Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幽香粉注意報

2012/02/06 03:28:01
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「幽香粉注意報」



 幽香と一つ屋根の下で暮らすようになってからずいぶんの時間がたった。
 ……のだが、私は今かなり深刻な問題に直面している。
 他人が聞けばきっとくだらないと一言で済ましてしまうだろうし、人によっては放っておけばいいんじゃないかとでも思うだろう。
 そんな問題と言うのが

 幽香分が足りない。

 いや待ってほしい、なに惚気ているんだと言うかもしれないがいざ直面するとこれが思ったより辛く死活問題なのだ。
 幽香の香りが足りない、幽香の温もりが足りない、幽香の笑顔が足りない、幽香の私を呼ぶ声が足りない……。
 最近彼女は忙しいらしくぜんぜん構ってくれないのだ。

 いつもなら料理をしていると急に後ろから抱きしめられたり。
 人形を作っていると顎を指先で持ち上げられそのまま唇を重ねられたり。
 朝目を覚ますと既に起きている幽香に膝枕をされていて、さらには頭を撫でられていたり。
 とにかく隙あらば私を恥かしがらせていたのに最近それがぱったりと止まってしまったのだ。

 朝食を囲み、昼はお互いにやることがあるので別々に軽く物を食べ、夜も早々と幽香が食事を終えてしまうので一人寂しく食器を片付ける。
 そんな日が続いている。
 始めのうちは特に何も気にする事無く、むしろ作業がはかどり平和だとすら思ってすらいたのだが。
 それが3日続き4日となると徐々に寂しくなりついつい幽香に声をかけてしまう。
 ところが、「花壇の世話が忙しいからまたあとでね」とまったく相手にしてくれることなく私の脇を抜けて行ってしまったのだ。

 そんな日々が続き、結果相手にされる無く1週間という時がたった。

☆★☆

「おはようアリス」
「おはよう幽香」
 寝巻きに身を包んだ幽香が気持ちよさそうに伸びをして寝室から出てきた。
 まだ少し寝足りないのか、目元を手でぬぐいながら歩く彼女はいつものクールな姿からは想像できないほど可愛い。
 いわゆるギャップと言うやつだろうか。
 いや、幽香に飢えているからこそそう思うのかもしれないけど。

「少し寝坊してしまったようね」
「いいじゃない、毎日忙しいみたいだし」
 幽香が自分の席に移動しているのを背中に感じながら返事をする。
 少し前ならここで抱きしめてくるなりのスキンシップがあったのだが。
 思わず振り向き幽香の姿をじぃっと見つめ、目で追ってしまう。
「どうかしたかしら?」
「い、いえ、なんでもないの」
 やはり何も無い。
 当然のように幽香は自分の席に座ると上海たちが用意してくれたコーヒーを啜りだした。

 仕方が無いのでトーストとベーコンエッグをテーブルに並べて食事にする。
 真っ白なお皿と食器がぶつかる音だけが二人の間に流れ続け会話がない。
 なにを話そうかと悩んだ結果、結局口をでたのは
「幽香は今日もその……忙しいのかしら」
 そんな一言。
 自分の情けなさに俯き、目の前のベーコンエッグを見つめる。
 もっと気の聞いたことが言えないものだろうか……
 上目遣いに幽香を覗き見ると、丁度トーストを口に運んでいるところだった。

「そうね、忙しいわ」
 わかりきっていた返事に思わずため息が漏れそうになる。
 もし暇ならあんな夜遅くまで外に出ているわけがないし、早起きの幽香が私より遅くに起きてくることもないだろう。
 そう思い、自分のスカートをぎゅっと握り締め笑顔を浮かべてみせる。
「どうかしたの?」
「なんでもないわ、忙しいなら良いの。花壇のお世話がんばって? 綺麗なお花を楽しみにしているわ」
「そう? ありがとう、がんばるわ」
 心配そうな顔をした幽香が何か言いたげにしていたが無視して食事を続けた。
 そうしていると幽香も引っかかる部分が勘違いだと思ったのか自分の食事にへと戻っていく。

 結局今日も今朝のちょっとした会話を幽香と交わしただけ。
 そんな1日の終わり。

(幽香の服……)
 お風呂に入った幽香の服を洗濯籠に回収していると、ふとそれが目に付いた。
 チェック柄のベスト。
 脱衣所を出てすぐのリビングのど真ん中。
 手に握られたそれをを目の前に広げてみる。
 わずかな太陽の香りが温もりの残ったベストから漂う。
(……すぅ)
 周りを確認し深呼吸。
 恐る恐るそれを自分の顔に近づけ――


 スン、と鼻を鳴らすと土の香りと甘酸っぱい幽香の汗のにおいがした。


「なにを……しているの?」
「わひゃあ!?」
 とっさにベストを背に隠し、声のした方を見るとバスタオルを体に巻いただけの幽香がこちらをじっと見つめていた。
 そんな長い時間こうしていたつもりは無かったのだが、どうやら気付かぬうちに相当時間がたっていたようだ。
 幽香の視線は明らかに背中に隠したベストに向けられている。
 気付かれてる! これはまずい!

「ななっ、なんでもないの! ちょっと匂いが気になったとかじゃなくてえっと、そう! 咳がでて、じゃ無くてくしゃみが出てついついおさえちゃったみたいな……その、ごめん、なさい」
 両手をぶんぶん振り回し、思い付いた言い訳を片っ端から言ってみたが幽香の冷ややかな目線に結局折れてしまう。
 なんて事を私はしてしまったのだろうか。
 後悔と罪悪感が遅れて押し寄せ思わず泣きたくなる。

「ふふっ、ふふふ」
 自分の行為をどう許してもらおうかと考えていると、静寂に包まれていた部屋に不適切な音が響きだす。
 堪えようとして漏れ出した笑い声は、普段なら小さなものだろうがこれだけ静かな部屋では大きな音として聞こえてしまう。
「幽……香?」
 俯き幽香の視線に晒されているつもりだったが恐る恐る顔を上げてみると、お腹と口元を押さえ心底楽しそうに幽香が笑顔を浮かべていた。
 いったい何がどうしたと言うのだろうか?
 てっきり嫌われたとすら思っていたとのになぜ幽香が笑っているのか私には見当が付かない。

「アリスったら可愛いわ、焦らしたらどうなるか試してみたけどまさかそんな行動に出るなんて……」
 湿り気を帯びた髪を揺らしながら幽香がこちらに近づいてくると困惑で固まった私の目の前まで来て止まる。
 指先を顎に当てられ、慣れた動作で顔を強制的に上げさせられた。
「あっ……」
 反射的に声を上げてしまうと目の前にある幽香の笑顔がにたぁっと意地悪な笑みへと変貌する。
 真紅の瞳がこちらを見下ろし、視線を逸らせない。
 頭の中がこんがらがり目の前が少しぶれて見える。

「忙しいなんて全部嘘よ、アリスをいじめる為の口実でしかなかったの」
 嘘? それどういうこと? ずっと私寂しくて幽香に相手にしてほしくて……
 それが全部、嘘だった――?
「辛かった? 私に相手されないのは」
 幽香の言葉がゆっくりと身に染みてゆく。


 私の中で何かが弾け飛んだ。


「辛かったわよ、ええ! 辛かったわ!」
 幽香の手を払い、肩をつかむと思いっきり押し返す。
「え? ちょっ、アリ――」
 突然の事に幽香が驚いたような声を上げているが構わず壁に押し付け拘束する。
「ずっと、ずっと幽香に触れたくて、でも邪魔しちゃ悪いと思って我慢してたのに!」
「ア、アリス……?」
 私の変貌に怯え身を竦めて小さくなっている幽香を見下ろす。
 小刻みに震える彼女見て加虐心に火がついたのを感じた。
 良く見れば涙目になっている幽香がたまらなく愛おしい。

「ひどいわ、いつも幽香が私を気まぐれにもてあそんで困らせるのに、こんな事するなんて」
「ご、ごめんなさい、そんなに怒っているなんて……」
 興奮して動悸が激しい。
 言葉が絶えず、思いつくよりも先に口が動いている。
「いつも幽香がしてくるみたいにいっぱい幽香を困らせるまで許さないわっ!」
 幽香が逃げられないように頭を両手でしっかりと押さえつける。
 びくりと体を震わせ固まる幽香。
 目をつぶりながらも許しを請おうとしているのか口がパクパクと動いているが、それを塞ぐようにして唇を重ねた。
「んくっ!?」
 苦しげな吐息が漏れるがそんな事気にもしてあげない。
 私を押し返そうと両手を突っ張っているがその腕にはいつもの力が無く、滑って空を切ってしまっている。

「ふはぁ」
「ふぁ……」
 小さな抵抗を続ける幽香をしばらく押さえつけてから開放してあげた。 
 目尻にうっすらと涙を浮かべた幽香が呆けたような顔でこちらを見上げている。
 泣かせるつもりは無かったのだが、こんな表情をした幽香はなかなか見ることができないのでこれはこれでよしとしよう。
「ア、アリス……」
 若干呂律の回っていない声で幽香が私の名前を呼び、ケープの裾をきゅっと握り締めてきた。
 それがあまりにも可愛くて思わずお互い息ができなくなるぐらい強く抱き寄せる。
 あぁ、普段からこれだけ素直ならこんなに寂しい思いをしなくて済んだのかもしれない。
 そんなことを思いながら、腕を回し肩を抱きしめ揺れる幽香の髪に頬を埋める。

「幽香、可愛いわ、大好きよ」
 耳元に顔を寄せ小さな声で囁くと耳がかぁっと真っ赤に染まってゆく。
 顔は見えないがきっと顔を真っ赤にしているのだろう。
「は、恥かしいわ」
「いつも幽香が言っているじゃない」
 そう言うと「そうだけど……」とだけ小さくつぶやき黙り込んでしまう。

 しばらくお互い黙って抱き合い、肩に顔を預けるようにしていると幽香がこちらを向くように動き
「はぐっ!」
「わひゃん!?」
 耳に噛み付いてきた。

 背の高さによるアドバンテージ。
 彼女は少しだけ私より背が大きいので前からでも少し無理をすれば耳を噛むことができる。
 痛くは無かったが突然の刺激に変な悲鳴を上げてしまい、思わず後ろに数歩下がってしまう。
 そこをすかさず幽香に捕まえられてしまい、再びお互い見つめあう形になる。
 いまだに頬を赤く染めているが幽香の瞳にはいつもの力強さが戻っていた。
 
「ふふふ、可愛い声上げるじゃないアリス」
「だ、だって耳を噛むなんて……」
「あら、舐めるほうがよかったかしら?」
 耳元に顔をよせられ軽く息を吹きかけられる。
 生暖かい風に撫でられびくりと体が震え強張った。

「あんなに乱れるなんてすごいわねアリス、大好きだ大好きだなんて叫んじゃって」
 耳元に顔を寄せられたまま囁くように幽香が言葉をつむぐ。
 ぞわぞわとした感じが足元から這い上がり、座り込みそうになるのをこらえるのでいっぱいいっぱいだ。
「嘘じゃないもの」
 精一杯の強がりを見せる。
「わかっているわ、私もアリスが大好き」
 しかしそれもすぐに折られてしまう。
 気付けば完全に立場が逆転している。
 これでいつも通り幽香のペースだ。

「あんな大声で叫んで、誰か来ていたら聞こえてしまっているわよ? たとえばあの白黒の魔法使いとか」
「そ、そんな……」
 わざとらしく考えるそぶりまで見せて幽香が言う。
 今の私のとってはそれがわざとだとわかっていても間に受けてしまうわけで。
 改めて自分の叫んでいたことを思い出し顔が一気に熱をってしまう。
「あらあら、まっかっか」
 ニヤニヤと幽香がこちらの顔をまっすぐに見据えてくる。
 思わず恥かしくて両手で顔を隠すが
「ダメよ」
 当然のようにその手をつかまれ、まるでばんざいをするように真上に上げられてしまった。
 幽香の視線に晒されどんどん顔が紅く染まっていく。
 心音がうるさいほどに大きく早くなり、幽香の真っ赤な瞳に自分の顔が移っているのがわかる。
 きっとこの瞳のように赤い顔をしているのだろうと思うとなおさら恥かしくなった。

「顔を逸らす事はしないのね?」
「――っっ!?!?」
 言われてずっと自分が幽香のことを見つめ返していたことに気付く。
 横を向くなり下を向くなりすればまだ彼女の視線から逃げられたはずなのに。
「目が泳いでいる」
「もう意地悪しないで……ぎゅってさせて」
「さっきの勢いはどこへ行ってしまったのかしら……」
 呆れたように幽香が言い、小さくため息を吐く。
 そんな事言われても所詮は虚勢なのだ。
 幽香が意地悪ばかりするからちょっとした仕返し。
 何より寂しかった。
「それに、言っていたわりにはただのキスだったし」
 手が放され、頭を包むように腕を回され胸元で抱きしめられる。
 自由になった腕で彼女を抱きしめ返し、その流れで幽香の顔を見上げると唇をふさがれた。
 暖かな幽香の唇。
 やっぱり私は幽香に抱きしめられながらキスされるほうが好きだ。

 そんなことを思いながら
 
 幽香の唇は蜜のように甘い

 なんて事を改めて実感させられたのだった。
SS作品投稿第18弾

はいどうも皆さんこんばんは。
ひどい作品ですね諦めてください。
半分ぐらい深夜のテンションでの書きなぐりなのでひどいひどい。

はぁ…
誤字等確認はしましたが何かありましたらお一言くださると嬉しいです。

それではまた何処かでお会いできる日がありましたらそれまで。
那津芽
http://twitter.com/#!/seihixyounatume
コメント



1.名前が正体不明である程度の能力・夜削除
甘いね。
2.奇声を発する程度の能力削除
ニマニマ出来ました
3.名前が無い程度の能力削除
バカじゃねーの。
4.名前が無い程度の能力削除
ヒャア
5.名前が無い程度の能力削除
28282828
一生やってろバカップルめ!
6.名前が無い程度の能力削除
甘い!
7.那津芽削除
>>正体不明さん
甘いぜー超甘いぜー!
コメントありがとうございました!

>>寄生さん
最近「きせい」と打つと「規制」がさきに出てくるんですよね…ツイッタのしすぎかしら…
いつもコメントありがとうございます!

>>3さん
馬鹿なのはしょうがない、俺だからなぁぁぁぁ!!!
コメントありがとうでしたー!

>>4さん
アリスの悲鳴である、後に魔法の森には甘い花粉の香りがしばらく舞ったという……
コメントありがとうございました~

>>5さん
二人の夜は永遠だぜ☆
って意味ですか、わかります。
コメントありがとうございました!

>>6さん
甘い!だが甘い!そして甘い!
コメントありがとうございます!