Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

お姉ちゃんのお世話をするだけの簡単なお仕事です

2012/07/25 08:38:49
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「……これ、なに?」
「アルバイトの求人広告。こいし、お金が欲しいんでしょ? だから良い仕事を紹介してあげようと思って」
「えっと……年齢、××歳。経歴、さとり妖怪。性別、女性。……資格、妹」
「ふふ、こいしにぴったりの仕事でしょ?」
「そ、そうだね。私以外の人は面接も受けれないね」

 この人は一体何を企んでいるのだろう。どうして私がお金を必要としているのを知っているのだろう。
 疑問は絶えないけれど、お金の工面も出来ない働くあてもない私にとって、それは天から吊るされた蜘蛛の糸のような話だった。

「仕事内容は……掃除、食材の買い出しなどの雑務全般、朝の目覚まし等の身の回りの世話など」
「私のして欲しいことを敏感に察して行動に移す、クリエイティビティ溢れる仕事でもあるわ」
「それってつまり、体のいい気の利いた使いパシりが欲しいってことなんじゃ……」
「求人を出す企業なんて得てしてそんなものよ」
「さいですか……」
「その他にも心身のケアや私に対する包括的なコミュニケーションも仕事内容に含まれるわ」
「お姉ちゃんが私に構って欲しいだけだよね、それ……」
「クリエイティビティ溢れる仕事の一部よ」
「その他には……食事補助あり?」
「お菓子や食事などの相伴等でこいしの食生活をサポートするわ」
「いつもと変わらないね」
「食後にはデザートも付いてくるわ」
「デザート?」
「ええ、私という今が食べ頃なデザートが」
「む、胸焼けしそうだから遠慮しとくね」

 あら残念。そんなことを言ってくすりと笑うお姉ちゃん。
 本気で言っているのか、はたまた私をからかっているだけなのか……。

「え、えと、次……報酬は仕事の結果によって増減?」
「ええ、働きによって報酬が増えるから、とってもインセンティブになるわ」
「……具体的には?」
「まず、基本給が時給3お姉ちゃんポイントで」
「ちょ、ちょっと待って」
「?」
「あの、お姉ちゃんポイントってなんですか?」
「お姉ちゃんポイントはこいしの頑張りによって支給される報酬のことでしょ?」
「いや、常識みたいに言われても……え、えっと、お金じゃないの?」
「報酬とは書いてるけど、給料とはどこにも書いてないわ」
「……私、用事を思い出したから」
「こら。話はちゃんと最後まで聞くの」
「あうぅ……物凄く雲行きが怪しくなってるよ……」
「それじゃ、最初にお姉ちゃんポイントの説明をするわね。
 さっきも言ったとおり、お姉ちゃんポイントはこいしの頑張りによって支給される報酬のことで、その額に応じて様々なものと交換することが出来るの」
「……例えば?」
「まず、3お姉ちゃんポイントでハグ1回」
「……」
「5お姉ちゃんポイントでキス1回、10お姉ちゃんポイントでオトナのキス1回。20お姉ちゃんポイントでこいしのことを気持ちよく」
「す、ストップストップ。ちょっと待って」
「?」
「いや、そんなキョトンとした顔されても……じゃなくて! え、えと、色々とおかしいよね?」
「……何が?」
「な、何がって……何もかもおかしいよ!? まず交換できるものが最初からおかしいし、そもそも交換できるものがモノですらないよ!?」
「なるほど……つまり、こいしは形として残るものが良いのね? 確かに言われてみると、ハグとかキスは普段もしてるから価値が……」
「そ、そういうことじゃないんだけど……」
「分かったわ。それじゃあ、5お姉ちゃんポイントでパジャマ、10お姉ちゃんポイントで寝室の枕、20お姉ちゃんポイントで脱ぎたてのショーツを」
「全然分かってないよね!?」
「……どうして? さっき挙げたものじゃ不安なの? 流石に歯ブラシや生理用品となると、こいしにあげると言っても少し抵抗が……」
「そんなの要らないから変な誤解しないでっ!?」
「ならこいしは何が欲しいの? お姉ちゃんポイントはお金とも交換出来るのに……」
「えっ? そ、そうなの? 」
「説明の最中にこいしが横やり入れるから……」
「ご、ごめんなさい……キスとかパジャマよりも先に言うべきだと思うけど……」
「それじゃ、こいしのためにお姉ちゃんポイントの為替レートについて説明するわね。1お姉ちゃんポイント=10円で取り引きされます」
「時給が3お姉ちゃんポイントだから……って時給30円っ!? 安いよ! 安すぎるよお姉ちゃんポイント!?」
「最近は円高姉安の傾向にあるからしょうがないわね」
「何その不思議単語……てかいくらなんでも安すぎるよ……8時間働いて240円なんて閻魔様も真っ青だよ……」
「それでも8時間働いたらキス5回とハグ1回分よ? パジャマ2枚と枕1つよ?」
「確かにそう考えれば……って変なこと考えさせないで!?」
「あと忘れてるかもしれないけど、時給3お姉ちゃんポイントはあくまで基本給よ? こいしの頑張りによって能力給が出るから、そっちでカバーすればいいわ」
「私の頑張りって言っても、それこそお姉ちゃんの裁量しだいじゃん……それに時給が3お姉ちゃんポイントなんだから、能力給なんて」
「私を喜ばせるようなことをしてくれたら能力給は弾むわ。例えば……押し倒して恥ずかしいことしてくれたり」
「……ち、ちなみに、それをしたらどれくらいお姉ちゃんポイント貰えるの?」
「本当にそんなことしてくれるなら1000ポイントでも安いわね」
「1000ポイント!?」
「ふふ、どうするこいし? もしするなら、今すぐにでも……」
「じ、地道に働くね」
「あら、残念」

 でも、時給30ポイントに対しての1000ポイント……お姉ちゃんを押し倒して、それから……って何を考えてるんだ私は! そんな勇気無いクセに!

「さて、報酬についての説明は終わりね。他に何か質問はある?」
「……そういえば、日に何時間くらい働くの?」
「そうね……朝の8時から夜の10時までで」
「えーっと……12時間労働!?」
「時給が少ない分たくさん働ける方がこいしとしては嬉しいでしょ?」
「それはそうだけど……」
「それに常に働きっぱなしって訳でもないし。用がある時以外は普段通りにしていてくれて構わないわ」
「え、本当に?」
「その代わり、用がある時はすぐに来てもらうから、バイト中は外出禁止ね」
「うっ……バイトの期間はお金が貯まるまででいいんだよね?」
「ええ。やめたいときにやめればいいわ」
「……分かった」
「さて、大体のことは説明したし……これから面接を始めます」
「め、面接!? そんなことするの!?」
「コネ採用と言えど面接もせずに人を雇う企業なんてないでしょ? それにこいしの質問にはちゃんと答えたんだから、今度は私が質問する番」
「……へ、変な質問には答えないよ?」
「ふふ、流石こいし。察しがいいのね。でも出された質問にはちゃんと答えてもらうわ。こいしは雇ってもらう身だから。一つでも答えなかったら雇ってあげない」
「そんな横暴な……しかも変な質問する気マンマンだし……」
「別にいいのよ? 答えたくないならそれでも。こいしを雇ってくれるバイト先があるならそっちに行けばいいじゃない。『こいしを雇ってくれるバイト先があるなら』」

 お姉ちゃんは満面の笑みで大事なことを二回言いました。

 私に拒否権が無いのは明白だった。

「横暴だぁ……」
「あら、人聞きの悪い。雇用者側の正当な権利よ? 働くか働かないかはこいしの自由なんだから」
「その自由が無いことを知ってるくせに……」
「そんなこと知らないもーん」
「もう、お姉ちゃんのばか……」
「ふふ、さて。それじゃあ早速面接を始めましょう。まず最初に……お姉ちゃんのことは好きですか?」
「し、質問が大体予想通りなのは置いといて、働く上でそれに答える必要性はあるんでしょうか……?」
「勿論。お姉ちゃんが好きじゃないと勤まらない仕事だもの。むしろ一番大切なことでもあるわ」
「うぅ、もっともらしい理由を……」
「では改めて。こいしはお姉ちゃんのことは好きですか?」
「……好き、です」
「どういうところが好きですか?」
「ほ、掘り下げるの無し! あとそういう恥ずかしい質問も禁止!」
「だーめ。ちゃんと答えて。雇ってあげないわよ?」
「そ、そんなのずるい……」
「好きだけなら初対面の人にだって言えるもの。こいしだけの言葉でその理由を聞かせてくれないと、証明にならないわ」
「あうぅ……」
「私ならこいしの好きなところなんていくらでも言えるわよ? とっても可愛いところ、恥ずかしがり屋なところ、へたれなところ、むっつりスケベなところ、実はドMな」
「わ、分かったから! ちゃんと言うからそれ以上言葉に出さないでっ!?」
「ふふ、それじゃあ聞かせて貰えるかしら? 私の好きなところ」
「……と、とっても綺麗で、凛としていて。普段はいじわるして私をからかってばかりなのに……本当はすごく優しいところ、です」
「……」
「あー、もうっ! ほら、早く次の質問して!」
「ふふ、顔真っ赤なこいし可愛い……とっても綺麗で、凛々しくて……ふふ、あははっ」
「お、お姉ちゃんっ!」
「ごめんなさい、なんだかおかしくて……。でも、やっぱり。こうやって口に出して言ってもらえると嬉しいわね。こいしは自分の気持ちをあまり言葉にしてくれないから」
「……お姉ちゃんは言葉にし過ぎなの。絶対に私の方が普通なんだから」
「好きって言うたびに顔を赤くするのが普通なのかしら?」
「も、もうっ! しょうがないでしょ! 恥ずかしいものは恥ずかしいんだから! あと自分でも気にしてるんだからからかわないで!」
「ふふ、それじゃあ、そんなシャイなこいしのためにも質問は早めに終わらせないとね。この調子じゃ面接が終わらないわ」
「そもそも今のは面接で聞くようなことじゃ無いと思うんだけど……」
「職種によって面接内容が異なるのは当然よ。では、次の質問……と行きたいところなんだけど、特にこれと言って質問したいことがないのよね」
「じゃあもう終わろうよ……」
「うーん、でも、せっかくこいしが普段答えてくれないようなことを訊けるチャンスだし……」
「も、もう完全にそれが目的だよね? 面接関係ないよね?」
「あ、そういえば。どうしてお金が必要なの?」
「なっ」
「私も燐たちからそれとなく噂を聞いただけだから詳しい理由は知らなくて。ねえどうして?」
「……こ、答えないとダメ?」
「不純な動機だといけないから」
「……欲しいものがあるの」
「欲しいもの? それなら私に言ってくれれば」
「そういうのじゃなくてっ、えと……自分の力で買わないとダメっていうか、そもそもお姉ちゃんが用意しちゃったら意味が無いっていうか……」
「どういうことかしら? ますます気になるんだけど」
「ご、ごめん。これ以上は訊かないでもらえると嬉しい。やましいこととか絶対に無いし、近いうちにちゃんと説明するから」
「……そう。それじゃあ、この質問はお預けね。訊きたいことも思いつかないし、面接はこれでおしまいとして……早速働いてもらおうかしら」
「な、何をすればいいのかな?」

「一緒に買い物に行きましょう」

 そう言って嬉しそうに微笑んだお姉ちゃんに手を取られ、私は思わず顔を赤くして。

 そんなこんなで、私の初めてのアルバイトが始まるのでした。

 
 
「……お空、何作ってるのそれ?」
「スリッパだよ? さとりさまの誕生日にプレゼントするヤツ」
「……手伝おうか?」
「ホントに!? ありがとうお燐! ここからどうするか分からなくて困ってたの」
「うん、そうだね。まずは最初から作り直そうか」
「えっ」
虹の根元
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
お姉ちゃんポイントが市場に出回ったら大変なことになりますね
買い占めなくては
2.名前が無い程度の能力削除
かわいい(小学生並の感想)
3.奇声を発する程度の能力削除
微笑ましく良かったです
4.名前が無い程度の能力削除
ドMなのか…ほう
可愛いなぁ
5.もんてまん削除
お空w

>1お姉ちゃんポイント=10円
つまり200円でショーツを(ry
6.名前が無い程度の能力削除
こいしがさとりに押されている、というお話は久々に読みました。
氏の描かれる姉妹関係が前から好きです。楽しませて頂きました。
7.名前が無い程度の能力削除
ひゃっほぅ、久しぶりのさとこい分だあーーー!
8.名前が無い程度の能力削除
朝の8時から夜の10時までで12時間労働っていっちゃうこいしちゃんってばおちゃめさん☆
9.名前が無い程度の能力削除
何というホワイト企業
10.名前が無い程度の能力削除
是非、就職したいんですが何処に行けば良いですか?
11.名無しな程度の能力削除
かわいい