Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

まどろみの繭

2013/03/15 01:20:49
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 幻想郷の一画に魔法の森という巨大な森林群がある。

 その森は昼でも薄暗く、得体の知れない生物や妖怪が住んでおり、幻想郷でも非常に危険な地域である。
そんな森の中に一軒の家が建っている。そこに一人の魔法使い、霧雨魔理沙は住んでいた。
彼女が何故こんな危険な森の中に住んでいるのかというと、研究に使うキノコがこの森にはよく生えているからだった。
己の研究には危険もいとわない。それが魔法使いの鉄則であり彼女のモットーだった。

 とまあ、そんな魔理沙邸だったが……別名、雪崩の家とも言われている。
 それは季節外れの雪崩が日常茶飯事で発生する事からである。というのも霧雨魔理沙という人間は片付けが出来ない性質だったからが。
 彼女は癖として、読んだ書物や使った物をそこら辺に置き、さらにその上にどんどん積み重ねてしまう。その結果『テトリス』の様に段々と歪な形のビルが形成される。さらにそれが一つだけなら良いのだが、それがいくつも連なり新たなる都市が形成される。
 そして、行き過ぎた文明は崩壊を迎えるのがセオリーだ。
 それらはいつしか崩れ落ちる、現世が崩れ落ちるのだ、砂の上に―――。

 と、まあこんなメカニズムにより魔理沙邸は核の炎に包まれた後訳の分からないモヒカン共がはこびる世界より酷い状態である。

 ちなみに魔理沙は、先ほどのテトリス理論より、積み重なった本が綺麗に一列に並ぶと消えてしまう魔法を開発しようとしたが、大切な(借りパクした)魔法書が消えてしまうのはいかなるものか? と言う事で止めてしまってそれっきりである。

 もうこの部屋は腐海に飲み込まれ、自然治癒されるしか道はないだろう。

 そして、そんなこんなで今日も一つの高層ビルが崩れ落ちようとしている。
ズズズと音を立てて本達がゆっくりと擦れ、崩壊へのカウントダウンが始まる。そして、堰を切るかのように大漁の本が崩れ、それらは無情にも魔理沙が寝ているベッドに降り注いだ。

 ガバッ!           ドサドサドサ!

 間一髪、それらの本が降り注ぐ前に魔理沙は飛び起きた。これはもう慣れっこであり、彼女にとっては日常茶飯事である。
まあ、くらったことも一度ではないが……。

「う~ん……」
急遽飛び起きたためまだ眠りから覚醒していないのか、魔理沙は目元をこすり、眠たげな表情を見せる。

 そして背伸びをした後、気だるそうにベットから降りて洗面所に向かった。
 しかしこの時点では彼女は気付いてなかったのだ、自分の身に降りかかった異変に。
 彼女は眠そうな顔で洗面所に向かい蛇口をひねる。勢いよく出た水をすくって顔にバシャバシャとかけると大分眠気が消えた。そして横にかけて置いたタオルを取って顔を拭く。

「ふう……さっぱりしたぜ」
彼女は顔を上げて鏡に自分の姿を映す。

(ん?)

 その時、彼女はある違和感を覚えた。もう一度鏡に映った自分の姿をよく見てみる。

「……う、うあああぁぁぁっっっ!! な、なんだこれ!?」
部屋の中に悲鳴が木霊する。

 恐る恐るゆっくりと正面に掛かっている鏡を覗いてみる。
 そう、彼女の額に一匹の虫がついていた。
それは小指の先ほどの白を基調としたふわふわとしたみのむしのような虫だ。それは今まで見たこともない形の虫だった。

 魔理沙は恐る恐るそれに触れると、まるで綿を触ったようなふわふわした感触を感じた。そして、それは何度触っても変化はなかったがしかし、何やら肌に張り付いているのかびくともしない。

「なんだこりゃ……」
 魔理沙はそう呟いて触るのを止めた。けど、触らない方がいいだろうと魔理沙は判断した。呪いでも魔法でもそうだが、下手に弄ると余計に悪くなることが多い。これが何かは分からない以上は触らない方が良い。

(あのキノコか?いやいや違うな……こないだパチュリーからぱくった本……あれも違うな……)
 魔理沙は原因を少し考えたが、あまりにも思い当たる節が多過ぎる。多すぎて何が原因か分からない。

「まあいい、ちょっと医者に行ってみるか……」
 このままではいられないと思った魔理沙はすぐさま箒に乗り、永遠亭に急いだ。




「おう、永琳」
 永遠亭に着くと、魔理沙はそこに住む兎に案内してもらい八意永琳の元を訪ねた。彼女はこの永遠亭で医者のような仕事をしているのを魔理沙は知っていた。

「あら、久しぶりね。今日はどうしたの?」
 永琳は顔を上げると聞いた。
「それがな……こんなもんが、私の額についてたんだが……何だが分かるか?」
 魔理沙は深くかぶって隠していた額を彼女に見せた。それはまだ魔理沙の額に張り付いている。
すると、永琳は何かに気づいたように言った。
「ん、……ああ、これね」

 彼女は魔理沙に近寄ると、スッとおもむろにその虫を摘むと引きちぎった。

「いたっ!? 何すんだよ!?」
 一瞬痛みがはしり、魔理沙は永琳に詰め寄る。
「ごめんごめん、けど、これでもう大丈夫よ」
 永琳は詫びながら笑顔で言った。

「ふん、まあそれならいいんだけどな。けど、一体この虫はなんだったんだ? 見たことのない虫だったが……」
 魔理沙は訝しげに聞いた。すると、永琳は笑いながら言った。

「ノミよ、これ」

「はぁ? こんな大きなノミがいるのか?」
 魔理沙は驚愕した。ここまで大きなノミは見たことない。それに形も彼女の知っているノミとは違う。

「ええ、貴方部屋が汚いでしょ。それに魔法の森なんて魔力が不安定な場所なんだからこんなや虫も出てくるわよ、そりゃ」
「あー、まあ確かにそうかもな……」
「この虫はノミムシ、冬を超えるために生物に寄生する虫よ。まあ、長生きなノミと思っていいわ。ちゃんと部屋は片付けないと虫まみれになるわよ」
 永琳がそう言うと、魔理沙は顔を青くして首を振る。
「う、そ、そうか、それは忠告ありがとよ。ちょっと家に帰ったら部屋を片付けてみるかな……じゃあな。世話になった」
 納得した魔理沙は苦々しげにそう言って去っていった。








「師匠」
 魔理沙が永琳の部屋を去ると、奥の戸がゆっくりと開いた。
そこに立っていたのは鈴仙優曇華院イナバ。永琳の弟子の月の兎である。
「あら何、ウドンゲ?」
 永琳は彼女に聞くと、当の本人は少し困惑しながら言った。
「師匠……あの虫。本当は何だったんですか? 魔理沙は納得していたようですが、いくらなんでもあんなにも大きなノミは見たことないですよ……」
 そう、イナバも永琳の弟子をして長い。
今まで色々な物を見たことがあるが、あんな虫は見たことが無かった。

 すると、永琳はスっと口角を上げる。
「あら、ウドンゲ。貴方も中々分かるようになってきたじゃない」
 そう言うと、永琳は取り除いた虫を机の上に置いた。それは今だに変わらず、机の上でジッとしている。

「実はこれは人間だけに取り付く虫なの。それも殆どの人に取り付いているの。だけど、それにこんなに大きなものは滅多にいないわ」
「え!? そうなんですか!?」
 イナバは驚きの声を上げる。
「そうよ。人間は気づかないだけで、数え切れないほどの細菌やダニや寄生虫がくっついているわ。気づかないのは視覚化出来ないほど小さかったりするからだけど……」
「そうですね……それは知ってますが……。けど、虫なんですか……てっきり妖怪の類かと思いましたけど……実害はないんですが?」
 イナバは衝撃の事実にポカンとしているが、何とか驚きを隠しながら永琳に向けて質問をする。

「ええ、まあやることは妖怪に似ているわ。実害もなくはないかな?この虫はね……『夢を食べる』の」

「夢ですか……アレですか? 大陸の神話で有名な『バク』みたいなものですか?」
 すると、イナバの言葉を受けて、永琳はプッと吹き出した。
「ごめんごめん。そっちの夢じゃないのよ。見る方の夢じゃなくて、望む方の夢。人は年をとると徐々に夢がなくなっていくものよ。それは決して体の衰えや精神の発達ではなく、この虫のせいなのよ。この虫は人が望む夢食べて、代わりに新たな記憶を補填――『毒』を注入するの。『昔は良かった』というね」

「はぁ……けど、それを聞く限り悪い虫に思えるんですが……」
「そうね。この虫に対する薬はないし。治療はこうして引き抜くき、取り除くしかないわ。けど、ま、それ以外に実害はないし大丈夫でしょう。それに、あの白黒の様に夢が大きいならば、膨れて今回の様に簡単に引き抜かれちゃうしね」
「そ、そうなんですか。で、その虫の名前は何て言うんですか?」
 イナバは恐る恐る聞いた。
すると、永琳は机の引き出しを開くと、小さな瓶とピンセットを取り出した。

「この虫の名前はね……」
 そう言うと、例の虫をピンセットで摘むと瓶に入れて閉じ込めた。

「懐古虫(かいこちゅう)よ」


                                                                         (終)

なんで懐古って起きるんでしょうか
きっと、それは何か理由があると思って考えました
その結果がこのダジャレオチ
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コメント



1.名前が無い程度の能力削除
 とても好い解釈だと思います。幻想郷ならでは、といった感じで。
 妖怪「リモコン隠し」よろしく、こんなことが本当に日常茶飯で
 起こってるんじゃないかと。地の文もくすりと笑えるように表現が
 工夫されていて好かったです。
2.名前が無い程度の能力削除
努力をすることでしか人は進めず。それは子供も大人も一緒。
懐古主義者の大半は、努力を怠って自分を高く積み上げられなかった人達。
そしてそんな今を認められず、幻想の昔日を嘆いて心を慰める人達。
または、既に大人に成った自身は立派であり、それ故自身は満足を得たのだと思い込み、それ以上考えるのを止めた人達。
真に自分と向き合って来れた人は懐古をしない。
ただ「現在」を愛するだけ。

この懐古虫、じわじわと蝕む精神の毒のような虫ですね。
逆に夢を燃やしている相手には長く居つけないのですから。
3.奇声を発する程度の能力削除
らしい感じが良かったです