９９５年目に両翼が告白するとして。

ぎゅっと背後から　お姉様を抱きしめた。
ぎゅっと背後から　妹に抱きしめられた。

私と同じ小さな背中から　右手でぎゅっと胸を抱き　左手はそっとお姉様の手に重ねた。
私と同じ小さな鼓動が　背中からぎゅっと押し伝わって　左肩から手首の先へ　絡められた左手が少し熱い。

お姉様はいつも私の前に立って　全てを知って受け入れて　きっと自分自身を削って耐えていた。
妹は時に気まぐれに私から奪い　時に気まぐれに私に与え　そしていつも最後は私の背後に立って私を見ていた。

お姉様の柔らかい羽は運命に鷲掴みにされて　遥か昔にも遠く未来にも　そして今日もまた一つ弱弱しくなっていく。
私が人の心を想い悩ませ　身を堕としてまで時に抗おうとしたあの時も　妹は後にただ立って、私を見ていた。

だから私は　そんなお姉様を見ていられなくて
だから私は　妹に頼る事などできずにいて

気が付いたらお姉様を抱きしめていた　だって
不意に妹に抱きしめられて　そして


かけがえの無い両翼に気が付いた　色も輝きも異なる二人は　けれどピタリと重なる同じ心の形をしていたのだから。


私はお姉様が好き。
私はフランが好き。

これは、恋なんかじゃなくて
それは、愛なんてものでもなくて

ありとあらゆるものが壊れるとして　大切にしていた人形も私は何度も壊していて　壊れないものなどあり得ない
恋だとか　愛だとか　友も信頼も全ては消え逝く運命を持って　だから、私と同じ時を進むのは私自身しかあり得ない



ただ　ほんの五年の隙間に存在する　姉妹というキレイに重なるもう一つの心を除いては。



お姉様は私に抱きしめられたまま　ふわりと飛び上がり空を自在に飛んだ。
私は妹に抱きしめられたまま　ふわりと飛び上がり　速く　速く　速く　妹を試すように不規則に飛び回った。

高速に振り回され　お姉様を掴む手が振り解かれそうになる　ただ、重なれない事が悲しくて　悲しくて
速く飛びすぎて　妹を振り落としそうになる　その瞬間　喪失が私の心を絶望に塗りたくる。

だから　強く　強く　抱きとめる　振り落とされるものかと　運命は私たちを引き裂けない
だから　強く　強く　抱きとめられて　消えずについてきてくれた存在が　たまらなく嬉しくて

今度は私がお姉様を　高く　高く　空へ持ち上げる　何者も到れない邪魔できない　隙間の無い高みへ
妹に誘われて　私は素直に連れられてあげる　高く　もはや私たち以外には　手出しの出来ない高みへ

私は　お姉様に好きといった　お姉様は態度で私に応えてくれた
私は　フランが好きといった　フランは態度で私に応えてくれた

お姉様も私が好きだといってくれた　私はお姉様に好かれている
フランも私を好きだといってくれた　私は妹に好いてもらえている



私が私でいられるのは　いつも変わらない貴女が近くにいてくれたからという事に気が付いた。

二人の夜に空の彼方で　気持ちがピタリと重なり合った二人は五年の隙間を埋めるように
強く繋がれた左手に力を込めあった。

他の全てを失っても　二人は一緒だという事に　こんなに長い時間かかって気が付いた。




私は　気が付くともう無意識にお姉さまの首筋に唇を当て　そっと甘噛みをして温かさに酔った。
私は　妹の吸血の真似事に　思考が痺れて使い物にならなくなり　互いを求め合う心の重なりに酔った。

そんな夢を見たので覚書。
フラン視点で。