「朝ね」 アリスの一日は穏やかに始まった。 「トイレも済ませた。着替えも済んだ。  さて、今日はどこに出かけようかしら」 しかし、そんな穏やかな朝は突然の来訪者によって唐突に終わりを告げた。 (ビシィィッ!!) 「何!?」 音のした先を見ると、壁には矢文が刺さっていた。 「何かしら」 そう言うと、アリスは壁に刺さっていた矢を抜き、手紙を読み始めた。 ――霊夢を誘拐した。助けたかったら地下室に来い。 「なんて事! 助けなきゃ!」 アリスは友である霊夢を助けるため、地下室へと急いだ。 「あ! 鍵!」 アリスは急ぐあまり鍵を忘れていたが、 何故かその鍵が地下室の前に落ちていたのだ。 「何でこんな所に……。罠? でも……」 友が捕まっているのだ。あまり悠長もしていられない。 アリスはそう思い、思い切って鍵に駆け寄った。 しかし…… (ガタッ!) 「何!? キャァァァァアアァァァァァ!!」 突然落とし穴が現れ、アリスは暗い闇の中へと墜ちてしまうのだった……。 ―― 「ん……ここは?」 アリスが目を覚ますと、そこは暗い闇の中だった。 しかしよく見ると、少し先には小さな明かりがあり、 黒い服を着た人が座っていた。 「よう」 「魔理沙?! あなたが私を呼び出したの?」 「そうだぜ。フフフ――」 「あなた、何を考えてるの! 許せない!」 アリスは魔理沙に上海人形を向けようとしたが…… 「ない!?」 「フフフ、上海人形を探してるのか?  それならここにあるぜ」 「?! 返しなさいよ!」 「フン。立場がまだ分かってないようだな。  霊夢を助けたくはないのかい?」 「クッ!」 「ほら、お前の大好きな霊夢はあそこに居るぜ」 「!?」 魔理沙が指差す方向には、無惨にも拘束された霊夢の姿があった。 手足を縛られ、目隠しをされ、口はテープで塞がれていた。 「霊夢!」 「おっと! 動くなよ。ここはわたしの結界の中だ。  念じるだけで霊夢の肚腸をブチ撒けることだってできるんだぜ?」 「……クッ。何が望みなの!」 「簡単な事だ。ちょっと実験に付き合ってもらえればいいだけだぜ。  この薬のな……」 魔理沙は懐から小さな薬壜を取り出した。 中には紫色の液体が入っており、 少し光が揺らめいているようにも見える。 「何なのよ、その薬は」 「説明は飲んでからだ。ほら、落としたら殺すぜ」 そういうや否や、魔理沙は薬壜をアリスに向かって投げつけた。 「うわっ!」 突然の事でアリスは壜を取り損ねたが、 地面に落ちる前に辛うじて取る事ができた。 「ナイスキャッチ」 「ふざけてるの! いきなり投げないでよ!」 「フン。いいから早く飲みな」 「……」 「飲まないと……」 「ンッ!! ンンンーーッ!!」 「霊夢!!」 突然霊夢が暴れ始めた。 その顔は苦痛で歪み、縛られた手足からは血が滲んでいる。 「止めて! 飲むから! 飲めばいいんでしょ!!」 「最初っから素直に飲んでればいいのにさ」 「…………ンッ……ン……」 霊夢は落ち着きを取り戻し、体を力なくだらりとさせた。 「霊夢……。きっと助けてあげるからね……」 「早く飲めよ。じゃないと」 「分かってるわよ!」 アリスは壜の蓋を空けると、一口で一気に飲み干した。 「いい飲みっぷりだぜ」 「ふん。これでいいんでしょ! 早く霊夢を解放してよ!」 「まだだぜ。言っただろ。実験に付き合ってもらうって。  解放するのは実験が終わってからだ」 「ふん。で、何の薬なのよ」 「そのうち分かるぜ」 「勿体振ってないで早く……んっ!」 アリスは大きく体を震わすと、突然その動きを止めた。 いや、体を動かそうにも、口以外はピクリとも動かないのだ。 「何よ……これ……」 「フフフ。人を人形みたいに操る魔法だぜ。  但し、口だけは自由だけどね。  アリスの魔法を見て思いついたんだぜ」 「……くっ……体の自由を奪って何をさせるつもり!?」 「実験だって言ったろ」 「それだけでここまでするの?  霊夢を攫って! 人の家に落とし穴まで作って!!」 「フフフ。実験ついでに面白い趣向を凝らしてみたまでさ。  そして……」 「ンッ!」 魔理沙が手を翳すと、アリスは霊夢のそばへと歩き始めた。 「何をするつもり!!」 「本人のやりたくないことをどこまで強制させられるかの実験さ」 「まさか……」 「なに、安心しろ。霊夢を殺せとは言わないぜ。  とりあえずは目隠しと口のテープを外せ」 「ンッ!」 霊夢の前に到達すると、アリスの手は霊夢の目隠しを取った。 恐怖に怯える霊夢の目には、既に懐かしいとさえ思ってしまうアリスの顔が映った。 そして、アリスの手は霊夢の口に貼られたテープに向かい…… 思い切り引き剥がした! 「キャァッ!」 霊夢はようやく口も解放されたが、 久しぶりの第一声はその痛みによる苦痛に歪んだ悲鳴だった。 「引き剥がしはOKと……」 そんな状況でも、魔理沙は実験ノートに淡々と結果を書き留めている。 まるで何事も無い平和な日常を日記に書き留めるかのように……。 「霊夢! 大丈夫!」 「ん……何とか……。状況はあまり大丈夫とは言えないけど」 「さて、感動の会話もここまでだ。次の実験に移るぜ」 「これ以上まだ何をやらせる気なの!」 「これ以上って、まだテープを剥がさせただけだぜ。  実験はこれからが本番だぜ。  お前、霊夢の顔にションベンしろ」 『!?』 魔理沙は妙な口調でとんでもない事を言い出した。 「何でそんな事を……ウッ!」 そんな声とは裏腹に、アリスの手は下着を脱がし始めた。 「ちょっと……! 本気でこんなことさせるつもり……!」 アリスは口では盛んに抵抗するも、 体はストリッパーの如く滑らかな動きで準備を完了させてしまった。 霊夢の目の前には、綺麗なピンク色のアリスの花弁が広がった。 「やだ! やだ!」 「ちょっと! やめて! お願いだから!」 「フフフ。嫌だぜ」 体を拘束された霊夢と体の自由を奪われたアリスには、 もう抵抗する手段は口しか残っていない。 しかし、それも魔理沙の前には全くの無力だった。 「脱いで顔を跨ぐのはOK……と」 淡々と状況を記録する魔理沙。 しかし、この状況になって、何故かアリスは不敵な笑みを浮かべた。 「ふふふ。あはは! 残念ね、魔理沙。  この状況になって思い出したけど、既にトイレは済ませてるわ。  出したくても何もでないわよ!」 アリスは勝利宣言をするかのように魔理沙にそう言い放った。 これでとりあえず一難は逃れられる――アリスはそう思った。 しかし、魔理沙は笑顔を一段と綻ばせ、アリサには信じられない一言を言った。 「なるほど。それは好都合だぜ」 「え!?」 「これで強制排尿できるかの実験もできるぜ」 「なっ……くぅっ!!」 アリスは突然襲った尿意に顔を顰めた。 「は……アァッ! こ、こんなことまで!!」 「強制排尿もOK、と。なかなか順調だぜ」 「何!? え? イヤ! イヤ!」 「霊夢! 逃げて! 霊夢!!」 霊夢の手足が縛られている事くらいはアリスも分かっていた。 しかし、それでもアリスはそう叫ばずには居られなかった。 「あ……ああっ! 霊夢! ……霊夢……ごめんなさい!!」 尿をこらえる自由すら無かったアリスの体は、 冷酷にも霊夢の顔に排尿を始めた。 (シャーーーッ!!) 「イヤアァァッ! やめて! やめ……ゴボッ……ちょ……ゲホッ……やめてぇっ!!」 「ああっ! 霊夢! 霊夢! ごめんなさい!」 壊れたレコードのように同じ言葉を綴る二人。 「ほら、口につけて飲ませろ!」 「ゴボッ! ゲボッ!」 「霊夢! 霊夢!」 「ハハハハハハハハハハ!!!」 ―― 「さすがにもう出ないみたいだな」 アリスは膀胱の尿を一滴残らず排出し終え、 焦点の合わせられない目で虚空を見つめていた。 「それにしても、わたしもここまで強制させられるとは思わなかったぜ。  実はこういうことがやりたかったんじゃないのか?」 「……ふざけないで……!  ……もう……もう、これでいいでしょ!  早く解放してよ!」 「あー? 誰がもう終わりだって言った?  まだまだ実験は続くぜ。そう、一生な」 「!? 騙したのね!!」 「騙してはないぜ。死んだら解放してやるぜ」 「……!!」 「そう、一生お前たちはわたしのもの。  死ぬまでわたしの可愛い奴隷……」 ―― 「朝ね」 アリスの一日は穏やかに始まった。 「あら、霊夢。朝からこんなに濡れてるわよ、ウフフ」 これから一生こんな穏やかな生活が続くのだろう。 自我を失ったまま……。 〜完〜