「何でそんな事が解るんだ?」 「勘よ」 霊夢の勘は良く当たる、注意しておかないと。・・・っとそろそろ時間だ。 「さて、そろそろ行きますか」 「待って、行く前に伝えておくわ」 「なんだ?」 「あなたはまだ死んではいけないわ、死んだら悲しむ人が居る。私も悲しいけどそれ以上に悲しむ人が居るわ。それだけ」 「ああ、肝に銘じておくよ」 霊夢の話に多少の疑問を感じながらも俺は幽香の居るところ、向日葵畑に向かった。 「遅かったわね、待ちくたびれたわ」 「別に決めてないだろ?」 今回は雰囲気が違う、話をしていてよく解った。 「そうね、それより今日はあなたに言いたい事があるの」 「?」 「私は、どうやらあなたの事が好きみたいなのよ」 「へ?」 いきなりのぶっちゃけ発言に脳内が混乱中です。整理中、整理中・・・。 えっと、つまりは俺の事が好きだってこと?よくみると幽香の顔がほんのり赤い。 「それであなたの事が好きだから私はあなたを全力で倒す事にしたわ」 意味が解らない、話が飛躍しすぎですよ? 「な、なんで?」 「愛ゆえに、かしら」 一瞬頭の中で慧音様が愛ユエニ!愛ユエニ!と叫びながらバズーカを持って暴走している姿が見えた。 あー、里の子供達がみたら泣くわ絶対。 それはそうと、愛ゆえに全力で倒して何をするつもりだ? 「そういうことだから、覚悟してもらうわよ?私の本気だから気をつけることね」 気をつけるも何も死ぬって。 「それじゃあいつも通り、『蜂の巣と苛められるのどっちがいい?』」 「苛められる以外の選択肢は無いと見えるが」 「大・正・解。それじゃあ行くわよ!」 何処を見ても弾、花、弾、花。かろうじて避けているけど・・・到底無理。 っと、危ない危ない。こちらも攻撃しなければ意味がない・・・か。 「どうしたの?避けるだけじゃあ終わらないわよ」 っていうか殺気が酷いよ、あんなの避けるの厳しいって。 この弾幕避けていると解るが今までやってきた弾幕は甘っちょろいものだとよく解った。 それでも何度もやったから避けるのは・・・慣れてきた! 「っ!う、うわっ!」 突如バランスを崩して俺の体がよろけた。無論この隙を逃す幽香ではあるまい。 「それじゃあコレでお終いにするわね」 いきなり幽香が二人に分身した。その後すぐに強大な魔力を感じた、拙いこのままじゃ・・! 『デュアルスパーク』 二体から出た光の弾道は俺の体を貫くと思ったら俺の体、大体胸辺りに吸い込まれていくように入っていった。 な、なんだこれは? 「・・・・!」 デュアルスパークが終わったと同時に俺の体に激痛が走った。痛すぎて声も出ない。 体が動かない、だんだん意識も薄れてきた。俺は、死ぬのか・・・・。 (いいか、まずお前の魔力を対象にぶつける。魔力の量は大きいほうが良いが多すぎたって良いわけじゃない、大きすぎると魔法を使う前に体が破裂する。  あと、一度でも本気を見せた奴じゃないと成功はしないぜ) とりあえず下準備はコレで良いのかしら・・・。あとは、えっと。 (次に対象にこの魔方陣を書いた後に呪文を唱える) 魔方陣を書いてっと、えっと呪文は・・・。 「ブツブツ」 これでよしっと、それで最後は・・・。 (ここまで来たらあとは簡単だぜ、相手にもよるけどな。何をするかって言うと) 「私の初めて口づけ、あなたにあげるわよ?感謝しなさいな」 (キスをするんだぜ) 『契約執行』 う〜ん、何があったんだろう妙に意識がはっきりする。死んだんじゃなかったのか? 起き上がってみると幽香が笑いながらこっちを見ている、そんなに面白いか。 ひとまずこの事が起こった元凶に話を聞かないと。 「なんで生きてるんだ?俺は」 「そうねぇ。私が生かしたから、かしら」 「生かした?」 ってことは普通なら死んでるってことか。 「そう。そのおかげでこれからあなたは私の従者よ」 「従者?」 なんかどっかのメイドみたいだな。そもそも俺が従者って・・・。 「あなたと私は正式に契約をしたの、だから私の従者」 「いつだ?」 「あなたが気を失っている間」 おいおい、有無を言わせないで契約ですか。 「これであなたと私はずっと一緒よ。ずっとね」 「ずっと一緒か・・・」 「うれしくない?」 「うれしいさ、だって俺も幽香のことが、・・・好きだからな」 「ふふ、ありがと。でも、主人には敬語で」 「はいはい。わかりました、幽香様」 これでずっと一緒にいられるわけか。なんだか楽しくなってきた、なぜかは知らないが。 「さて、それじゃあまたやりましょうか、傷も治ってるし」 「ま、また?」 「敬語って言ってるでしょ。大丈夫よ、手加減してあげるから」 「わかっ、わかりましたよ・・・」 「いま間違えそうになったでしょ」 「いえ、別に」 そういって二人は空へ飛び。 戦い合う。 蛇足 「へぇ、そんなことがねぇ・・・」 「まぁ今となれば良い思い出かな」 あの時のことはもうすでに良き思い出だ。 「この後ろで寝ている奴がねぇ、ありえないわ」 「すー、すー・・・」 幽香様は俺におんぶされながら静かな寝息を立てている。まったくあの時の威厳は何処へやら・・・。 「本当だ、あの威厳は何処へやらだな」 「でも、前の幽香は人前で寝るなんてことしなかったわ」 「そうだよな、なんでこうなったんだろう・・・はぁ」 「紫と結構似ているかもしれないわね」 「あのスキマ妖怪と?」 「紫だって最初からあんなにだらけてた訳じゃないのよ。昔はあの姿から想像もつかないようだったって言ってたわね、式が」 「それと何の関係が?」 「鈍いわね、紫も幽香も強い妖怪よ。強い妖怪ほど孤独感を嫌というほど味わっていたから、ずっと一緒に居られる人物を見つけると  こうなるのかもしれないわね。長生きすればするほど内面は弱くなっていくのよ、別の意味でね」 「そんなものかな」 「永遠に一人で生きるなんて到底無理ね、だからあなたも幽香を大切にしなきゃ駄目よ?」 「主人を大切にしない従者が居ると思うか?」 「私には解らないわ」 「霊夢らしいな。さて、帰るとするよ」 「また来なさいよ。ご主人様と一緒にね」 「ああ、またな」 「あーあ、幽香様ももう少し威厳を持ったっていいんじゃないだろうかな」 「すー、すー・・・ずっと一緒だよ?すー、すー」 「ええ、ずっと一緒ですよ」 このままずっと、一生一緒ですよ。