咲夜曰く「だって弱点が分かったらそれを攻めない訳がないでしょう？」

　今日の博麗神社の宴会は、暴露大会に発展した。
　何が切欠になったかは分からないが、誰かのポツリともらした一言が発端だったと思う。
　……思い出した、緑の巫女の「外の世界のテレビ番組は内輪の秘密をばらす番組ばかりでつまらない」と言う発言からだ。
　直ぐに思い出せないとは、少し酔いが回ってきているのだろうか。
　一角の鬼が持ち込んだ酒が思いのほかきつい。というか鬼が持ってきた酒が『鬼殺し』とはこれいかに？
　というか私が飲んでも大丈夫なのかこれ？

「実は私……匂いフェチで……。
　紫の……少女臭がたまらなく好きなのっ！」

　霊夢が、あの霊夢が、頬を赤く染めながらそんなこと言った時には、彼女の姿はスキマの彼方に消えていた。
　そのスキマに、ハートマークを散らばしながら紫が突入していった。
　やがてスキマからは霊夢の嬌声が聞こえてきた。スキマ妖怪の嬌声も聞こえてきた。
　色んな奴らが顔を真赤にし始めたので、咲夜にスキマをガムテープで塞ぐように指示した。
　ホスト（勝手に決めた）不在により、これより宴会はどんどん混沌に向けて突っ走るのだろう。
　……匂いか、今度咲夜に香水を買わせて来よう。

「実は私、ドロワやめてショーツにかえたんだぜ」
「「這って動くっ！　白ッ！」」

　そう言った魔法使いに、人形遣いと私の親友が珍妙な動きで迫り、スカートの中のものを捉えに行った。
　ただ友人は虚弱体質の為、ブリッジの姿勢で動くというその暴挙に背骨が逝った。今では泡を吐いている。
　人形遣いの方も、パンツを見られた魔法使いにボコボコにされていた。あの恍惚な表情は何時かの天人を見ているようだ。
　なので、一番賢いのは迷彩を張りつつ今尚観察を続けているエロガッパだろう。
　更に賢いのは無意識を操っているバスガイドである。
　……何で見えるか？　姿消えてから運命観測余裕でした。

「実は私……ドＭドＭと言われてるけど、仕事場では女王様やってるの」

　その何時かの天人はそんなことを言う。
　ちょっと待て、仕事場って何だよ。
　歌を詠んで飲んで騒いで遊んでを繰り返しているのが天人だと聞いたが。
　最近はそちらの需要も増えているのだろうか。
　まぁあれは正規のルートを踏まずに天人になったと聞いているのでいいのだが、
　それ以外の天人、お前ら煩悩塗れじゃないか。不良天人とかコイツに言える立場無いだろ。
　そんなのが私の上空にいると考えると少しイライラしてきた……今度美鈴辺りに掃除してくるよう命令しようか。

「ほら、次はレミリアの番だぜ！」

　その後も何人かが秘密の暴露を終え、遂に私の番となった。
　さて何の秘密を話そうか。
　実は私、元死徒二十七祖ですと言ったところでこの場の何人が理解するだろうか。
　秘密が無いわけじゃない。五百年も生きていれば隠したくなるものも多くなる。出来の悪い妹とか、黄色に染まったベッドシーツとか。
　あ、ベッドシーツはちゃんと洗ってるし、それももう結構前のことなので何も気にする必要はないか。
　じゃあ、あれのことでも話すか。

「少し話が長くなるけど……吸血鬼という種族は弱点が多いわ。
　日光を浴びると灰になる。流水を渡れない。銀に弱い。十字架とにんにくが弱点……という具合に。
　でもその内幾つかは出鱈目なのよ。弱点なんかになりはしない」

　え、と場内の視線が私に向く。
　嗚呼、視線の独り占めとはこんなにも心地がいいものか。
　狐の式がよく裸になるのも、実はこうして視線を集めたいからなのかもしれない。今度やってみよう。

「日光は……まぁ普段の私を見ていれば言うまでもないわね。日傘で遮ってしまえばそれほど気にならない。
　十字架も別にどうともないわ。見せられたところでどうとも思わないわね。
　銀や流水も全然どうってことは無いわ。別に橋を渡っても死なないし銀を握っても火傷はしない。
　……液体になるまで熱した銀の中に入れって言われたら、そりゃ火傷もするし死にもするけど、そんなの皆そうでしょ？」
「はい」「はい」「はい」

　片隅で焼き鳥食べてた蓬莱組が手を上げた。
　……それは反則だろう常識的に考えて……。
　でも生き返ったところで溶けた銀の上だから結果また死ぬわね～と談笑する三人。
　まぁそもそもこれは溶けた銀が大量に溜まっているという現実的にありえない事態で無いと成立しないので、どだい無理な話なのだ。
　銀という希少な金属も、幻想郷にはそう大量に置いてあるまい。

「近いと言えばにんにくかしら」
「にんにくはあってるんですか？」と半人半霊。
「にんにくが、って訳ではないけれど……。
　吸血鬼の嗅覚は人のものよりも鋭いから、苦手な食べ物は徹底的にダメなの。
　幻想郷に来る前にペンフレンドだった吸血鬼は、マツタケがダメだったわね」
「何だとぉ！？　味覚の帝王マツタケが不味いだとぉ！？」

　そこの季節はずれの秋の神、黙ってなさい。
　ていうか何でこの季節にいるのよ？

「妹さんはピーマンだったかしら？　彼女達のお父様は玉ねぎが苦手。
　どれもこれも匂いに特徴があるものばかりね。
　だから、世界のどこかを探せばにんにくが苦手な吸血鬼もいるかもね」
「ちなみにレミリア、お前さんは何が苦手なんだ」

　やはり来るか。その質問。
　確かに、私にも苦手な食物は……あるにはある。
　しかしそれは、日常生活では普通目にかかれるものでもなく、更に欲しいと思っても手に入るような物ではない為、長い間秘密にしておいたものだった。
　このことで、今は亡きお母様は私を育てるのに大変苦労したのだとか。
　今いる面々を見回す。我が館の門番、亡霊の姫、肌が艶々しているスキマ妖怪、月の薬剤師、三途の川の渡し守、地下の鬼……果たしてこんなところか。ならば別に問題はあるまい。

「私の苦手なもの……それはね――






























　翌日、香霖堂

「いらっしゃい。今日は何をお探しかな？



　…………ふむ。



　香水はあるが、母乳が出るようになる道具は置いてないね。というか何に使うんだい？」

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　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　でも美鈴とパチェの搾乳なら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠　　ちょっと見たいかも
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