Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

2010/11/13 15:16:55
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 ぽんぽん痛い。

 
 

 
 はっ、と気付く頃にはおおよそ遅い。そも体の変調はなり始めてから気付くもので、変化が始まるということはそのまま止まりようも無い。鍋を開けた時に臭う異臭に秋の恵みがふんだんに盛り込まれた鍋の足の速さを嘆くことは出来ても、かぐわしい匂いを放つ良くわからないきのこを胃に収めた後に腸の躍動が著しくなったところで嘆いては意味も無いところである。
 とはいえ、この度は友人のお裾分けに端を発するのではなくむしろ秋の実りを自ら収穫してきたので、常と違って麗しの唇を一文字に結び小さな鼻穴を懸命に震わせる姿に誰かさんへの呪詛は見えず。

「ははあ、いやいやそれが乙女の所業かね。息も絶え絶えじゃあないかねえ」

 けたけたと鬼は笑う。鬼なればこそ、と全く気にならぬとばかりに新たに皮をむきつつ酒を飲む幼鬼を睨もうとする巫女だが、やはり常よりの涼しげな眼差しはとんと見せずひたすらに精神を集中させんと目を閉じる。眦は、打ち震えている。
 最初はなんということも無かった。巫女も人である。ちょいと腹が冷えれば人間の腹は痛むもので、最近の寒さがよろしくなかったかと思い、ただ半纏を羽織れば良しと思っていたのである。それがどうであろうか。上体を半纏に、御足を炬燵に包んで境内の紅葉を亡霊もかくやとばかりに、秋の実りと出来立てひやひや今年の美酒を口に。同居する鬼の子と共にこれぞ風流と洒落込んでいたというのに。

「いやいや、それも秋の名物かね? 美味いものがあればついつい食いすぎるものだね。特に秋ともなれば浮かれても仕方が無いさね」

 くつくつと鬼は笑う。ひたすらひたすら食えども飲めども、杯を傾ける手は止まる所無く。皮を剥くことも種を取ることも面倒くさくなったのか、巫女の怨敵を皮ごとむしゃぶりつく豪快さである。
 しかし巫女は子鬼のからかいに睨みを利かすことも無い。歯をギリギリと軋ませて、秋だというのに炬燵の机にぽたぽたと海を作る。声無き声は絶叫となり咀嚼され、胃の中で荒れ狂うことばかり。辛うじて唸るものが鬼の耳には届いているが。

「ややっ、これは妙だね。酒をかっくらって青い顔なんて無粋極まりないじゃないかね。ねえ、ねえ?」

 ヒッヒッとついには鬼も腹を抱える。奇しくも巫女の真向かいにて同じように顔を伏せて震えているが、言わずもがな。鬼が炬燵の中の足を小突けば巫女が肩を一際震わせ、それが面白いのかえいやと盛大な掛け声を上げ、またまた震える巫女を見て鬼の腹は熱く燃える。

「ふ、ふっふ。ん、おうおう? いやどうだい霊夢、何か聞こえるじゃないか! いやいやあの妙蓮寺とかいう連中も乙なことをしてくれるねえ!」

 ごうん、と響く音は人里では閻魔の休憩を告げる音と評判である。人里で腕の良い職人が作ったとかで、評判どおり幻想郷で知らぬもの無しとの音色は腹の底まで響く音で。ごうんごうん。

「あそこの寺が聖徳なんとやらを奉ってるとは聞いたことが無いがね! いやしかし、鐘が鳴るなら食わねばならぬ。ひひひ、皮でも剥いてやろうかね。まだまだたんとあるからね」

 ごうんごうんと鳴る鐘と、厭らしい笑みの鬼畜。双方を耳に収める巫女は、しかし。

 
 ぴたりと止まって申し上げました。


 
「も、ダメ」
柿食べると腹冷えるのですよね。好きなんですけどね。
えろーら
コメント



1.yunta削除
すごい独特な文章ですねぇ。そのせいか少し読み辛いようにも感じたのですが。
傍から見たらただ腹下した話なのに、妙に深いように感じられる。受け取り手次第で、いろんな見方ができて判断に迷うなぁ。
とりあえず、こたつで蹲る二人を想像したら可愛かったです。
2.名前が無い程度の能力削除
内臓の冷えには生姜粥ですよ