Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想機動遊戯 1

2012/10/07 13:55:19
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「私はここで力を放出していればいいのかな?」
「ええ、そうよ。制御は私たちでやるわ。そちらは準備できたかしら?」
「いつでもいいよ、私はサポートだから楽なものさ。」
「こっちも大丈夫よ、力の流れは把握しているわ。」
「頼もしいわね、じゃあ始めるわよ。異変の始まり始まり…。」


幻想郷の初春、長かった冬もようやく終る兆しを見せる頃。
朝晩はまだ冷えるが日中はぽかぽかと暖かい。
桜はつぼみをつけ春告精が通れば一気に咲き乱れるだろう。
皆、遠くない花見の宴会に思いを寄せる。

博麗霊夢の朝は早い。
まだ薄暗いうちから境内で鍛錬に励む。
八雲紫に稽古をつけられて以来、日課になった。
最初は嫌々やっていたが日々成長を実感できて楽しくなってしまったのだ。
神降ろしを体得した今では体術の稽古にも余念がない。
ヒュンヒュンと流れるように御祓い棒を操り最後は昇天脚で〆た。
が、今朝は何かがおかしい。

「力が、弾幕が出せない…?おかしな結界で抑えられているわね。」

左手を前方に伸ばし弾幕を出そうと試みるが出せない。
が、もっと強い力、スペルカードなら抑えを破れる程度に感じる。
とりあえずこの結界を破ってみようと考え、すぅ、と息を吸い力を集めた。

「夢符・封魔陣!…えっ?えっ?」

放出された力は封魔陣にならずに霊夢を包み込んだ。

「何?何なの??」

霊夢を包み込んだ力は体にまとわり付いた。
シュワシュワーと音を立て全身が光り輝く。
数秒後、光は消えて霊夢の姿はまったく別物になっていた。

「いったい何だっていうのよ…。」

霊夢は変貌した自分の姿をマジマジと見た。
手足が白、胴体が黒のゴツゴツとした人型の物体。
右手に握っていた御払い棒はなく白い棒切れが代わりに握られていた。
左腕には細長く平べったい盾がくっついている。
背中には翼のようなものが片方だけ付いていた。
RX-93 νガンダムだが当然霊夢には分からない。

「異変、よね…。この姿はいったい…。」

今まで様々な異変があったが自分の姿が変わるものなどとんと記憶にない。
姿が変わった後も弾幕は出せなかった。

「困ったわ、どうやって元の姿に戻るのかしら…。」

変身の解除方法がさっぱり分からない。
流石にいつまでもこのままの姿で居るわけには行かない。
こんな得体の知れない姿では新手の妖怪と間違えられ退治されてしまう。
博麗霊夢です、と名乗ったところで誰も信じてはくれまい。
弾幕も出せないので襲われたら一方的にやられてしまうだろう。
キョロキョロと辺りを見回したが幸いなことに誰も居なかった。

ふと、右手の白い棒切れが目に入った。
ビームライフルを知らない霊夢は里の猟師の持っていた猟銃に似ている、と感じた。

「これ、武器かしら?確かこうして…。」

森の木の枝に大雑把に狙いを付けて引き金を引いた。

『ズキュウウウウウウン』

一条の光線が枝を木っ端微塵に吹き飛ばした。

「…ふむ、これは使えそうね。」

何発か試し打つ。
どうやら自分の力が形を変え放出されているようだ。
弾幕のように広範囲にばら撒いたり連射は効かないが弾速があり高威力だ。

「んー、他に武器はあるのかしら?」

霊夢は変身した自分の体を調べることにした。
程なくして背中に背負ったバズーカとコメカミの辺りのバルカンを発見した。
バズーカからは被弾すると爆発する強力な弾、バルカンは低威力ながら連射のできる弾。
次いでビームサーベルが2本、肩と左腕から見付かった。
高熱を発しており、水につければお湯が沸かせそうだ。
背中の翼のようなものは一つ一つ分解できたが用途がよく分からなかった。

「霊夢さーーん!」

武器のためし撃ちをしていると上空から霊夢を呼ぶ声がした。
東風谷早苗の声。
見上げると鳥のような物体が朝日を背に上空で旋廻していた。
物体は高度を下げ神社正面の鳥居をくぐり霊夢の手前で人型の機体に変形した。
白と青と赤の機体、霊夢の変身した姿に似ている。
霊夢の目の前で片足をあげ両手を広げ、全身を見せるようにくるりと一回転して見せた。

「霊夢さんですよね?見てください!私、Zガンダムになれましたよ!
子供のころ、七夕の短冊に書いた願いが叶いました~!
願ってみるものですねぇ。あ、霊夢さんはνガンダムなんですね、カッコイイですよ!」

なにやらまくし立てている。
表情が、声が、全身が歓喜に満ち溢れている。
心からこの異変を歓迎しているのではないだろうか。
早苗はこの変身した姿についてなにやら知っているようだ。

「…え~っと、ゼータガンダムってなによ?てかあんたこの白い…モノを知ってるの?」
「あー、ガンダムっていうのは外の世界の物語に登場する乗物なんです。本物はモビルスーツとかモビルアーマーっていって、
もっとずーっとおっきくて人間が乗り込むんですが、どういうわけか変形できるようになっちゃいましたね~。」
「あの鳥?みたいなのはなに?変形するにはどうしたらいいの?」
「あれはウェイブライダーっていいまして…あ、霊夢さんのνガンダムじゃできませんよ~。」
「むー、なんかズルイわね。」
「ズルイって…フィン・ファンネルのほうがよっぽどズルイですって。」
「フィン…何のことかよくわからないわ。元の姿に戻りたいんだけど…できる?」
「あぁ、5秒くらい戻りたいーって思ってたら戻れました。でもモビルスーツになってすぐは無理みたいですね~。」
「そうなの?やってみるわ。」

試してみると早苗の言ったとおり元の姿に戻れた。
ほっと胸をなでおろす。
やれやれと賽銭箱の前に座った。

「ふぅ、どうなることかと思ったわ。えーと、その…ガンダム?って物語、聞かせてくれない?」
「ああ、いいですよ。ちょっと待ってくださいね。よいせっと…。」

早苗も変身を解き、霊夢の隣に腰を下ろした。
懐から握り飯を出し霊夢に勧める。
霊夢は早苗から奪い取るように受け取ると一瞬で平らげた。
そんな霊夢をみて早苗はにっこり微笑み話し始めた。

「じゃあ、ざっとご説明しますね。人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって――。」

10分後

「…で、ガンダムとやらはいつ出てくるのよ?」
「まだV作戦が始まったところじゃないですか、もうちょっとですよ。」

さらに10分後

「…で、νガンダムとやらはいつ出てくるのよ?」
「まだガデムが死んだところじゃないですか。まだまだ先ですよ。」
「妙な小芝居入れずにちゃちゃっと話してくれればいいんだけど…、いつごろになる?」

早苗は人差し指を口に当て考え込むしぐさをした。

「えーと、いろいろとはしょって日没までになんとか…。」
「……。」

霊夢は絶句した。
コイツの話をマトモに聞いたのが間違いだった。

「んー、早苗…。」

もういいわ、と言おうとした時、

「博麗霊夢ー!」

またも上空から呼ぶ声がした。
見上げると上空を真っ赤な流線型の物体が旋廻していた。
かなり大きく早苗のウェイブライダーの3・4倍はありそうだ。

「わわっ!霊夢さん、ヴァル・ヴァロですよ!カッコイイ!!ヴァル・ヴァロだぞっ☆な~んちゃって。」
「ヴァル・ヴァロっていうの?ずいぶん大きいわね。」

ヴァル・ヴァロはぐんぐんと高度を下げて賽銭箱の手前に着陸し変身を解いた。
片腕有角の仙人、茨木華扇だ。

「霊夢、異変ね。お手並み拝見させてもらうわ。あ、嫌そうな顔をしない!」

面倒なのが来た、と思ったのがしっかり顔に出たらしい。
わざわざ言われなくても調査にでも行こうとは思ってはいたがいつもとは勝手が違う。

「弾幕が出せないのよ。このモビル…スーツ?に変身して戦え、ってことなのかしら。」
「絶対そうですよ。私も協力します。頑張りましょう!」
「私も一緒に戦うわ。このまま放っておくわけにもいきませんからね。」

早苗と華扇が協力してくれるようだ。
早苗は嬉しそうに拳を握っている。
いつもはウザったく感じるのだが今回ばかりは頼もしい。

「それじゃ華扇さんが来たので最初からお話ししましょうか。」

早苗は嬉しそうに語りだした。

10分後

「なるほど、ジオンも一枚岩ではなかった、と?」
「その通りです!それでレビルを逃がしてしまうんですよー!これがなかったら連邦はどうなっていたか…。」

意外なことに華扇は早苗の話に興味をもったようで妙に盛り上がっていた。
霊夢は一人疎外感を感じたが、今更早苗の話を真面目に聞く気にもなれず
退屈そうに頬杖をつき、ぼんやりと空を眺めていた。

「あーあ、魔理沙でも来ないかしらねー…。」

異変があれば魔理沙は大抵ここへ来る。
そろそろ顔を出す頃合だろう。
合流したら紅魔館にでも行ってみようか、レミリアが黒幕とは思えないので共闘できないだろうか、
パチュリーの見解も聞いてみたい。
などと考えていると、上空から霊夢を呼ぶ声がした。

「おっと、来たわね。」

出迎えようと立ち上がり声のした方を見上げたが
飛んできたのはチルノ、大妖精、サニー、ルナ、スターの5人だった。
早苗と華扇も気が付き、話を中断し様子を伺う。

程なく5人は境内に降り立った。
チルノは境内の中央で腕組みし仁王立ち、三月精も不敵な笑みを浮かべている。
大妖精はなにやら落ち着かない様子。
霊夢は5人の様子から何事か大方の察しはついたが一応用件を聞いてみた。

「…あんた達、何の用?」

チルノはにやりと笑うとビッと霊夢を指差し叫んだ。

「聞いて驚け!あたいたちは新しい力を手に入れた。これは妖精の力を幻想郷中に知らしめる絶好のチャンスだ!」
「…新しい力って変身?私もできるけど異変よ、これ。」
「フン、ならお互い変身して勝負だ!」

チルノはやる気満々である。
と、後ろにいた三月精がずいっとチルノの前に出てきた。

「霊夢さん、いや博麗霊夢。この新しい力で再戦を申し込む!」
「私達3人の真の力を見せてあげるわ。」
「で、いいのよね?チルノ。」

スターがチルノの顔を覗き込み尋ねた。

「あたいの獲物は魔理沙だからね。霊夢は好きにするといいさ。」

というとチルノは勢い良く5メートルほど真上に飛翔しモビルスーツに変身した。
白と青の機体で霊夢や早苗の機体に似ている。

「残りの二人はあたいが相手だ!掛かってきな!」

背中の青い羽を広げビームライフルを構えた。
早苗は身構え生唾を飲み込んだ。

「屈辱…といいたいところですが相手がフリーダムでは仕方ありません。華扇さん、いきましょう!」
「わかったわ。霊夢、頑張ってね。」

早苗と華扇も変身し上空へ飛翔した。
二人はチルノのフリーダムガンダムを前後から挟み込む位置で間合いをとり対峙する。

「大ちゃんは手を出さないでね!」

チルノがそう言うと大妖精はこくこくと頷きそそくさと神社脇の茂みに身を隠した。
次いで霊夢、三月精が変身する。
サニーは鎌を持った緑の機体、ルナは鉄球を持った黒い機体、そしてスターは両肩に砲身を担いだ青い機体。

「フォビドゥン・レイダー・カラミティとは…、強敵ですよ!霊夢さん、気をつけて下さい。」

上空の早苗が叫んだ。
霊夢は無言で頷き身構えた。

「強敵だって?分かってるじゃない。じゃあ行くわよ、撃滅!」

ルナのレイダーが上機嫌で口からビームを放つ。
それが開戦の合図になった。
霊夢は軽やかにかわすがそこへスターのカラミティが両肩のビーム砲と手に持ったバズーカ砲を連射する。
それもサイドステップで難なくかわす、が流れ弾が神社の壁を粉砕した。

「ちょ、あんたら何をしでかしてくれちゃってるのよ!?」

三月精は意に介さず弾幕を打ちまくる。
それを回避しながら神社に流れ弾が行かないよう回り込む。
そこへサニーのフォビドゥンのビームが霊夢の軌道に合わせ湾曲しながら飛んできた。

「くっ!へにょるの!?」

何とか盾で防ぎ気合でビームライフルを打ち返す。
サニーは避けようともせず両肩の装甲を前面に展開しビームを屈折させてしまった。

「なによ、あの機体。こっちの弾幕まで曲げられるの?」

驚く霊夢にスターが弾幕を打ちまくる。
辛うじて回避するがそこへサニーとルナが攻撃を仕掛ける。
三月精の波状攻撃に霊夢は防戦一方になってしまった。

一方、上空では早苗と華扇が優位に戦っていた。
チルノは縦横無尽に飛び回り鋭い攻撃を仕掛けてくるが早苗はそれを上手くいなす。
華扇は高速で旋廻し隙を見ては一撃離脱をかける。
早苗は華扇をフォローしチルノの追撃を押さえ込む。

「お前、逃げないで正々堂々と戦え!」

攻撃を放ち離脱する華扇にチルノがイラつき無理やり追撃をかけるが体制が悪く当たらない。
その隙を早苗が的確にビームライフルを狙い打つ。
チルノはなんとか回避するが足をかすり表面が焦げた。

「うーん、ちょっとまずいわね…。」

スターはチルノの戦況が思わしくないのを見て焦っていた。
今は霊夢を圧倒しているがチルノが撃破されれば3対3になり今の優位な状況が崩れてしまう。
3対1の今こそ霊夢を仕留める絶好のチャンス、と考えた。

「サニー、ルナ、霊夢を仕留めるわ。ジェットストリームアタックをかける!」

スターが意を決し叫んだ。
サニーとルナは一瞬顔を見合わせたがスターの意を汲みうなずいた。

「わかったわ!霊夢を仕留める。」

サニーは低空を滑空し霊夢に迫る。
その後ろ、縦一列に二人が続く。
霊夢からは先頭のサニーしか見えない。
そのまま真正面から高速で近づいてきた。

「避ける?いや、迎え撃つ!」

このまま戦っていてもジリ貧である。
向こうが小細工をしてくるならむしろそこに付け入る隙が生じる。
死中に活あり、霊夢はここに勝負を賭けた。

バズーカを構え2発打ったがフォビドゥンは両肩の装甲を前面に展開しこれを防ぐ。
そのままの防御体制で突っ込んできた。

「ならば斬る!」

バズーカが効かないのは織り込み済み、霊夢はビームサーベルに持ち替え迎え撃つ。
間合いに入ったら一瞬で切り裂くつもりだ。
が、サニーは霊夢の間合いの寸前で飛翔し飛び越えていってしまった。
そこへ後続のルナが鳥形に変形し地面に機体を擦らせながら急接近してくる。
最後尾にいたスターは途中で足を止めレイダーの後方から肩と胸のビームと腕のバズーカを打ちまくった。

「クッ!やるわね。」

不意を付かれた霊夢はやむを得ず左手の盾で弾幕を防御した。
そこへルナが低空で飛んでくる。

「必殺!」

勇ましく叫びながら霊夢の目の前で変形し、勢いを殺さず盾の上から蹴りつけた。

『ガシャァァァン』

吹き飛ばされ倒れる霊夢。
間髪を入れずルナの鉄球とスターの弾幕が飛んできた。
霊夢はゴロゴロと転がり辛うじて回避する。
肩膝を付いた状態から後方上空へ飛び上がり体制を立て直そうとしたが、そこへ背後からサニーが襲い掛かってきた。

「霊夢!もらったぁぁ!!」

死角からの攻撃に完全に意表を衝かれ反応できない。
サニーは鎌を横に振りかぶりなぎ払う。

(マズイ!!!やられる!!)

撃墜を覚悟した霊夢だったが真っ二つになるより一瞬早く、サニーの体を無数のビームが貫いた。
さらに頭を打ちぬかれる。

「サニィィィィィィィ!」

ルナとスターが悲鳴をあげる。
断末魔をあげることもできずサニーは爆散した。

「霊夢ー、大丈夫?」
「間一髪だったな~。」
「その声はアリスと魔理沙?助かったわ。」

助けにきた魔理沙とアリス。
片方は青と白の機体で霊夢や早苗の機体に似ている。
もう片方は紫の足のない機体、足が付いていないにも関わらず靈夢達より一回り大きくゴツい。

「ZZが魔理沙さんでジオングがアリスさんかな、あとで触らせてくださいね~。」
「お断りだ!」
「お断りよ!」
「ええ~、そんなぁ…。」

即、拒否されガッカリする早苗。

「サニーやられちゃった…。」
「どどどどうしよう…。」

ルナとスターはおろおろと激しく動揺していた。

「ああ、お前らだったのか。」
「魔理沙さん!?ヒドイです!」
「あぁ?アリスは本当にヒドイ奴だよな。」
「あんたも撃ったでしょ!」
「わはははははは、そうだったな。で、まだやるかい?」

ビームライフルを構え威圧する魔理沙。
アリスも両腕を二人に向け、いつでも発射できる態勢をとる。

「む、向こうは5人、こっちは…サニーごめん、ここは一旦引き上げるわ。」
「あー…、まってよぉスター…。」

気押されたルナとスターは一目散に逃げていった。
残されたチルノと大妖精。
大妖精は茂みから出てきてチルノに大声で呼びかけた。

「チルノちゃん、こっちも引き上げよう!」
「なんで?あたい、まだ戦えるよ。」

チルノは早苗と華扇に押さえ込まれていたので不満げである。

「サニーがやられて二人が逃げちゃったのよ。チルノちゃんの友達を集めてまた戦いましょう?」
「そっか。うん、分かったよ、大ちゃん。」

チルノは渋々ビームライフルを下ろした。
早苗と華扇も動きを止め様子を伺う。

「というわけで霊夢さん、明日の正午、湖でお互いの仲間を集めて続きをやりませんか?」
「やってやるわよ!このまま終われないわ。」

霊夢は大妖精の提案に即答した。
手も足もだせず撃墜されかけ、相当頭に血が上っているようだ。

「では明日の正午に戦争です。」
「来ないと神社こわすぞー!」

物騒な捨て台詞を残してチルノと大妖精も引き上げていった。
神社を見ると何発か被弾している模様でところどころ壊れていた。
ため息を付く霊夢。

「いや~、霊夢さん、危なかったですねぇ~。」

突然、屋根の上から声をかけられた。
驚き見上げると射命丸文が屋根に座っていた。

「天狗か、力を貸してくれるの?」

苦戦を指摘され苛立ち気味に問う。
文は屋根からふわりと霊夢の前に飛び降りた。

「いえいえ、今日はこの異変の取材に来たんですよ。博麗の巫女、妖精軍団と戦争!いい記事が書けそうです。」

右手の万年筆をくるくる回しながら上機嫌で話を進める。

「邪魔なだけよ、撃ち落すわよ?」

文とは逆に霊夢の機嫌はすこぶる悪い。

「あややや、そう言うだろうと思って…あ、きたきた。」
「文様~~。速すぎですよ~~。」

白い人型の機体が飛んできて文の隣に着地した。
シン・マツナガ専用高機動型ザクⅡである。
機体は変身を解きぺこりと頭を下げた。

「皆さんこんにちわ、犬走椛です。」
「椛が私の代わりに戦います。椛が戦い私が取材する、これでどうです?霊夢さん?」
「え?え?文様、どういうことですか?」
「本人が分かってないようだけど…まぁいいわ。」

戦力が増えるのは嬉しいし文も囮くらいにはなるかも。
そう判断した霊夢であった。

「霊夢さん!どうしちゃったんですか?ちゃんとファンネル使いましょうよ!」

上空から降りてきた早苗はすこし怒り気味だった。
霊夢の戦い方に納得がいかない様子。

「そのファンネルってなんなのよ?」
「えっ?ああ…知らなかったんですね。その背中の片翼がフィン・ファンネルでして―」

3分後

「へぇ、ホーミングとは少し違うのね、制御が難しいけど使いこなせれば相当強力ね。」

フィン・ファンネルを飛ばしいろいろと試行錯誤する霊夢だが思うように動かせない様子。

「いいなぁ。早苗、私にもなにか強力な武器はないのか?」

魔理沙が早苗に尋ねた。

1分後

「うおおおお!ハイメガマスタースパァァァァァァク!」

魔理沙の額から上空に強大なビーム砲が放たれた。
度肝を抜かれる一同。

「はっはっは、気持ちがいいな!やっぱり弾幕はパワーだぜ!もういっちょいくぜ!」

もう一度打とうと試みるが力が入らない。
どうやら時間を置かないと撃てないようだ。
2射目を諦め変身を解く。

「で、どうするんだ?霊夢。あいつら結構増えそうだぞ。」

魔理沙が霊夢に尋ねた。
霊夢も変身を解き賽銭箱の前に腰を下ろす。

「チルノは妖怪とも仲がいいみたいだからね。弾幕勝負とは勝手が違うし
こっちも仲間を増やさないと…ああ、萃香を迎えにいこうか。」

萃香と聞いて文の顔が曇った。

「萃香さんですか…。そういえば居ませんね。どこかに行ってるんですか?」
「地底の友達に逢いに行くって言ってたわ。」
「あやややや、萃香さんの地底の友達って確か…。」
「勇儀っていったか、一角の鬼だな。」

魔理沙が口を挟む。

「うう、鬼が二人…。霊夢さん、他のところに行きませんか?何なら生意気なツインテールの天狗を紹介しますよ?」
「そんな奴、いらないわよ。うまくいけば鬼が二人増えるわ。」

霊夢の心はすでに地底の奥深くへと潜り込んで勇儀と交渉を始めてしまった。

「じゃあ、私とアリスは香霖堂へいってくるぜ。」

魔理沙がニヤリと笑った。

「香霖堂って…霖之助さん?戦力にならないんじゃないかしら。」
「今回はいつもと勝手が違うからわからないぜ。それにあいつは外の世界に詳しいから、何かの役に立つかも知れないぞ。」
「う~ん、そうかもね。じゃあ任せるわ。」
「おう、任された。明日の朝、また来るぜ。」

そう言うと魔理沙はホウキにまたがりそそくさと飛んでいってしまった。
アリスも慌ててそれに続く。

「じゃ私達は地底ね。天狗、あんたも来る?」

霊夢は意地悪く問う。

「ううう、もちろん行きますよぉ…行きますとも…。」

とても嫌そうだ。

「鬼なんて陽気で接しやすいと思うけど、少なくとも陰湿な鴉天狗よりはね。」

少なからずショックを受け落ち込む文を見てすこしだけ溜飲が下がった。

「それじゃ、ちゃちゃっと行くわよ。」

一刻ほど後、一行は妖怪の山の麓にある風穴に到着した。
地底を目指しどんどんと降りていく。
半刻ほど降りたところで誰かに声を掛けられた。

「おーい、あんたは地上の巫女だろ?」

見るとニ体の異形のモビルスーツ。
一体は錫杖を持った下半身が釣り鐘状の機体、もう一体は茶色のずんぐりした機体。

「うわっ!マンダラガンダムとジュアッグですかー!いい形ですよね~~。」

霊夢は激しく同意しかねたが面倒なので黙っていた。
触ろうとして近づいた早苗に気が付かず二体は変身を解いた。
キスメと黒谷ヤマメである。
右手を伸ばした姿勢で固まる早苗を不思議そうに見ながらヤマメが口を開いた。

「また金でもあさりに来たのかい?」
「あんな危ない物、いらないわよ。毒が付いてるなんて聞いてないわ。」

霊夢が抗議する。
ククッと華扇が笑った。

「最近、地上の鬼が来なかった?」
「おー、来たよ。でっかい酒樽担いでたから、今頃宴会でもしてるんじゃないかな。」
「どこか分かる?案内してくれないかしら。」
「ああ、いいよ。地霊殿か旧都の店だろう。」
「悪いわね、助かるわ。」
「お安い御用さ。暇だったし様子も見てみたいからね。ついてきな。」

そう言うとヤマメとキスメは洞穴の奥へと進んでいった。
霊夢達もそれに続く。

「あんた達は一緒に呑まないの?」
「ああ、誘われたけど丁重にお断りしたよ。鬼と酒盛りなんてまっぴらだ。」

洞窟をしばらく進み旧都にたどり着いた。
さとり達のなじみの店を2店舗回ったがどちらにもいなかった。

「無駄足だったね、今回は地霊殿かな。」

一同は地霊殿に向かうことにした。
旧都を抜けたところで

『ドガガガガガ、ドゴーーーン』

と、激しい爆音が聞こえた。
地霊殿の方からだ。
急ぎ近づくと2体の機体が殴り合っているのが見えた。
灰色と白の無骨な機体と尻尾の生えた赤い機体。
少しはなれたところで古明地さとり、こいしと火焔猫燐、水橋パルスィが心配そうに見ている。
こちらにはまだ気が付いていないようだ。
早苗は左手を額に当て目を凝らす。

「あれは…ボルトガンダムとイーゲルでしょうか、戦ってますね。」
「ふむ、ちょっと様子を見ようか。」

靈夢達は近づくのをやめ、2体の様子を伺う。
2体は殴り合い動き回り、ときに距離をとり激しく戦っている。
赤い機体・イーゲルが優勢に見える。

「流石だねぇ、勇儀!楽しいよ!!」
「ふん、あんたの攻撃はぬるいねぇ!地上でなまっちまったんじゃないかい?」

2体は一旦間合いを取り言葉を交わす。

「言ってくれるね!じゃあこんなのはどうだい?」

萃香のボルトガンダムが軽快なバックステップで距離をとり地面に拳を打ちつけた。

『ズガァァァァァァン』

突然、周りの地面が爆発した。
飛び散った土が勇儀に降り注ぐ。

「目眩ましのつもりかい?…む。」

土を避けるためバックステップした勇儀の足元が激しく盛り上がった。
萃香が殴った場所から一直線に地面が激しく隆起したのだ。
勇儀は足を取られバランスを崩して肩膝をつく。
そこへ萃香が鉄球を頭上から叩き込む。

『ガシィィィィ!』

勇儀は両腕でガードしたが腕が軋む。

「そーら、もういっちょ!」

今度は横殴りに鉄球をぶん回した。
勇儀はそれをなんとかジャンプしてかわす。
それを見た萃香は再び地面を殴りつけた。
勇儀の足元の岩盤が浮き上がる。

「おおおおおおおおおおおおおおおお!」

萃香は地面に拳を付けたまま振動させた。
土石が激しく噴出し次いでマグマが吹き上がる。
勇儀はギリギリのところでマグマをかわし、浮き上がる岩盤に軽快に飛び移り間合いを詰めて萃香に襲い掛かった。

「やればできるじゃないか、萃香!」

勇儀は萃香のガードの上からかまわず殴りつけた。

「きなよ、勇儀!」

萃香も両脚を踏ん張り迎え撃つ。
また殴り合いが始まった。

「あーあ、これは手出しできないわね。終わるまで待ちましょ。」

霊夢は静観を決め込んだ。
下手に手を出すと巻き込まれそうだ。
一同もそれにならい二人の戦いをじっと見守る。
一方、さとりはおろおろとうろたえていた。

「お燐、パルスィさん、なんとか二人を止めてください!このままでは地霊殿が…。」

さとりが燐の肩を揺らし叫んだ。

「そ、そんなことをいわれても勇儀さんがああなっちゃうと…。」

うろたえる燐。
パルスィは緑の機体に変形した。

「おおっ、あれはガンダムレオパルド。結構ゴツイですよね~。次鋒レオパルドいきます!ってね~。」

早苗がはしゃぐ。

「やってみるわ、水橋パルスィいきます!」

パルスィは二人の動きを止めるため、右肩のミサイルポッドを萃香と勇儀の足元に打ち込んだ。
ミサイルは狙い通り二人の足元に着弾した。
もうもうと土煙が立ち込め二人を覆い隠す。

「二人とも、いい加減に止めなさい!」

声を掛けるパルスィ。
すると、土煙の中からパルスィの目の前に前傾姿勢のイーゲルが素早く飛び出してきた。

「すっこんでな!」

手にしたミンチドリルでパルスィの脇腹を下段から打ち上げた。
パルスィの体が3メートルほど上空へ浮き上がった所へ今度は萃香の鉄球が飛んできた。

『ボッコオオオオオン』

鉄球はパルスィの首筋にめり込み胸まで陥没した。

「ギャアーッ!」

パルスィは断末魔をあげて爆散した。
気に留める様子もなく萃香と勇儀はまた殴り合う。

「ああっ、パルスィさんが…。」

涙目でへなへなと膝から崩れ落ちるさとり。
そこへ地霊殿の方から大きな盾をもった白い機体がフラフラと飛んできた。

「うにゅにゅ~~~~~?喧嘩はらめらお~?」

ろれつが回っていない。
挙動も大分おかしい。
フラフラと浮遊しつつ大きな盾から砲身を取り出し肩にドッキングさせた。

「あー!バカ空、あんたは撃っちゃダメーー!」

燐が叫ぶ。

「空さん?…あれはGP02サイサリス!もしかしてアレを撃っちゃうんですか!?」

早苗が慌てている。

「アレってなによ?」
「アトミックバズーカに決まってるでしょ!全員できるだけ離れてください!あと後ろを見ないで!」

早苗はウェイブライダーに変形し一目散に逃げていった。
やや遅れて靈夢達もそれに続く。
空はバズーカを萃香達に向けて構え適当に照準を合わた。

「おー、おー、ペタフレア~ア~♪えいっ!」

空は陽気に歌いながらバズーカをぶっ放した。
弾頭は光に包まれ超スピードであらぶる鬼達を目掛けて飛んでいった。

『ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン』

地底が崩壊するような全身に響き渡る重厚な爆発音が轟く。
そして閃光で視界が真っ白になり衝撃波が突風のように背中を強烈に押した。

「目が、目がぁぁぁぁぁ!」

目を押さえて吹き飛ばされる文、どうやら忠告を無視し直視したようだ。
霊夢は閃光と衝撃波が収まるのを待ってから振り向いた。
土煙がもうもうと立ち込めてなにも見えない。

「あーあ…、これは酷いわね。」
「こちらは全員無事のようだけど…彼女らは…。」

華扇が呟いた。
一番遠くに逃げていた早苗も戻ってきた。

「しかしなぜ萃香さんたちはガンダムファイトなんてしてたんでしょうか?」
「ガンダムファイトってなによ?…どうせ酒盛りしてて揉めたんでしょ。鬼なんてそんなもんだわ。」

土煙が少し晴れて来た。
霊夢達は目を凝らし様子をみる。

「うううう、目がぁぁぁ…。」

のた打ち回りながら浮遊している文が目の前を遮断した。

「ああ、もう!椛、そのバカ天狗をなんとかして!」
「あ、はいはいー。文様、ひとまずこちらに…。」
「うう、ジャーナリストたるもの、身の危険を承知で真実を知らねばならないときが…。」
「わかりましたわかりました、とりあえずこっちに来て下さいね。」

文は椛に羽交い絞めにされて連れられて行った。
そうこうしているうちに土煙が収まり視界が回復した。
再度、状況を確認する。
萃香達が戦っていた場所には大きなクレーターが出来ていた。
その周りには土砂がたい積し滅茶苦茶になっている。
地霊殿は健在だがステンドグラスは割れてしまっていた。
クレーターの周りに動く物が全く見当たらない。

「これは…萃香達、全滅しちゃったかな。」
「ですかねぇ…ん?んん??霊夢さんあそこ、なにかありませんか?」

早苗が何かを発見したようだ。
土砂がたい積している一角を指差している。

「んー、どこよ?なにかあるの?」
「あそこ、あそこです。なにか棒のようなものが埋まってませんか?」
「んん??ああー、なにかあるわね。行ってみよう。」

一行は何かが埋まっている場所へ向かった。
土砂から2本の砲身が突き出ていた。
急いで土砂をかき分け掘り起こす。

「こ、これは…先行量産型ボール?」

丸っこい橙色の機体が出てきた。
子供が膝を抱えたくらいの大きさで上部に砲台が2門、下部にアームが2本付いている。
霊夢がぺしぺしと叩くとぴくぴくとアームが動いた。

「う…、うーん…?」
「その声はさとり?おーい、大丈夫??」

今度は手の甲でガンガンと叩く。

「…はっ!霊夢さん?私はいったい…皆は…?」
「覚えてないの?実はかくかくしかじかで――」

霊夢は見たことを話して聞かせた。
話を聞き意識がはっきりしてきたのか、さとりは状況を説明しだした。

「萃香さんが訪ねて来られて酒盛りになったんですが、
口論から決闘になりまして…ああ、そこは見ていたんですね。で、酔いつぶれていたお空があんなことを…。
お燐とこいしが身を挺して庇ってくれたので私は助かったみたいです。」
「じゃあ、あんた以外は全滅?」
「だと思います、ううう、お燐、こいし…。」
「あっちゃー…。参ったわね。萃香を迎えに来たんだけど…。」

霊夢はひどく落胆した。
鬼二人を仲間にするどころかくたびれ損になりそうだ。
あの爆発に巻き込まれなかったのは不幸中の幸いだが。

「霊夢さん!霊夢さんはこの異変の調査をしているんですよね?」

考えを巡らしているとさとりが真剣な面持ちで訪ねてきた。

「んー、そうね。まずは妖精軍団に喧嘩売られたから蹴散らすけど…。」
「それならば私も連れて行ってもらえませんか?この異変の黒幕に一言言わねば…。」
「あー…、まぁ好きにするといいわ。」
「ありがとうございます!同行させてもらいます。」

どう見ても弱そうなさとりに対し霊夢の歯切れが悪い。
どちらかといえばキスメやヤマメのほうが戦力になりそうに見える。
できればこっちの二人も仲間にしたい。

「さとり、そっちの二人も―」
「キスメさんとヤマメさんはここの復旧をお願いします!」
「分かったわ、さとり。ここは任せて頂戴。健闘を祈ります。」

駄目らしい。
まぁ、さとりも地霊殿の主だ、ああ見えて案外いい戦力になるのかもしれない。
霊夢は早苗にひそひそと聞いてみた。

「ねぇ、あの…さとりの機体ってどうなの?強い?」
「あー残念ですが…。動く棺桶ってあだ名がついた、といえばお察しいただけるかと…。」
「…やっぱそうよね。」
「ええ、黒幕を見つけるどころか湖の霧になるかと…。」

早苗の話を聞いてハッと気が付く。

「さとり、今、心読める?」
「それが…さっぱり読めなくなってしまって…、読心ではお役に立てません。」

さとりは申し訳なさそうな顔をした。

「ああ、いいのいいの、気にしないで。」

同行させるならそのほうが気を使わなくていい。

「じゃあ、ぼちぼち戻りましょうか。結構時間が経ってしまったわ。」

これ以上地底にいても収穫はないだろう。
キスメとヤマメに見送られて一行は来た道を引き返していった。

風穴から出るころにはすでに陽が沈みかけていた。
霊夢はどっと疲れが出てしまった。

「今日はここで解散。明日の朝、博麗神社に集合よ。わかったわね。
それと、さとりはウチに来なさい。」

皆、それぞれ帰路についた。
博麗神社に戻った霊夢達は夕飯も食べず、すぐに寝てしまった。


つづく
初投稿です、よろしくおねがいします。
ガンダムを知らない方はなんのこっちゃわからない内容ですが
感想などいただけたら幸いです。
ペタ爺
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コメント



1.名前が無い程度の能力削除
勇儀姐さんはRX-0じゃないのか…
2.名前が無い程度の能力削除
他のキャラが気になるぜ…
続きが見たいです。
3.名前が無い程度の能力削除
サニーちゃん哀れ
さとりんはもっと哀れ