Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

心に残る愛情表現

2010/06/13 23:46:36
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 小さな少女が泣きそうな顔で何かを手にしていた

(随分と懐かしいな……)

 その光景を見て、ぼんやりとそれが昔の事だと思い出す

 外の世界の道具を手に入れた時で

 珍しくきちんと動く道具だったので使い方を調べていた時の事だった

(ああ、あの時は確か……)

 その日、珍しくお店に遊びに来たその少女に
 
 その道具がどのような使い方をするのかを解る範囲で教えてあげたのだ

 僕の説明に少女は目を輝かせてその道具に興味を持って見つめていたのだが

(そしてその次に日だったな……その道具がお店から無くなったのは)











 そして、その子が手にしているのは僕が見つけてきた動く道具だった

『……どうしよう……動かなくなっちゃた……』

 正確に言えば動いていたはずの道具

 その少女もその道具が動くのを見て、目をキラキラ輝かせていたのだが

『……霖之助が見つけてきた宝物なのに』

 その道具は少女の手の中で動かなくなっていた

『怒られちゃう……ううん……それよりも……』

 怒ると思う……無論壊した事じゃなくって
 
 何も言わずに勝手に持って行った事にだが

『……壊れた事がばれたら……嫌われちゃう』

(そう言われると怒れなくなるな)

『やだ……やだよ……』

 ………

『うわぁーーーん!』








 
     ・・・





「……夢…か?」

 気が付けば、香霖堂の中だった

「うっかり昼寝をしてしまったようだな」

 今朝は朝起きるのが早かったのが原因だろう

(随分と懐かしい夢を見ていた気がするな)
 
 霖之助が夢の事を思い出しながら椅子から起きる

「さて、少し遅れてしまったが作業をしないとな」

 昔の事を思い出しながら、霖之助はグッと背伸びをして

(そういえば、あの時の道具はどうしたっけかな?)

 不意に夢の中に出てきた道具の事を考えた時だった


『ドドーン!』


 御店全体が少し揺れる振動が起こる

「……やれやれ、あの頃はまだ可愛げがあったんだがな」

 それと同時に、霖之助はため息をついて

 すぐにでもお店にやってくる妹分の為にお店のドアを開ける準備をした
 
 





     ・・・  









「香霖、このガラクタは要らないだろう?私が貰ってやるぜ」
「魔理沙……それはガラクタではないし、勝手に物を持って行かないでくれ」

 魔法の森にある御店の中から明るい声とため息交じりの声が響いていた

「どうせ使わないんだろう?だったら私が貰ってやったほうが喜ぶに違いないぜ!」
「だが、君が持っていったら碌な使われ方をされないだろう」

 魔理沙と呼ばれた白と黒のエプロンドレスを着た金髪の少女の言葉に
 香霖と呼ばれた男性がため息をついて答えた

「さあ、おしゃべりをしている暇があったら倉庫の掃除の続きだ」
「ちぇ、香霖のケチ」





     ・・・



 何故魔理沙が掃除を手伝っているのかというと

『おっす香霖!暇だから遊びに来たぜ?』

 何時もの様に魔理沙が遊びに来たのだが

『そうか、すまないが今日は倉庫掃除の日なんでね……』

 今日は倉庫の中に眠っている道具を整理する為の日であった
 この日ばかりは丸一日かけて掃除をするのだ
 だから、魔理沙の相手は出来ないのだと伝えた
 だが、この言葉を聞いて魔理沙はにんまりと笑うと

『そうか……よし!たまには手伝ってやるぜ!』
『ほう?魔理沙が手伝ってくれるとは随分と珍しい事だな』
『ご褒美は今日の晩御飯だけどな』

 そう言って袖をたくし上げ、強引に御店の中に入ってきたのだ


 

 そして先程に戻るのだが

(……進まないな)

 作業はあんまり進んでいなかった
 無論僕と魔理沙の二人が同時に仕事をしているのだから
 それなりに進んではいるのだが

「おおっ?この綺麗な円盤は新しい弾幕になりそうだな」
「それは『CD』と言う外の世界の道具だ、勝手に弾幕代わりにしないでくれ」

 片付け作業の合間合間に魔理沙が倉庫にある道具を
 玩具にしようとする為に作業は殆ど進んでいなかった

「君は作業を妨害しに来たのかい?」
「そんな事無いぜ?ただ普通の作業だと香霖もつまらないだろう?」
「はぁ……それを作業妨害と言うんだ」
 
 笑いながらそう伝える魔理沙に霖之助がため息をついて
 次に片づけをするべき棚の前に進んだ
「次はこの棚だな」
「うぇ、随分と埃が積もっている棚だな……」
「ああ、此処は一昔前の物が置いてあるからね」
「しかたがないな……報酬の晩御飯に御酒も追加だぜ」

 霖之助が示した棚を見て魔理沙が嫌そうな声を出すが
 掃除を続ける為に箒を手に持つと
「私は箒で棚の埃を払っていくからな」
「ああ、任せるよ」
「任されたぜ!」

 先程と同じ用に魔理沙が棚の上の埃を払っていく
「香霖は昔から埃を払う作業が苦手だからな」
「……反論のしようがないな」

 意外な事かもしれないがこのような作業は
 霖之助よりも魔理沙の方が上手のだ
(こういうところはやはり道具屋の娘なんだろうな)
 こういうところは、やはり親子なのだと霖之助も顔に出さずに苦笑する
(さて、僕も棚の上の荷物を降ろすとするか)  
 霖之助も作業に取り掛かろうと棚の傍に近寄った時だった

(つるっ)

「うっ、うわっ?」
 棚の高い所の埃を取ろうとしていた魔理沙が棚にかけていた足を滑らせた
「っ!魔理沙!」
 それに気が付いた霖之助が急いで地面と魔理沙の間に飛び込むと
 ぎりぎりの所で魔理沙が地面に激突するのを阻止する事になんとか成功する

(スカーン!)

 次の瞬間、棚の上においてあった物が
 霖之助の頭を直撃すると同時に意識が途切れる事になった





     ・・・





 目の前に居る女の子が手にした物を抱きかかえながら泣いていた

 ぼんやりとした意識の中、霖之助はこれが夢だと思いながら

 目の前で泣いている少女の傍に向かう

『ひっぐ……ぐずっ……』

(どうして泣いてるんだい?)

『ご、ごめんなざい……ひっぐ……ど、道具……わ、私が……勝手に持ち出したから……』

 女の子が持っている道具は既に動かなくなっている

『色々と……試してたら……動かなくっ……なって……』

 それは知っている、なにせ昔あった事で自分自身少し落ち込んだ事だから

 だから、気にしないで少女に答える

(いや、物が壊れる事は仕方がない事だよ)

 霖之助の言葉に少女が涙を手で拭って首を横に振る

『で…でも……私が……ひっぐ……勝手に持ち出さなかったら……』

 その少女はこっそりと持ち出したのだ

 だが、そのせいで壊れたとは僕は思って居ない

(それもまた天命だったんだよ……)

『り、霖之助は……』

(ん?僕は……)

 霖之助の言葉に少女は泣くのを少し止めるとうつむいて呟いた

『お、怒って……ない?』

 心配そうな声に霖之助は苦笑すると出来る限り優しく答えた

(怒って無いよ?)

 その言葉に、少女は更に小さな声で呟いた

『……嫌いにならない?』

 霖之助が顎に手を当てて少しだけ考え込むとゆっくりと答えた 

(そうだね……勝手に人の持ち物を持っていた悪い子は嫌いになるかもね)

『……っぐ……』 

 霖之助の言葉に少女は手にしていた道具をグッと握り締めて泣きそうになるのをこらえる

 そんな少女の傍に霖之助がしゃがみこみ優しく告げた

(……でも、正直に謝りに来た魔理沙は嫌いにならないよ)
 
『うっぐ……うえぇぇーーん!ごめんなざい!』 

(ほらほら、もう泣きやみなさい)

 泣き出した少女の頭を撫でる為に霖之助が手を伸ばした

  





     ・・・






「……ぅ……」

(………)

「こ………ぃ……!」

(……………)

 
 耳に聞こえるかすかな声に霖之助がぼんやりと目を開けると
「香霖!……よかった目が覚めたか」
 目の前には夢で見た少女が幾分か成長した姿で自分を覗き込んでいた 

「魔理……痛っ!?」
「まだ無理に起き上がらないほうがいいぜ」
 起き上がろうとした霖之助の頭に痛みが走る
 思わず霖之助が手を頭に当てると冷やしたタオルが置いてあり
 良く周りを見ると自分が布団の上で寝かせられている事に気が付く

「棚から落ちたガラクタに頭をぶつけて意識を失ってたんだからな」
(ああ……そうだった)

 その言葉に霖之助が気絶する前の事を思い出す
 棚から落ちそうになったを魔理沙を受け止めたのは良かったのだが
 それと同時に棚の上から落ちてきた道具を頭に受けて気絶していたのだ

「魔理沙は……」
「ん?私がなんだ」
 そこまで思い出してから霖之助が自分の傍の椅子に座って
 心配そうにしている魔理沙に声をかける
「怪我をしてないかい?」
「……おかげさまでな」
  
 魔理沙が無事そうな事に霖之助がホッとした表情で頷くと
「そうか……それならよかった」
 寝ている布団から上半身を起こしてそう呟いた
 その言葉の後、暫く部屋の中が静かになる

「なあ、香霖」
「なんだい?魔理沙」
 暫くの静寂の後、椅子に座っていた魔理沙が小さく話しかけた
「……その……ごめんなさい、私のせいで香霖に怪我をさせて」
 申し訳なさそうに上半身を起こしている霖之助の方を向いて謝った
 その姿が先程の夢で見た昔の姿に重なる

(ああ……)
 何時ものような明るい笑顔ではなく
(なんだ……)
 昔と同じで泣きそうな表情で
(どれだけ年をとっても……)
 それでも、けして逃げたりしない
(魔理沙は魔理沙なんだな)
 
 昔と変わらない魔理沙がそこに居た
 霖之助が口元に優しい微笑を浮かべると
「……やっぱり……怒ってるか?」
 心配そうに見つめてくる魔理沙の頭に 
 昔と同じように手を伸ばして
「あっ……」
 わしゃわしゃとその頭を撫でた
 いきなりの事に魔理沙が一瞬驚くが
「きちんと謝った魔理沙を怒る訳がないだろう?」
「……うん」

 暫くの間、無言で霖之助に頭を撫でられる事になった





     ・・・

 

  
 
「それじゃあ、晩飯作ってくるからな!病人はしっかり寝てるんだぜ?」
「ああ、頼んだよ」
 暫くの間、魔理沙が頭を撫でられてから
 すっかり日も落ちていたので、晩御飯を作る事になった 
 幸い、霖之助の怪我は大した事は無いのだが
 魔理沙が任せろと言ってくれたので、任せる事にした 

 そして、魔理沙が部屋から出て行く時
「あ~、そうそう……香霖の頭にぶつかったガラクタ、そこに置いてあるからな?」
 霖之助が横になっている寝床の傍の机の上を示してから
 魔理沙が台所に向かって行くのを見届けてから

「…さて、壊れてないかな」
 部屋に独りになった霖之助が自分の頭に落ちた道具を見て
「……なるほど……」
 なにやら納得した表情でその道具を手にした
 そこにあったのは十数年間の埃をかぶった道具の姿
「懐かしい夢を見る訳だ」
 かつて、魔理沙が持って行き、動かなくなってしまった道具そのものであった

「『テープレコーダー』(想いを残す事が出来る)か……」

 霖之助が懐かしそうにそのテープレコーダーを手に取る
「……待てよ?」
 そして、あの頃動かなかった原因に心当たりが浮かぶと
 寝床からそっと起き上がり、近くに置いてあった物を取り出して

「確か『乾電池』だったよな……」
 動かなくなってしまったはずのテープレコーダーの中にそれを入れ替えると
「動かせるか?」
 かつて動いていた時と同じようにスイッチを入れると
(ウィーン……カシャ!)
 動かなかった筈の道具が動き出した
「ははっ……そうか、エネルギーが切れていただけだったのか」
 霖之助が手のひらを顔に当てて小さく笑いそうになった時

『……ぇ…っと……』

 テープレコーダーの中からかすれた声が聞こえてきた
 その声に笑うのをやめると霖之助が静かに耳を傾けた

『…これで、いいh…ず……だよね?……うん!k…え入ってる』

 そこに入っているのは、かすれてはいるが懐かしい声
(……魔理沙……)
 昔の魔理沙の声であった
 
『えーと……霖之助お兄ちゃんへ!何時も遊んでくれてありがとう!』

 そこに入っていたのは、昔の魔理沙からのお礼の言葉だった 
(そうか……あの日、魔理沙が怒られる覚悟でこれを持ってきたのは)
 多分、あの日魔理沙はテープレコーダーの使い方を完全にわかったのだろう 
 そして、それを僕に教える為に持ってきたのだ
 だが、これを入れた時にこのテープレコーダーのエネルギーが切れてしまったのだろう
(そうだったのか……魔理沙はあの時既にこの道具を……)

 霖之助が昔を懐かしみながらテープレコーダーから聞こえる声を聞いていた
 
『……s…rで……おねgい……がありm……s』
 もう、この声を入れる時には殆どエネルギーが無くなっていたのだろう
 掠れ掠れの声で、最後の言葉がテープレコーダーから聞こえてきた
『w…tしが……おおk……なったr……』




(おーい香霖!晩御飯できたぜ?)
 部屋の外から聞こえる魔理沙の声とほぼ同時に
 テープレコーダーの最後の言葉が流れた
 その声を聞いた霖之助は苦笑して台所に向かった  

 テープレコーダーから聞こえた言葉を頭で思い出しながら













『……お兄ちゃんのお嫁さんにしてください』
(ジジジッ……)
 
 どうも……名も無き脇役です……

 さて、最近は仕事が忙しいのですが、ネタマシパルスィーが勇儀を探す為にバイクで走る話とか
 なまメー話の案等、いろいろ考えていますのでゆっくりとお待ちください 



 そして、おかみすちーでのコメント8番目様(略させて貰って女将ミスチーの八目様)へ……

 ネットが使えないのと仕事が忙しい事でなかなか見に行くことができなかったのですが
 脇役の話をすばらしい声で演じて頂いて有難うございますOTL
 時間がかなりかかってしまいましたが、感謝の気持ちを込めてこの作品を書きました
 拙い物かも知れませんが、どうか読んでやってください 






  
 その日の晩御飯は茸鍋であった
 約束どおり、お酒も少し入った席で霖之助が魔理沙に声をかけた

「なあ、魔理沙」
「ん?なんだ香霖」
「ああ、気絶している時に昔の事を思い出していたんだが」
「なんだなんだ?昔語りは年寄りになった証拠だぜ?」

「そうだな……ただ、一つだけ返事をし忘れていた事を思い出してね」
「昔の事だろう?」
「ああ、まあ、愚痴代わりに聞いてくれるかい?」
「やれやれ、仕方ないな……少しだけだぜ?」
「なに、一言だけで良いんだ」


『今でも君が思うなら、その約束を叶えても良いよ』

「あはは、何だその愚痴は?」
「さて、愚痴は終わりだ……さあ、食事の続きをしよう」

 
名も無き脇役
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
素晴らしい魔理霖でした!!!!
そしてお仕事頑張って!
2.名前が無い程度の能力削除
うん。魔理沙可愛い。霖之助格好いい。もうお前らさっさと結婚しろ。
まぁそれはともかく脇役さんの魔理霖だーーーーーーーー!!!
あと五年は戦える。(何と
3.名前が無い程度の能力削除
うわあああああああああああロマンティックが止まらなああああああああああああああああああい!!!!!!!!!
久々にSSで見終わった後ゴロゴロ部屋中転がりました。素晴らしい、自分が出来る最大級の賛辞を作者様に。
4.名前が無い程度の能力削除
こ、これが正義か……!
5.名前が無い程度の能力削除
魔理霖のお手本のような素晴らしいお話でした!
6.名前が無い程度の能力削除
あばばばばばばばばばばば
7.名前が無い程度の能力削除
素晴らしいお話でした!もう結婚しろー!!
8.名前が無い程度の能力削除
なんか口から砂糖がこぼれてきたんだがどうしてくれる
9.こじろー削除
えっと、ご祝儀袋はどこにしまったっけな……
10.女将ミスチーの八目削除
はわわわわわわわ!!
気付くのが遅くなってしまって申し訳ありません;
まままさか脇役様に新作の魔理霖を書いて頂けるとは夢にも思わず...
しかもこの甘さに現在進行形で胸のどきどきが止まりません(*´Д`)
お忙しい中本当にありがとうございます!

あああもう理想の魔理霖にずっと悶えっぱなしです;
永久保存させて頂きますね...!!
この度は本当にありがとうございました!m(_ _)m
11.名前が無い程度の能力削除
ん?
いいじゃない、これ
ん?
すてっきじゃない。これ