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~幻想少女物語~七転したなら八回斬れ

2010/11/11 15:38:04
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妖夢はソレに向けて刃を突き刺した。


「斬れぬものはあまり無い……か」


ため息と共に手を握り締める。

ぬめりとした感触を、刃ごしに感じる。

その刃に滴る紅いものは血液だろうか。

妖夢は自分の獲物を、相手の腹に差し込んだまましばし固まっていた。

やはり好きにはなれないこの感触。

相手の息の音を止める感触だけは、どうしても慣れることは無かった。


「できることなら、お前を斬りたくはなかった……」


それでも、途中でやめてしまっては可哀そうだと、刃を振りぬく。

迷いがあったとはいえ達人の一振りである。

切り口は綺麗で、まっすぐ一本の紅い線となっていた。

その線を押し開くように、どろりとひと際大きな紅い物体が転がり出る。

それは内臓と呼ばれる器官。否、器官だったモノだ。

今ではその役割を果たせず、内圧によって溢れ出てしまっている。

むわっと噎せ返るような血の臭いが、あたり一面を覆い尽くした。


「次生まれ変わるなら、綺麗な花になれるように祈っている」


刃を腰に付けた鞘にしまう。

そしておもむろに傷口に手を入れると、そのまま素手で内臓を引きずり出した。

ぶちりと引きちぎれ、内臓の全てが外気に触れる。

やはり好きにはなれない。

これは殺すだけではなく、それは死への冒涜にも思えた。

しかしそれだけでは終わらない。

完全に死んでいる相手を、妖夢はもう一度引き抜いた刃で切り刻む。

腕を肩からブツ切りに。

さらに首も骨ごとバラす。

その瞬間、ほんの一瞬だが死体が跳ねた。

生きているはずはない。自分が殺したのだから。

でも、やはり無理だ。


「う……っ」


妖夢は洗面所へと走った。

血の臭いと肉の感触が、妖夢の胃袋をひねり上げているような、そんな気がして……


数分の後、まるで妖夢が死体であると間違えるような蒼白な顔で洗面所から出てきた。

戻らないと……死体を放置してしまえば腐ってしまう。

早くしないと……

そう自分に言い聞かせても、足は一向に動いてはくれない。

あぁ、そうなのだ。

どだい私のような小さい半人には、命を奪う事なんて許されないのだ。

廊下に膝をつき、妖夢はその日も泣き崩れた。

尊敬する主人へ、謝罪の言葉を唱えつつ……



「申し訳ございません幽々子様」






その瞳には、涙をたっぷりと浮かべていた。









「私、どうしても鶏はさばけません!!」


それは妖夢がまだ10歳の時の事。






< ~幻想少女物語~七転したなら八回斬れ >




「妖夢。今日の晩御飯は何かしら?」

「さっき食べたじゃないですか」

「あら、そうだったかしら?」

「えぇ。約24時間前に」


幽々子はしばし考えたのち……結局返答に迷った。


「冗談ですよ幽々子様。ほらほら、もうすぐ出来ますから席でお待ち下さい」


にっこりと笑った妖夢の手には、切り取られた鶏の頭が握られていた。




で、「もうすぐ」が過ぎた頃、食卓にて。



「妖夢も逞しくなったわね~」

「私なんてまだまだです。庭師としても、護衛としても半人前で……」

「そうねぇ。そこはもう少し頑張ってほしいかしら」


幽々子の手厳しい言葉に、妖夢は「精進します」と苦笑いしながら答えた。

実際まだまだなのだ。

いつかは先代みたいに幽々子を守れる刀になりたいと、妖夢は思っている。


「でも……」


幽々子は照り焼きにされた鶏肉を口に含み、満足そうな顔で言った。


「料理人としては十分一人前よ」

「おほめにあずかりこうえいです」

「訝しげな顔しないの。もう偶に褒めたらこれなんだから」

「すいません……」


照れ隠しで棒読みになった、なんて事ではない。

ただ、料理人としてもまだ半人前と思っているからである。

妖夢には日々精進が心底根付いているらしい。

妖夢自身も、もう少し柔らかくなりたいと思っているのだが、それは自身の胸と同じく無理っぽい。

そんな事を考えていると、いつもの幽々子の御説教タイムが始まった。


「もう少し素直になりなさい。御嫁に行けなくなるわよ?」

「幽々子様みたいにですか?」

「そーれーはー、どっちの意味でかしらぁ? 素直ってこと? それとも御嫁にいけないってこと? あ、分かったわぁ。素直でも御嫁に行けない私への挑戦状ね? 受けて立ってあげようじゃないのっ!」

「すいませんすいません、あぁぁキャメルクラッチは飛んじゃいます! ぎぶっぎぶうううう!!」


御説教タイムがお折檻タイムへと移行するのにかかった時間。約10秒……南無~。









「こほん。でね話し戻すけれど」

「は、はい!」

「妖夢って鶏をさばけなかったの覚えてるかしら?」

「……遺憾ながら」

「魚も下ろせなかったわよね」

「お恥ずかしい限りです」


昔といってもさほど昔ではない。

実はまだ嫌だけど、やせ我慢してたりする。

妖忌曰く

「太刀筋が整っていないから、むにゅんとした感触になるのじゃ。一太刀の下に斬りふせい」

だそうだが、それを実行したら台所が切れた。

ついでに幽々子様も切れた。怖カタデス。

それはそれで置いておいて、とりあえずなんとか料理は出来るまでには我慢できるようになった。

ビュ○。大人になるって悲しい事なの。

どこからともなく聞こえた声を妖夢は無視し、幽々子様の昔語りに耳を傾けることにした。


「あの頃の妖夢は可愛かったわぁ。何回私が台所に立ったことか」

「エプロンを絞めた時に幽々子様は、おじい様よりも頼もしいです」

「妖忌に料理させたら、全部コマギレにしちゃうしねぇ」

「コマギレというよりも、全部形の整ったみじん切りですよね」

「今にして思うと、あの時の私は主婦してたわぁ」

「お母さんって呼んだ時期もありましたね。懐かしい黒歴史です」

「トペ・コンヒーロ」

「げふぅ!」


何も考えていない言葉は、時として悲劇を呼ぶ。


「はぁ……なんで誰も御嫁にもらってくれないのかしら」

「それは、事あるごとに"落とされた"ら命がいくつあっても足りないからですよ」

「あら妖夢ったら御上手ね。何回も恋に落ちてしまうほどに可憐だなんて~」

「言ってません」

「ライガーボム !!」

「みぎゃぁああ!!」


何も考えていない言葉は、時として悲劇を呼ぶパート2。

決して思っても口に出してはいけないこともあるのだ。

特に懐かしい話しをしているおば……年上の女性の話しを止めることは死を意味するので注意が必要なのだ。

という事で、瀕死の状態ながらも死にたくはないので、幽々子に話を続けてもらうことにする。


「えっとね、だから妖夢が逞しくなって嬉しい半面、ちょっと寂しいって事なのよ」

「たしかに幽々子様のおかげで、耐久力が上がりました。今ならシャイニング・ウィザードも耐えられそうです」

「道具屋さんの?」

「道具やのです」


――とある道具屋の店内

「へっくち……うぅ、今日も冷えるな。地下の封印を少しだけ解いて軽く運動でもするか……ふんぬ!」



「すいません無理です。色々な意味で」

「あらあら、彼に勝てるくらいでないと庭師としてやっていけないわよ?」

「でもでもあの霖之助さんかっこよすぎて、ドキ☆がむねむねして手が出せません!」

「そんな心構えでは剣士としてもやっていけないわよ?」

「その時は、御嫁にでも行きます」

「よおおおおむうううううう、いっちゃやだぁああああああ」

「じょ、冗談ですよ幽々子様。いきなり泣きつかないで下さい、重いです」

「ウラカン・ラナ」

「ぐおおお、うーごーけーなーいーーー」

「妖夢、何処にも行かない?」

「行きません、行きませんから技を解除してください!」

「妖忌みたいに居なくなったりしない?」

「しません、しませんから許してぇ」

「ずっと私の傍に居てくれる?」

「居ます居ます。一生御傍に仕えさせていただきますー!」

「じゃあ私を御嫁にもらってくれる?」

「それは嫌です」

「ラ・マヒストラル」

「うわあああああ」









「でね妖夢。私思うのよ」

「関節が……何がです?」


ギシギシと悲鳴を上げる関節をさそりながらも、幽々子に答えるあたり妖夢も実は楽しんでいるのではないか。

傍から見ている霊魂達が思い始めるくらいに妖夢は従順だった。

まさに従者の鏡やで。

ほら、今まさにやばそうな雰囲気を幽々子が漂わしているのに、きちんと聞き返しているではないか。


「如何思う?」

「いや、だから何がですか?」

「ほら、私ってまだ若いじゃない? だから現役で通じると思うの」

「レスラーのですか?」

「御嫁さんよ、おーよめーさん」

「今日はまた随分とひっぱりますね」

「それはそうよ~。私だって夢見る乙女なんですからね」

「あ~あのフィンランド民謡ですね。ネギを振り回しながら歌うんですか」

「それは夢見るドリー。J○YS○undで配信中ね」

「幽々子様、メタいです」

「ジャーマン・スープレックス」

「げふぁっ! 私が悪いのですか!?」

「それはそうと、本当にね、私どう思う?」


幽々子の問いに、しばし妖夢は考えた。

眉をひそめ、うんうん唸ること約10分。

結論は、とりあえず指をぽきぽき鳴らしてる幽々子を見て決定した。


「えぇっと……正直に言いますと、幽々子様への恋文は時々届いてます」

「え!?」

「全部私が保管してます」

「どうして私に渡してくれないのよ! やっと、やっと私にも春が訪れるわ!」

「全部女性からですけれど」

「えー……」

「しかも幽々子様宛というより、幽神サンダー・ユユコ宛てのファンレターですね」

「このタイミングで出されても嬉しくないわぁ」

「拝啓 幽神サンダー・ユユコ様」

「読まなくていいわよぉ」

「紅魔館前の湖リングにて待つ。冬の忘れ物より」

「それ決闘状じゃない!」

「行きますか?」

「えー。お腹すいたから今回はパスね」

「行きますか? ⇒はい」

「選択肢が"はい"しかないのだけれど!?」

「だって早くこの結論が一生でない話なんて終わらせたいですし」

「へぇ……そんな返答で大丈夫か?」

「大丈夫だ。問題ない」


あ……と気が付いた時にはもう遅い。

青筋を浮かべた幽々子を見て、妖夢は悟った。

レティへとかけられずはずだった技「シューティングスタープレス」は、おそらく全て自分が受けることになる。

そう、それは長年付き合ってきたからこそ分かる……死期。


――神は言っている。ここで死ぬ運命では無いと。

『そんな返答で大丈夫か?』

『一番いい案を頼む』



「幽々子様の勇姿……もう一度見たいですから」

「よし、行くわよ妖夢。お弁当の準備はできてる?」

「はい、ここに。サンドイッチを観客合わせて人数分きっちりと」

「さすが私の従者ね」

「おほめにあずかりこうえいです」

「そこで如何して嫌そうな顔するのよ」

「御気になさらず。さぁ対戦相手がお待ちかねです。行きましょう」

「そうね。あ、その前に」

「?」

「フィッシャーマンバスター!」

「ぐふぅ! ……どうし……て……」

「タイトルに嘘ついちゃいけないと思って」

「どう頑張っても、七回転んだら七回しか起き上がれない……です。がくり」

「妖夢!? ようううむううううう!! おのれ冬の忘れ物。許さないわっ!!」



妖夢の仇を取るため、がんばれ幽々子。

君の戦いはまだ始まったばかりだ!


未完
























「という物語を書いてみたの」

「えーごーざーん」

「私の力作が八分割にーーー!?」

「八回斬ってみました」





終われ
土下座をしている最中のこじろーです。
Yさん、キャラを勝手に使っちゃってすいません。
最初はねぇ幼い妖夢の料理取得編になるはずで、それを見守る幽々子様がお母さんしていてね……どうしてこうなった
でも最後は幽々子っぽく投げっぱなしになる感じだけは押さえたかったとさ。まる。
こんな内容で大丈夫か?

追記:技名修正。幽々子用に直すのを忘れてたよ~危ない危ない
  :誤字情報感謝!!
こじろー
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
最初の方暗い感じかと思ったらそんな事はなかったぜ!
エルシャダイネタに壮絶に吹いたwwww
2.名前が無い程度の能力削除
サンダー・ユユコw
3.奇声を発する程度の能力削除
技にちょくちょく吹いたww
4.名前が無い程度の能力削除
>>あとがき
大丈夫、問題ない
錬金に失敗したと思ったらよりいいものが出来ていたことは稀によくあるから

>人たち
一太刀では?
5.こじろー削除
>1しゃま
ゆゆこ×ようむで書くとどうしてもダークネスに書けないんですよねー
幻想郷はいつも平和です

>2しゃま
脳内でマスクをつけた幽々子様が展開されればもう末期w

>奇声しゃま
ここにも格闘技仲間が一人・・・ニヤリ

>4しゃま
あと悪魔合体に失敗してレベル高いのができたりとかですね!
そう言ってもらえるとうれしいです

誤字情報感謝!!
6.名前が無い程度の能力削除
>妖夢は自分の獲物を~
この場合は『得物』ではないでしょうか?

豪快にプロレス技をぶっ放すゆゆ様と強引なオチに笑いましたw
7.名も無き脇役削除
しかし何処かで見たことがある道具屋の店主がいたが……きっと気のせいだな
それよりも、サンダー幽々子wまた強大なレスラーが一人増えたw

(もしかしたら、次の作品にこじろーさんのキャラを勝手に使うかもしれないけど大丈夫かな?)
8.こじろー削除
>6しゃま
一度でいいから幽々子様にプロレス技かけられたいんですけお
主に寝技をかけられたいんですけおーけおーーー!

>Yしゃま
シャイニングウィザー(ry
我の子達でよければ是非是非つかってあげてください!
楽しみにしてますね♪