彼女は浮いていた
手を動かすことなく、足を動かすことなく、ただ浮いていた。
別に死んでいるわけではない、意識ははっきりとしている。
周りには冷たい水、目には幻想のような夜空と大きな月
時折小さな光が飛んでいる、蛍の一種と思われるそれは夜を彩る役割を果たす。
・・・・・・浮いている彼女は何も身に着けず、ただ浮いていた。
静かに目を閉じる、
沈めば命の源である水の鼓動、浮けば涼しげな風と虫の音が聞える
視界を絶つ事で幻想が目蓋に映画のワンシーンのように映し出される。
・・・・・・紅い髪の彼女は静かに身体を翻し、陸まで泳いでいく。
腕を上げ、足を動かす度に跳ね上がる水しぶきと見事なまでに整った身体が
月明かりに照らされ、官能的でもありつつ何処か清楚な雰囲気を備えているようにも思える。
「・・・・・・ふぅ」
紅い髪の彼女が陸へ上がる
少し離れた場所にある木に掛けてある自らの衣類の元へ歩く。
そこにいる一人の女性の元へ・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・で、少しは涼しくなったかしら?」
呆れた口調で彼女は尋ねる、目の前にいる紅い髪の彼女『紅 美鈴』は身体を吹き上げ衣類を纏っている最中だった。
「はい、思った以上に冷たかったので涼しかったですよ咲夜さん」
「だから・・・って、何も全裸で泳ぐ事ないでしょ」
「でもどうせ咲夜さんしかいないですし、わざわざ水着を着るのも・・・・・・と思ったもので」
その言葉を聞いて軽くため息をつく彼女『十六夜 咲夜』は美鈴の顔に指をビッと指し
「何処かの天狗に撮られたら貴女幻想郷で大恥晒す事になるわよ」
・・・・・・と強く言い放った。
「あ~・・・そうですね、すいません」
「ま、何も無かったからいいけど・・・・・・どうして突然『紅魔湖で泳ぎたい』とか言い出したの?」
事の始まりはその日の仕事が終わり、夕食などが終わって咲夜の部屋で話をしていた時、
突如美鈴が『紅魔湖で泳ぎませんか?』と言い出した事だった。
咲夜はその真意も理由も聞かされず連れて来られ、美鈴がいきなり服を脱ぎ出した時には驚き、
そのまま湖に飛び込んで泳いでいた頃には呆れていた・・・という。
「最近蒸し暑い日々が続いているじゃないですか、
だから思い切って泳いでみれば気持ちいいかなぁ・・・と思ったんですが」
「・・・そうね、最近は蒸し暑くなっているからね」
「それに何も身に纏わない、素のままで身を委ねる事でこの世界と一体になる・・・というか、
幻想郷の息吹みたいなものが感じる・・・というのかな、なんか不思議な感じもしましたし」
「私には無理あるみたいね、それ。 さすがに人がいないからって全裸にはなれないもの」
「だったら今度の休みに水着を買いに行きましょうよ」
一体いつから私は紅魔湖で泳ぐことになったのか・・・と思いつつ咲夜は頭を傾け軽くため息ひとつ、
「・・・・・・仕方ないわね、でも水着なんて何処にも無いと思うのだけど」
「無いなら作りましょうよ! 私は紅い水着、咲夜さんは白の少しラインがきわど」
「私のは普通でいいわよ、美鈴?」
満面の笑みを浮かべ美鈴の言葉を遮った彼女の表情の奥には・・・・・・・・・
「・・・は、はい・・・そのように致しますのでナイフだけはご勘弁を」
・・・・・・・・・恐怖に似た何かが隠されているようだった。
「でも咲夜さん、綺麗な身体つきだからそういう水着ってすごい似合うと思うのだけどなぁ・・・」
と言った頃には美鈴の額に銀色の何かが刺さっていたのは言うまでも無い話。
・・・・・・・・・・・・・・・
紅魔湖
夏の夜に紅い髪の人魚が泳いでいるという
もしかしたら・・・・・・
銀色の髪の人魚が泳ぐ時が来るかもしれない。
紅魔湖
そこは・・・・・・人々が忘れた命と安らぎの源がある場所。
END
手を動かすことなく、足を動かすことなく、ただ浮いていた。
別に死んでいるわけではない、意識ははっきりとしている。
周りには冷たい水、目には幻想のような夜空と大きな月
時折小さな光が飛んでいる、蛍の一種と思われるそれは夜を彩る役割を果たす。
・・・・・・浮いている彼女は何も身に着けず、ただ浮いていた。
静かに目を閉じる、
沈めば命の源である水の鼓動、浮けば涼しげな風と虫の音が聞える
視界を絶つ事で幻想が目蓋に映画のワンシーンのように映し出される。
・・・・・・紅い髪の彼女は静かに身体を翻し、陸まで泳いでいく。
腕を上げ、足を動かす度に跳ね上がる水しぶきと見事なまでに整った身体が
月明かりに照らされ、官能的でもありつつ何処か清楚な雰囲気を備えているようにも思える。
「・・・・・・ふぅ」
紅い髪の彼女が陸へ上がる
少し離れた場所にある木に掛けてある自らの衣類の元へ歩く。
そこにいる一人の女性の元へ・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・で、少しは涼しくなったかしら?」
呆れた口調で彼女は尋ねる、目の前にいる紅い髪の彼女『紅 美鈴』は身体を吹き上げ衣類を纏っている最中だった。
「はい、思った以上に冷たかったので涼しかったですよ咲夜さん」
「だから・・・って、何も全裸で泳ぐ事ないでしょ」
「でもどうせ咲夜さんしかいないですし、わざわざ水着を着るのも・・・・・・と思ったもので」
その言葉を聞いて軽くため息をつく彼女『十六夜 咲夜』は美鈴の顔に指をビッと指し
「何処かの天狗に撮られたら貴女幻想郷で大恥晒す事になるわよ」
・・・・・・と強く言い放った。
「あ~・・・そうですね、すいません」
「ま、何も無かったからいいけど・・・・・・どうして突然『紅魔湖で泳ぎたい』とか言い出したの?」
事の始まりはその日の仕事が終わり、夕食などが終わって咲夜の部屋で話をしていた時、
突如美鈴が『紅魔湖で泳ぎませんか?』と言い出した事だった。
咲夜はその真意も理由も聞かされず連れて来られ、美鈴がいきなり服を脱ぎ出した時には驚き、
そのまま湖に飛び込んで泳いでいた頃には呆れていた・・・という。
「最近蒸し暑い日々が続いているじゃないですか、
だから思い切って泳いでみれば気持ちいいかなぁ・・・と思ったんですが」
「・・・そうね、最近は蒸し暑くなっているからね」
「それに何も身に纏わない、素のままで身を委ねる事でこの世界と一体になる・・・というか、
幻想郷の息吹みたいなものが感じる・・・というのかな、なんか不思議な感じもしましたし」
「私には無理あるみたいね、それ。 さすがに人がいないからって全裸にはなれないもの」
「だったら今度の休みに水着を買いに行きましょうよ」
一体いつから私は紅魔湖で泳ぐことになったのか・・・と思いつつ咲夜は頭を傾け軽くため息ひとつ、
「・・・・・・仕方ないわね、でも水着なんて何処にも無いと思うのだけど」
「無いなら作りましょうよ! 私は紅い水着、咲夜さんは白の少しラインがきわど」
「私のは普通でいいわよ、美鈴?」
満面の笑みを浮かべ美鈴の言葉を遮った彼女の表情の奥には・・・・・・・・・
「・・・は、はい・・・そのように致しますのでナイフだけはご勘弁を」
・・・・・・・・・恐怖に似た何かが隠されているようだった。
「でも咲夜さん、綺麗な身体つきだからそういう水着ってすごい似合うと思うのだけどなぁ・・・」
と言った頃には美鈴の額に銀色の何かが刺さっていたのは言うまでも無い話。
・・・・・・・・・・・・・・・
紅魔湖
夏の夜に紅い髪の人魚が泳いでいるという
もしかしたら・・・・・・
銀色の髪の人魚が泳ぐ時が来るかもしれない。
紅魔湖
そこは・・・・・・人々が忘れた命と安らぎの源がある場所。
END