Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

聖を人里に連れ出そう!(後編)

2010/08/29 22:56:29
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とりとめのない話をしながら聖と人里を歩く。
「あれは河童の出張店だよ。普段は妖怪の山で色々造っているんだが、偶にこうやって人里でも店を開いているんだ。寺の台所にもあるだろ?火力のやけに強いコンロってやつ。アレもあそこで買ったんだ。河童は基本的に中々人の前には現れないが。いるんだよな、ああいうのも。」
「・・・いい時代になりましたね。こうやって、人と妖怪が共存して生きるだなんて。」

確かに。
聖が封印される前とは全然違うだろうね。

「これも幻想郷の力ってやつかな?そして博霊の巫女の活躍もあるのかな?人里に関しては慧音先生もいるしね。」
流石に、今でも完全に共存できてるわけ訳じゃないが。
未だに人妖のイザコザもあるわけだしな。
だが、住み易いのは確かだ。
お陰で妖怪がやってる寺だろうと受け入れられたんだ。
本当に、ありがたいことだ。
この環境を壊してはいけない。
そのために、私たちも人里の一員としてうまくやっていかないとな。
「あ、あれは何ですかナズちゃん?」
そんなことを考えていると、聖が話しかけてくる。
「ん、おお、あれか。あれは送り犬のハナさんだな。最近、危険な山道とかを護衛してくれるとかなんとかで・・・。」

・・・うん。
だいぶん、色々と興味を持ちはじめたかな?



そんなこんなで歩いていると。
「あら、ナズーリン?それに聖よね?」
ふと、横から呼ぶ声がしたので振り向いてむると。
「・・・おや、アリス?」
「あら、アリスちゃんじゃない。」
そこにいたのは、人形遣いの魔法使い、アリス・マーガトロイドだった。
目の前には、様々な人形。
他にも雑貨のような小物まである。
「人形製作は当然として、他にも色々作ってるんだな。」
私が感心したように覗き込む。
つられて聖も覗き込む。

「まぁ、半分趣味のようなものだけどね。あと、ここにはないけどオーダーメイドで簡単な服とかも作っているわ。」
「ほう・・・。」
それは良いことを聞いた。
アリスに頼めば作ってもらえるってことか。
だが、ファッションに疎い私ではどんなものを注文すればいいのか分からないな。

「デザインとかは、相談にのってくれるのかい?」
「えぇ。その人に合いそうなものを考えるわ。任せて、結構な知識はあるから。」
「オーダーメイドということは、値段はそれなりにするのかい?」
「ピンからキリまでね。でもリーズナブルでそれなりのものを作る自信はあるわ。」
「あら、ナズちゃん。服が欲しいの?」
そう話し合っている私たちの横から、聖が問いかける。
「まぁ、そんなところだな。」
私のじゃないけど。
「とりあえず、今は服は置いてないけど、色々作って偶に人里で販売しているの。良かったら見ていってみて。」
「そうか。なら失礼して。聖も何か気に入ったものがあったら言ってくれ。」
「えぇ。でも本当にアリスちゃん器用なのね。こんなに色々なモノが作れるなんて。」
「ふふ、ありがとう。・・・ただ、その『ちゃん』付けは少し遠慮願いたいわね。」
「あまり気にしにでくれると助かるのだが。基本的、聖はみんな『ちゃん』付けだし。・・・ん?何か思うところでもあるのかい?」
「・・・まぁ、そんなところね。これで聖にアホ毛でもあったら・・・、いや、髪の色も身長も違うわけだし・・・。」
なにやらブツブツ呟き始めるアリス。
・・・アホ、毛?
ま、まぁいいか。
とりあえず、私も物色する。

アクセサリーから小さなバッグ、帽子まで。
いや、よくこれほどまで作れると感心する。
お、なんか可愛いカゴもある。
これに小ネズミ入れて運んでみるか?

・・・。
そっと、横目で聖を見る。
・・・よしよし、夢中になってる。
これはアリスに感謝だな。
何か聖の気に入ったものがあれば買ってあげよう。
そう、考えていると。

・・・ん?

聖に悟られないように一匹の小ネズミがやってきた。
なんだ?
まさか、寺のほうでなにかあったか?
私がそっと小ネズミの報告を聞く。
・・・。
・・。
・・・なるほどね。
聖を連れ出している最中に他用で離れるのは申し訳ないが。
見過ごすわけもいくまい、顔見知りでもある。

「聖。」
色々と手にとって見ている聖に話しかける。
「あら、どうしたのナズちゃん?」
「あぁ、ちょっとお手洗いに行ってくるよ。すぐに戻るから君はここで見ているといい。同じ魔法使い同士、話すこともあるんじゃないかい?アリス、すまないが暫く聖の相手を頼むよ。」
「・・・え?あ、うん。」
突然話しかけられて、ようやくコッチ側に戻ってきたアリスが答える。
「じゃ、いってくる。」
そう行って駆け出し、厠に行く・・・、フリをして、人里から少し離れた場所へ向かう。
報告によるとコッチのほうだな。
やれやれ、面倒なことにならなければいいんだが。



「・・・!」
「・・・!!」
なにやら言い争いが聞こえる。
というより、一方的に脅されているって感じだな。
私がその場に到着してみると。

「いいから、金目のモノを寄越せって言ってんだろうが!」
「ひぃっ、わ、わちきはただのしがない傘妖怪であって、決して傘を売ってお金を稼いでいるわけでなくて・・・!」
「いくら妖怪だろうと、それなりのものは持っているだろが!てか、なんなんだ!いきなり草むらから『うらめしや!?』って!?なんで疑問系なんだよ!?いろんな意味で驚いちまったじゃねぇか!」
「いや、ちょっと涼しいところで休んでいたら眠っちゃって・・・。で、夢を見ていたら・・・。って、いま驚いたって言ってくれた!?ホント!?ここ最近誰も驚いてくれなくてわちきは寂しくて寂しくて・・・。」
「何いきなり喜んでやがる!?ともかく、俺らを襲おうとしたからには、それなりの覚悟はできてんだろな!?」
「ひゃうっ、別に人を襲う妖怪じゃないよ!それに襲ったんじゃなくて、いわゆる寝起きの一発というやつでして・・・。」
「あー、うるせぇ!ともかく、いいからなんか出せや!このナイフが目にはいらねぇか!」
「ひぃぃ!ここにもさでずむがぁ!!」

・・・脅されているのか?
少しコントっぽい感じもするが。
いやいや。
問題はあそこにいる人物たちだ。

脅されているのは多々良小傘だ。
私たちが起こした異変のときに、全く関係無いのに霊夢たちに撃墜されてしまったらしい。
そんな縁で、偶に寺にも顔を出すこともあるのだ。

そして、小傘にからんでいる3人組。
見たことある顔だ。
たしか最近人里近くで出没するようになったという盗賊ではないか?
手配書の人相書きを見たことあるので、おそらくそうだろう。

だとしたら、放っておくわけにはいかないな。

「こうなったら、その訳分からんボロ傘寄越s「本日2回目のナズーリンロッドオォォ!!」げふぅっ!?」
小傘に襲い掛かろうとしたナイフ男をブッ飛ばす。
ふぅ、この技便利だな。
そうして、小傘と男らに割って入る。
「な、なんだテメェは!?」
「あ、な、ナズーリン!」
「大丈夫かい、小傘。」
そう言って、小傘のほうへ振り向く。
良かった、ケガはないようだな。

すると、男が驚愕の目でこちらを見ながら叫んできた。
「な、ナズーリンだと?貴様まさかあの幻想ナショナルトレジャー兼猛虎襲来絵巻を従えているとか名乗っている伝説の!?」
「いや、そんな2つ名は名乗った覚えはないんだが・・・。」
幻想郷でナショナルはないだろうが。
あと、猛虎?
もしかして、ご主人様のことかい?
しかも従えているって、私が主人になってるし。
・・・まさか、私とご主人様の関係が変な感じに捻じ曲がって伝わってないか?
あと、勝手に伝説にしないでくれ。

「あー、まあそれはどうでもいいや。それより君たちは、最近出没しているという盗賊だね?小傘に手をださすわけにもいかないしな。君たちも見逃せない。悪いがここで討ち取らせてもらうよ。その後に人里に突き出す。」
ロッドを構えなおす。
とりあえず、いまブッ飛ばした男と、この訳分からんことほざいている男は余裕だな。
問題は・・・。
「な、舐めるなぁ!そんな細い棒でこの斧を受け止めれるとでも思ったか!?」
そう叫んで突進してくる。
やれやれ、受け止める必要なんて無い。
かわしてカウンターをぶち込むだけだ。

「これでも喰らって真っ二つにn「な・む・さーん♪」ぶべらっ!?」
と、いきなり現れた人影にぶん殴られてぶっ飛んでいく斧男。
と、いうか、今のセリフは・・・。
「ひ、聖!?」
「あらあら、ナズちゃん大丈夫?それに小傘ちゃんも。」
聖がなんでこんなところに?
「アリスのところにいたんじゃなかったのかい?どうして此処に?」
そう私が訪ねると、こちらに振り向き。
「ふふふ、なんとなくね。ナズちゃんは上手く誤魔化したつもりだったみたいだけど、顔が少し焦ってたのよ。で、気になって追いかけてきたのよ。」
なるほど。
ポーカーフェイスには自信があったんだがね。
流石聖といったところか。
「この人たち、例の手配書の方よね。じゃあ、捕まえて説教ね。」
あ、説教するんだ。
聖らしいな。

だが、それも最後の男が倒せるかどうかだ。
今まで一言も喋らず、離れたところから傍観していた帯刀している男。
その男は。


すでに聖の背後に移動し、刀を上段に構えていた!


やはり!
なんとなく感じてはいたが、コイツは他の奴とは別格だ。
予想以上に素早い。
だが、位置関係から聖を狙うことは大方予想済み。
すぐさま、聖の方へ駆け出す!
「聖!!」
そう叫んで、聖を庇うように男の前に身体を投げ出す。
刀が振り下ろされる。
鋭い一撃。
だが大丈夫、間に合う!
「守符・ペンデュラムガード!!」
ギリギリのところで展開された防御用ペンデュラムが刀とぶつかり合う。
弾き飛ばされる刀。
よし、競り勝った!
あとはこのまま攻撃に移行し・・・!?


違う。
弾いたのではない。
競り勝ったのではない。

インパクト時に、わざと刀から手を離した!?


「しまっ・・・!!」
男が振り下ろした手を、そのまま腰の脇差へ持っていく。
そして、小柄な私の懐に潜り込んでくる!
左手を鞘に、右手を柄に。
まさか、脇差で居合いを繰り出す気か!?
完全に予想外な攻撃。
ダメだ、防御も回避も間に合わない・・・!


そして、まさに男がナズーリンを切り裂こうとした、その時!


「首肉(コ○エ)フリットオォォォォォオ!!!」
いきなり横から現れた強襲者によって、思いっきり蹴り飛ばされる帯刀男。
モロに吹っ飛ぶ。
居合いは不発。
男は近くの大木に首から突き刺さり、そのまま動かなくなった・・・。

「・・・え?」
私は、助かったのか?
いや。
いまの声って・・・。
突然助けに現れた人物のほうへ振り返ってみると。
「・・・一輪?」
「あら、こんなところで奇遇ねナズーリン。」
「いや、奇遇って・・・。奇遇すぎやしないか?」
「気のせいよ。私だって休みのときはそこらをブラブラするわよ。偶々ここを通ったらね。姐さん、小傘。大丈夫だった?」
そういって、2人の元へ行く一輪。
いや、タイミング良過ぎるだろ?
おそらく・・・。

「さてと。」
そう言って、一輪が人里のほうへ歩き始める。
「いま、水蜜が人里に報告にいっているわ。後は慧音先生にでも任せましょ?それよりナズーリン。2人っきりのところ悪いんだけど、夕飯はみんなで外食にしましょ。あの変なレストランの席とっておくわ。それでいいでしょ?」
空を見上げる。
なるほど、もう日が沈みそうだ。
夕食には良い時間だな。
「あぁ、いいよ。席の確保、頼んだよ。」
「任せなさい。あ、小傘。あなたも食べていきなさいよ。」
「え!?い、いいんですか?」
驚いたように小傘が尋ねる。
「えぇ、いいわよ。一人増えたところで問題ないわよ。さ、私たちは先に行きましょ。」
「分かりました!あ、ナズーリン。今日はありがとうね!お礼はまた改めて食事のときに言うから!」
そう言って、嬉しそうに一輪についていく。


・・・。
ふぅ。
とりあえず、一輪に助けられたな。
ふと、聖が私の方に歩いてきた。
「あぁ、聖。君が無事で良かったよ。一輪に感謝だな。すまない、いきなりほっぽりだして・・・!?」
そう言い終わるかいないかのうちに、聖が私を抱きしめた。
「え・・・?」
ど、どうした聖!?
私が何がなんやら分からないといった顔をしていると。
「・・・ありがとうございます。ナズちゃん。」
私を抱きしめる力に力が篭る。

「私のために・・・。

 一生懸命案内してくれて・・・。

 沢山楽しい思いをさせてくれて・・・。

 ・・・身を呈してまで危険から救ってくれて。

 でもね、ナズちゃん。

 あなたが無理をして、もしも何かあったりしたら、私は・・・。」

さらに身体を密着させる聖。


暖かい。
優しい心音が、とくん、とくんと伝わってくる。
それが、あまりにも心地よくて、なんだか泣きそうになった。


・・・なんて考えるなんて、私らしくないぞナズーリン。
今日は聖を楽しませるために連れ出したんだ。
なら、最後まで楽しくしていかないと。

「はははっ、大丈夫だよ聖。私はこの通り無傷だ。小傘も。そして聖もな。感謝を述べるならさっきも言った通り一輪にでもしてくれ。私はただ一人じゃつまらんかったから聖を連れ出しただけさ。」
そうして、一息つき。
「今日は楽しかった。聖も楽しんでくれた。万事オッケーだ。な、そうだろ、聖?」
私がそういい終わると、聖が離れる。

一瞬、うっすら涙を浮かべていたのは見間違いだということにしとこう。

「・・・ふふっ、そうですね。本当に今日は楽しかったです。」
そう微笑みながら答える聖。
うん、それでいい。
聖は笑っているほうがいい。
私も、そんな聖を見ているほうがいい。

でも。
辛いときは頼るんだぞ。
私でもいいし。
寺のみんなでもいい。
君の周りには、素晴らしいやつらでいっぱいなんだから。

「さぁ、あまり一輪たちを待たしては申し訳ない。行こう、聖。今から行くレストランは絶品だ。店長が少々変わり者だがね。・・・あ、そういやアリスのところで何か欲しいものは見つけたかい?もしあったなら私が・・・。」
「いえいえ、いいんですよ。そこまでしてもらわなくても。あ、でもアリスちゃんに作って欲しいものがあるんでしたっけ。まだ人里にいるかしら?」
「なら急いだほうがいい。とりあえず、聖はアリスのところへ行ってくれ。後の道案内は私の小ネズミにさせるよ。」
「わかりました。じゃあ、ちょっと行ってきますね。」
そういって、駆け出す聖。
・・・と、途中で立ち止まり、振り返る。
「・・・ナズちゃん。」
ん?
どうした?
もしかして、まだ何かいい忘れていたことでもあったかい?
ほんの少しの間。
それが、何かものすごく永い時に感じられたが。
「・・・いえ、なんでもないです。じゃあ、行ってきますね。」
再び駆け出していく。
その後姿を、見えなくなるまで見つめていた。


「・・・ふぅ。」
今日を少し振り返ってみる。
最初はうまくいくかどうか不安だったが、結果的には、まあ、上々ってことで。
ただ、最後に聖を不安にしてしまったのは不味かったな。
私も修行が足りんな。
まぁ、なにはともあれ、皆無事でよかった。
そう考え、人里へと歩き始める。
今日は良い日だった。
これを期に、聖も少しは自分から楽しみを見つけてくれるといいんだがな。


ふと立ち止まり、空を見上げる。
キレイな夕日だ。
・・・幻想郷は良い所だな。


そんなことを考えながら、私は再び歩みはじめた。
人里に向かう。
で、近くの木の裏側を覗いてみると・・・。

「あ、ナズナズ。お疲れ~。本日はどんな感じだったかな~?」

そこにいたのは、予想通りぬえとご主人様だった。
ただ。
ご主人様は白目をむいて気を失って倒れているが。

「・・・で?」
私がぬえに尋ねる。
「んーとね。なんか孤塁を打ち抜かれたみたい。」
「そうか。」
私はため息を一つ、倒れている寅の首根っこを掴んで歩きはじめる。

「さぁ、行こう。今日の店は中々のものだぞ。」
「わーい、ごちそうだぁ~!」

そう隣ではしゃぐぬえを見ながら。
私たちは人里へ向かって歩みを進めた。
エクシア
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
聖はアリスに何を作って貰うのかな。気になる
2.奇声を発する程度の能力削除
とても良かったです!!
私も何を作って貰うのか気になりました
3.名前が無い程度の能力削除
ナズちゃん、ってなんかいいね