Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

橋姫と母親

2011/09/10 21:11:41
最終更新
サイズ
10.45KB
ページ数
1

分類タグ


今日も地底は宴会騒ぎ。
飲めや食えやと言葉が飛び交う。
そんな中水橋パルスィは、極ゆっくりと酒を飲んでいた。
周りを見れば船幽霊と土蜘蛛がお互いの相方──正体不明と釣瓶落とし──について
熱く語っている。(因みにその相方二名はそれぞれの膝の上で安らかに寝ている)

別の所見れば、普段はお堅いネズミの部下が珍しく酔ったのか
毘沙門天代理に際限なく甘えており、それに対し代理の方といえば
普段から甘えられるのに慣れていないのか(部下限定で)ドキドキしながら
必死に受け入れようと奮闘姿が見られた。

再び別の箇所を見れば入道使いが自らの相方を赤い一本角の鬼と腕相撲をさせている。
その周りでは鴉や猫が応援してたり、悟り妖怪の姉妹が寄り添っているのが見える。

一通り見回したところでパルスィはふと、自分の隣を見た。
そこには楽しく騒いでる自分の仲間を見守る女性──聖 白蓮──の姿があった。

そう、今現在は命蓮寺の面々と宴会をしているのであった。

「はぁ…」

なるべく気付かれずにパルスィは溜息を零してから、何故こうなったかを思い出し始めた。


──ほんの数日というか昨日──


いつもの様に橋の上で仕事をしていたパルスィ平和が続いていた…のだが、
随分と久しぶりに感じる妖気を感じた。
地底の入り口の方に目を向けてみると土蜘蛛が案内したのか
三人の客が此方に向かって来ていた。

そしてその内の一人が私を見つけるや否や全力で走り出し

「ひっさしぶりー!!」

と言いながら飛び付いてきた。

別の話になるが、パルスィには飛び付いてきた輩(自らに危害を加える者)に対する
防衛術なるものを心得ている。
(主に心得を使われるのは、一本角の鬼や悟り妖怪の妹だが)
そして、今現在飛び付いてきてる奴にもその心得を実行させてもらう事にした。

右膝を地に着け左脚は立てた体勢にし
両腕は相手を受け止められるように前に突き出す。
そのまま飛び付いてきた相手をギリギリまで引き付ける。
ギリギリまで引き付けたら、相手の両横腹を両手で掴む。
そのまま、相手の勢いを殺さずに、流れるように自分は倒れこんでいく。
倒れこんだら相手の臍の辺りに右足を曲げつつ押し付け、相手が上自らが下、という状況にし
その状況になった事を瞬時に判断する。
そのまま、押さえ込んだバネが元に戻るかの如く、右足を思いっきり伸ばし後方に投げ飛ばす!

…所謂「巴投げ」であった。

そのまま投げ飛ばされた奴は

「うわぁぁぁぁ~!?」

という声の後に、

"ドンガラガッシャーン!!"

といった派手な音を地底に響かせた。

「ったく…あの馬鹿は…」

投げ終えて一息ついてパルスィが呟くと

「やっ!パルスィ!相変わらず元気そうね!」
「これはまた…派手にやったわね…」

と、3人の客の内の2人がそれぞれの表情をしつつ声を掛けてきた。

「えぇ、"一輪"に"ぬえ"久しぶり」

投げ飛ばした奴など気にせず、2人と言葉を交わした。

パルスィよりか背は高く、青い頭巾を被っている女性──雲居 一輪──と
その隣にいる、パルスィよりは背が低く、背中に1対の奇妙な羽を持つ少女──封獣 ぬえ──

やって来た客2人と久しぶりの会話を楽しもうかと思ったが、

「いや~相変わらずパルスィの投げは一流だね!」
「じゃあ、もう一回くらい投げられとく?村紗?」
「いやいや!それは勘弁!」

パルスィに投げられ派手な音を出したのにもかかわらず、
ピンピンとしている船乗りの格好をした少女──村紗 水蜜──によって会話は断念された。
流石に村紗も、二度も投げられるのは嫌らしい。まぁ、当たり前なのだろうが。

「で?以前此処に居たアンタ達が何の用?」

今やって来た3人の客は元は地底に居た時期もあり、パルスィとも関わりはあった。
しかし地底の異変の際に地上へと行ってしまった者が何名かいたのだが、
この3人はその中の内にはいっていたのだ。
3人が居なくなったと聞いた時には、少しだけ寂しいと感じたものであった。

「いや~実はね?」
「何よ?ハッキリ言いなさいな」
「地底との交流の為に、命蓮寺と宴会してくれないかな~って…」
「別にいいんじゃない?」
「…へ?」

何故か頼み事をしてきた村紗が呆然としていた。

「ほらね~アタシの言った通りじゃん!」
「全く…村紗、アンタは考え込みすぎよ?」
「何?話が全く見えないんだけど…」
「いやさ、まだパルスィが人付き合いが苦手だと思っててさ…」
「あ~…」

まだ彼女ら3人が地底に居た頃、パルスィは人と関わる事をしなかった。それも極端にだ。
当時本人に聞けば"面倒"と一言言ったきりなのであった。
今となっては本人も語らず、回りも聞かずといった状況なので、詳細は闇の中であった。
しかし、そんなパルスィの気持ち何ぞ知らんと言わんばかりに関わっていた者は居た。
釣瓶おとしや土蜘蛛、悟りの姉妹とそのペットや一本角の鬼、そして彼女ら3人だった。

だが、途中で関われなくなってしまった彼女ら3人は、今現在パルスィの状況を知る術が無かったのだ。
今のパルスィを知らない彼女達が驚いたのは(驚いたのは実質村紗だけだが)人と関わってしまう宴会の提案を
パルスィが承諾した事であった。

特に村紗はパルスィがまだ関わりあいを面倒だと思っていると考え込んでしまった、
それが呆然とした理由であった。

「別に今は、昔ほどとは考えてないだけよ」
「本当?よかった~」

安堵する村紗、ケラケラと笑うぬえ、そんな二人を見守る一輪
"あぁ…この3人は変わってないな…"
しみじみとパルスィは思った。

「でも、宴会ともなると準備が必要ね…」
「あ、うん。そうだね」

そう言うって左右をチラリと見てから

「こいし!勇儀!話は聞いてたでしょ?居るなら出てきなさい!」
「「「へ?」」」

パルスィの言葉に疑問を抱いた3人だったが、その疑問は直ぐに解消された。

「な、何でバレてるんだ…」
「あ、あれ?ちゃんと無意識の状態にしたのに…」

先ほど見た左右の位置からスッーっと、勇儀とこいしが出てきた。

「何となく気配がしたのよね」
「最近のパルスィの成長には舌を巻かざるを得ないな」
「何となくで私の能力破られた…」

関心する勇儀と、項垂れるこいし。

「勇儀、こいし」
「なんだ?」
「な~に?」

パルスィが2人の名前を呼ぶと、

「宴会の会場は?」
「おう!ここ最近はあまり無かったから綺麗で広い場所は結構あるぞ!」
「こいし、地霊殿の様子は?」
「お姉ちゃんの仕事は今日中に終わる予定だし、お空もお燐も仕事に忙しいって感じではないよ!」
「そう…」

まるで聞かれる事が予め分かっていたかの如く、スラスラと言いあげる2人。
そして、その応答を聞いたパルスィは、

「じゃあ、勇儀は宴会の会場とお酒の確保」
「あいよっ!」
「こいしは、地霊殿宴会当日のつまみの材料を確保して。あ、予算はさとりとちゃんと話し合いしなさいよ?」
「らじゃー!」

右手で親指をグッと立てる勇儀と、左手で敬礼のポーズをするこいし。

「あ、そういえば何時やるの?宴会って?」
「あ、えっと、別に何時でも」

村紗がパルスィに聞かれたので答えると

「じゃあ、明日ね」
「へ!?あ、明日って…」
「いいじゃん村紗!明日!」
「ちょ、ぬえ…!」
「そうよ、姐さんも大丈夫っていいそうなものだし」
「一輪まで~」
「で?どうするの?」
「う~…じゃ、じゃあ!明日で!」

村紗が言い切ると、

「それじゃ、勇儀!こいし!頼んだわよ」
「「了解!」」

パルスィが2人を準備に向かわせた。

「さて、日取りは決まったし、当日の案内はヤマメに任せとくとしましょうかね」
「…パルスィ、変わったね」
「そうかしら?」
「うん…!」
「そう…」

その後3人と一通り話した後、

「それじゃ、ちゃんと伝えてね」
「うん!分かった!」
「それにしても…」

パルスィは疑問に思った。

「地上と交流を持とうなんて珍しいわね」
「あ、私がパルスィと地底の事を話したからなんだよ」

疑問には村紗が答えてくれたが、再び疑問が

「へぇ…話した、って誰に?」
「うん、あのね…」



──そして今──



(随分な奴かと思ったけど…)

隣で宴会の様子を見守る聖の姿を見て、

(杞憂だったかしらね…)

少し安堵していた。

パルスィとしては、もっとお堅いヤツとばかり思っていたが、そんな事は無かった。
ホワホワとした雰囲気をしていながらも、その内にには何か信念がありそう…
というのが、宴会を経ての聖白蓮に対するパルスィなりの感想であった。

「あの…水橋さん」
「下の名前でいいわよ…」
「そうですか…では、パルスィさん」
「さんもいいわよ、堅苦しいし」
「それでは…パルスィちゃん」
「なんで!?」
「あれ、マズかったですか?」
「いや、マズいも何も…さっきの流れだったら普通に呼び捨てでしょ…」
「あ、そうでしたか…すいません、パルスィ」
「…別に気にしちゃいないわよ、白蓮」

感想には言葉が足りなかった…。
あえて付け足すのであれば、少し抜けている、といった所か…。
付け足しに満足し、隣を見ると、
聖はボーッとしていた。しかも若干頬を染めつつ(染まった頬にパルスィは気付いてはいないが)

「どうしたの?」
「い、いえ、あまり下の名前を呼ばれ慣れていないもので…」

確かに、寺の面々は「聖」としか呼ばなかったな、とか思い出してみたりする。

「そ、それに何故いきなり下の名前で呼んだのですか?」
「別に…一方的に呼ばせてるのもなんかな…って思っただけよ」
「べ、別に私は気になんかいませんよ?」
「アンタは良くても私が嫌なの」

とりあえずは押し切ってしまおう…実際はよそよそしいのは嫌っていうだけだし
そんな事を考えてるパルスィの横で白蓮は少し俯きながら

「パルスィは優しいですね…彼女達の言うとおりです」

と、言ってきた。

彼女達というのは十中八九、宴会の誘いをしてきた村紗等の事であろう
にしても、自身が優しいなんてあまり言われた事が無かったので、パルスィは少し驚いた。

「彼女達って…」
「えぇ、村紗達…というか村紗が、ですね」
「ふ~ん…アイツがそんな事を…ねぇ…」
「えぇ、『パルスィは私を妹みたいに可愛がってくれてたんだよ!』と…」
「まぁ、妹分みたいな立ち位置だった事は事実かしらね」
「…村紗と遊んで下さってくれて、ありがとうございます」
「礼を言われるような事じゃないわよ…」
「ですが…」
「…まるで母親みたいね」
「そうですか?」
「大きな子供が沢山ね?」
「ふふっ…そうですね…」

互いに気を許しあって談笑をしていた。

「でも…私は近所のお姉さんみたいな感じかしらね?」
「え?」
「別にアンタ等の仲間って訳でもないし」
「確かにそうですが…私はパルスィの事も我が子の様に思えますよ?」
「ず、随分な事を言ってくれるわね…」
「えぇ、ですから甘えてもいいんですよ?」
「甘えても…ねぇ…」
「えぇ」

そう言って白蓮はパルスィを抱き締めるかの様に両腕を広げた。
パルスィは広げた腕に抱き締めてもら…おうとして逆に白蓮を自分が抱き締めた。

「へ?」
「悪いけど、甘えてもらう事しか知らない奴には甘えれないわね」
「な、何を…」
「別に甘えさせる事が悪いって訳でもないわ」
「な、なら…」
「でも、母親であり続けようとしてるアンタからは、無理が見えるのよね」
「な…」

勇儀やさとりの様な、何かの上に立つ奴の姿を見ていたパルスィにとって
白蓮の姿は無茶している様にしか見えなかった。

上記の2人だって弱音を吐いたりする
しかし、白蓮は弱音を吐こうとせずに溜め込んでいる
溜め込みすぎて負担が掛かっている、パルスィにはそう見えた。

「で、でも…私は…」
「上に立つ奴が甘えちゃいけないなんて誰が決めたのかしら?」
「え…?」
「知り合いのアンタみたいな奴がいるけど…アンタとは全然違うわね」
「…」
「そいつだって弱音をちゃんと吐いたり、他の奴に甘えたりしてる」
「…」

白蓮はただただ黙って抱き締められている

「別に弱音を吐いたりしても、他の奴に甘えたりしてもいいのよ」
「…」
「誰も、文句なんて言わない…私やアンタの仲間がそんな事、言わせやしない」

言い終わると、白蓮のほうがパルスィに腕を絡ませてきた。
そして、耳を赤く染めつつ

「で、では…もう少し、少しの間だけ…こうしていて下さい…」
「えぇ、構わないわよ」

そういってパルスィは抱き締める力を少し強めた。
それに呼応するかかの様に、白蓮の方も抱き締める力を強めた。

騒がしい宴会
そんな騒ぎの一箇所では、「娘」に「母」が甘えるという光景がみられた。
それはまるで"普段頑張ってる母親を癒してあげている娘"といった微笑ましい光景であった。
・ウチの母親も労ってあげたいね
どうも7度目まして、ポルタです

・聖さんは個人的にはこんなイメージ
お姉さんっつうよりはお母さんっぽい様な感じ
あと、あんまし「白蓮さん」って呼ばれてなさそう。
星蓮船やってないから分からないけど(ぉぃ

・次は最後のリクエスト、七曜の魔女の彼女です
また、シチュを考えるのに苦労しそうですが…最後までお付き合いをば!

・あと、リクエスト終わったら書いて欲しいものとかありますかね?
今ん所の候補(ストック)は
*地底のドタバタ
*学園物(霊・魔・早・咲を中心に)
*永夜パルルート
ですかね…他にも「コレやって!」とかあったらコメントにでも…
候補にはいれます!

・指摘、意見、、感想等大歓迎です!
長くなりましたが、次回の更新までバイバイ(@ω@)ノシ

追記:9/12にてコメント返信
ポルタ
http://twitter.com/#!/10ga
コメント



1.鳥丸削除
ほんとに作者様のパルスィのキャパシティの高さには驚かされるばかり。
聖まで受け入れられるとなれば「もう全部あいつひとりでいいんじゃないかな」状態じゃありませんか……
かと思えば、まさかの「面倒」からの変化があったとは。
個人的にはその変化に興味津々なわけです。
ハイ、是非。
2.名前が無い程度の能力削除
相変わらずの天然ジゴロっぷり!見事です
まだ成長するとは…恐ろしいな
永夜パルルート地底訪問編とかみたいです
あとムラパルぬえパルあたりも気になったり(ごにょごにょ
3.奇声を発する程度の能力削除
お姉さんパルスィはやっぱり良いわ
読んでて包み込むような感じの暖かさがある
4.名前が無い程度の能力削除
やだ何このパルスィ素敵!
まさか、聖母と名高い白蓮姐さんを包み込んでしまうとは、とんでもない存在ですね……!
5.フェッサー削除
ィィィやったぁぁぁぁぁ聖パルだぁぁぁぁ!
ありがとぅ。ありがとう!!
素直にパルスィの言う事聞いちゃう聖がカワイイ!
これがハートフルというやつなのか…!?

しかし、パルスィの締めのセリフがいちいちカッコ良すぎるんですけど……鼻血でちゃうよ!
6.ポルタ削除
読み返して誤字が酷かったので、
修正がてらコメント返信!

鳥丸さん:過去編…書けるかなぁ…

2番さん:星蓮船ルートも書いてみたいですね!

奇声さん:あばばば…ありがたきお言葉!

4番さん:パルパルの包容力は聖母すら凌駕するのです!

フェッサーさん:鼻血が出るほどですか… っティッシュ

コメントありがとうございます!
7.まっちゃねこ削除
個人的には聖パルおかわり! と叫びたいですね(チラッ
8.名前が無い程度の能力削除
こんなカプも素晴らしい
9.名前が無い程度の能力削除
急いで命蓮と橋姫の時代検索したら、橋姫はぎり905年の和歌にでてきて、命蓮は930年くらいだったけどパルスィのモデルの橋姫がでてきたのは鎌倉時代からだった。むつかしいねぇこれ。