Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方Project VS 仮面ライダー龍騎:第8話 邂逅

2016/06/02 16:04:58
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その日、再び神崎士郎と八雲紫が対峙していた。
今は木陰にいるため畳んでいるパラソルを手に、ドレス姿の紫はじっと前を向いて立っていた。
そして神崎が近くまで通りかかると一歩前に出て、小首を傾げて神崎に微笑みかける。
その美貌は、やはりすべての者を魅了するほどの美しさがあった。だが神崎は、

「邪魔だ」
「いきなりですわね。先日はお見苦しいところをお見せしましたわ」
「化け物は化け物らしくしていればいい」
「今日は2,3お聞きしたい事がありますの」
「話すことなど無い」
「わたくし気になっておりますの。ライダーバトルなんか“インチキ”なんじゃないかって」
「……何が言いたい」
「真司達から聞きましたわ、ライダーバトルは最後に生き残ったものが“何でも願いを叶える力”を得ると」
「今更それが何だというのだ」
「そんなに素敵なものがあるのなら、どうして貴方自身がお使いにならないのかしら」
「それを生み出すにはライダー同士の激突によるエネルギーが必要だからだ」
「で、完成した暁には優勝者にプレゼントする、と。ずいぶん親切な方ですのね」
「話の意図が不明瞭だ。言葉を慎重に選べと言ったのは貴様だろう」
「なぜ赤の他人の為にそこまでお膳立てをなさるのかしら。ミラーワールドという大掛かりな闘技場まで用意して」
「……」
「あくまでわたしの想像なのですけど、貴方。その“力”が完成したら横からかっさらうおつもりなのではなくて?」
「べらべらと。話にならん」
「ではこの話、知り合いのライダー達と検討してみてもよろしいですわね?」
「……勝手にしろ。ただ、ライダーバトルを混乱させる真似をしたら、この辺境の地に人がいなくなる事は承知しておけ」
「ふふ、冗談ですわ。わたくしはこれで」
「……」

紫は踵を返して神崎の前からしゃなりしゃなりと去っていった。
そして、しばらく進んでから人目がないか周りを見回し、誰もいないことを確認すると、
ガッ!と小さくガッツポーズをした。先日やり込められた仕返しができたようで、気分が良かったのだ。
だが、先程言ったことは冗談でも何でもない。紫の見立てが本当ならば、真司達に伝えなければ。
紫は畳んだパラソルで空間を横一文字に払うと、次元が裂け、里へと繋がるスキマが現れた。
で、やっぱり気分が良いのでスキップしながらスキマに飛び込んだ。



その頃、真司を始め、慧音、蓮、手塚がミラーワールドについて話し合うべく、寺子屋の教室に集まっていた。
まだ昼間だが、今日は日曜で休みなので生徒はいない。仮面ライダーゾルダこと北岡秀一も呼ぼうかという意見も出たが、
「お願いだからあの人に無理をさせないで頂戴……」と永琳に悲しい顔で言われたため、後ほど重要事項を連絡するのみにした。
最後の一人を待っていたら、空間にするりと裂け目が現れ、スキマから紫が現れた。

「はぁい。みんなの清純派アイドルゆかりん登場~っと」
「どうしてお前はまともに出てこれないんだ。これから重要な事を話し合うんだぞ」
「緊張と緩和は大切でしてよ」
「お前は大概緩みっぱなしだろう」
「ま、ま、先生。全員集まったんで早速会議、始めましょうよ」

またいつもの不毛な言い争いが始まる気配がしたので、真司が慌てて話題を変えた。

「そうよ。この会議、どうしてこの前私も呼んでくれなかったのよ!」
「いつもフラフラしているお前を探していたら、いつまでたっても話し合いができないからだ!
今日の会議だってお前に連絡するために何人リレーしたと思ってる!?」
「えー!これより第2回ミラーモンスター対策会議を始めたいと思います!」

一発では効果がなく、まだケンカになりそうな気配がしていたため、再び真司が強引に話に割り込んだ。治療より予防、これ大事。

「まずは前回手塚君が持ってきてくれた重要な情報を紫さんにご説明したいと思います!」

真司は、守矢神社の宝物がコアミラーの存在する空間につながっている事、
コアミラーを破壊すればミラーモンスターを消滅させることができる点。
しかし、その方法を採ると犠牲になる者がおり、対応を考えあぐねている現状を説明した。

「それは……難しい問題ね」

紫はあごに指を当て、珍しく真面目な顔で考え込んでいる。

「紫に直接外界に赴いてもらえれば解決なんだが、神崎の目があるとなると、厳しい……」

神崎も外界と幻想郷を行き来する。例え優衣を助けるためでも、恵里という、ナイトのライダーバトル参加動機である人間が居る以上、
幻想郷から出た時点で神崎がどんな行動に出るかわからない。
優衣を人質に取ろうとしていると勘違いして逆上でもしては取り返しの付かない事になる。
やはり慧音も腕を組みながら難しい顔で考えこむ。

「そう、神崎!私ね、さっきあいつを言いくるめてやったのよ、すごいでしょう!!」

立ち上がって小さく跳ねながら嬉しそうに話す紫。

「はしゃぐな座れ要点を話せ」

慧音はうんざりしてそんな紫をたしなめる。

「お硬いわねぇ……懸案事項の一つになってるライダーバトルなんだけど、もうあれに付き合う必要はないわ」

「「「なんだって!!」」」

思わず3人同時に反応するライダー勢。その反応に満足したのか、紫は得意気に先ほど神崎に突きつけた矛盾について説明した。

「確かに……そうだよ!」
「結局俺達は神崎に踊らされていたのか……」
「くそ、なぜ今まで気づかなかったんだ!」

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる真司達。

「神崎は優衣ちゃんを助けるために、ライダー達を利用したんだ」
「ありもしない賞品をぶら下げてな」
「とは言え、どうすればいい……?コアミラーを破壊すればどちらも助からない。それに、妙だ。
なぜコアミラーが2つある。コアミラーは東京にあるはずだ」
「え!?ちょっとお待ちになって」

最後に手塚が何気なく語った事実に驚く紫。

「何でしょう」
「ちょっと、外界にもコアミラーあるって本当ですの?私、初耳ですわ」
「待ってくれ、私ももう一つあることは初めて聞いたぞ!」

思わぬ事実に慧音も驚く。

「しまった、先生すみません!幻想郷のコアミラーに気を取られて伝えることすっかり忘れてました……」

手塚の代わりに補足情報を加えつつ真司が改めて説明した。

「そうなんです。コアミラーは外界の東京にもあって、実は俺のカードデッキ、神崎から渡されたわけじゃなくて、前の持ち主から託されたんです。
その人もコアミラーを破壊して、ライダーバトルを止めようとしてたんですけど、ミラーモンスターに倒されてしまって……
たまたま居合わせた俺に渡して力尽きたんです」
「どうして場所がわかっていながら破壊しなかったんだ?」

慧音がもっともな疑問を呈する。

「他のライダー達に邪魔されて手が出せなかったんです。外界には自分の欲望を叶えたいライダーがまだまだいますから。
今でも多分そいつらはコアミラーを守りながら潰し合いを続けてるはずです」

特に、カメレオン型モンスターを操る仮面ライダーベルデ。サイ型モンスターと契約した仮面ライダーガイ。
この2人はエゴイズムの塊といえる人物で、非常に厄介な存在だったと真司はいう。

「2つのコアミラー……そう、そういうこと」

紫は何やら思い至った様子でつぶやいた。

「何かわかったんですか、紫さん?」

その様子に気づいた手塚が話しかける。

「う~ん、今はまだ考えがまとまってないの。そうだ!みんなに紹介したい人がいるんだけど、いいかしら。
こういう幻想郷の安定を揺るがす状況、私たちは“異変”って呼んでるんだけど、その異変解決のプロがいるの」
「プロ……ですか。ここじゃこんな非常事態がちょくちょく起きてるんですか?」
「間隔はまちまちだけど、思い出したように突然にね。まぁ、いつもその子が主犯格をぶっ飛ばして宴会開いてよかったね、で終わるんだけど」
「はぁ、なんか……大変っすね」
「慣れたものよ。と・に・か・く、今からその子呼ぶわね」
「じゃあ、その子が来るまで一時休憩と行くか」

蓮が提案するが、

「あら、私の能力をお忘れ?今呼ぶからちょっとお待ちになって」

紫が天井に手をかざすと、空間に亀裂が走り、裂けた部分が広がり次元の穴となった。
すると「キャー!」という悲鳴と共に、1人の女の子が落ちてきた。大幣(おおぬさ)を持ち、紅白の巫女衣装を着た少女が現れた。

「いたたた……」

少女は腰をさすりながら立ち上がる。室内とは言え、天井近くから落ちたため、派手に腰を打ったのだろう。

「お、女の子?この子が異変解決のプロ?」

真司が驚くのも無理はない。この年端も行かない少女が、今回の事件に匹敵する異変を解決してきたというのだから。
紅白の少女は、そんな真司を気に留めることもなく、無言ですたすたと紫に歩み寄ると、思い切りゲンコツを振り下ろした。
ゴツン!というなんとも痛そうな音が教室に響いた。

「痛ったーい!!いきなり何するのよ!」
「“何するのよ”はこっちの台詞よ!たまには真面目に修行しようと思ったら突然こんなところに連れてくるわ、天井から落とされたせいで腰痛いわで大迷惑よ!」
「空飛べばよかったじゃない……」
「床が突然落とし穴になったら反応できんの、あんた!」
「急な要件だから仕方なかったのよ……」
「だったらあんたが来ればいいでしょうが!!」
「そう、異変、異変の話なの!今、みんなでそれを話し合ってて……」
「異変って何!?隕石落下程度だったらタダじゃ置かないわよ!」

反撃すら許さず紫にまくし立てる霊夢。凄え。ていうか紫さん、いつも怒られてないか?
流石に修羅場をくぐっているだけあって肝が据わっていると、ある意味感心する真司。

「違うのよ、ほら、ミラーモンスター!あれの対策にあなたの力が必要でぇ……」
「はぁ?“今回は仮面ライダーに任せれば安心よ!”とか言ってたの誰?やっぱりもう一発殴らせなさい、ほら頭!」
「ちょ、ちょっと待って霊夢、一度落ち着きましょう、みんな見てるから、ね?」

霊夢は紫に促されて後ろを見ると、ライダー勢が呆気にとられた様子で霊夢を見ていることに気づいた。
慧音だけは見慣れてるのか、冷めた目で今の様子を眺めていた。
さすがに気恥ずかしかったのか、少しの沈黙の後、コホン、と咳払いをして少女は自己紹介を始めた。

「えーっと。こいつから聞いてるとは思うけど、私は博麗霊夢。博麗神社の巫女をやってるの。
貴方達が“仮面ライダー”っていう人達だってことは聞いてるわ。
紫の話だと、仮面ライダーが今回の異変を解決するっていう事だったんだけど、状況を説明してもらえるかしら」

あまり多弁な方ではない蓮や海之に代わり、真司が今に至るまでの経緯を説明した。

「う~ん、いつも以上に厄介ね、今回の異変は。黒幕をぶちのめして終わり、って訳にはいかないし」

腕組みをして顔をしかめる霊夢。やはり異変解決のプロにとってもこの状況は難しいようだ。

「今日はこれ以上考えこんでも仕方ないんじゃないかしら。何か進展があればまた集合ってことで」

会議も行き詰まってしまったので、今回はお開きにしようと紫が提案した。

「そうっすね。現状答えは出そうにないし」
「俺も異議はない」
「今日のところは解散しましょう」
「紫はちゃんと連絡手段を確立してから帰るんだぞ。今回みたいにあちこち駆けずり回るのはご免だからな。手紙でも狼煙でも何でも構わん」
「職員室の隅に小さなスキマを作っておくわ。そこに話しかければ私がいなくても藍か橙が対応するから」
「ああ、そうしてくれると助かる」



校舎を出て、運動場に入ったところで海之が蓮を呼び止めた。

「秋山、これをお前に渡しておく」

海之は蓮に“SURVIVE”の文字が書かれたカードを手渡した。吹き荒れる嵐を背景に、右の翼が描かれている。

「これは……どういうことだ。お前も“SURVIVE”の存在は知らなかったんじゃないのか」

確かに真司が初めて“SURVIVE”のカードを見せたとき、海之も蓮や慧音と一緒に不思議そうに見ていた。

「知らなかったわけじゃない。ただ、“なぜもう1枚存在するんだ”と驚いて言葉が出なかったんだ」
「そうか……だが、なぜお前がこれを持ってるんだ?それに、なぜ今俺に渡す必要がある。もう“SURVIVE”で倒すような奴はいないだろう」
「そのカードは、まだ俺がライダーになる決心がつかなかった頃、神崎が踏ん切りを付けさせるために俺に渡したんだ。
ずっとしまっておいたんだけど、俺の占いが告げてるんだ。近々大きな戦いがあるって。
きっとそのカードは必要になる。だから、お前が持っていてくれ」
「……わかった」

そう答えると、蓮と海之はそれぞれの帰途についた。



蓮たちが帰ったいったしばらく後。真司は慧音と浅倉の処遇について話し合うため、会議の後もしばらく教室に残っていた。
しばらく里の地下牢で頭を冷やさせる、とうことでまとまりかけた時、校舎の外から騒ぎ声が聞こえてきた。
慧音が窓を開けると、憲兵達が中央広場方向へ走っていく様子が見えた。

「一体どうしたと言うんだ。まさか、ミラーモンスターか!?」
「いや、いつもの音が聞こえません!何か、別の事件だと思います」
「とにかく私は行ってくる!」
「あ、先生俺も!」



遡ること30分前。里の病院。
龍騎サバイブに敗れた浅倉は、この病院で治療を受けていた。
ただし、本来は凶悪殺人犯であることと、先日、里で大暴れしたことから両手足をベッドの手すりに縛り付けられていた。
しかし、意識を取り戻した浅倉は薄目を開けて状況を把握。
龍騎からとどめの一撃を食らった後、意識を失う直前に口に含んだ石ころを噛み砕き、フッ!と破片を右手近くに吹き飛ばした。
右手をよじって何とか破片を拾い、破片の切り口で少しずつロープを切り始めた。右手が自由になると、素早く残りの手足のロープを解き、辺りを探りだした。
王蛇のデッキを探すために。すると、あった。年季の入った木の戸棚に浅倉の私服とデッキが置かれていた。よし。もうここに用はない。しかし、

「あなた!ここで何をしてるんですか!?」

物音に気づいた看護婦が様子を見に来たのだ。

「……よう」
「キャー!憲兵さーん!!」

看護婦が叫んで、壁に吊り下げてあった緊急用の警笛を吹き鳴らした。耳を貫くような音が周囲に響き、間もなく辺りが騒然とし始めた。

「うるせえ……イラつく!」

戸を蹴り開け、浅倉が病院から出ると、三八式歩兵銃を装備し、カーキ色の軍服を着た集団が浅倉に銃口を向けていた。
門を守っていた者達は全員服装もバラバラで、狩猟用の散弾銃しか持っていなかった。恐らく彼らは民間の自警団だったのだ。
同じ制服を着て、軍用の銃を装備していることを考えると、目の前の集団が里の正式な警察組織と考えていいだろう。憲兵の一人が叫ぶ。

「動くな!壁に両手を付いて大人しくしろ!」
「警察っていうのは、なんでこんなにイライラさせるかね……!」

小さくつぶやくと、浅倉は両手を上げてゆっくりと憲兵の一人に近づく。

「止まれ!止まらないと撃つぞ!」

浅倉はニヤリと笑い、次の瞬間、身を屈めて憲兵のみぞおちに思い切り拳を叩き込んだ。
憲兵が気を失うとすぐさま歩兵銃を奪い取り、そばにいた別の憲兵の顎を銃把で殴りつけた。
ふらついて隙を見せたところを見逃さず背後に回り、左腕で思い切り首を締め上げる。間もなく彼も気絶。
絞め落とした憲兵を肉の盾とし、右手の歩兵銃を残りの集団に向けながら近づく。

「そいつを離せ!さもないと本当に撃つぞ!」
「ハ……やってみろよ……」

盾代わりにしていた憲兵を、残りの集団に向けて突き飛ばし、憲兵達の体勢を崩した。
その機を逃さず、一人のこめかみを歩兵銃で殴り、一人の顔を掴み壁に叩きつけ、残る一人を足払いで転倒させ、頭を踏みつけ気絶させた。
十数秒で憲兵達を倒した浅倉は、歩兵銃の銃口を周囲に向けて威嚇しながら里の外へ走り去っていった。
あちこちで悲鳴が上がる中、遅れてやってきた慧音と真司。死屍累々たる惨状を目の当たりにし、焦燥を隠せない慧音。

「しまった、浅倉を取り逃がした!皆にもしものことがあったら……」

「その心配は……ないと思います、先生」

その時、病院の中の無事を確認してきた真司が1枚の紙切れを手渡す。ベッドに乱暴に書きなぐられた書き置きがあったのだ。

<人間は我慢してやる>

実際、浅倉に叩きのめされた憲兵達は、皆気絶していただけで、しばらくすると目を覚ました。
代わりに、翌日からあちこちで人喰い妖怪の死体が見つかるようになり、里がその処分に追われることとなったが。
すみません。やはりライアサバイブ、出せそうにありません。何しろ情報が……
AK
コメント



1.沙門削除
出たら面白いな、と思っただけで「ライアサバイブ出してー!!」ってな事は思ってません。あなたは貴方の話を紡げばいいと思います。酒の力を借りて話を作ってる私とは別にね。ここまできたのだから思いっきり飛んだラストを希望、みたいな。
2.AK削除
>沙門 さん
そう言って頂けると助かります。自分としても、あの大きな弓状の腕がかっこいいと思ったので、
もし出せたらとは考えたのですが、ナイトサバイブも出せてない今ではまだ力不足でした。
とにかく今は完結させることを第一に頑張ります。