Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

砂時計

2006/08/12 07:53:05
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私は思う
砂時計は時を計るために在るのではなく

時を視る為に在るのだと



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そこは紅い館
窓は殆ど無く、僅かにある小さな窓もこれまでに開けられた事は無さそうだ
そんな館に幾つかの砂時計


一つは横倒しになっているようで
その砂時計の上には五百年分の埃

いつか埃が掃われて
横倒しの砂時計が置き直されて
もう一度砂が流れる事はあるのだろうか



これは奇妙な砂時計
砂の流れる速さが一定ではないようで

ときに遅く
ときには速く
またあるときは止まっていたりする

いつか全ての砂が落ちるとき
その傍らには一体誰がいるのだろうか


こんどは壊れた砂時計
真ん中から二つに折れているようで
僅かにこぼれた砂が周りに散っている

よく見ればあちこちヒビだらけで
もうあまり長くは保ちそうにない

直そうと思えば直せそうだが
僅かにこぼれた砂までは
とても元に戻せそうにない



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ここは竹薮の中のとても広い屋敷

外からの来訪を固く拒み
まるで何か大事な物をその奥に隠しているような
ここにも変わった砂時計

この二つの砂時計は

今まで見たどれよりも大きくて
今まで見たどれよりも寂しい砂時計

その砂時計には

砂が一粒も入っていなかった



もう一つ砂時計を見つけた

寂しい寂しい二つの砂時計に
寄り添うように小さな砂時計が一つ

二つがあまりに大きくて
とても小さく見えるけど
普通の砂時計より何倍も大きな砂時計

だけどどうもよく見えない
心なしか歪んで見える
心なしか霞んで見える

誰を欺くために?
それとも
自分を欺くために?



もう一つ見つけた

とてもおかしな砂時計
半分から下は普通の砂時計

だけど半分から上は
沢山の砂時計をくっつけたような

よほど長生きしたいらしい
だけどいつか気付くだろう

多すぎる砂を全て受け入れることができずに

いつか



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森を抜けてしばらくすると
小さな家が見つかった

一見穏やかなこの家に
とても物騒な砂時計が置いてある

倒れてもいないし
ヒビもどこにも見当たらない

ちゃんと砂は入ってる
ちゃんと砂は流れてる

だけど

どこからが下で
どこからが上なのか

上に向かって流れているのか
下に向かって流れているのか

とても胡散臭い砂時計



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雲を超えて高く飛び
大きな門を飛び越える

するとそこは死者の世界
暗くて冷たい死者の世界

こんな所に在る訳がない

だけど見つけた砂時計
この砂時計もかなりの変わり物
下半分が見当たらない

上から流れる砂の光が
そのまま地面へ落ちていく

地面に当たる瞬間に
ふ、ときれいに消えていく

さらにもっとよく見ると
上の砂が減っていない

もう訳がわからない



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降りた場所にも砂時計

ここは人里と森の境目
一軒の古道具屋

どうも客は少ないようで
どうも周りから浮いている

この砂時計はそう大きくは無いようだ
だけど普通の物とは少し違う

中に入っているのは砂ではなく
茶色がかった透明な液体だった

そんなに大きくないけれど

ゆっくりゆっくり落ちていく
一滴一滴ゆっくりと

普通の砂時計の何倍も時間をかけて
ゆっくりゆっくり落ちていく



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あなたの砂時計は・・・
もっと沢山あるけれど
時間が無いのでこの辺で

ここまで読んだ砂時計
読んだ分だけ砂は落ち

溜まる知識と減る時間
残りの砂は如何程か







HalN
コメント



1.CODEX削除
空想する楽しみを十二分に発揮した素敵な文章ですね。
”神秘的”という表現がとても似合う時の砂、私の器に確かに受け取りました。
2.名無し妖怪削除
永遠亭の寄り添う三つに感じるものがありました。こういった遊びはとても面白いと思います。
が、それよりなにより、てゐちゃんはきっともう一癖くらいあるんじゃないかと思いたい。
3.HalN削除
こんな文章にレスをありがとうございます。

こちらでの投稿はこれが初めてになりますね。
本来ならば後書きにでも一言挨拶を書き入れるべきなのに
初投稿の緊張でついうっかり忘れてしまいました。
こんな自分ですが今後ともよろしくお願いします。