Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

時間を止めてでも

2013/12/23 23:43:01
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 止まった時間の中で動くコツは、相手の時間を止めることよりも、自分の時間だけを動かすことを意識することです。自分だけが動く世界の発現こそが、時間を止めるということです。
 時間を早めるコツも同じです。自分だけがゆったりとした時間を送るよう意識することが重要です。自分だけが緩やかに歩ける世界の発現こそが、時間を早めるということです。
 時間を巻き戻すコツは少し違います。過去の自分へ意識を逆行させる必要があります。自分自身が過去に戻るということが、時間を元に戻すということです。自分自身の時間までは戻りませんが、それは当然ですね。実際に巻き戻しているのは、世界の時間なのですから。
 時間とは世界です。世界を操る私には、空間を操ることも思うが儘。空間を拡げるということは、世界を拡げるということですから。この館の中も、外観よりも広大な世界が広がっていますでしょう?まぁ、少々掃除が面倒なのが玉に傷ですが、収納スペースが多いことは利点ですわ。
 ――まぁ、偶に何をどこに仕舞ったのか分かり辛いこともありますが、それも玉に傷程度の欠点です。何より、お客様を沢山お呼びできますので、お嬢様もお喜びになりますもの。
 ――まぁ、多ければ多い程、その後の後始末が面倒になりますが、それもまた玉に傷ですね。
 ――あら、この玉、三つも傷が入ってしまっているわ。あぁ、早く傷を直さないと、お嬢様に叱られてしまいますわね。さて、どうしましょう。困りましたわ。時間を戻しても、壊れた物は元通りにはなりませんもの。
 え?どうしてかって?それは、物が壊れると、その物が持つ時間も壊れてしまうからです。私は時間を操ることは出来ますけれど、時間を直すことは出来ません。私は人形遣いであって、人形の修繕師ではありませんから。勿論、魔法遣いでもありませんけど。ともかく、私には壊れた時間を操ることは出来ません。死んだ時間も同じく操れません。えぇ、そうです。時間も死ぬのです。生き物が死ねば、その時間も死ぬのですよ。まぁ、当然ですね。ですから勿論、私には死んだモノを蘇らせることも出来ません。非常に残念ですが、仕方ありません。私には在るモノを操ることしか出来ませんから。
 と言うわけで、私でも何か生み出せないかと思い、日々創作紅茶などにも挑戦しているのですが、お嬢様以外の方に批評して頂けるようなものは中々出来ません。芸術への道のりは長く険しいものだと痛感している今日この頃でございます。
 ……え?紅茶は芸術品じゃなくて飲み物?まぁ、世間一般にはそうかもしれませんわね。私も、それぐらい分かっておりますとも。しかし、お嬢様のティータイムは芸術的でありますもの。私の差し上げるモノも芸術的である方が鑑賞に堪えうるでしょう?
 っと、話が逸れましたね。無意識でしたわ。しかし、時間を操るコツは全てお教えしたつもりですが。他に何か聞きたいことがおありなのですか?
 ……ああ、そうですね。失念しておりました。自分自身の時間について、ですね。確かに、時間を止めている間も、時間を早めている間も、時間を巻き戻している間も、自分自身の時間は動き続けますわ。でも、時間を早める場合は自分の時間はそれ程消費しませんし、戻す場合も、自分自身の時間は戻らないにせよ損はありませんよ。ただ、時間を止める場合だけは、損があるかもしれません。何せ、周りの時間は止まるにも関わらず、自分の時間だけは進み続けるのですから。放っておいたら、自分だけおばあちゃんになっちゃいます。せっかく時間を止める力を持っているのに、そんな損をするのはちょっと嫌ですよね。ですから、出来るだけ時間を止めている時間は短い方が良いと思います。自分の時間だけが動いている時間は、なるべく短いに越したことはないです。まぁ、普段時間を止めている分、私には結構余裕はありますけれどね。
 ……えぇ、そうですよ。私は普段からずっと、自分の時間を止めております。そうでもしなければ、吸血鬼であるお嬢様のメイドは務まりません。もっとも、吸血鬼のメイドでなくとも私はそうしましたけどね。だって、嫌じゃないですか。せっかく便利な能力があるのに自分だけ損をするなんて。そう思いませんか?
 あ、でも、この事は誰にも言ってはいけませんよ。美鈴もパチュリー様も、私が死んだらどっちがお嬢様の世話をするのかを今から押し付け合っていますし、当のお嬢様はその話題になるべく触れないようにすごく気を遣ってらっしゃいますもの。この間なんて、里で十七歳の若い女性が病気で亡くなった話を言って聞かせて差し上げたら「そんな事より今夜の夕食は何だ?」って興味ないようにおっしゃっておきながら、夕食後にしっかりパチュリー様に医学書を借りていたそうですし、その前も「私が死んだらどうします?」ってしつこく聞いたら「頼むからそんな話はまだしないでくれ」って半泣きしながら懇願して下さりましたもの。そんなお嬢様の耳にだけは、今の話はしてはいけませんよ、絶対に。え?妹様ですか?うぅん、妹様はどうでしょう。私がいつか死ぬことを待っているわけではないと思いますが、その真意は私でも図りかねますね。でもきっと、私が死んだら碌なご飯が食べられないかもしれないってことぐらいはよくご存じだと思います。
 とまぁ、時間を操るコツはそのぐらいですかね。あなたも是非参考にして下さいね。ただ、一つだけ注意して下さい。いくら時間を止めていても、世界の時間を止めている間は、歳を取らずにはいられません。私も、時間を止める時だけは自分の時間を動かさずにはいられません。何故なら止まった時間を認識出来る者は、止まっていない者だけですから。もしもそうしないと、この世界は二度と動かなくなってしまいますから、気をつけて下さいね。そして、たとえその「私達の動いている時間」が日に一時間だけだとしても、私達が生きられる年月は所詮人間の寿命の二十四倍程度にしかなりません。私達の生きられる時間は、決して永遠ではないのです。しかし、だからこそ私達はお嬢様のお傍にお仕え出来るということは、それ以上に忘れてはいけませんよ。いいですね?
 さて、私から伝えることは以上ですかね。まだしばらく余裕はありますが、後継者の育成は早い方が良いですものね。それでは、二千年後の事は頼みましたよ。新しいメイド長様。
 
 ……はい?何でしょうお嬢様。え?何を話していたかって?お嬢様がいかに素晴らしい夜の王者かをこの子に説いていたのですよ。何と言ってもこの子は未来のメイド長ですから。えぇ、そうです。え?子供の未来は自分で選ばせるべき?しかし、私にも何があるか分かりませんし、引き継ぎは早い方が良いじゃありませんか。えぇ、そうです。急な病に倒れるかもしれませんし、強い妖怪に襲われてしまうかもしれません。え?なんですって?まだ言葉も知らない赤子にそんなことをしても無意味?そんなことはまだ気にしなくていい?でも、何があるか分かりませんし……。あぁ、はい。分かりました。分かりましたから、そんなに拗ねないでください。私だって、もうしばらくは長生きするつもりですから。ええ、本当ですとも。ずっとお仕えさせて頂きますよ……死ぬまでは。あぁ、そんなにお怒りにならないで下さい。ちょっとした寿命差ジョークじゃないですか。大丈夫ですって、なるべく頑張りますから。はい、勿論です。それでは、また後ほど。
 
 ……ふふふ。お嬢様にも困ったものですね。それがまた愛くるしいのだと、あなたには理解して貰えるかしらね……。さっきも言いましたが、私だって、いつか別れるその時まで、お嬢様の愛くるしい姿をお傍でお守り続けていたいと思っているのですよ?
 だから、もしも、あなたもあの我儘な王様のことを愛してくれるなら、いつかの後の事をどうかよろしくお願いしますね。絶対に損はしないと思いますよ。きっとあなたも、私と同じことを思うはずですわ。

 ――時間を止めてでも、永生きしたいって。
 
 初投稿です。文章の勉強とかは全然してないのでお見苦しいかと思いますが、ちょっと書いてみたかったものですから……。独自設定(及び解釈)ばかりですいませんでした。それも含めて、見て下さった方が、ふふっと笑って下さったなら幸いです。
 それでは、さようなら。
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コメント



1.電柱治削除
これは、どういう状況のお話なんでしょう?
2.名前が無い程度の能力削除
残念だが、咲夜は時間を巻き戻す事は出来ないというのが公式。