Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

神々の黄昏

2013/08/31 04:55:15
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 秋。

 妖怪の山は真っ赤に紅葉し、傾いた陽の光と相まって世界を赤く照らしている。

「全く、派手だねえ」
「そうか?私には地味に見えるが。赤一色しか見えん」

 夕焼けに染まった神社の屋根の上、二人の少女は並んで山々を見下ろしていた。

「巫女に手を貸さなくていいのかい?黒い魔法使いさん」
「私にゃ、あんな赤と白ばかりの地味な戦いに手を貸す義理はないね。弾幕はもっとカラフルでなくちゃ」
「ほう、そうかい。だったらうちの神奈子に手を貸してやってくれよ。あんたが手を貸してくれるとなれば、奴の弾幕はもっときれいな色を出すだろうさ」
「それも御免被りたいね。私は負ける戦いはやらない主義なんだ」

 大量の赤い符が飛び、神はそれを大きな柱で消し飛ばす。数えきれないほどの矢が放たれたかと思えば、巫女はそれを紙一重でかわしていく。山も震えるような激しい戦いを前にして、彼女たちは風ひとつ吹いていないような顔で、紅に染まる遠くの山々を眺めていた。

「で、あんたは何者だい?」

 霧雨魔理沙は、傍らに座る少女に向かって尋ねる。

「私は洩矢諏訪子。この神社の本当の神様よ」
「本当の、だ?またなんかドロドロしてそうだな」
「表向きは神奈子の神社。でも、実質は私の神社。表向きには私の名前は殆ど出てこないけど、実際に神社で働いているのはこの私」

 魔理沙は、黒い三角帽子を指でくるくる回しながら、下で戦う二人に目を向ける。

「神様ねえ。秋の神といい厄神といいそこで戦ってるやつといい、今日は神様によく会う日だ。全く、世界の終わりでも来るんじゃないか?」

 何気なしに魔理沙が発した言葉に、諏訪子と名乗る少女は軽く首を傾げた。

「世界の終わり?なんでまた」
「神々の黄昏って、知ってるか?」
「知らないねえ。西洋の言い伝えか何かかしら」
「ラグナロク、って言ってな。神々が集まって戦争して、世界が滅びるっていう話さ」
「へえ。で、その後は?」
「ほとんどの奴らは死に絶えて、世界は炎に包まれる。そして生き残った奴らは、ユグドラシルの樹の下に逃げこんで、そこで新しい世界を作るんだと」

 そう言って、魔理沙は諏訪子の方に顔を向け、冗談めかして尋ねる。

「それで、実際のところ、世界は滅亡するのかい?」
「世界ねえ……」

 諏訪子は、遠くの空を見ながら、外の世界に思いを馳せた。

「私らにとっちゃ、世界はとっくに滅びてるのかもしれないねえ」
「へえ。じゃああんたらは逃げてきたのかい」
「戦争は起こっちゃいないけどね。何人もの神が消えたっていう意味では、何も変わらない」
「ならここは、さしずめ世界樹の下ってとこか」
「そうだね。ただ、私らは神様とじゃなく、人間との戦いに負けて、ここに逃げ込んできたのさ」

 人が神々を信仰しなくなり、神はその存在をどんどんと薄れさせていく。それはさしずめ、神と人間の戦いであった。神は守る対象であったはずの人間から忘れられ、その存在までも認識されなくなってゆく。神の存在など非科学的だと否定され、科学絶対主義の中、何人もの同胞が姿を消した。ラグナロクなど起こるはずもない。神は人間の救われたいという想いから生まれ、人間を救うために存在し、そして救った人間の手によって消えてゆくのだ。

「へえ。じゃあ、私ら人間は敵ってわけかい」
「そういうわけじゃないさ。私達はここで貴方たちから信仰を得られなきゃ、ほんとうに消えることになってしまう。言うなれば、商売相手ってとこかね」
「でもあんたの相方は、顧客の獲得には失敗したみたいだな。ほら」

 そう言って、魔理沙は下を見下ろす。そこには、本殿の前に膝をつく神奈子と、悠然と彼女を見下ろす霊夢の姿があった。

「あらま。なら、貴方にはしっかりと宣伝をしておかないといけないわね」
「私は自分の利益になるもの以外は認めない主義だぜ」
「その辺りはバッチリよ。なんせ神様だもの」
「ご利益は?」
「商売繁盛、恋愛成就、無病息災に戦勝祈願まで。信仰するならなんでもござれ」
「へえ。じゃあ、しっかりと私の勝ちを祈っておかないとな」

 諏訪子に向かって賽銭を放り、手を合わせる。

「叶うかどうかは、あなたの信仰心次第よ?」
「それなら大丈夫さ。私は信じるのは得意な方だからな。ただし、自分をだが」
「それは結構なことで」

 魔理沙は立ち上がり、屋根の上に立つ諏訪子に相対した。

「歓迎するよ、外の世界の神様!景気付けに、パーッと行こうじゃないか!」

 帽子の中から取り出した八卦炉が、淡い光を放つ。

「いいだろう、人の子よ。神の力ってやつを、その目に魅せつけてあげるよ!」

 どこからともなく現れた黒い霧が、足元からじわりと広がっていく。

 時は夕暮れ、風は止み、音もなく。
 夕日が、山の向こうへ、姿を消し。

「「さあ、祭だ!」」

 瞬間、黄昏の空に、光が弾けた。
霊夢AorBラスト後。霊夢EXにつながります。
ちなみにこの時魔理沙は諏訪子に負けます。

途中、ゲーム本編(魔理沙EX)のセリフを引用してあります。
魔理沙は諏訪子に初対面なので、必然的にこの会話になるのかな、と。
そんな感じで書きました。

というか、お題と合わせるのむずすぎワロタ……
新兎
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