カニバリズム

カニバリズムが、人の愛情表現の中で最高のものらしい。
何でも、愛するものの存在を自分の中に感じることが出来るからだという。
その発想は、そら恐ろしいものがあるが、なるほど、納得できないことではない。
いつまでもそばにいたい、片時も離れたくないと願っても、いつの日か別れのときが来る。
出会いがあるなら、別れがあるのは必然だ。
ならばそうなる前に同じ存在になってしまおう、そうすれば別れのときですら一緒にいられる。
このことをお嬢様から初めて聞いたときはそんなまさかと返した。
いくら相手のことを深く愛していたからといって、
愛するものの安らかな温もりを、
愛するものの清らかな声を、
愛するものの確かな存在を感じられなくなることに何の後悔も持たないなんて。
それは愛などではない、自己満足に過ぎない、と。
そのときのお嬢様はなぜだろう、すこしだけ悲しそうな、それでいて安心した顔をしていらっしゃった。
『あなたはそれでいい、それでいいのよ…。』
あの言葉の意味はまだ分からない。
分からない。
わからない。
ワカラナイ。
お嬢様、あの時お嬢様は私に何を伝えようとしていたのですか…？
今はもう、知るすべのないあの言葉の真意。
居なくなる直前に仰った、あの言葉の真意。



カニバリズム。
その言葉には、体を食べる以外にも、心を食べるという意味もあるのだろうか。
だとしたら、私はお嬢様に心を食べられていたのだろう。
お嬢様なしでは、生きられない。
お嬢様なしでは、何も考えられない…。
まだこの身を食べられたほうがよかった。
この身を食べられていたら、居なくなるときも一緒だったのに。
なまじ体が残っているから、頭が働くから、切なくなる。
食べられた心の変わりにいたあなた様がいなくなったから、よけいに。

なるほど、カニバリズム。
それは確かに最高の愛情表現だった。

ジェネでははじめまして、miyamoです
学校で偶然知った知識になぜだか心が締め付けられたのでこの題材で書いてみました。
なにぶんこんなテーマで書いたことがないので意味不明かもしれませんが、暇つぶしにでもどうぞ