Stage5 白玉楼階段の幻闘   BGM:東方妖々夢 〜Ancient Temple 妖夢 :あなた、いい春を持ってるわね。     ちょうどいい     あなたの持ってるその春を     すべて頂くわ! リリー:すごいです...     こんなにいっぱいの春、私も見たことがないです。    半分幻の庭師     魂魄 妖夢 妖夢 :みんなが騒がしいと思ったら     外の世界の妖精が迷い込んでたのね。 リリー:あっ、春で... 妖夢 :知ってるわ。春が来たんでしょ?     リリー:う、先に伝えられてしまいました。 妖夢 :あなたは春を伝える妖精ね?     なるほど、どうりでいい春を持ってるわけだ。     でも、ここに来る前に結界があったはずだけど、     どうやってきたのかしら? リリー:あれ、上をくぐったら通り抜けられましたよ? 妖夢 :... リリー:ところで、なんで地上はまだ冬なのに、     ここはこんなに暖かいんですか? 妖夢 :それは、私が春を集めたからよ。     ここには幻想郷中の春が集まってるわ。 リリー:春がいっぱいで、みんなに伝え甲斐があります。 妖夢 :残念だけど、ここにある春は渡さないわ。     この春は、西行妖(さいぎょうあやかし)を     満開にするために集めたの。     これだけ春を集めたのに、西行妖は満開にならない。     あなたの持っている春があれば、別かもしれないけれど。 リリー:私の春は渡しませんよ。     それに、春の独り占めは駄目ですー。     春はみんなのものなんですから。     返してください。 妖夢 :そう言われて、せっかく集めた春を返す奴はいないわ。     そっちが渡さないつもりなら、私が奪い取るまで。 リリー:だから、渡しませんってばー。   BGM:広有射怪鳥事 〜Till when? 妖夢 :...妖怪が鍛えたこの楼観剣に     斬れぬものなど、そんなにない!  少女弾幕中... リリー:これで思う存分、春を伝えられますねー。 妖夢 :まだよ。お嬢様がいる限り、集められた春は取り戻させはしないわ。 リリー:お嬢様?     この桜並木の先にいるんでしょうか? Perfect Cherry Blossom 彼の世に嬢の亡骸   BGM:アルティメットトゥルース 妖夢 :これ以上踏み込んで     お嬢様に殺されても知らないわよ! リリー:でも、進まないと春は取り戻せないです。 リリー:こんなに春があっても満開にならない桜なんて。     頑固な木もあるんですね。  ? :本当、まるであなたみたいな桜ね。 リリー:!?    幽冥楼閣の亡霊少女     西行寺 幽々子 幽々子:春が集まっても満開にならない、頑固桜。     春を伝えようと躍起になる、頑固妖精。     ほら、そっくり。 リリー:あなたが、さっきの人が言ってたお嬢様? 幽々子:半分正解ね。妖夢は半分は幽霊だから。 リリー:でも、半分は正解してますから、     ここに集まった春を返してくれますよね? 幽々子:この春はまだ返せないわ。     西行妖が満開になるまであと少し。     それに、春がここにあるほうがあなたにとっても     いいんじゃないかしら、春の妖精さん? リリー:どういう事ですか? 幽々子:ときに、あなたはお花見というものをご存じかしら? リリー:お花見...何ですか、それ? 幽々子:春にしかできないとっても楽しい事よ。     もったいないわね、お花見を知らないなんて妖精生の     半分は損してるわ。 リリー:そ、そんなに損してるんですか!?     なんだかショックです。 幽々子:でも、あなたが知らないのも無理ないわね。     あなたは春の間、存在できないから。     春が来たことをみんなに伝えて、そして消えていく存在だから。 リリー:... 幽々子:でも、春がここにあれば、いつまでも消えることはないわ。     ここには桜がいっぱいだから、お花見もできる。     今なら、満開の西行妖と封印が解けた何かのおまけ付きよ。 リリー:...確かに、それはいいかもしれないです。     消えることなく生活できるのも、お花見をするのも。     でも、それは駄目なんです。     春はみんなのものなんです。     幻想郷中に、春が来るのを待っている人がいるんです。     私は、みんなのために春を伝える妖精。     だから、春を独り占めするのを黙って見過ごせないです! 幽々子:ふふふ、やっぱりあなたはこの西行妖と同じ、     頑固者同士お似合いね。   BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life 幽々子:でも、その頑固さは時として命取りになるわ。     桜の花がすぐ散ってしまうように、命というものは儚いもの。 リリー:たとえ儚い命でも、みんなに伝える春を取り戻すこと     くらいはできます。 幽々子:あなたにその程度の力があるかしら? リリー:幻想郷の春を返して、花の幽霊さん! 幽々子:幻想郷の春は返さないわ、春の妖精!  少女弾幕中...    身のうさを思ひしらでややみなまし         そむくならひのなき世なりせば    ―― たとえ、誰もが私のことを知らなくても...       たとえ、永い眠りの時が訪れようとも...       たとえ、この身が消えようとも...       春を喜ぶ、みんなの笑顔が見たいから...       私は、春を取り戻すために、戦います!   BGM:ボーダーオブライフ ここは博麗神社の境内。 境内全体を覆っていた雪はすっかり溶け、雪のかわりに桜吹雪が舞っている。 結局、西行妖は開花したが、満開には至らなかった。 集められた春は幻想郷中に散らばり、幻想郷に遅い春がやってきたのだ。 神社の境内裏では、霊夢が桜の花を眺めながら午後のお茶を満喫していた。 傍らに魔理沙の姿も見える。 霊夢 :おかしなこともあるものね。     つい最近までずっと降ってた雪が、今ではすっかり桜に取って代わられてるなんて。 魔理沙:まあな。なんだか、たちの悪い魔法みたいだぜ。 霊夢 :魔理沙、あなた、また何かやったんじゃないの?     雪をずっと降らせる魔法の失敗とか、桜の花を咲かせる魔法の失敗とか。 魔理沙:何でもかんでも失敗にするな。     そんな魔法が見つかってれば、とっくの昔に実践してるぜ。 霊夢 :実践するな。 幽々子:まあまあ、ケンカしないで。     桜の花を見ながら飲むお茶は落ち着いて飲まないとおいしくないわよ。 妖夢 :幽々子様はお茶よりも桜餅の消費のほうが多いですよ。 幽々子:桜餅も立派なお茶よ。 霊夢 :って、あんたら誰? 幽々子:亡霊よ。今日からここでお花見をすることにしたわ。よろしく。 霊夢 :帰れ。 魔理沙:なんだ?     てっきり、霊夢のひいばあちゃんあたりが現れたのかと思ってたぜ。 妖夢 :ひいばあちゃんって、そんなに年取ってないわ、失礼な。 霊夢 :あのね、亡霊だか自縛霊だか知らないけど、そんないわくありげなのが、     神社で花見なんかしてんじゃないわよ。 幽々子:でも、あの白い子がお花見するならここがいいって言ってたのよ。     確かにここの桜は見事だわ。花の色といい、枝のつき方といい、     根元に埋まってるものの熟成具合といい。 霊夢 :なんか嫌なほめられ方ね。 魔理沙:しかし、白い子って誰だ?     このあたりに白いやつなんていたかな? 二人は知らない。 幻想郷に春を伝えたその存在を。 二人は知らない。 幻想郷の春を取り戻したその少女を。 ばさりと音がした。 大きな鳥が翼を広げ、空へ飛び立つ音。 その音が大きな鳥によるものなのか、はたまた別のものなのか。 それを知っているのは、この中に一人くらいしかいないだろう。 ENDING