サツキリン作者: kakao

　朝にはお母さんがご飯を作ってくれている。

　お味噌汁と白ご飯をおなかに入れて急いで身なりを整える。

　弟の憎まれ口をふさいで、お父さんの呆れながらも仕方がないような笑い声を聞く。

　隣の家のおばさんに挨拶をして、自転車で学校へ行く。

　私は時折、その当たり前の今が、本当に時折なのだけれども違和感を持っている。
　おかしい。
　ここは、わたしの住む世界じゃない。

　でも私は生まれたころからここに住んでいるし、第一私がここ以外のどこに行くというのだろう。
　私は、何にも不満をもっていないはずなのだ。
　優しい両親、生意気な弟、いまどき珍しいご近所づきあいもできている家庭。
　私は、高校生で平凡な学力だ。運動は少しだけ得意ということを入れたとしても、なんら平凡かつ幸せだというのに。

「りーん！鈴ってば！」
　後ろから来る声に振り向けばクラスメイトが大慌てで走ってきた。
　自転車を止めるとクラスメイトは一緒に学校に行こうと誘われ、私は自転車を押した。
　学校まで歩いても十分なので、私たちは歩きながらしゃべっていた。

「ね、鈴。あの人！」
　耳元で小声で前を見てといわれる。
　それはとてもきれいな女性だった。
　それはとても不思議な女性だった。
　それはとても懐かしい空気をつれていた。

　ウェーブした金色の髪を風に揺らす。白い肌に優しい柔和な顔つき。瞳はきらきらとした紫色。
　彼女は、大人の美しさと少女の可愛らしさを同居させていた。

　でも、私はそれ以上に彼女の懐かしさに涙を落としていた。

　ああ、そうか。

　私はもう幻想には行けないのだ。

　私はもう幻想ではない。

　私はもうこちらの世界なのだ。

　私はもう冴月麟じゃあない。

　それを彼女は、八雲紫は伝えに来たのだ。

　一瞬にして彼女のスキマ空間に私は導かれ、私のなかの幻想郷とこちらの世界の境界を強くひかれた。

「さようなら。
　冴月麟。
　いつか貴方がまた、幻想郷に訪れたなら…一緒にお酒でも飲みましょう。
　博麗を誘ったらあなたは怒るかしら？」

　朝にはお母さんがご飯を作ってくれている。

　お味噌汁と白ご飯をおなかに入れて急いで身なりを整える。

　弟の憎まれ口をふさいで、お父さんの呆れながらも仕方がないような笑い声を聞く。

　隣の家のおばさんに挨拶をして、自転車で学校へ行く。

　私は時折、この幸せが壊れないかと心配になる。
　だって、こんなにも幸せなのだから
　幸せすぎてなきたくなってしまうほどだ。

　私は生まれたころからここに住んでいる。ここが私の生きてきた家と場所。
　私は、何にも不満をもっていない。
　優しい両親、生意気な弟、いまどき珍しいご近所づきあいもできている家庭。
　私は、高校生で平凡な学力だ。運動は少しだけ得意ということを入れたとしても、なんら平凡かつ幸せな人生。

「りーん！鈴ってば！」
　後ろから来る声に振り向けばクラスメイトが大慌てで走ってきた。
　自転車を止めるとクラスメイトは一緒に学校に行こうと誘われ、私は自転車を押した。
　学校まで歩いても十分なので、私たちは歩きながらしゃべっていた。

「ね、鈴。あの人！」
　耳元で小声で前を見てといわれる。
　それはとてもきれいな女性だった。
　それはとても不思議な女性だった。
「わぁ、美人さんだね」
「えー？なんか若作りしている気がする」
「そうかな？私はきれいな人にしかみえないなー。なんかお母さんみたいな不思議な雰囲気」
「ほぅ、年くっているのは変わりないと」
「ち、違うわよー」