「…何じゃこりゃぁぁぁぁああ!?」 とある俺の一日は、そんな叫び声から始まった。 ここは魔法の森、大声を出して迷惑する奴なんてさっぱりといない。 しかし、今の俺は叫ばずにはいられなかった。 魔法の森では、様々なものが取れる。 そう、例えば怪しいキノコとか、怪しい薬草とか、怪しい花だとか。 もしかしたら、俺はそんなやばい物を食ってしまったのかもしれない。 今の状況を説明するなら、まずベッドには俺がいる。 目の前には鏡がある。その鏡には一人の子供が写っている。 俺が手を上げれば、鏡の中の子供も手をあげて、俺が頬を抓れば その子供も、抓って痛みに顔を歪める。 そう。 朝、起きたら俺は縮んでいたのだ。 高校生探偵が薬を服用させられ眼鏡をかけて無茶苦茶な偽名を 名乗ったどこかの漫画の様に。 「…どうなってんだ、こりゃ?」 服のサイズはぶかぶかだ、そもそも俺の今の身長はせいぜい 小学校に通う人間のサイズ――普段の俺に合うはずがない。 「ちくしょう…頭も痛ぇし…こりゃ、やばいか?」 体が縮んだ上に風邪のような症状、俺は少年探偵じゃないんだけどな… こんな時に頼みの綱は…… ガチャ 「邪魔するぜー」 来た。 それはもう、ありがたいくらいに普通に来た。 霧雨魔理沙だ。 彼女ならこの状況を打開してくれるかもしれない! 「魔理沙ー!助けてー!」 恥も外聞もあったもんじゃない。 この姿になってから、そんな物は捨てた。今は一刻も早く元に戻りたい。 「どうしたんだ…って、何だお前もか」 俺は目の前に呆れ気味に呟く少女に対して、目を疑った。 少女――霧雨魔理沙は心なしか、昨日会った時よりも背が縮んでいた。 …それが意味するところは、つまり。 「…魔理沙も縮んだって事か」 「あぁ、ちょっと色々あってな」 「風邪も引いた。助けてくれ」 何度も言うが、既にプライドなんてない。 プライドって美味しいのか? 「まぁ、助けるのは構わないんだが…どうせ私が原因だし」 「…おい、何か重要な事を言わなかったか?」 「あー、別に何でも無いぜ?」 …間違いない。俺をこんな風にしたのは魔理沙だ。 原因は昨日、多分夕飯にそれとなくあった、あのキノコか… 困ったな。 まさか魔理沙も縮んでいるとは思わなかった。 「…とりあえず、風邪薬くらいは頼みたい。どこぞの薬剤師でも 兎でもいいから、クスリー」 自分で言ってなんだが、どこかのジャンキーのようだ。 だが、それだけ風邪が辛い。 縮んだ事と、風邪による二重の苦輪だ。 「仕方ないな、少し待ってろよ。すぐに元に戻りそうなのと、クスリを調達してくるぜ」 クスリの部分を強調して言われた。 …このままだと本気でやばい薬を持ってきかねないな。 「待て、やばそうな薬は持ってこなくていい。とりあえず元に戻る方が先だ」 十中八九、また元に戻るためにはキノコを食べるだろう。 「それじゃ、行ってくるぜ」 魔理沙は子供が被るには大きい帽子を押さえて出て行った。 「…大丈夫か?」 そんな一抹の不安が過ぎったが、俺はひとまず彼女に色々任せる事として 眠る事にした。 『よっ、遊びに来たぜ』 あぁ、これは昨夜の出来事か。 「遊びに来たじゃなくて、俺のところの、魔導書を取りに着たんだろ?」 『ちゃんと色々払うって。そうだな、夕飯で手を打たないか?』 「…じゃ、それでいいや」 そうして振舞われた、いくつもの料理。 彼女は楽しそうに料理を作っていた。 『ほら、これでいいか?』 「あぁ、ありがとう魔理沙。本を借りるなら勝手に持っていけ」 あぁ、俺はこんな彼女に惚れていたのかもしれない。 『まったく、栄養くらいちゃんと考えて摂るべきだぜ』 「…心に深く刻んどくよ」 もっとも、彼女の顔を見ていて、あまり話は聞いていないが。 「それじゃ、お前も食うだろ?」 『あ、あぁ、いただくぜ』 挙動不審だったのは、縮む恐れがあったからか? …ちょっとだけ抜けているかもしれない。 「よっ、起きたか?」 目の前にはちっちゃくなった魔理沙がいた。 「…何とか病状は持ち直した」 というほど、重症ではないけど。 彼女は手にお盆を持っていた。 …キノコだった。 お盆の上の皿、それに乗っているのは、まるでどこかの配管工兄弟が 好んで食べるような、そんなキノコ。 「単なる巨大化狙いか?魔理沙」 「1UPはしないぜ?」 会話がかなりずれている。 ともかくそのキノコは半分に切られているため、恐らく、半分は 彼女が食べるのだろう。 そのキノコ、味は普通だった。 普段食べているキノコと何ら味は変わらない。 無論、生で食うわけもなく、焼いて食べた。どこかの配管工兄弟は 生で食っているらしいが。 「ほら、薬」 永遠亭まで行って、わざわざ薬を貰ってきたらしい。 それにしても、小さくなった魔理沙に違和感を持たなかったのだろうか? 俺なら多分、持つけど。 薬は普通の錠剤だった。 苦い。苦しい。喉が痛い。 さっきのキノコとは大違いだった。 「さ、寝るぜ」 「は?」 「このキノコの効果が現れるまで時間がかかるんだ。だから寝て待つ」 そう言いながら、魔理沙は俺のベッドに入り込んできた。 「…おい。何考えてるんだ?」 「はぁ、お前もうるさいなぁ。第一、お前は病人だろ?病人は寝るもんだぜ」 「風邪がうつるぞ」 「その時はその時だぜ」 帽子を取ってわきに置く。そして俺の枕を取ると、勝手に横になった。 添い寝という奴か。 「…俺が襲うとか考えてないのか?」 「お前なら襲わないぜ。それに、この姿で襲ってもしょうがないだろ?」 それもそうだ。 そんな背徳的すぎる事、チキンな俺には出来そうもない。 「それに、お前じゃなかったら、私もこんな事しないぜ」 「はいはい…お休みなさい」 最後の一言はかなり嬉しかったが、あえて顔に出さないようにして 俺は目を閉じる。 「ん…」 最後に魔理沙は俺にキスをした。 こんなことなら、たまには風邪や、変なキノコも悪くないかもしれない。 後書きと言う名の遺書。 とりあえず、リクエストにお答えして書いたものです。 587の方が、ひらがなでまりさと書かれたので、 敢えて身体を縮ませました。 …別に他意はありませんよ? そして、巷の看護ブーム(?)によって看護ネタです。 587の方、期待していたら申し訳ありません。 自分の力量ではこのくらいが精一杯でした。 それでは次は霊夢を書こうと思います。 多分、今度は看護ネタじゃないと思いますけど…看護ネタで見たい人っているんですかね? 是非に看護ネタでという人はどうぞ。 いざとなったら、今暖めているネタと同時に書きますから。