Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

桃花子

2010/10/22 06:06:18
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ある満月の晩、永琳が川原を散歩していると、空から大きな桃が降ってきました。
永琳は落ちてきた桃を拾うと、すぐ永遠亭へと戻り、大きな桃に包丁を振り下ろしました。
すると中からは、包丁を刀で受け止めた依姫が出てきました。
それを見た永琳は包丁を振り回し、依姫を退治する気満々です。
一方、依姫は反撃に移るチャンスもなく、防戦するしかありません。
そんなことをかれこれ二十分近くやっていたでしょうか、ついに永琳は依姫を退治し、
夜食に依姫が出てきた桃を食べたとさ。
おしまい



「おしまいって師匠、もう終わらせるんですか」
「だって主役はやられたのよ。終わらせるしかないじゃない」
出番が無かったからって何を言ってるのかしらこの弟子。
元ネタは桃太郎。
タイトルに名前が出てるのに出番はなく、おばあさん辺りが鬼を退治にいったらタイトル詐欺だろうに。
でも良く考えたら、今のもほとんど私しか出番が無かったかしら。
ならもう一度やり直しするしかないのね、面倒くさい。
これもそれもあの子が弱すぎるのがいけない。
このまま月をまかせておいて良いものか、考えものだ。
「あの、終わりにするのはいいんですが、何故急に劇やるから来て、なんて言い出したのか、説明してくれませんか」
あら、依姫にはまだ説明していなかったかしら。
そもそも何故こんな劇なんてものをやっているのか。

それは先日の宴会の時のこと。
様々な人妖があちらこちらでお酒を酌み交わしている中、八雲紫がニヤニヤしながら私へと話しかけてきた。
「人形使いがネタ切れみたいだから、近々私と劇をつくりませんか?」
「聞き耳を立ててたとは無粋ね」
宴会の前の日に、ウドンゲの相談を受けた。
内容は、人形使いが人里でやる人形劇のネタが尽きた。
何か面白いのは無いでしょうか、と泣き付かれたんですけどどうしましょうか、とのこと。
ウドンゲの話は大げさな部分もあるので、世間話として、ネタが尽きたのよねえ、ぐらいと判断。
だから放っておきなさい、で終わらせたというのに。
この妖怪に聞かれていたとは、何だかややこしくなりそうな予感がする。
「そんなはしたない真似はいたしません。ただの読唇術ですわ」
「それならしょうがないわね」
何処がしょうがないかはこの際おいといて、おそらくスキマを使って見ていたのだろう。
自分との時か、人形使いとの時か、どっちかは分からないけど、どちらにせよ後でウドンゲはお仕置きね。
「そこでやる演目なんだけど桃太郎はどうかしら」
こっちはまだ返事もしていないのに、やることは決定したらしい。
もしかしてそれならしょうがないわね、を返事として受け取ったとか。
読唇術だから了承したんじゃなくて、読唇術だったら無粋じゃないという意味で言ったんだけど。
まさか、ね。
只単に聞く気が無いだけだろう。
しかし桃太郎なんて、とっくの昔にやっているものでしょうに。
「もちろん普通の桃太郎ではありません。大体の話の流れは決めておいて、後は全てアドリブでやるのです。
 タイトルは桃花子。女の子が主役なんだから当たり前よね」
それだけ決まっているのなら、こっちを巻き込まないでそっちで全部やってほしい。
どうしても必要ならウドンゲだけは貸す。
「主役は月の都にいる姉妹。理由は月のお酒を土産に持ってきて欲しいから」
さて、鈴仙は今でも連絡を取る事が出来るのかしら。
取れないといっても取らせるようにするのだけど。
どういった薬を作ろうか、考えるだけで楽しくてしょうがない。

「と、まあ大体こんな感じで決まったのよね。で、この劇を元に台本を書いて人形使いに渡すの」
残念ながら薬の出番はなく、ウドンゲはビクビクしながら連絡を取った。
月のレイセンと繋がり事情を説明、そして今へと続く。
「全ては鈴仙のせいだと言うことは分かりました。が、八意様はどうあっても断るものだと思いましたが」
「近所の付き合いとか色々あるのよ」
お酒につられたことは黙っておく。
たまには月のお酒が飲みたいもの。
でも用もなく、お酒を持って来いっていうのは悪い気がしてたから、八雲に持ちかけられたのは丁度良かったわ。
「さっ。理由も分かったことだし、鈴仙のお仕置きは後にして始めましょう」



ある満月の晩、永琳が川原を散歩していると、空から大きな桃が降ってきました。
永琳は落ちてきた桃を拾うと、すぐに永遠亭へと戻り、大きな桃に包丁を振り下ろしました。
すると中からは、包丁を刀で受け止めた依姫が出てきました。
「私は月の都から来た警察のようなものです。本日はこちらに悪者がいると聞いて飛んできました」
永琳はそのことを聞くと、大事な姫様が鬼にさらわれてしまった。
どうにか助けてほしい、とお願いしました。
「分かりました。私がその鬼を退治することにいたしましょう」
一人で行こうとしている依姫を心配してか、永琳はお供に自分の弟子である鈴仙、
いつのまにか居ついている客人の、レイセンと豊姫を連れて行くことを提案しました。
更には万が一のために、とレイセンに対玉兎用きび団子をもた「ちょっと待ってください」



「劇の途中よ、ウドンゲ」
「すみません、じゃなくて何ですか、その怪しげなきび団子」
「元ネタにあるとおりこれはパワーアップアイテム。団子を作るときに国士無双の薬を混ぜ込んだだけ」
見た目はパックに入っているこしあんの串の団子なんだけど、何処が怪しいと言うのだろうか。
ちなみに一本につき四個、団子が刺さっている。
三個なのが最近の流行らしいが、四人いるし四個にしてみた。
「ほらこの前、対戦中にこんなに飲んでいられるかーって言ってたじゃない」
「そんなことも言いましたね。で、これは薬何杯分なんです? まさか一個で一杯分じゃないですよね」
そんなに飲めないと言われたから、と団子に変えたって一個で一杯分の効果だったら変える意味は無い。
だから少なくとも一個で二杯以上の効果はある。
そしてまず間違いなく四杯分入っていて爆発する、
と思っているんでしょうねこの子は。
「きび団子には一個で鈴仙に渡してある国土無双の薬三杯分が入っているわ。
 それにさっきも言ったとおり、元ネタに合わせて作ったのよ。
 ちなみに、玉兎にしか効かないように作ったのも敵の手に渡ったら危険だからよ」
何故ウドンゲはこんなにも疑うんだろうか。
私がどれだけ心配しているのか、それが全然分かってくれていなくて寂しいわ、嘘だけど。
疑われているなか、どうすれば引っ掛ける事が出来るかを考えるのが、最近の楽しみである。
「さ、他に質問がなければ再開するわよ」



更には万が一のために、とレイセンに対玉兎用きび団子を持たせました。
これで準備は整いました。
「それでは、鬼退治へ行ってまいります」
こうして依姫とお供のものは鬼退治へと旅立ったのでした。



八意様のもとから旅立って、十分ぐらいたったかしら。
私たちはある問題にぶち当たりました。
それは、誰も鬼の居場所を知らないということ。
前をズンズンと歩く依姫に、何処へ向かっているのかと尋ねたところ、何処でしょう? との返事。
リーダーだし、ノリで進むのもしょうがないわね、と苦笑しながら鈴仙に聞いてみたら、知りませんとの事。
嫌な予感がしたので、案内役の村人役にさせたレイセンに聞いても、分からないという返事だった。
役になれば分かる、というものでは無いわよね、やっぱり。
こういうものは聞き込みから始めるもの、と初めてはみたものの、役に立ちそうに無い情報ばかり。
呼びたい時は相手の好物をぶら下げている、とか何を考えているのやら。
それで呼び出された相手は何を考えているのか、もっと分かりません。
でも来てしまったものは来てしまったので、続きを始めましょう。



旅立った依姫たちは鬼をおびき寄せるために、宴会を始めました。
すると、あたり一面に霧が出始め、凝縮していき、一匹の萃香が出てきました。
「痛い目を見たくなければ、そこにある酒を置いていけ」
萃香は酔っ払っているらしく、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
「でたな鬼め、お前を退治してお姫様は返してもらう。行きなさい鈴仙、レイセン」
指名された二人は、コップに入っていたお酒を慌てて飲み、萃香へと向かっていきました。
「百万鬼夜行」
萃香がスペルカードを宣言すると、一匹の萃香から何万もの小さな萃香へと姿を変え、
鈴仙とレイセンにまとわりつきました。
「やめっ、くすぐらないで。そこはだめ。吐く、吐いちゃう」
「参った、参りました」
何十匹という萃香にくすぐられた二人はあっという間にギブアップをしました。
「さあ、あんたらもこういう風になりたい?」
「こんなもので降参するつもりはありません」
自信満々に答える依姫に、萃香が襲い掛かります。
しかし、まとわりつき、くすぐると思われた瞬間、依姫が放ったある一言で動きを止めました。
「それは本当に百万匹いるの?」
「は?」
「それは本当に百万匹いるの?」
「いや、百万っていうのは」
「鬼が嘘つくの?」
「嘘なんかじゃ」
「つくの?」
「あう」
依姫の質問に萃香は答えることが出来ませんでした。
そして二、三分の沈黙の後。
「じゃっ、じゃあ、数えてみればいいじゃん。ほら」
小さな萃香たちは涙目になりながら、縦百匹、横百匹に整列をしました。
数えてみろと言われたので、依姫は数えてみましたが、萃香は百万匹はいませんでした。
その事を萃香に伝えると、後で覚えてろよーと言いながらどこかへ去っていきました。
「あ、コラ。姫様の場所を教えなさい」
依姫の叫びはむなしく響き渡りました。
その後、永遠亭から姫様が帰ってきたとの連絡が入り、依姫たちは永遠亭の帰路へとつきましたとさ。
めでたしめでたし。



なんだか私が桃を食べている間に物語は終わってしまっているのだけれど。
八意様に薬をもらえばいいやと思って、食べてたのが悪いのかしら。
「にしても、これ全然使いませんでしたね」
レイセンがあんこのついたきび団子を取り出している。
使いどころはあったと思うんだけど。
多分、帰ったら依姫に教育しなおされるだろうけど、ここは私も叱ってみましょうか。
「それは一体どんな味なのかしら」
「えっへへ。豊姫様も気になりますか」
「ええもちろん。食べてみましょう。レイセンからどうぞ」
「それでは先に失礼して。あーん」
「ちょっと。やめっ」
レイセンがきび団子を口に入れた瞬間、爆発が起こりました。
こうなる事を予測し、安全な場所に避難しておいて正解。
八意様は団子に薬三個分と言ったけど、あんこの分は言ってない。
だから爆発するんだろうなと踏んでいたけど思ったとおり。
どうやら依姫も気づいていたらしく、もくもくと煙が上がっている爆心地を、呆れた目でみている。
風が煙を吹き飛ばし、見えてきたもの。
それは、団子を食べたレイセンと、恐らく私が先に食べなかったことを怪しく思い、
レイセンを止めようとした鈴仙の二人。
その姿は全身真っ黒けで、みみもしろくなけりゃ、おもしろくなかった。
分類におもしろくないですと書いてみたくて作ったものです。
寝っぱなし人生
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
うぉいwwwwオチwwwやられたww
2.名前が無い程度の能力削除
なwwるwwほwwどwww
3.名前が無い程度の能力削除
読む前から面白くないだの言われたら萎えるわーとか思ってたらオチで吹いたww
4.名前が無い程度の能力削除
やられたw
5.削除
つ【座布団】
クスリとでも笑った私の負けだよチクショウ。