Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

大ナマズ先生が紅魔館を明るくする話(前編)

2012/02/19 22:12:25
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 毎日何か事件が起こっているといっても過言でもない幻想郷

 その中でも、事件の発端になる事に場所にあがる候補の一つが

 吸血鬼が住まう館である紅魔館である

「……のはずなんじゃがな」

 そんな騒がしい屋敷の中で比較的に日差しがあたり

 下手すると一番平和なんじゃないかと思われる門の前で

 わしは数少ない娯楽の一つである天狗の新聞を読みながら

 すっかり慣れてしまった門番をしていた

「なにかあったのかのう?」
  
 珍しく普段よりも静かに静まり返った屋敷を尻目に

 新聞を読んでいたときじゃった 

「……あっ、お疲れ様です大ナマズ先生」

「む?」

 後ろから現れたのは此処の門の門番長の御嬢ちゃんの姿であった

 ただ現れただけならわしもちょっとした言葉と共に挨拶を返したであろうが

 その顔は何時もの嬢ちゃんにしては随分と顔色が悪かった 

「どうした?随分疲れておるみたいじゃが」

「そ、そんな事ないですよ」

 手にしておった新聞を一旦閉じて、隣に座り込んだ嬢ちゃんにそう問いかけると

 何時もの様に簡単にばれそうな嘘で元気である事をアピールしてきた

「ふむ、それにしては目の下にクマがついているのじゃが?」
 
「え、ええっ!?そんな!しっかり鏡見て確認してきたのに」

「まあ嘘じゃがな」 

 身に覚えがあるのか、思わず目の下に手を当てる御嬢ちゃんの姿を横目にして

 嘘である事を告げると、ほっとした様子で呟いた

「よ、よかった……考え事してて一晩寝てないって事が周りにばれるかと思いました」

「ほっほっほ……なんじゃ寝ておらんかったのか」

「あははっ、皆には内緒ですよ?」

 うむ、ただの考え事で寝てないだけであったか……

 ん?この快眠門番の御嬢ちゃんが考え事してて眠ってない?

「……ふっふっふ」 

「どうしたんですか大ナマズ先生?いきなり笑い出して」

 不思議そうに見つめる目の前の御嬢ちゃんをわしは不敵に笑うとにらみつけた

「語るに落ちたな、門番の御穣ちゃんの偽者め!」

「え、ええっ!?」

 ふん、どうやら図星をつかれた事に驚いている様子じゃな

「姿形、よくそこまで門番の御穣ちゃんに化けれたものじゃ」

「いやいや!本物ですって!?」

 ワシもうっかり騙される所であったが、偽者とわかったらもう聞く耳は持たん

「じゃが、迂闊であったな!本物の御穣ちゃんは一晩寝ないなんて事は……」

 そこまで語ると同時にワシは思いっきりその場から飛び上がり

「絶対にないんじゃ!」

 偽者の御穣ちゃんに対して上空からの体当たりを敢行した





     ・・・『撃符』「大鵬拳」・・・





「紅魔館が静かな理由なんですけどね?」

「……うむ」

「実は咲夜さんが次の異変に出れなかったみたいなんですよ」

「……ほう」

「本当は御嬢様も咲夜さんを行かせたかったみたいなんですけど」

「……」

「……聞いてますか?大ナマズ先生」

「……聞いておる」    

 少々不満げにワシが頷くと御嬢ちゃんが此方を見つめると

 ワシに声をかけてきた



「ごめんなさい、やっぱり痛かったんですよね」

「痛くない!」



 ワシの圧し掛かりに対して偽者と思っていた御穣ちゃんのカウンターの一撃で

 遥か上空に吹っ飛ばされて湖の中に撃墜されてから

 改めて御穣ちゃんから眠れなかった理由を聞いておる最中であった

「……まあ、そんな理由でこうも静かになるものか」

「いや、幻想郷の組織の中で次の異変の解決について色々と面倒な事があったみたいで」

「面倒な事?」

 ワシが改めて問うと、御嬢ちゃんが声を落として話しかけてきた

「霊夢さんや魔理沙さんや早苗さんだけなら御嬢様も納得したんですけどね」

「まあ、別に異変解決に行ってもおかしくない面子じゃし何もおかしくないがな」


 伝説とされた博麗の巫女が出張るのは当然じゃし 

 普通の魔法使いがそれに追随するのは極自然な事
 
 そして妖怪の山の巫女は組織も力も今が一番充実しとるからな


「ところが、冥界の妖夢さんも異変解決に向かうって事になったみたいで」

「ほう?」

 此処で意外な組織が出番を取る事になったわけじゃな

「無論、御嬢様は猛反発したんです」

「まあ、此処の主殿なら当然の結果じゃな」   

「ですけど、異変の神霊は冥界の管理の問題と言う事で、出番は当然と御嬢様の意見が完全に飲まれまして」

 ふむ、冥界の姫は捕らえどころが無くかなりの曲者と聞いておる

 多分、出番を得る為にかなりの手回しもしておったに違いない

「その上、紅魔館の人物が地震の異変で出すぎだから自重しろと反論まで受けてしまいまして」

「……完全にしてやられたと言うわけじゃな?」

「はい、結局庭師だけでなく冥界の姫も異変に出ると言う事まで決定しまして」

 流石に此処の屋敷の主殿でも、既にどうしようもなかったのかもしれんのう 

「ですから、咲夜さんも御嬢様も少し意気消沈気味で、なんとか二人を明るくしたいなと考えてたら眠れなくって」

「そう言う事じゃったのか」
 
 全く……この御穣ちゃんは妖怪であるが人が優しいと言うかなんと言うか……

「よし!それならワシも考えるのを手伝おうではないか」

「本当ですか!?」

「うむ、なんせ先の地震の異変が無ければ、わしの出番も無かったからのう」

 なかったら、ワシは今も何処かでアルバイトしておるはずじゃしな





     ・・・





「とりあえず、こっそりとパーティとか考えていたんですけど」

「いや、今の話を聞いておったら逆効果になりかねん止めておけ」

「でしたら次の考えは……」

「いやいや、それも……」

 



     ・・・





 まあ、そんなこんなで珍しく御嬢ちゃんが昼寝しないで夕方を迎えたのじゃが




「……良い案がでてこんのう」

「……はい」

 結局良い案が全く出てないままでワシと御嬢ちゃんが意気消沈していた

「やっぱり、異変の自機の代わりになる物ってなかなか無いですよね」

「う~む、ワシみたいに一回でもでれたら万々歳と言う訳にもいかんからな」

 ワシのような色物ならば一度出番が会っただけでも感謝せねばならぬし

 門番の御穣ちゃんも夢オチとは言え出番があったのはとても恵まれておると言う事を知っておる

 それだけに次の異変での出番がある有力候補が出れなかったと言う衝撃は大きいじゃろうな

「しかたあるまい、もう時間が解決してくれるのをまつしかないじゃろ」

「うぅ……そうですね」
 
 わしの言葉にしぶしぶ御嬢ちゃんが頷くとため息混じりに呟く

「さあ、そろそろ晩御飯の時間じゃからな、そろそろ食堂に向かおう」

「……はい」

 食堂に行く為にその場から立ち上がった御嬢ちゃんがため息混じりに呟いた

「せめて、咲夜さんにも異変並みの出番でもあれば良いんですけどね」
 
「異変並みの出番?」

「例えば巨大な敵が屋敷に攻め込んできたのを咲夜さんを筆頭に追い返したり」

 想像して目を輝かせておるお嬢ちゃんに対して

 ワシは一番突っ込まないといけない事を伝える

「……その場合御嬢ちゃんが一番に頑張らんといかんじゃろ」

「そ、そうですけど」

 まあ、そんな出番等滅多にある事もない

 ましてや巨大な敵がこの屋敷に来るなんて

 屋敷の周りの湖の空を飛ばんかどうにかせんと

「そうじゃな、周りの湖を泳ぎ回るとか……むぅ?」

「ん?どうしたんですか大ナマズ先生」

 何時もの様に御嬢ちゃんに抱きかかえられて屋敷の食堂に向かう途中で

 ワシの頭に少しだけその言葉がひっかかった

(巨大な敵……そしてこの湖……)

 必死にその考えを頭の中で纏め上げる



「いや、これならやれるかもしれぬ……」

「大ナマズ先生、早くご飯食べないと冷めちゃいますよ?」

 頭の中で考えがまとまる頃には

 いつの間に来たのかは分からぬうちに

 お嬢ちゃんと共に食堂の中まで来ておった

「よし、御穣ちゃん大急ぎで御飯を食べてから話し合いじゃ」

「はい?何を話し合うんですか?」

「ほっほっほ、先程御穣ちゃんが言っておったではないか?」

 ワシの言葉に顔にだしている御穣ちゃんに向かってにやりと笑う

「メイドの御嬢ちゃんと屋敷を明るくしたいんじゃろ?」

「えっ?は、はあ」

「ちょっと耳を貸せ」

 ワシの言葉に門番の御穣ちゃんが暫くキョトンとしたのを見て

 そっとワシが考えた計画を耳打ちする

「まあ、これも一つの案なのじゃが……」

 色々と遅れたせいで食堂の隅っこにいた事が幸いして

 わしら二人は周りから全く見られておらぬ

 そのスキを利用して、ワシが考えた事を門番のお嬢ちゃんに伝えて行くと

 徐々に門番のお嬢ちゃんの顔つきが変わってきおった

「とまあ、だいたいこんな計画なんじゃがな……どうじゃ?」

「……大ナマズ先生、その案について詳しく話をしたいんですが良いですか?」

 実に嬉しそうで楽しそうな笑みでそうお嬢ちゃんがつぶやいてきおった

(うむ、やっぱりお嬢ちゃんはこうでないといかん)

 寝不足で疲れてるなんてこやつの顔には似合わん

 その言葉にワシがニヤリと微笑み、肯定するために頷く

「ではすぐに行きましょう!」
 
 それと同時大急ぎで食堂から引っ張られて行く事になった  

 どうでも良いが髭を掴んで走るのはやめて欲しい、痛いんじゃから

(あとわし……まだ飯を食べておらん)





     ・・・





『門番隊副隊長に伝令、少し話があるので全員倉庫に集合』

(これでよし!)

(……のう?お嬢ちゃん……計画を他の奴に話しても構わんのか?)

(大丈夫ですよ、門番隊の皆は口が硬いですし私達だけでは人手が足りませんから)

(屋敷の者にバレたりする心配は?)

(こんな屋敷の外にある掲示板は門番隊以外の人は見ませんよ)





     ・・・





「門番隊副隊長右の1参りました!」

「同じく副隊長右の2参上!」

「……右の3来ました」

「門番隊副隊長左の1此処に」

「門番隊副隊長左の2!此処に見参!」

「門番隊副隊長左の3……門番隊副隊長全六名揃いました」

(……ねっ?集まったでしょう?)

(なんともまあ……)

 門番の御穣ちゃんにワシがひらめいた事を説明してからまだ数刻もしていないうちに

 門番隊の掲示板に書いた文字を見た副隊長たちが門番隊倉庫に集まっていた

 それを見届けた門番のお嬢ちゃんが久しぶりにキリッとした表情になると全員を見渡す

「皆、本来なら休む為の時間に集まって貰ってまず申し訳ない」

 その言葉に門番隊副隊長の皆が真剣な表情になるのを見てから一言付け加える

「今回の招集は上からの伝達ではなく私用だということだから気楽に聞いてください」

 つまり、これから話すのは上からの命令ではなく

 お嬢ちゃんからのお願いであると言う事だ

「さて、本当なら昼寝しないように早く眠らないといけない時間だから簡単に言いますね」

(まあ、お嬢ちゃんは夜寝てても昼間に眠るのだからそれは意味がないのではないか?)
 
 わしも副隊長達もその言葉に全員苦笑して

『それは大変です』『睡眠時間後で返してくださいよ?』

『私達は馬鹿ですから簡単にお願いします』などと軽い冗談を加えて

 話をしっかりと聞くために傍にあった椅子に全員が深々と座り込む

 それを見届けたお嬢ちゃんが頷くと口を開いた

「皆、私達と共に屋敷を攻める悪になる覚悟はありますか?」

(お、おい!?お嬢ちゃん!?それは簡単に言い過ぎじゃ!)

 その言葉にその場にいたすべての者が耳を疑った、ついでにわしも慌てた

「とまあ、これだけだと流石に説明不足なので……」

 そんな皆の態度を見てこほんと咳払いをしたお嬢ちゃんが改めて副隊長達を見渡すと

「後はこの計画の立案者から詳しい話を聞くことにします」

(……なに!?)

「よいしょっと」

(ぬ、ぬおっ!?)

 いきなりのことに驚くワシの髭をむんずっと掴んで皆の前机の上に持ち上げた

「門番長?そのナマズは一体?」

「今回の計画に協力してくれる助っ人で、私が信頼するに値するナマズ先生です」

 副隊長達を代表して左の3と呼ばれた人物の質問に、お嬢ちゃんがそう答えると

『門番長が信頼しているのなら大丈夫ですね』と副隊長達が納得して静かになった

 それを見越していたのか、お嬢ちゃんがわしに小さな声で耳打ちしてきた 

(では、ナマズ先生お願いします)

(くっ!?は、はじめっからこのつもりじゃったな!?)

(後は頑張ってくださいね~♪)

 ワシの小言に渾身の笑みで微笑む門番の嬢ちゃんを睨みつけるがいまさらどうすることもできないので

「こほん、では一応計画と案を話させてもらうからまずはそれから頼む」

 渋々、他の門番隊副隊長達の目の前で自分の計画を一から話し始める



『かくかくしかじか』

    
  
「というわけじゃ」

 ワシの説明に門番隊副隊長の皆は腕を組んで真剣に考え込んでいる様子であった

 まあ、無理もないとんでもない計画であるし、全てがバレると上から離反と思われかねないのだから

 そんな考え込んでいる皆を改めてお嬢ちゃんが見渡すと最後の一言を告げた



「さて、皆に最後に言うことは、この極秘計画は此処にいる皆にしかまだ話して居ないと言う事です」

 それはそうであろう、なにせわしがその計画の案を出したのはついさっきじゃから

「そして、話を最後まで聞いて尚且つ、賛成してくれる者はこの場に残ること」

 その言葉は最終警告でもある、知られて上に漏れると少々面倒な事になる 
 
「反対の者は……計画に一切関係がないし、知らなかったと言う事にしてください」

 反対の者はその計画になんの関係もない、つまり何があってもお咎め無しと言う事

 悪いのは計画に参加したものだけであると言う予防策である

「では、最後に何か言いたいことがあればどうぞ」

 その言葉に対して副隊長の彼らは円陣を組んでしばしの話をすると

 先程も手を質問した左の3と言われた副隊長が手を上げて口を開いた

「門番長、我々に数刻の間御時間を貰えませんか?」


 多分、それは考える時間なのじゃろう

 その答えにお嬢ちゃんは頷くと静かに答えた

「わかりました……では、私達はこの場で貴方達の答えを待つことにします」

 その言葉に対して副隊長達は額に手を当てて敬礼すると

 速やかに部屋から出ていった





     ・・・





「……それでじゃ、お嬢ちゃん」

「なんですか?ナマズ先生」  

 それを見届けたワシがお嬢ちゃんに倉庫の中で問いかけた 

「なんでまた言わなくてもい良いネタばらしをしたんじゃ?」

 こちらの計画をばらさない方が周りに計画が漏れるリスクが減るし

 最悪ワシだけが悪になれば良い

「まあ、確かに言わなくても皆付いてきてくれると思いますし、私達だけでもなんとかなると思いますけど」

「そもそも、お嬢ちゃんはあやつらに命令してもいい立場じゃろう?ごまかす術もどれだけでもあると思うのじゃが?

 ワシの疑問に対してお嬢ちゃんが笑いながら答えてくれた

「でも、それだと信頼している彼らに失礼じゃないですか」

「なんともまあ」 

 まあ、そんなことじゃないかと思ってはおったが

「それに、ここまで腹を割って話を知たんですからきっと良い結果がでますよ」

 ここまで他人を信頼する事が出来る妖怪も珍しいものじゃな

(やれやれ、お嬢ちゃんは優しすぎる) 

「さて、彼らが来るまで暫く寝ますね」

 まあ、そんなお嬢ちゃんだからこそ、わしも傍に居れるのじゃろうがな

「そうじゃな、明日は睡眠妖怪のお嬢ちゃんが目にクマを作らんように寝ておかんとな」

「な、なんですか睡眠妖怪って!」





     ・・・





(すぴ~……すぴ~……)

(寝床に入って三秒で寝るとは……此奴本当に睡眠妖怪じゃなかろうかのう?)





     ・・・






 そんなこんなでお嬢ちゃんが昼寝……いや仮眠をしてから数時間後

 わしは寝る事もなく倉庫の中で構えておった

(まあ、一番最悪の計画がバレて拘束なんて事は無いと思うが)

 もしそうなったら、まあ仕方がない、お嬢ちゃんを連れて逃げるだけのことじゃ

 なに、わしはこの仕事クビになるだけじゃからもとの大ナマズにもどるだけじゃ

「……そのまま宛のない旅行って言うのも面白いかもしれんなぁ~」

「何処に出かけるんですか?」

「うおっ!?」

 いつの間にか目を覚ましたお嬢ちゃんに声をかけられて驚いた

「い、いつの間に目を覚ましておったんじゃ?」

「今さっきですよ」

 お嬢ちゃんが微妙に眠そうな顔をして欠伸を噛み殺しつつそう言うと

 倉庫の入口の方をむいて、椅子に座り込んだ 

「そろそろ、皆此処に集まる頃でしょうしね」

「そうじゃな」

 そう言うと同時に倉庫のドアが開かれた




「お待たせしました」

 入ってきたのは副隊長達の代表であろう左の3であった

 少し緊張した面持ちでワシら二人の前で言葉を告げた

「結論としては悪にはなりません」

「……そうですか」 

 その言葉にお嬢ちゃんが少し残念そうに頭を垂れる

 それと同時にワシがいそいで身構えた

「ああ、でも勘違いしないでください反対ってわけではありませんから」

「はいっ?」

「うむ?」

 慌てて言い方を変えたそやつ言葉に

 急いでこの場から逃げようとしたワシも動きを止める

 それと同時に、後ろから他の門番隊副隊長達が入り込んで来た

「右の1!部下達の説得完了と屋敷の妖精達への工作準備完了しました」

「右の2!部下達への了解と作戦の為のシュミレーションの訓練の準備出来ました」

「右の3……部下達と共に屋敷への隠蔽工作無事に完了」

「左の1!部下達に我々の任務と作戦決行時の補給物資の確保手段の一部確保」

「左の2!部下達に他の作戦に必要な情報を現在全て叩き込ませています」

「そして左の3、計画をより成功に導く為の最善案をレポートにして此処に提出します」

 副隊長達全員がこちらに笑顔を向けてワシ等に敬礼をする

「えーと……左の3?つまりこれは……」

 何が起こって居るのかよくわからないお嬢ちゃんとワシに対して

 左の3が大量のレポート用紙を準備しながら伝えてくれた

「我々は悪ではなく屋敷とメイド長を明るくするための祭りの裏方と言う事ですよ」

「そうか、お祭りとは良く言ったものじゃな」

「手伝ってくれるのですか!?」

 手放しで喜ぼうとするお嬢ちゃんとワシに左の3がこほんと咳き込むと

 少し言いずらそうに口を開いた

「まあ、その代わり我々も門番長に成功した際の報酬をお願いしたいのですが」

(……嬢ちゃん、わしお金ないぞ?)

(わ、私もそんなに……)

 小声でワシら二人がどうしたものかと言うのを考えておったら

「……いえ、報酬はお金ではなくってこれを……」

 左の3がお嬢ちゃんに報酬を書いた契約書を手渡す

「う、う~ん……まあこんなものでいいならわかりました」

 手渡された契約書を見たお嬢ちゃんが少しだけ変な顔をしたが、サインを書いた

 それを見ていた副隊長全員がガッツポーズをとった 

「我々門番隊一同、この計画を絶対に成功させる所存であります」

「ただ今より、門番隊副隊長達は計画を秘密裏に」

「尚且つ、成功へとむかように」

「速やかに行動に移す事にします」

「では、我々はこれで!」
 
 副隊長五名がその場から静かに去っていく

 そして、最後に残った門番隊副隊長左の3が……

「では、ナマズ先生と門番長、早速計画の最善案について再検討しましょうか?」

「え?今からですか?」

「わし、まだ眠って居らん」

「はいはい、どうせ昼寝すんでしょ?それでは計画への改善案なのですが……」

(ワシ、普段のお嬢ちゃんのとばっちり受けておらんか?)

 その日、わしは珍しく昼寝することになった





     ・・・






 そんな事があってから数日後

「なあ、お嬢ちゃん?」

「なんですか?大ナマズ先生」

「なんでわしら門の前で何時ものように門番しておるんじゃ?」

「此処に居ないと門番の仕事できないじゃないですか?」

 わしと門番のお嬢ちゃんは普段と代わりがない門番を続けておった

 まあ、お嬢ちゃんに言われた通り

 お嬢ちゃんが門の前から居なくなったら怪しまれるじゃろうが

「……やれやれ、一体何時に作戦を起こすのやら」

「まあまあ、大ナマズ先生も作戦決行になるまでゆっくりと休んで……」
 
 お嬢ちゃんがのんびりとした様子でいたのが途中で止まり

 一転して鋭い表情に変わる

 それと同時に、ゆっくりと門の傍に門番隊の一人がやってきた

 そして何気ない様子で持ってきた籠を我々の前に置いて口を開いた

「門番長、門番隊からの差し入れです」

「『門番隊からの』ですね?ありがとうございます」
 
 その門番隊に丁寧にお礼を言うと、お嬢ちゃんがそっと籠を開けて

 なかに入っていたパンを取り出した

「なんじゃ?差し入れなんて珍しい」

「大ナマズ先生もこの特別なパン食べてみて下さいよ」

 全く……このお嬢ちゃんは食い意地が張っておるわい

 さっきの一瞬は見間違いだったのかのう?

 ため息をつきながらせっかく貰ったパンをワシが一口食べたとき

「んむ?」

 中に何かが入っていたので取り出して理解した

 中に入っていたのは紙切れであった

『本日作戦決行各員予定の通りに作戦に移れ』 

「ね?特別なパンでしょう?」

「……成程のう」

 口から取り出した紙切れに書かれた文字を見て

 わしとお嬢ちゃんは、ニヤリと笑をこぼした

「ではお嬢ちゃん、そろそろ作戦に移る事にしようかのう?」

「はい、説得力がある宴にしないといけませんからね」  

 お嬢ちゃんがくっとの背伸びをして門の前で立ち上がる

 それに伴い、わしもグっと背筋に力を込めた

「さあ、わし本気モードで暴れるぞい!?」

「あはは、少しは手加減してくださいね」

 今から、長い長い今日と言う一日が始まる

 その為にわしらが一番最初にやらないといけない事は一つ 

「ところで私はこのメロンパン食べても良いですか?」

「ぬう、ならばわしこのアンパン貰う」

 戦の前に差し入れのパンを食べて腹ごしらいをする事じゃった
     





    ―――





「……」

 屋敷の一室で私は足を組んで静かにワインを飲んでいた

 否、静かに見えるが不機嫌なオーラをまき散らしていた

「……」

 無言の私の元には誰もよってこない

 そして、私自身が誰にも会いたくなかった

 会えば誰彼構わず怒鳴り散らして怒りをぶつけてしまいそうだから

「……くそっ」
 
 完全にしてやられたと言う事に腹の中の虫が収まらない

「冥界の亡霊が……いけしゃあしゃあと」

 思い出しただけで胸元がざわめく程に苛立つ

「何が『妖夢が出るなら私も出ても構わないわよね~?♪』だ!?年を考えろ!」

 手にしていたワイングラスを思いっきり地面に叩きつけた

 高級なワインと業物のグラスが粉々に砕け散り

 まるで血のように地面を真っ赤に染める

 それが八つ当たりであると言う事は分かっている

 無論、奴も今回の事にそれなりの代償を払っている事も分かっているし

 それなりの動機も確かに一部頷かざる終えないところもあった

(だが……それでも!)

「……咲夜」 

「およびですか?」

 背後から現れた自慢のメイドの姿に改めて口を開いた

「すまない」

(貴方に出番を作って上げれなくて)

 自分は良い、だが自分の傍に居るこの子には異変解決と言う出番を作ってあげたかった

「はい、新しいワインとグラスを準備しますね」

 こちらの気持ちを分かっているのか敢えて余計な事を言わず

 時を止めて、粉々になったグラスとワインを片付け

 新しいグラスにワインを入れて目の前に用意してくれた

「ありがとう、やっぱり咲夜は自慢の従事者ね」

「お褒めに預り光栄ですわ」 

 この子も悔しく無いはずがない

 なにせ、他の子に出番があると分かった日の次の日

 表面上は何時ものようだったが

(目が少し充血していたもの)

 少し、泣いていたのだろう

 それがなんでかと言う事は聞かずともわかる
 
「なあ咲夜」

「なんでしょうか?」

 ごめんね、情けない主で……

 そう言おうと口を開いた時であった

『キシャアアアアアア!』

「!?」

「お嬢様!」

 猛々しい咆哮が屋敷の外に響いたのは

 咄嗟の事態に思わず座っていた椅子から立ち上がる私と

 その私を護るように咲夜がナイフを構える

 暫くの緊張の後、何があったのかと私達が動き始めようとしたときに

「し、失礼します!」

 何者かがドンドンと部屋を叩く音がした

 その音に私が頷くと同時に咲夜がドアを開ける

 其処に居たのは、急いで走ってきたであろう妖精メイドが

 肩で息をしながら口を開いた

「も、門番隊より伝令です!紅魔館の門の周辺に謎の巨大生物出現!」

 なんの冗談かと驚く私と咲夜

 だが、もしそれが本当だとしたら先程の奇声の正体に納得出来る

「げ、現在門番隊が表で巨大生物と戦闘中との事で……」

 妖精メイドがそこまで声を上げた時

 紅魔館全体に体に体現出来る程の揺れが走る

 それはつまり、紅魔館が攻撃されているということであり

「っ!?咲夜!大急ぎで門の前に!」

「はい!」 

 大急ぎで咲夜を門の前に向かように伝達をすると

「そこの門番隊は大急ぎで図書館に向かいパチュリーを呼んできなさい」

「は、はい!」

 私は緊急事態に向けての対策を取る準備をし始めた





     ……



(メディック!早く来てくれ!)

(なんだ!?妹様が暴れたのか!)

(スクランブル!これは訓練ではない!)

(くそっ!弾が通用しない!?)

「本当に緊急事態のようね」

 お嬢様の命令で私が門の前にたどり着いた時に見たものは

 多少の損壊して埃が立ち上った門と、緊迫した様子の門番達の姿

「あ、メイド長!?」

 門番隊の一人が此方に気がついたらしく此方に向かってきた

「巨大生物が現れたと言う報告があったみたいだけれど?」

「そ、そうらしいのですが、今は門番隊も情報が乱れてて……」

 その言葉によく辺を見渡してみると確かに、周りの門番隊らしき者達の中には

 戦闘準備をしている者も居れば、とりあえず着の身着のまま出てきたと言う姿の者
 
 中には仮眠していたのか、パジャマの姿の者の姿も見える

(まいったわね、何があったのかよくわからないわ)

 情報が欲しいのけど、慌てている門番達の話を聞いて回るだけでもかなり無駄な時間がでる

 もしかしたら、巨大生物何かではないかも知れない

(こうなったら、手当たりしだいに話を聞いて回るしかないわね)

 とりあえず、目の前の子にお礼を言おうとした時だった

「巨大生物が屋敷の傍の湖から出現して、紅魔館の門に大量の水がかかりました」

 何者かが目の前の門番隊の後ろから声をかけてきた

 私と目の前の門番隊の子がそちらを向くと、そこにはハチマキを巻いた人物が立っていて

 私に敬礼をすると改めて口を開いた

「申し遅れました、門番隊副隊長の『左の3』です、主に情報収集が私の役目です」

「他に情報は?」

 再度敬礼をしようとするのを止めると、左の3は他の情報を答え始めた

「門番長その巨大生物を追って湖の方へ、私達門番隊副隊長が部下を纏めている最中です」
  
 成程、美鈴が向かったのなら其処に正しい情報があるはず

「湖の方ね?」

「門番長をお願いします、我々は情報の収集と部下達に戦闘の準備をさせますから」

 その左の3の言葉に私は大急ぎで湖に向かって飛んだ


 
 



(何処に居るのかしら?)

 紅魔館の周囲の湖はかなり広い、そんな中を咲夜が空を飛びながら見渡して居ると

「彩符!『彩雨』」

 とある一角から、綺麗な弾幕が飛んできたのが見えた

(あっちの方みたいね) 

 弾幕が飛んできた場所に向きを変えて向かうと

「まだまだ!彩符『彩光乱舞』」

 そこは湖の上、そして其処に居たのは

 真剣な表情で湖の上を飛ぶ美鈴の姿

(美鈴?何もない所で一体何を……)
 
 私が美鈴に声をかけようとしたときだった

「えーい!極光『華厳明星』」

 湖の水面に美鈴が弾幕を叩き込む

 それによって湖面に大量の水飛沫が巻き上げられる

 それと同時に、湖面を割った先から何者かが飛び出してきた

「こ、これは!?」

 本当に小山位はあろう大きさの謎の巨大生物が湖面に出てきた

 完全に湖の奥底から姿を現したその姿、それはまさしく

「巨大ドジョウね!?」

(キシャアアアアアア!)

 その発言に呼応したかのように巨大なナマズが吠えた



     ・・・



(なんでドジョウなんじゃ!?ワシは伝説の大ナマズ『太歳星君』じゃあ!)

(ど、どうどう!落ち着いてくださいって大ナマズ先生!)

 実際はそんな咲夜に聞こえない湖面において 

 巨大な姿になった大ナマズ先生が吠えていた訳だが



     ・・・―――





『まだまだいきますよぉ!?セラギネラ9!』

 美鈴の綺麗な弾幕が巨大生物の動く範囲を次々に狭めていく

『行くぞ!門番長を後方支援する』

『了解!飛べる者は全て門番長に続け』

『後方の者は船の準備が出来しだい続け!』

 湖の上で闘いをしている美鈴に対して

 続々と門番隊達も反撃に転じようとしていた

(けほけほっ……意外と家の門番達もやるじゃない?)

「普段からこうだと良いんだけど」

 咲夜が埃っぽい空気の中で、その様子を見ながら攻撃に加わる為に武器を構えた時であった



(キシャアアアアアア!)

 唐突に巨大生物が湖面に潜り込み、美鈴達がいる場所から後ろに下がり始めた

 撃退に成功したのか?咲夜と門番隊達も思った時だった

 湖の中央辺りにぽっかり顔を出して吠えた

(オオオォォォォォン!)

 そして、巨大生物の体から視覚で見える程の電流が放出される

『な、なんだ!?』

『警戒!敵はまだ沈黙をしていない!』

『くそっ!化け物め!』

 本気になったと思われる巨大ナマズに門番隊に衝撃が走った

 そんな状態の門番隊の船に対して、巨大ナマズが大きく跳ね上がると

 空中から船に向かってダイブを仕掛けて来ていた

『いかん!総員耐衝撃姿勢を取れ!』

『ぶ、ぶつかるぞ!?』

『えーいシートベルトはどこだ!?』

 巨体の一撃を受けたら如何に大きめの船といえど転覆をしかねない

 絶叫が聞こえかける船にもう少しで巨大ナマズがぶつかる寸前

 気符『地龍天龍脚』

(キシャアアアアッ!)  

 空中に飛び上がったナマズに対して、美鈴が捨て身の蹴りを放つ

 その為、空中に富んでいた巨大ナマズが体制を崩して

 落下地点が船から少し離れた場所に落ちる

「まだ……倒れませんか」

 その姿を見た美鈴が額についた汗を手で拭う

 そんな美鈴の傍に咲夜が近寄ると声をかけた

「美鈴」

「咲夜さん?なんで此処に」

 レミリアを護る事が仕事のはずの咲夜が

 闘いの最前線にやって来ていることに美鈴が驚く

「お嬢様の命令で門の前に情報を聞きにきたのだけど」

 だが、そんな事は今は無視をする

「本当に緊急事態のようね」

「……はい」

 紅魔館が危機に晒されているのだ

「あれをぶっ倒すんでしょ?手伝うわ」

 咲夜が武器であるナイフを構えてナマズに対して弾幕を張ろうとして

「咲夜さん!ストップ!」

「うぇ!?」

 後ろから美鈴に羽交い締めにされた

「ちょ、ちょっと!?いきなり何を」

「咲夜さんにあの巨大生物について話さないといけない事があるんです」

「今はそんな事聞いている場合じゃ……」

 いきなり味方から攻撃を止められて慌てる咲夜に

 美鈴が真剣な眼差しで声をかける

「一つ、彼奴に半端な弾幕は大量の水でかき消されるので無駄です」

「成程、ナイフが無駄に水に沈まずに済んだわ」

 大量にあると思われる咲夜のナイフも取り出す限界があるので

 投げた分、きっちりと時を止めて回収している

 湖に落としたりしたら回収が面倒になるのだ
 
「だったら、大量の弾幕なら良いのね?」

「それと咲夜さん人間ですから金属はダメです、大量の電気をまともにうけますから」

「それじゃあどうすれば良いのよ?」

「……何か電気を絶縁するような物を用意するか、電気が出てないときに攻撃しないといけませんね」

 妖怪である美鈴なら多少感電しても死にはしないが

 人間である咲夜にとっては下手な電撃は命取りになりかねないのだ

「最後に、あの巨大生物は殺してはいけないんです」

「どういう事?」

「それは……」 

(キシャアアアアアアッ!)

 美鈴が何かを言おうとした時、湖の中から巨大ナマズが再び姿を表すと

 美鈴と咲夜の方を見つめて湖の水を大量に口に含み始めた

「っ!?咲夜さん!急いで離れて!」

「きゃっ!?」

 その姿を見た美鈴が慌ててに咲夜をその場から突き飛ばす

(ちょっと、美鈴いきなりなにを……)

 咲夜が突き飛ばされて気絶する前に見た光景、それは

「 星符『星脈地転弾!』」

 巨大ナマズの方めがけて巨大な気弾を叩きつける美鈴と

「キシャアアアアア!」

 それと同時に巨大ナマズの口から巨大な水流と大量の電気が吹き出されて

 美鈴がそれに飲まれる光景であった
 どうも、名も無き脇役です

 本当はこの話、神霊廟が発売されてすぐに書き始めたんです

 ……がっ!どこをどう寄り道したのか、気がついたらこんな季節に

 とりあえず、前編はカッコイイ大ナマズ先生と門番隊を

 後編は愉快な門番隊とメイド長VS巨大ナマズ先生の予定

 
 少しづつでも書いていこうかと思っていますので今日のところはこれで

 さて、隠居話や神綺×霖之助、毒舌あやもみの続きでも考えて

 眠る事にしますね……ZZZ
名も無き脇役
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
意外とありかもしれない
とりあえず後編待ってます
2.名前が無い程度の能力削除
手に汗握る展開!続きを楽しみに待っております!
3.名前が無い程度の能力削除
やっべ続きが楽しみみみみ
4.名前が正体不明である程度の能力削除
大ナマズだと!