Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ささやかな願い

2012/03/03 22:58:30
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昼下がりの博麗神社





「ん、んん……」


眼を覚ますと、そこは見慣れた縁側の風景。
どうやら、私は寝ていたようだ。いつから寝ていたのだろうか。



「すぅ……すぅ……」
すぐ近くで誰かの息が聞こえる。
目線を下に向ければ、私の膝を枕にしてすやすやと寝息をたてているブロンドの髪の少女。
私が、初めて恋をした少女―アリス。

彼女を起こさないよう、優しく髪を掻き分けるように触れる。

少しくすぐったそうに身をよじらすも、起きる気配はない。




―ああ、この時間がいつまでも続けばいいのに―




どんなにそれを願っても、いつかは終わりが来てしまう。

たとえそれが叶わぬ願いと分かっていても、そう願わずにはいられない。




木漏れ日が、優しく私達を包み込む。

穏やかな日差しを受けて、アリスの髪がきらきらと輝く。



―まるで、人形みたい。

もちろん人形ではない。だが、人間でもない。
彼女は魔法遣い、私は巫女。


歩む道も、流れる時間も違う。


だからいつの日にか、私は彼女を置いていってしまうだろう。

もちろんそんな運命を受け入れられないけど、今の私には抗うことは出来ない。





縁側に、そよ風が流れる。

鳥の声も、妖精のひそひそ声も聞こえない。


静かな、静かな春のひととき。まるで世界に私達二人しかいないかのような、そんな錯覚に陥りそうになる。





―脳裏に、いつかの春の日の記憶が浮かぶ。

初めて、初めてアリスに想いを伝えられたあの日。想いの通じ合ったあの日。

あの日も、今日みたいに優しい木漏れ日の差し込む日だった。



あれから、どれだけ経ったのだろう。
食事も、睡眠も、楽しい時間も、悲しい時間も、全てをアリスと共にした。

そんな時間も、後どれぐらい過ごせるのだろうか。






いつか訪れる別れに恐怖するくらいなら、私もいっそ人の身を捨てて―






何度その考えに至ったのだろうか。何度、彼女と同じ時を歩みたいと願っただろうか。

しかし、後一歩を踏み出すことはできない。

私はきっと恐れているのだろう。

他の人妖から蔑まされることよりも、賢者達を敵に回すことよりも、アリスが私を拒絶するかもしれないことを。



アリスに嫌われたくない。



ずっとアリスの笑顔を見ていたい。



でも、そんな願いですら私達には叶えることは出来ない。


「私、妖怪になる!」って言ったら、どんな顔するだろうか?
喜んでくれるだろうか。それとも、怒るだろうか?
アリスのことだから「バカッ!!」って怒鳴られるかもしれない。それで、泣いてしまうかもしれない。
それは困る。アリスに喜んでもらいたかったのに、それで泣かれてしまっては本末転倒ではないか。



本当に、神様というのは残酷だ。



どこぞの山の神様みたいに退治できればいいのに。

そしたら、永遠に結ばれるようにしてやるのに。

といっても、神様に私達の絆をどうこうできると思えないけど。

いっそ、あいつに不老不死の術でも学ぼうか。

あの仙人ならそれぐらい知ってそうだし、ついでに習ってもいいかもしれない。修行は面倒だけど。

ああ、蓬莱の薬という手もあった。それが一番手っ取り早いかもしれない。





「ん…………霊……夢……」

私の考えなど露知らず、アリスはまだ夢の世界を彷徨っている。ひょっとして、夢でも私といちゃいちゃしているのだろうか?
何というか、嬉しいけど妬ける。アリスが私を想ってくれているのは嬉しいけど、それはここに居る私だけにして欲しい。


まあ、ここで焦っていても仕方ない。


今はこうしてアリスの寝顔を堪能するのが大事だ。







―今、ここでこうして流れていく時間は戻らない。
時は私達の意志と関係なく、無慈悲に流れていく。

無理やり同じ時を歩むも、限られた時間を精一杯共に生き抜くのも私達次第。
いつかそう遠くない未来、この選択を突きつけられるだろう。

どちらを選ぶかはまだ分からない。

でも、それでも―
私はアリスと生きる。生きて生きて生き抜いて、アリスと一緒に居れて良かったって、心の底から感じられるように。
たとえ報われぬ恋だったとしても、アリスとの恋が間違っていなかったと誇れるように。




2,3度髪を梳くようにいじると、私もまどろみに身を任せた。







―夢の中でも、一緒に居れたらいいな―
レイアリもいいよね!
二人がどんな道を歩むにしても、幸せになって欲しい……それが私の願いです。 
ご指摘、ご感想、遠慮なくお願いします。
サキツバキ
コメント



1.奇声を発する(ry in レイアリLOVE!削除
素晴らしいレイアリをありがとうございます
本当にこの二人には幸せになって貰いたいです
2.名前が無い程度の能力削除
置いていく側は勿論、置いていかれる側も、苦しくて悲しくて仕方がない。それでも相手を愛してしまったからには、最期まで幸せを噛み締めてほしいものです

霊夢が妖怪にならずとも、アリスは元人間だったっていうし、彼女に人間に戻ってもらうという選択肢もあるといえば有る…なんて考えてみたり
3.名前が無い程度の能力削除
静かで、切なげで、なんだかほろ苦いレイアリですね。

解釈はわかれるでしょうけど、霊夢には巫女として生きていってほしいです。
一生を、アリスに捧ぐ。
4.名前が無い程度の能力削除
先が人の数ほど考えられていいね
まったり
5.名前が無い程度の能力削除
寿命ネタは大抵人間のまま死んで終わらせることが多いけど
こういうどうなるか分からない的な含みを持たせるのは面白い切り口だと思いました
6.あかたて削除
甘くもほろ苦いレイアリ、
原点を見させて頂きました。
7.名前が無い程度の能力削除
切ないなぁ。種族が違うと当然とはいえ

>私もまどろみに身を任せた。
この後は傍らに霊夢の寝顔を見ながらのアリスサイドが続くんですよね?
8.名前が無い程度の能力削除
いい
どんな道を選ぶか分からないところがまたいいですね
9.名前が無い程度の能力削除
レイアリは原点。
10.名前が無い程度の能力削除
どういう未来を選択するにしても、二人を死が別つまで幸せでありますように。
11.Yuya削除
GJ