ばく

ある日神社に獏が来て、獏はそのまま神社に居ついてしまった。

神社の巫女はなんとかならないかと考えたが、それよりも商売に使ったほうがよかろうではなかろうかと思い、

悪夢払い承りますという看板を掲げて獏に仕事をさせることにした。

評判は思いのほか上々で、目に隈をつくった人がわんさかと来ては

にこやかな顔で

お礼とお金を置いて帰って行った。

その後、巫女が死んでからも獏は神社に住んでいて、いつのまにやら神社は獏麗神社と呼ばれるようになっていた。


ﾊﾞｸﾊﾞｸﾊﾞｸﾊﾞｸ








おい、知っとるか？獏麗神社は本当は博麗神社というんだそうだ。

それは嘘じゃろう。だって獏がいるんだから、獏麗神社に決まっとるじゃないか。

いやいや、昔は獏は住んでいなかったらしいぞ。だから博麗神社が正しいんだそうだ。

別にどっちでもいいんじゃないか？

何を言うか。お前だって山田を前田って言われたら嫌じゃろうが。

そりゃ嫌じゃ。

そうじゃろう。

そうじゃなぁ。

だから、獏麗神社は本当は博麗神社と呼ぶべきなんじゃ。

そうか。

そうじゃ。

おーい、まてまて、俺はあの神社の名前は地縛霊神社なのだと聞いたぞ。

なんじゃ急に入ってきおって。

そうじゃそうじゃ、それになんじゃ、地縛霊神社なんて、ねぇみんぐせんす疑うわ。

いやいや、それが神社にいる獏は実は地縛霊で、それが神社に住んでいるから地縛霊神社と言うんだそうだぞ。

それなら確かに正しいのかもしれん。・・・とでも言うと思ったか馬鹿が。

馬鹿じゃ馬鹿じゃ。

なにおう、それならお前のいう博麗だとか獏麗だって馬鹿じゃ。地縛霊神社が正しいんだ。

馬鹿じゃ馬鹿じゃ。

ええい、このままでは埒が明かん。ここはあきゅってはどうじゃ？

それがいい。なにせ阿求先生は頭がいいからな。

それがよろしかろう。

ということで阿求先生に会うと、なにやらピーガシャピーガシャと音を立てて阿求先生が現れた。

「ピコピコ、ワタシワタシ。アＱダケド。イマアナタノメノマエニイルノ。ｹﾀｹﾀｹﾀ」

ガシャガシャ

いつものように体を揺らしながら桁桁と笑っている。

それはさておき、きぃぼおどに「神社の名前」とにゅうりょくしてみる

「ピコピコ、コチヤ。ｹﾀｹﾀｹﾀ」

ガシャガシャ


ふむ、どうやらコチ神社というのが正解だったらしいのぅ。

違うじゃろう。いまのはコチヤというのが正しいのではないか？

？だから、コチや。と言ったのじゃろ？

いやだから、コチヤだからコチヤって言ったんじゃろうが。

だから、コチって言っとるじゃないか。

お前ら何を言うてんねん。コチヤ神社っていうのは妖怪の山のところにある神社の名前やないか。

お前が何言うとんねん。阿求先生が嘘つくと思うとるんか。

そうは言うてないやんか。

言っとるやんか。

言うてない。

言うた。

それはともかく、もしも獏麗神社がコチヤ神社だったなら、それはえらいことなんじゃないか？

それはえらいことじゃ

えらいこっちゃ

えらいこっちゃ


おーい、大変だー


こっちやそれどころやないんじゃ。あとにせい。


そうはいくかい、なんと、獏冷神社の獏がいなくなってしまったらしいんだ。

なんじゃと？

それは本当か？

本当だ。

それじゃあ、獏麗神社が獏零神社になってしまったじゃないか。



えらいこっちゃ

えらいこっちゃ










なんのこっちゃ

獏はいつも夢を見ている。そうしないと人の悪夢を食べることができないから。だから、いつもぐうぐうすやすやと眠りながら夢をみている。だから獏には自分が今、起きているのか夢を見ているのか、それすらもわからない。
あ、また人が悪夢にうなされている。夢を見て悪夢を食べに行かなきゃ。ぐうぐうすやすや。
夢を見て悪夢を食べて。夢の中にいる人の悪夢を食べるためにまた夢を見て、それがずっと続いている。
だから、この世界は獏の夢なのかもしれないし、だれかの夢の世界なのかもしれない。ﾊﾞｸﾊﾞｸﾊﾞｸ
夢の中の夢の中で、もしかすると、消えたのは獏ではなくて夢の中の世界の一つが食べられただけなのかもしれない。

なんのこっちゃ。