Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

我が青春、我が航路

2010/11/01 22:12:22
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ある日、村紗は掃除を大義名分として操舵室に籠もっていた
比較的広い室内からは様々な物が掘り起こされた

「…うっわ、これ私が着てた制服と同じ型だ」

古ぼけたダンボールからは純白の詰め襟が出てきた

「着てみようかな」

そう言って村紗はセーラー服を脱ぎ純白の詰め襟に着替えた

「…ははは、ダボダボだ」

鏡の前に出たとき、村紗は自分の姿に赤面した
袖からきっちり出るはずの腕も隠れてしまって、肩幅なんかは完全に合っていない、簡単に言うならば、似合っていない

「あ、これは…」

次に出てきた物は地上と別れる際のお別れテープだった

「こんなのもあるのね」

それはまだ封も切られていない新品同様の物だった
綺麗に巻かれたテープは表面こそ色褪せてしまっているが封をほどけば見事な色を見せてくれるだろう

「…残しとくか」

村紗は別れテープを自分のポケットへ仕舞い込んだ


掃除を開始して数時間、粗方片づいた操舵室で村紗は官帽を弄くっていた

「…つつけば出る物ね、こんなに昔の物があったなんて」

そう言って村紗は官帽を自らの頭にかぶせた

「…ちぇ、帽子はぴったりって訳か」

はめられた帽子は今の頭にぴったりと合っていた

「少し、眠くなってきたな」

そう言って村紗は椅子に座り込み官帽を顔にかぶせ少しの眠りについた


気持ちよく眠りの大海を彷徨っているところ、村紗は何者からか揺り動かされていた

「…さ、村紗、起きなさい村紗!」

「えっ!はい!」

「おはよう、村紗」

「…聖?」

目の前にいたのは命蓮寺の住職、聖白蓮だった

「随分幸せそうな寝顔をしていましたね」

「え?あ、はい夢を見ていたようで」

「どんな夢を見ていたんですか?」

「…詳しくは憶えてませんが、海にいた頃の夢でした」

それから村紗は語り出した
晴れた空の下出航する自分の船の姿や船尾から伸びる色取り取りのテープ、鳴り響く銅鑼の愉しげな音に装飾された望み果てない航路
波の背を薔薇色に染めながら沈む夕日、黄金月がキャビンの小窓を照らす憧憬
そして、純白の詰め襟に身を包む自らの姿

「…良い夢を見ましたね、村紗」

「はい、とても良い夢でした」

村紗は官帽を被り直すと聖に質問をした

「そう言えば聖は何故操舵室なんかに?」

「あぁそろそろお昼時だから貴方を呼びに来たの」

「そうですか、分かりました、行きましょう」

村紗は官帽を羅針盤に置き、聖に伴われ操舵室を後にした
昼食後、村紗は再び操舵室へ訪れていた
掃除は既に終え、室内は見違えるほど綺麗になっていた
「…いつか、また海に出たいなぁ」
村紗はそう呟くとナイフを取り出し操舵室の壁に文字を彫りつけた

<我往くは雲の大海、我何れ海原に戻らん>

「…我ながら、恥ずかしいけど上出来ね」
彫りつけた文字に頷くと村紗は操舵室を出た



…どうも、口調に違和感ありありですが、以前から書きたかった物が書けて満足の投げ槍でした
後書きのフレーズ、<我往くは~>の下り、実は自分の好きなアニメ映画の題名を捩らせて貰っています
投げ槍
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
自然と頭の中で船が出港する場面が思い浮かびました
2.名前が無い程度の能力削除
たまに部屋の整理とかしてると懐かしい品と巡り会えますよね。
子ども時代に遊んでいた人形だったり、学生時代の文集だったりを、古い新聞紙じゃあないけれど思わず手にとってしまう。
そして、流れた月日に感慨深かい気持ちにさせられたり、昔を思い出して、切なくなってくる。