Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

古道具店に神様4

2011/10/11 00:21:44
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(終わった……)

 一人の男が赤黒くなった服で目を閉じようとしていた

 頼まれていた仕事を無事に終えることができた満足感から

 もう、思い残すことはないとその場で倒れこんだ

 朦朧とする意識の中、誰かが倒れこんだ自分の傍にやって来るのが微かに見えた

「……さん……之助さん!」

(ああ、そう言えば彼女が来る事を忘れていたな)

 泣きそうな目で自分を見る少女の事を思い出し

 苦笑しながら、すぐに尽きそうな意識を今一度取り戻して呟いた

「やあ……いらっしゃい」

「霖之助さん!?」

 意識を取り戻した事に泣きそうな少女が急いで僕の顔に耳を近づける

「……すまない、もう喋る事も辛いんだ」

「……」

 その言葉で全てを察したのだろう

 その少女は泣きそうな顔から少しだけ笑みを浮かべると

 僕の頭をそっと持ち上げて、少女の膝の上に置いてくれた

「ああ、すまない」

「……気にしないで下さい」

 思いがけない膝枕に僕の目は少しずつ霞んでいく

 目が細くなるが、まだ微かに意識は残っていた

「ねえ?霖之助さん」

 その意識が、膝枕をしてくれた少女の言葉を捉えた

「……私、頑張って此処に来たんですよ?」

(知っている、本当ならこんな所に来る事すら出来ないはず)

「仕事も……一生懸命終わらせて」

(大変面倒な仕事みたいだな)

「……此処に来るのに追って来た子もごまかして」

(それは君が重要人物だからだよ)

「霖之助さんと……グズッ……一緒に食べるお土産も持ってきたのに」

(ああ、君と一緒に食べるのは悪くはない)

「なのに……なのに!」

(全く、こんな事で泣くんじゃない)

 途切れそうな最後の力で泣いている少女に手を伸ばして

 最後に一言だけ呟いた





 


「すまない神綺、徹夜……三日目なんだ……このまま寝かせてくれ」

「うぅ~せっかく夢子ちゃん振り切ってやってきたのに眠らないで下さいよ!」






     ・・・






 今日も一週間に一度の心の洗濯の日と決めている

 私にとっての隠れ家である幻想郷の香霖堂にやって来ました

 ……でも、今日はちょっと不満です

「霖之助さん、起きて下さいよ」

「……ZZZ」

 何時も相手をしてくれるはずの、御店の店主の霖之助さんが

 完全に眠ってしまっている事に

「霖之助さんが起きてないと此処に来た意味ないじゃないですか」

 折角やって来たのに寝ている霖之助さんの頬を頬を膨らませながらつつく

「……ZZZ」

(起きてくれない) 

 綺麗に寝息を立てて眠る霖之助さんが起きる気配は無い

「むぅ、御客が来ているのに眠るなんて御店の店主失格ですよ~だ」

 いつもなら、私の軽く拗ねた言葉に軽い皮肉で返してくれるのだけど

「……ZZZ」

 やっぱり起きてくれない

「……一人だけで喋っていてもつまらないですから、早く起きて下さい」

 とは言っても、私の膝枕で寝ている霖之助さんは完全に眠っている

(どうしよう?)

 本当なら、邪魔にならないように帰るのが正しいのかも知れないけど

(……夢子ちゃんの怒り、何時冷めるかしら?)

 なんせ、夢子ちゃんが居ないスキに仕事を無視して

 勝手に作った三つ目の秘密通路から幻想郷に逃げてきたのだ

 ……今帰ったら痛打からへそで投げるバッグドロップコンボからの

 ボディ追撃式大激怒岩盤割でパンデモニウムの屋上から地面に叩き落とされちゃう

 想像だけで思わず冷や汗が背中を流れる

「……り、霖之助さんを膝枕しないといけないから此処で待機しないと」

 それをごまかすようなものがないかと辺を見渡す

(机とテーブルと後は……訳の分からない……ガラクタかな?)

 何時もなら霖之助さんが色々と話をしてくれるのだけど

(その霖之助さんも今は私の膝の上で眠っているから)  

「あっ、そうだ」

 良い考えが浮かんだので思わず胸の前で両手を軽くパンと合わせると

 笑顔で私の膝の上で寝ている霖之助さんに手を伸ばす   

「うふふっ……寝ている霖之助さんが悪いんですよ~」

 少しだけ邪悪な笑みを浮かべた私は早速考えを実行に移した

 ほんの少しだけ伸ばした手を熟睡している霖之助さんの頭に伸ばすと 

「えいっ」

 霖之助が付けっぱなしにしていた眼鏡をそっと外して、近くに置いた

 そして、その上で改めて手を霖之助さんの頭に手を伸ばして

(さわさわ)

「あっ、結構サラサラですね」

 むっふっふ♪何時もなら身長差とタイミングの関係で中々出来ない

 霖之助さんの頭を撫で撫でしてみました

(撫で撫で)

 でも、やっぱり女の子達とは少しだけ毛触りが違うみたい

 なんと言うか、ちょっとだけゴワゴワ感もある

 これも、手入れしたらもっと手触りよくなると思うんだけどなぁ

(うーん、勝手に三つ編みしたら霖之助さんも怒るかな)

 少しの優越感に浸りつつ暫くの間霖之助さんの顔を撫でていたら

 ふと、霖之助さんの顔に少しだけザラザラする感触を捉えた

 なんだろうと思って良く観察してみると

「……顎髭?」
  
 顎の下に微かに髭が出ていました

(霖之助さんにも顎髭が出ている事があったんだ)

 そっと、手を伸ばして私はザラザラとした感触を楽しむ

(そう言えば、三日間程徹夜してたって言ってましたっけ)

 珍しい物を発見出来た事にすっかり忘れていた

 魔法使いとしての知識欲がチョットだけ出てきた

 周りに居る皆は自分の娘ばかりの上、男性も居ない

 その上、霖之助さん自身もなかなか触らせてくれないと思うので

 今、自分はとても貴重な経験をしているんだなと思う

(よく見たら、霖之助さんの寝顔も貴重ですよね)

 こんなに無防備な霖之助さんの姿を見る事が出来るのは

 もしかしたら、自分の事を信頼してくれているのかな?

「……えへへっ♪」 
 
 それだけで意味も無く嬉しくなるのだから、私も安上がりなのかもしれませんね

(あっ、そう言えば今ならあれも……)

 もう少しだけと形が良い霖之助さんの顎を撫でていたら 

 ある大胆な考えが頭の中に浮かぶ

(……今なら霖之助さんも寝てるし)

 うん、頬っぺたをつついても全く起きる気配が有りません

(だ、誰も見てないよね?)

 夜近い今の時間に誰かがやって来る可能性は全くない

(い、今を逃したらもう二度と出来ないかもしれない)

 そして、何重もの偶然が重なった
 
 今の状況だからこそある事が出来る

「……よ、よーし」

 覚悟を決めると、霖之助さんの頭を両手でそっと持ち上げる

 そして、ある行動に移す為に少しだけ身体を後ろに引き、顔を前に倒す

(あっ、思っているよりも霖之助さんってまつ毛が長いんだ)

 その為、さっきまでそこそこ近かった顔が更に近くなる 

 自分の頬が紅くなっているのが分かるけど

 これからするのは、もっと頬が紅くなる

「り、霖之助さん?」

 念の為、真近で目を瞑っている霖之助さんに小さく声をかける

「寝てますよね?」

 その言葉に返ってくるのは、安らかな寝息だと言う事と

 自分自身の胸の鼓動と言う事を確認してから

「し、失礼しますね」

 小さく謝って、眠っている霖之助さんの顔に私は目を瞑ってそっと近付け

 私の顔の一部が霖之助さんの顔に少しだけ触れた 





(ぞりっ!)





「やっぱり痛いんですね、男性の髭って」

 うん、恥ずかしいけど良い経験になった

(もう、次は無いかも知れないしね)

 でも、もし次があるとしたら……起きている霖之助さんから……

(な、何考えてるんだろう私は)

 うーっ、変なこと考えたから余計に恥ずかしくなってきた



「……うーん」

「わひゃっ!?」

 そんな時に、寝ていた霖之助さんが動いたものだから

 思わず変な声が出てしまった

 慌てて、私が霖之助さんの頭を膝の上に戻すために

 両手で顔を挟んで戻した時だった

 霖之助さんの手が軽く私の手を添えられたのは

(も、もしかして起きていた!?)

 多分顔中真っ赤になっていて、頭の中がパニックになっている私は

 そのまま、動くこともできずに霖之助さんに添えられた手を見つめる
 
 時間にして数十秒の間、なんの動きも無いままの状態が続き

 私が霖之助さんに起きているのかを確かめようとした時

『……』

 ポツリと霖之助さんが呟いた
 
 それは多分、誰にも聞こえない程の物だろうし

 霖之助さんが起きていたら絶対に言わないような言葉

(でも、私には聞こえた)

 その呟きに、私は落ち着きを取り戻すと

 寝ている霖之助さんに優しく呟きかえした

「……此処に居ますよ」

 そして、添えられている方の手をそっと握り

 もう片方の手で先程よりも優しく、霖之助さんの頭を撫で始めた
 
 霖之助さんが呟いた言葉はたったの一言

 大丈夫、その一言で呼ばれる事には慣れているし

 私は十分代わりが出来ると思う

 霖之助さんの呟きをもう一度思い出し私は優しく呟いた

「此処に居ますからね?」




 本物ではないですけれど『お母さん』は此処に居ますからね?

  


 うん、今日はこの言葉だけでも此処に来た意味があった

 そんな事を思いながら

(なんだか、私も眠く……)

 私の意識も少しずつなくなっていく、そんな香霖堂での珍しい一日でした 





     ・・・





 外が明るくなる少し前、鳥達が無く声に目を覚ますと御店の中であった

 久しぶりに魔理沙のミニ八卦炉を全力で修理し終えて

 服についた赤黒いオイルや金属の破片の事等を無視して倒れた事は覚えている

(ああ、そう言えば)

 眠る直前に毎週のように遊びに来る人物がやって来た事を思い出した

(もう帰ってしまったかな)

 流石に目の前で眠ると言う失礼な事をしたことに少しだけ罪悪感を感じた

(そう言えば、僕が寝る前に彼女は確か……)

 そこまで思い出してからふと、自分がなにやら柔らかい物の上で寝ている事に気がついて

「!?」

 意識が一気に覚醒した

 目を見開き、ぼんやりとしていた目を見開くと

「……本当に悪いことをしてしまったな」

 窮屈そうな体制でありながら、静かに寝ている神綺の顔があった

(さて、このままだと彼女の負担が大きい)

 急いで起き上がろうとした時、自分の手が軽く握られている事に気がつく

 暫くの間、その手を離そうかどうかを考えてから

「やれやれ」

 手を繋いだまま、なんとか起き上がり

 神綺をそっとお姫様抱っこで持ち上げる

「こんな所で寝たら風をひいてしまうよ」

 そのまま、静かにベッドまで運ぶと

 そっとベッドの上に神綺を下ろして布団をかぶせた

 なにやら幸せそうに寝ている神綺を横目にして

 霖之助が手を繋いだまま小さく呟いた

「……膝枕のお礼は何が良いかな?」
 
 今は返ってくる事は無いだろうが

 起きたら、感謝の言葉と何かをしないとなと考え始める

 そんな時、神綺の口から寝言が聞こえた

「ん……抱っこ」

 思わず起きているのかと霖之助が神綺の方に振り向くが
 
 相変わらず、ただ幸せそうに寝ているのを見て口元をニヤつかせて呟いた

「残念だったね、それは先程してしまったよ」

 その言葉と共に、寝ている神綺の頭に手を置いて撫で始めた

(まあ、もし君が起きて来たときに同じことを言ったら、また考える事にするよ)

 そんな事を考えている間に、再び眠気が襲ってきた事に気がつかなかった 











 そのまま、昼間まで二人とも寝てしまうのはまた別の御話 
 やあどうも、しぶとく生きていた名も無き脇役だよ?

 とりあえず、このコーヒーはプレゼントだから安心して飲んで欲しい

 ……うん、性懲りも無くまた神綺と霖之助の話なんだ

 しかも、もはや二人とも『誰?』と言わんばかりの

 半オリキャラになってしまっている

 ……うん、怒るのは仕方がないと思うしごめんなさいって先に謝っておくよ

 もっと、面白い話も一杯あるだろうしね?

 でも、この作品を見て『神綺様可愛い』とか

 『霖之助可愛い』とか思ってくれたなら

 多分、この作品に少しは意味があると思いたいんだ……
 
 さて、次の作品の案とかを話そうか?




 はい、とりあえず生きてます報告です

 大ナマズ様の話とかも考えてはいるんですけど停滞気味ですし

 糖分の不足も激しく、気がついたら仕事の休みの半日使って

 禁じ手のはずの神綺様と霖之助の話を書いてしまった

 しかも、髭ぞりと言う名の二番煎じを使って

 あれは本来、魔理沙にのみ使用をするはずの代物だったのに……

 罰として今から魔理沙に八卦炉の角で頭を叩かれに行きます

 よけれないように、次の作品を書く為のデータが入ったパソコンの前で

 三戦立(サンチンだち)をしながら……





 ……やっぱ無理!怖いきゃあ!『ガシャン』(パソコンが壊れた音)
名も無き脇役
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
こいつはあめーっ!砂糖と練乳以上の甘さが(ry
脇役さん…俺は隠居話も見たいです。
2.名前が無い程度の能力削除
脇役さん、もっとだ……もっと砂糖を下さい!!
あなたの作品でなら糖尿病になってもかまわない!!
3.名前が無い程度の能力削除
久し振りの脇役さんだーい。
うーん、隠居もいいね。だけど、ここはあえて霖×魅魔(恋人の祟り神)後日談……とかでも!
4.削除
ゎーぃ、脇役様の新作だー。2828がとまらねぇや!
隠居お嬢様の続きも楽しみに待ち続けます!
5.名前が無い程度の能力削除
やった~脇役さんの新作だ~
この神綺×香霖もいいけど隠居のさとりんも見たいな~